顧問の税理士が廃業や引退をしたり、亡くなったりすると、その税理士の登録は抹消され、申告書の作成や税務代理を続けてもらうことはできなくなります。一方で、申告や納付の期限は会社(個人事業主なら本人)の側に残るので、次の期限までに引継ぎ先を決め、帳簿や申告書の控えを手元に戻す必要があります。
この記事では、税理士の側の事情で顧問が終わる場面に絞って、最初に確かめること、返してもらう書類とデータ、引継ぎ先の探し方、新しい税理士との手続を整理します。会社の側から税理士を変える場合の手続は税理士の変更手続きと注意点で扱っています。
税理士が廃業・死亡すると何が起きるか
税理士法26条1項は、税理士が業務を廃止したときや死亡したときは、日本税理士会連合会が遅滞なくその登録を抹消しなければならないと定めています。死亡した場合は、相続人などが遅滞なくその旨を日本税理士会連合会に届け出ることになっています(同条2項)。
登録が抹消されると、その人は税理士業務を行えません。税務代理の委任も、民法653条により受任者の死亡で終了します。廃業の場合も、業務を廃止した税理士に申告を続けてもらうことはできないので、顧問の契約は実質的に終わります。
個人の税理士事務所と税理士法人では、影響の出方が違います。
| 形態 | 税理士が廃業・死亡したとき |
|---|---|
| 個人の税理士事務所 | 契約の相手である税理士の登録が抹消される。会社は新しい税理士を探す必要がある |
| 税理士法人 | 社員である税理士は脱退するが(税理士法48条の17)、社員が2人以上残れば法人は続く。社員が1人の状態が6か月続くと法人は解散する(48条の18第2項) |
税理士法人の場合は、法人の中で担当を替えてもらう形で続けられることがあります。法人自体が解散する場合は、個人事務所と同じように引継ぎ先を探します。
最初に確かめる3つのこと
知らせを受けたら、まず次の3つを確かめます。順番を決めておくと、期限に追われずに引継ぎを進められます。
1. 次の申告・納付の期限
期限は、税理士がいなくなっても延びません。国税庁『申告と納税』は、主な国税の期限を次のように示し、申告期限を過ぎてから申告すると加算税や延滞税が課される場合があるとしています。
| 区分 | 手続 | 期限 |
|---|---|---|
| 法人 | 法人税・消費税の確定申告 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
| 法人・個人 | 源泉所得税の納付 | 原則、所得を支払った月の翌月10日。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている場合、給与・退職金と税理士等の一定の報酬から源泉徴収した分は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日(それ以外の報酬・料金は翌月10日) |
| 個人事業主 | 令和8年分の所得税の確定申告 | 令和9年3月15日(月) |
| 個人事業主 | 令和8年分の消費税の確定申告(課税事業者) | 令和9年3月31日(水) |
期限が土曜日、日曜日、祝日等にあたる場合は、その翌日が期限になります。決算月の直後や確定申告の時期に重なっている場合は、引継ぎ先探しを最優先にします。
2. 預けている物
帳簿の原本、領収書、通帳のコピー、申告書の控え、会計ソフトのデータなど、何を税理士事務所に預けているかを書き出します。会社に控えが残っていないものは、返してもらう対象になります。
3. 後継の税理士がいるか
廃業・引退が事前に知らされる場合は、後継の税理士や税理士法人への引継ぎを案内されることがあります。案内を受けた場合も、引き継ぐかどうかは会社が決められます。業務の範囲と担当者を確かめたうえで判断します。
返してもらう書類とデータ
帳簿や書類の保存義務は、税理士ではなく会社(個人事業主なら本人)にあります。法人は、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間)保存しなければなりません(国税庁タックスアンサーNo.5930)。個人の青色申告者の帳簿・書類も原則として7年間の保存とされ、書類によっては5年間でよいものもあります(同No.2070)。
| 返してもらう物 | なぜ要るか |
|---|---|
| 総勘定元帳・仕訳帳・固定資産台帳などの帳簿 | 保存義務がある。新しい税理士が期首の残高や減価償却を引き継ぐ |
| 決算書・申告書の控え(法人税・消費税・地方税) | 前期の数字と、繰り越している欠損金や中間申告の要否を確かめる |
| 税務署などに出した届出書・申請書の控え | 青色申告の承認、消費税の届出、源泉所得税の納期の特例の承認など、どの制度を選んでいるかが分かる |
| 会計ソフトのデータ | 税理士事務所のソフトで作っていた場合は、移せる形式で出してもらう |
| 給与・年末調整の資料 | 扶養控除等申告書、源泉徴収簿など、年の途中の給与の計算を続けるため |
| 預けていた原本(領収書・通帳のコピー・契約書など) | 保存義務のある書類を手元に戻す |
e-Taxで申告していた場合は、会社のe-Taxの利用者識別番号と暗証番号を誰が管理していたかも確かめます。利用者識別番号は、新しい税理士に電子申告を頼むときに必要になることがあるので、控えの所在とあわせて整理しておきます。暗証番号は、会社で管理しておきます。
