「iDeCoに加入しているが、確定申告で控除を申告したかどうか記憶が曖昧」「年末調整で処理したはずだが、証明書の提出を忘れた気がする」——iDeCoの控除は手続きのタイミングを誤ると、年間数万円の節税効果が丸ごと消えてしまいます。会社員と個人事業主では手続きが異なるため、自分の立場に応じた正しい手順を一度確認してください。
iDeCoで年間20万円超の節税が可能——3つの税制優遇を正確に理解する
iDeCoには3つの税制優遇があります。
| 優遇の種類 | 内容 |
|---|---|
| 掛け金が全額所得控除 | 毎月の掛け金が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から控除される |
| 運用益が非課税 | 通常の投資では運用益に20.315%が課税されるが、iDeCo内では非課税 |
| 受取時の優遇 | 一時金受取→退職所得控除、年金受取→公的年金等控除が適用される |
この3つの中で日々の節税効果が最も大きいのが「掛け金の全額所得控除」です。掛け金を支払った年分の所得税・住民税が軽減されます。
確定申告は必要か、年末調整で済むか——会社員・個人事業主・企業型DC加入者で手続きが異なる
会社員(第2号被保険者)の場合
会社員がiDeCoを利用する場合、年末調整で掛け金控除の手続きができます。確定申告は原則として不要です。
手順は以下の通りです。
- iDeCoの運営管理機関(金融機関)から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が10月頃に送付される
- この証明書を会社の年末調整担当者に提出する
- 年末調整で「小規模企業共済等掛金控除」が適用される
ただし、会社員でも以下に該当する場合は確定申告が必要です。
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 年末調整で申告し忘れた | 年末調整後でも確定申告で申告可能(5年以内の更正の請求も可) |
| 給与収入が2,000万円超 | 年末調整の対象外のため確定申告が必要 |
| 副業収入がある | 副業の所得申告と合わせてiDeCoの控除も申告する |
| 医療費控除等で確定申告する | 確定申告をする場合はiDeCoの控除も合わせて申告する |
個人事業主・自営業者(第1号被保険者)の場合
個人事業主は年末調整の仕組みがないため、確定申告でiDeCoの掛け金控除を申告する必要があります。
手順は以下の通りです。
- iDeCoの運営管理機関から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が送付される(10月頃)
- 確定申告書の「小規模企業共済等掛金控除」欄に年間掛け金合計額を記載する
- 払込証明書を添付(または提示)して確定申告を行う
企業型DCを利用している会社員
企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者がiDeCoにも加入している場合は、合算して上限額を管理する必要があります。企業型DCの会社拠出分は年末調整・確定申告では申告しません(会社が処理します)。iDeCoの自分の掛け金分のみ申告します。
リーパル会計事務所では、確定申告の準備段階からfreee・マネーフォワードクラウドの設定支援、青色申告の届出、税額シミュレーションまでを一括でサポートしています。「自分でやれる範囲を超えていないか」を一度棚卸しすることが、もっとも大きな節税につながります。
個人事業主は月6.8万円・会社員は月2.3万円——2026年現在の掛け金上限を立場別に確認する
※この引上げは令和8年度税制改正大綱(令和7年12月26日閣議決定)の内容であり、本記事執筆時点では法案未成立の予定段階です。現行の上限は第1号被保険者で月6.8万円です。
掛け金の上限は加入者の立場によって異なります。
| 加入者の種類 | 月額上限 | 年間上限 |
|---|---|---|
| 自営業者・フリーランス(第1号被保険者) | 68,000円 | 816,000円 |
| 会社員(企業年金なし) | 23,000円 | 276,000円 |
| 会社員(企業型DCあり) | 20,000円 | 240,000円 |
| 公務員 | 12,000円 | 144,000円 |
| 専業主婦(第3号被保険者) | 23,000円 | 276,000円 |
所得税率別にいくら節税できるか——年収・拠出額別の節税効果シミュレーション
計算式
年間節税額 = 年間掛け金 × (所得税率 + 住民税率10%)
所得税率は課税所得に応じて異なります(5%〜45%)。住民税は一律10%です。
具体的な計算例
例1:年収500万円の会社員が月2万3,000円(年間27万6,000円)掛け金を拠出した場合
- 課税所得の税率(所得税):20%と仮定
- 年間節税額:276,000円 × (20% + 10%) = 82,800円
