給与から税金が引かれているのに、家賃収入があると確定申告も必要なのでしょうか。家賃分の住民税を、給与の天引きとは分けて納めたい方もいるでしょう。結論は、申告の要否を「家賃収入」ではなく「所得」で確認し、申告するときは給与所得も含めて計算することです。この記事では、その判断と住民税の納め方を整理します。
この記事は「大家さんの税金と確定申告の連載|家賃収入の申告から、法人化・相続まで」の第2回です。
会社員の大家さんは、まず申告が必要かを確認する
不動産所得とは、土地や建物を貸して得る所得です。基本の計算は「総収入金額-必要経費」です。通帳に入った家賃の合計と、税金を計算するときの所得は同じではありません。
2026年10月時点では、給与を1か所から受け、給与収入が年間2,000万円以下で、その給与について源泉徴収・年末調整が行われている方は、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下なら、原則として所得税の確定申告は不要です。源泉徴収とは、給与などの支払い時に税金が差し引かれる仕組みです。
20万円は家賃の入金額の基準でも、税金がかからない非課税枠でもありません。不動産所得のほかに申告対象の副収入があれば、それも含めて判定します。家賃だけを見て結論を出さないことが大切です。
また、医療費控除などを受けるために所得税の確定申告をする場合は、20万円以下の不動産所得も含めます。「申告しなくてよい場合」と「申告するときに記載を省ける所得」は別の話です。
給与を複数の勤務先から受ける方は、上記とは判定方法が異なります。同族会社の役員などが、その会社から不動産の賃貸料を受け取る場合も、少額だからという理由で上記の扱いを当てはめないようにします。自分がどの条件に当たるかを先に確認してください。
所得税の申告が不要でも、不動産所得があると住民税の申告が必要になることがあります。所得税と住民税をそれぞれ確認するところまでが、申告要否の判断です。全体の仕組みは、大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説でも整理しています。
給与と家賃は、収入ではなく所得を合算する
給与所得と不動産所得は、原則として総合課税の対象です。総合課税とは、それぞれの所得を合計して所得税を計算する方法です。給与の額面と家賃の総額を、そのまま足して税率を掛けるわけではありません。
まず、給与は源泉徴収票を用意し、不動産は収入と必要経費を整理します。それぞれの所得金額を確認した後、合計した所得から所得控除を差し引いて税額を計算します。所得控除とは、社会保険料など、個人の事情に応じて所得から差し引く仕組みです。
そのうえで、給与などからすでに源泉徴収された税額を精算します。給与所得も記載するのは、家賃と合わせた税額を計算するためです。納付か還付かは、所得、控除、すでに納めた税額などを合わせて決まります。
不動産の必要経費には、貸付けに係る固定資産税や損害保険料、減価償却費、修繕費などがあります。私生活の支出と明確に分けられることが前提です。減価償却は、建物などの取得費を使用可能期間にわたり経費に配分する仕組みで、詳しくは中古アパートの減価償却|耐用年数の出し方と、建物と土地の分け方で扱います。
不動産所得が赤字の場合は、他の黒字の所得から差し引く「損益通算」ができることがあります。ただし、赤字のうち土地を取得するための借入金の利子に相当する部分などは対象外となるため、給与所得から差し引く前に通算できる額を確認します。
住民税は「給与天引き」と「自分で納付」を分けて考える
住民税の特別徴収とは、勤務先が給与から税金を差し引いて納める方法です。一方、普通徴収とは、本人が自治体の納付書や口座振替などで納める方法です。家賃など給与以外の所得に係る住民税は、給与分と納付方法を分けられる場合があります。
| 項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 納める流れ | 勤務先が給与から差し引いて納付します | 本人が納付書や口座振替などで納付します |
| 不動産所得分の扱い | 給与分とまとめて給与天引きとなる場合があります | 給与分とは分けて本人が納める方法を選べる場合があります |
| 申告時の確認点 | 給与以外の所得分も給与天引きとするか確認します | 該当欄の「自分で納付」を選びます |
| 納付を確認する資料 | 勤務先を通じて届く税額通知などです | 自治体から本人に届く納税通知書などです |
「自分で納付」は、不動産所得分について選ぶ
所得税の確定申告書第二表には、「住民税・事業税に関する事項」があります。その中の給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法の欄で、「自分で納付」を選択します。電子申告の場合も、提出前に申告書の該当箇所に選択内容が反映されているか確認するとよいでしょう。
ここで選ぶのは、給与以外の所得に係る住民税の納め方です。給与分も含めた住民税すべてを本人納付に切り替える手続きではありません。また、所得税と住民税の計算や納付が一つにまとまるわけでもありません。
希望どおりに分けられない場合もある
東京都北区は、給与以外の所得がマイナスの場合は分けられないと案内しています。また、徴収方法の希望を記載しない場合には、給与からの特別徴収にまとめられることがあるとしています。納付方法を分けたい方は、空欄のまま提出しないように確認します。
