起業するにあたり、合同会社と株式会社のどちらが自分の事業に合うのか迷っていませんか。設立・維持費を抑えたいなら合同会社、株式による資金調達や上場を考えるなら株式会社が選択肢になります。税金の仕組みに大きな違いはなく、取引先や将来の事業計画も含めて判断することが大切です。
この記事では、両者の違いを11の観点で比較し、選ぶ基準や後から会社形態を変更する場合の費用を紹介します。
顧問税理士をお探しの方へ
会社の規模や記帳の状況をお聞きして、顧問料をお見積りします。
顧問契約のお見積り(無料)はこちら →数字で先に確かめたい方は、無料の決算診断はこちら。全国オンライン対応です。
結論:株式会社か合同会社かは「資金調達の出口・取引先・意思決定速度」で決める
会社形態の選択は「費用が安いほうを選ぶ」ではなく「将来の出口に合わせて選ぶ」が正解です。リーパル会計事務所が起業相談で必ず確認する、形態選択を分ける3つの判断軸を先に提示します。
- 資金調達の出口 — 株式発行・VC投資・上場を視野に入れるなら株式会社一択。合同会社は持分会社のため株式発行ができない
- 取引先と信用力の要請 — 大企業・官公庁・金融機関との取引が多いなら株式会社が無難。BtoCや受託メインなら合同会社でも実害が出にくい
- 意思決定の速度と自由度 — 株主総会・取締役会の制約を避けて素早く動きたいなら合同会社。社員(出資者)全員が業務執行権を持つため意思決定が早い
以下、本記事ではこの3軸を起点に、設立費用・税務・社会的信用・経営の自由度・将来の組織変更までを11の観点で具体的に比較します。
「法人格は同じでも仕組みが根本的に違う」 — 株式会社と合同会社を分ける3つの構造的差異
株式会社は「株式」を発行して資本を集め、「株主」が出資者となる会社形態です。株主と経営者(取締役)を分離できるため、外部からの資金調達や上場(IPO)に適しています。
合同会社(LLC:Limited Liability Company)は、出資者(社員)が直接経営に参加する会社形態です。2006年の会社法改正で導入された比較的新しい形態で、設立・維持コストが低く、経営の自由度が高いのが特徴です。
どちらも出資者の責任は出資額に限定される「有限責任」であり、個人事業主とは異なります。
11項目の徹底比較
比較1:設立費用
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 30,000〜50,000円 | 不要 |
| 登録免許税 | 150,000円〜 | 60,000円〜 |
| 電子定款での合計 | 約180,000円〜 | 約60,000円〜 |
設立費用は合同会社が明らかに有利です。定款の公証人認証が不要なため、認証手数料がかかりません。また登録免許税(=法人設立や登記時に納付する税金。資本金×0.7%、株式会社は最低15万円・合同会社は最低6万円)の最低額も株式会社の約40%です。
比較2:社会的信用度
一般的に株式会社のほうが社会的信用度は高いとされています。日本では株式会社が一般的な会社形態として定着しているため、取引先・金融機関・顧客からの印象が良い傾向があります。
ただし近年は合同会社の認知度も上がっており、Amazon Japan合同会社・Google合同会社・Apple Japan合同会社など大手外資系企業が合同会社を選択しているケースもあります。
比較3:資金調達
| 調達手段 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 株式発行による増資 | 可能 | 不可 |
| VC・エンジェル投資受け入れ | 可能 | 難しい |
| 金融機関からの融資 | 可能 | 可能 |
| 上場(IPO) | 可能 | 不可 |
外部投資家からの資金調達を予定しているなら、株式会社一択です。合同会社でも持分の譲渡・新規社員の参加による増資は可能ですが、VCからの投資や株式上場はできません。
比較4:意思決定・経営の仕組み
株式会社では、重要事項は原則として株主総会で決議が必要です。取締役会設置会社ではさらに取締役会決議も必要になります。複数の株主がいる場合、意思決定に時間がかかることがあります。
合同会社は、定款(=会社の基本ルールを定めた書類。商号・本店所在地・目的・資本金などを記載)で定めることで代表社員に幅広い権限を与えられます。意思決定が柔軟で迅速なため、小規模なビジネスや事業スピードを重視する場合に適しています。