例2:個人事業主(課税所得300万円)が月6万8,000円(年間81万6,000円)拠出した場合
- 課税所得の税率(所得税):20%
- 年間節税額:816,000円 × (20% + 10%) = 244,800円
| 年収・所得 | 所得税率目安 | 月1万円拠出時の年間節税額 |
|---|---|---|
| 〜195万円以下 | 5% | 約18,000円 |
| 〜330万円以下 | 10% | 約24,000円 |
| 〜695万円以下 | 20% | 約36,000円 |
| 〜900万円以下 | 23% | 約39,600円 |
| 〜1,800万円以下 | 33% | 約51,600円 |
払込証明書の提出を忘れた——年末調整で申告漏れが発覚したときの2つの取り戻し方法
会社員がiDeCoの払込証明書の提出を忘れた場合でも、以下の方法で控除を受けることができます。
方法1:確定申告(翌年3月15日まで)
年末調整後でも、翌年3月15日までに確定申告を行えばiDeCoの控除を受けられます。
方法2:更正の請求(5年以内)
申告期限を過ぎた後でも、5年以内であれば「更正の請求」を行うことで過去の控除漏れを修正し、還付を受けられます。
申告し忘れに気づいたら、放置せずに手続きを行いましょう。
受取方法で税負担が大きく変わる——一時金・年金・組み合わせ受取の出口税務を比較する
iDeCoは出口(受取時)の税務処理も重要です。
| 受取方法 | 税制上の扱い | 控除の内容 |
|---|---|---|
| 一時金(一括受取) | 退職所得として課税 | 退職所得控除(勤続年数に応じて大きな控除) |
| 年金(分割受取) | 雑所得として課税 | 公的年金等控除(65歳以上は最低110万円控除) |
| 一時金+年金の組み合わせ | それぞれの扱いで課税 | 双方の控除が適用されるが計算が複雑 |
退職所得控除は非常に大きい控除で、勤続年数20年以下は「40万円×勤続年数」、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」が控除されます。
ご自身の所得・家族構成・控除の組み合わせによって、最適な打ち手は大きく変わります。判断に迷う部分があれば、リーパル会計事務所の税理士に直接ご相談いただくのが最短です。
よくある質問(FAQ)
Q1. iDeCoの掛け金は途中で変更できますか?
年1回、掛け金額の変更が可能です。増額・減額のどちらも選択できます。
Q2. iDeCoと小規模企業共済は両方加入できますか?
はい、両方加入できます。どちらも小規模企業共済等掛金控除の対象で、合計額が控除されます。個人事業主はiDeCo(月6.8万円)+小規模企業共済(月7万円)で合計13.8万円/月を全額控除にできます。
Q3. iDeCoの受取は何歳からですか?
原則として60歳以降(加入期間10年以上)から受け取れます。2022年の改正で、加入期間が10年未満の場合は65歳まで受取開始が遅れます。
Q4. 転職したらiDeCoはどうなりますか?
転職先の企業型DCに移換するか、引き続き個人型(iDeCo)で運用を継続するかを選択できます。転職後も掛け金の上限額が変わる場合があります。速やかに金融機関に変更手続きを行ってください。
Q5. iDeCoで元本割れするリスクはありますか?
iDeCoは投資信託・定期預金・保険商品を自分で選んで運用するため、投資信託を選んだ場合は元本割れのリスクがあります。定期預金・保険商品を選べば元本保証です。運用商品の選択は慎重に行ってください。
まとめ:iDeCoの節税効果を最大化するために
iDeCoは掛け金の全額が所得控除になる非常に強力な節税手段です。会社員は年末調整で手続きが完結しますが、申告漏れがあった場合は確定申告・更正の請求で遡及できます。個人事業主は確定申告で必ず申告してください。
特に個人事業主は月6.8万円(年間81.6万円)まで掛け金を拠出でき、課税所得300万円以下であっても年間約24万〜25万円の節税効果が期待できます。
iDeCoの控除を毎年確実に申告できているかどうかは、一度過去の確定申告書を確認するだけでわかります。申告漏れがあれば5年以内の更正の請求で取り戻すことができます。手続きより先に「自分が毎年正しく申告できているか」を確認することが最初のステップです。
リーパル会計事務所では、iDeCo・小規模企業共済・青色申告控除の組み合わせによる節税プランを個人事業主ごとに設計し、確定申告のサポートを行っています。
iDeCoを活用し続けていれば毎年20万円超の節税が積み重なります。申告漏れを放置し続けない理由はほとんどありません。判断に迷う場合はリーパル会計事務所までご相談ください。
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参考資料
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、個人事業主の確定申告・所得税実務を専門とする。
最終更新日: 2026年5月2日