引継ぎ先の探し方
後継の案内がない場合や、案内とは別の事務所も比べたい場合は、自分で探します。国税庁『税理士をお探しの方へ』は、日本税理士会連合会のホームページで、登録されているすべての税理士・税理士法人の情報を見られると案内しています。
問い合わせるときは、次の情報を最初に伝えると、引き受けられるかの返事が早くなります。
- 顧問の税理士が廃業(または死亡)したこと、知らせを受けた日
- 法人か個人事業主か、業種、決算月と次の申告期限
- 記帳の進み具合(いつの分まで入力済みか)と使っている会計ソフト
- 手元にある書類と、まだ返ってきていない書類
- 給与を払っている人数、消費税の申告の有無
見積りを頼むときに準備しておく資料は顧問税理士に見積りを頼む前ににまとめています。
新しい税理士との手続
新しい税理士が税務代理をするときは、その権限を有することを証する書面(税務代理権限証書)を税務署に提出します(税理士法30条)。国税庁『税務代理の権限の明示』は、この手続をe-Taxで行い、書面で持参・送付することもできると案内しています。
前の税理士が出していた税務代理権限証書については、委任が終了した旨を通知する書面の手続があります。国税庁の案内では、この通知書を提出するのは税理士・税理士法人とされています。前の税理士が廃業前に手続をしてくれるかは、連絡が取れるうちに確かめておきます。
| 手続 | 誰が行うか | 会社の側ですること |
|---|---|---|
| 税務代理権限証書の提出 | 新しい税理士 | 委任の範囲(税目・年分)を確かめて署名する |
| 委任が終了した旨の通知書 | 前の税理士・税理士法人 | 連絡が取れるうちに提出の予定を聞いておく |
| 書類・データの受け渡し | 前の事務所から会社、会社から新しい税理士 | 受け取った物の一覧を作り、新しい税理士に渡す |
税理士への依頼を考えるときの関連記事
日ごろからしておけること
税理士の廃業や死亡は、会社の側では時期を選べません。日ごろから次のことをしておくと、急な引継ぎでも慌てずに済みます。
- 申告書と届出書の控えを毎回受け取る:申告が終わるたびに、提出した申告書・決算書の控えと、税務署への届出書の控えを会社でも保管します。
- 会計データを会社でも見られるようにしておく:クラウドの会計ソフトを会社名義で契約しておくと、事務所が変わってもデータを持ち出す手間が減ります。
- e-Taxの番号の所在を把握する:利用者識別番号の控えの所在を社内で記録し、暗証番号は会社で管理しておきます。
- 契約書で書類の返却を確かめる:契約が終わるときの書類・データの返却の方法と時期が、契約書に書かれているかを確かめておきます。契約書の確認項目は税理士の顧問契約書で確認すべき9項目にまとめています。
まとめ:期限・預けた物・後継の3つを先に確かめる
- 税理士が業務を廃止したり死亡したりすると、登録が抹消され、その税理士に申告を続けてもらうことはできません。
- 申告や納付の期限は会社の側に残ります。法人は事業年度終了の日の翌日から2か月以内、個人の令和8年分の所得税は令和9年3月15日が期限です。
- 帳簿や書類の保存義務は会社にあります。帳簿、申告書・届出書の控え、会計ソフトのデータを返してもらいます。
- 引継ぎ先は、後継の案内を受けるか、日本税理士会連合会の情報から探します。
- 新しい税理士は税務代理権限証書を提出し、前の委任の終了の通知は税理士の側の手続です。
知らせを受けた時点で期限と預けた物を確かめておくと、引継ぎ先を選ぶ余裕が生まれます。
顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 税理士が亡くなった場合、預けた書類は誰に返してもらえばよいですか?
事務所に職員が残っていれば職員に、そうでなければ相続人や、後継として案内された税理士に連絡します。連絡先が分からない場合は、税理士は事務所のある地域の税理士会に加入しているので、その税理士会に問い合わせる方法もあります。
Q. 申告期限に間に合わないかもしれません。どうすればよいですか?
期限は税理士の事情では延びないので、引継ぎ先に期限の日付と記帳の進み具合をすぐに伝えます。期限を過ぎてから申告すると、加算税や延滞税が課される場合があります。手元の資料で間に合う範囲を新しい税理士と相談するのが先決です。
Q. 顧問の税理士が税理士法人の社員だった場合も、同じ手続が要りますか?
税理士法人は社員が2人以上残れば続くので、法人の中で担当を替えてもらう形で続けられることがあります。その場合は、新しい担当の税理士と、申告書を確認する税理士が誰になるかを確かめます。法人自体が解散する場合は、個人事務所と同じように引継ぎ先を探します。
Q. 引退を前もって知らされた場合、いつ切り替えるのがよいですか?
決算や確定申告の作業の途中で担当が替わると、引継ぎの手間が増えます。前の税理士が対応できる期間の中で、申告が終わった直後など区切りのよい時期を選べるかを相談すると、新しい税理士も前期の数字を確かめたうえで引き継げます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
顧問税理士をお探しの方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見