納付方法の選択だけを理由に、賃貸の状況が勤務先に伝わらないと断定することはできません。この記事では、税金をどのように納めるかを整理しています。勤務先の就業規則などの確認は、税の申告とは分けて考えてください。
実際の取扱いは、住所地の自治体の案内で確認します。普通徴収を希望した場合も、届いた納税通知書の内容と納付方法を見直しましょう。想定と異なるときは、提出した申告書の控えを手元に置くと、自治体に確認すべき点を整理しやすくなります。
所得税を申告しない場合は、住民税の申告を確認する
習志野市は、給与以外の所得が20万円以下で所得税の確定申告が不要な方を、住民税の申告が必要な方に挙げています。一方、所得税の確定申告をする方は、住民税の申告は不要と案内しています。家賃収入がある方は、所得税の申告を省略できるかどうかだけで手続きを終えないようにします。
架空の例で、申告から納付までを整理する
次は説明のための架空の例です。給与を1か所から受け、給与収入は年間2,000万円以下で、源泉徴収・年末調整が行われている大家さんを想定します。他の所得はなく、不動産所得は以下の収入と必要経費だけで計算できるものとします。また、所得控除などを反映した税額計算の結果、追加で納める所得税があるものとします。
- 給与所得:400万円
- 不動産の総収入金額:120万円
- 不動産の必要経費:95万円
- 不動産所得:120万円-95万円=25万円
この例の不動産所得は25万円で、20万円を超えています。そのため、給与所得も含めた確定申告が必要になるケースです。税額計算の出発点となる所得の合計は、400万円+25万円=425万円です。この425万円が、そのまま課税所得や税額になるわけではありません。
実際の計算では、ここから所得控除などを確認し、税額を計算して源泉徴収税額を精算します。不動産所得だけの申告書を作るのではなく、給与と不動産を同じ年分の申告にまとめることが要点です。
不動産所得分の住民税を本人で納めたい場合は、申告書の徴収方法も確認します。その後、自治体から届く通知で取扱いを確認します。「所得を計算する」「申告書を提出する」「税金を納める」という作業を、別々に管理すると整理しやすくなります。
資料の整理にも同じ考え方を使えます。給与の源泉徴収票、不動産の収入・経費の集計、申告書の控え、納付に関する通知をまとめておきましょう。通帳だけで申告の要否を判断せず、どの資料から所得を計算したかを後で追える状態にします。
申告前後に確認する大家さんのチェックリスト
まず収入と経費を整理し、次に申告の要否、最後に納付方法を確認する順番がおすすめです。相続をきっかけに賃貸を引き継いだ方も、前年の申告書の金額を写すだけでなく、自分の申告対象となる資料を整理するところから始めます。
- 給与の源泉徴収票と、不動産収入・必要経費の資料が同じ年分でそろっていますか。
- 家賃の入金額と、不動産所得の金額を区別していますか。
- 家賃以外にも、申告要否の判定に含める所得はありませんか。
- 給与が複数ある場合や、同族会社から賃料を受ける場合を見落としていませんか。
- 医療費控除などで確定申告する際、少額の不動産所得も含めていますか。
- 所得税の確定申告をしない場合、住民税の申告が必要か確認しましたか。
- 不動産所得分の住民税をどう納めるか決め、申告書に反映しましたか。
- 提出した申告書の控えと、届いた住民税の通知を照合できる状態ですか。
分からない支出や通知があれば、資料名と確認したい点をメモしておきます。「申告が必要か」と「いくら納めるか」、「どの方法で納めるか」を分けて整理すると、確認漏れを減らせます。申告書を作り終えた後も、納付に使う口座や通知の保管場所まで決めておくと管理しやすくなります。
まとめ
会社員の大家さんは、家賃収入から必要経費を差し引いた不動産所得を基に、所得税の申告要否を確認します。確定申告をするときは給与所得も含めて計算し、源泉徴収された税額を精算します。所得税の申告が不要でも、住民税の申告を別に確認することが大切です。不動産所得分の住民税を「自分で納付」とする場合は、申告書の選択と自治体から届く通知の両方を確認しましょう。
よくある質問
Q. 家賃収入が20万円以下なら、手続きは何も要りませんか。
20万円の判定は、家賃収入ではなく必要経費などを反映した所得で行います。給与の受取状況や他の所得も確認します。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になることがあります。
Q. 医療費控除のために申告するときも、少額の家賃所得を記載しますか。
はい。給与以外の所得が20万円以下で申告不要となる方でも、医療費控除などのために確定申告する場合は、その所得も併せて申告します。不動産所得の収入・経費も整理してください。
Q. 「自分で納付」を選べば、住民税はすべて本人納付になりますか。
給与以外の所得に係る住民税についての選択です。給与分までまとめて本人納付にするものではありません。不動産所得が赤字の場合など、分けられないこともあるため、住所地の自治体の案内と通知内容を確認します。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日
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