比較5:決算公告の義務
株式会社は毎年決算公告(貸借対照表の公告)が義務付けられています。官報への掲載費用として年間約6万円がかかります。合同会社にはこの義務がないため、毎年のランニングコストで差が出ます。
比較6:役員の任期
株式会社の取締役には原則2年(非公開会社は最長10年)の任期があり、任期が来るたびに役員変更登記が必要です(登録免許税1万円〜)。合同会社には役員任期がないため、この手間とコストが発生しません。
比較7:利益配分の柔軟性
株式会社の配当は出資比率(持株比率)に応じて行うのが原則です。合同会社は定款で自由に利益配分の比率を定められるため、出資比率と異なる割合での配分が可能です。
比較8:税務上の取り扱い
税務上は株式会社と合同会社に大きな違いはありません。どちらも法人税・法人住民税・法人事業税の対象となります。
一方で、合同会社の業務執行社員への報酬は「役員報酬」として取り扱われ、一般の給与とは異なる税務処理が必要です。損金算入(=税務上の経費として認められること)のためには定期同額給与等のルールを守る必要があります。
比較9:設立後の維持コスト
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 決算公告費用 | 年約60,000円 | 不要 |
| 役員変更登記 | 2〜10年ごとに1万円〜 | 不要 |
| 法人住民税均等割 | 最低70,000円/年 | 最低70,000円/年 |
設立後の維持コストも合同会社のほうが低く抑えられます。
比較10:知名度・信用力の実態
「合同会社は信用されない」という声をよく聞きますが、実態はそれほど単純ではありません。個人相手のBtoCビジネスでは会社形態による差は小さく、大企業との取引や金融機関の審査では株式会社のほうが有利な傾向があります。
業種・ターゲット顧客・取引先の性質によって、信用力への影響度は変わります。
比較11:転換の可否
合同会社から株式会社への組織変更は法律上可能ですが、手続きが複雑で費用もかかります(登録免許税など数万円〜)。将来的に株式会社にする可能性があるなら、最初から株式会社で設立するほうが合理的です。
【判断のヒント】合同会社→株式会社への組織変更は約30万円のコストがかかる
「とりあえず合同会社で始めて、必要になったら株式会社に変えればいい」という説明をよく見かけますが、組織変更登記には登録免許税6万円+公告費用約5万円+専門家報酬で総額約30万円が発生します。最初の選択で迷う段階なら、後の変更コストまで織り込んで判断するのが現実的です。
リーパル会計事務所では、3年後・5年後の事業計画から逆算した形態選択のアドバイスを行い、組織変更の追加コストを発生させない設計をご提案しています。
「とりあえず合同会社で始めて後で変えればいい」は設立費用の差以上に組織変更コスト約30万円が後からかかります。株式会社と合同会社の選択は事業の将来計画を踏まえて設立時に確定させることが最もコスト効率の高い判断です。リーパル会計事務所では3年後・5年後の事業計画から逆算した形態選択のアドバイスを提供しています。
株式会社か合同会社か — あなたが選ぶべき形態を3つの問いで絞り込む
以下の条件に一つでも当てはまる場合は株式会社を推奨します。
- 将来的にVC・エンジェル投資を受けたい
- IPO(上場)を視野に入れている
- 大企業・官公庁との取引が多い業種
- 採用で会社の信頼性をアピールしたい
- 外部の株主を招き入れる可能性がある
以下の条件が当てはまる場合は合同会社も有力な選択肢です。
- 個人事業主からの法人化で、外部投資は不要
- 設立・維持費用をできる限り抑えたい
- 少人数での事業運営で意思決定をシンプルにしたい
- EC・フリーランス・コンテンツビジネスなどBtoCの小規模事業
詳しい設立手順については「会社設立の手順・流れを完全解説」をご参照ください。
【形態選択の壁打ち相談】どちらが自分の事業に合うか整理したい方へ
株式会社か合同会社かの判断は、業種・取引先・将来の資金調達計画によって最適解が変わります。「BtoB寄りだが上場までは目指さない」「VC投資は1〜2年後に検討する」のような中間的なケースは、判断軸を整理しないと結論が出ません。
リーパル会計事務所の無料相談では、事業計画と取引先構成を整理したうえで、株式会社/合同会社の比較表を1枚作成して提示します。決めきれない段階での壁打ち相談としてご活用ください。
よくある質問 — 株式会社と合同会社の選択で迷うポイント
Q. 合同会社から株式会社に変更することはできますか?
A. 可能です。ただし「組織変更」という複雑な手続きが必要で、登録免許税や専門家報酬など数十万円のコストがかかります。最初から株式会社で設立するほうが結果的にコストを抑えられることが多いです。
Q. 合同会社は税金が安くなりますか?
A. 法人税・住民税・事業税の計算方法は株式会社と同じです。利益配分の柔軟性を活かした節税は可能ですが、「合同会社のほうが税金が安い」という単純な話ではありません。
Q. 一人で起業する場合、どちらが向いていますか?
A. どちらでも一人で設立・運営できます。費用を抑えたいなら合同会社、将来の拡大・投資受け入れを考えているなら株式会社が無難です。
Q. 合同会社でも銀行融資を受けられますか?
A. 受けられます。日本政策金融公庫や民間銀行とも融資交渉は可能です。もっとも実績・財務状況・事業計画の内容が審査の中心になる点は株式会社と変わりません。
Q. Amazon・Googleが合同会社を選んでいる理由は何ですか?
A. 外資系企業が日本で子会社を設立する際、意思決定をシンプルに保つために合同会社を選ぶケースがあります。親会社が意思決定権を持ちやすい構造にできるためです。
まとめ — 3〜5年後の出口から逆算して会社形態を決める
株式会社と合同会社には設立費用・信用力・経営の柔軟性・維持コストなどで明確な違いがあります。どちらが「正解」かは事業の規模・資金調達の方針・ターゲット顧客によって異なります。
最初の設立を慎重に行うことが長期的なコスト削減と事業成長の近道です。リーパル会計事務所では、事業の状況を丁寧にヒアリングしたうえで最適な会社形態を提案しています。PwCあらた出身の公認会計士・税理士 鳥羽卓朗が在籍し、1,100社以上の関与実績から実践的なアドバイスを提供します。
設立費用の詳細については「会社設立の費用総額はいくら?株式会社・合同会社別に完全解説」もあわせてご参照ください。
つまり、株式会社か合同会社かは「現在のコスト」ではなく「3〜5年後の出口」で決めるのが正解です。資金調達・取引先・組織体制を見越して最初に正しく選べば、後から30万円超かけて組織変更する必要はなくなります。判断軸が揃わない方は、まずは事業計画を共有してください。
参考リンク:法務省 合同会社制度の概要
リーパル会計事務所の会社形態選択サポート
株式会社か合同会社かの選択は、現時点の費用だけでなく3〜5年後の事業計画まで見越した判断が必要です。リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績から蓄積した「どちらが後悔しにくいか」の判断軸をもとに、最適な形態選択をご提案しています。
- 事業計画ベースの形態比較で「将来の組織変更コスト」込みで試算
- 定款設計から登記・税務届出まで選択後の手続きを一気通貫で代行
- 設立後の税務顧問でfreee・マネーフォワードクラウドを活用した経営支援
「株式会社にしようと思うが合同会社との差が気になる」という段階の相談から歓迎しています。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
関連記事
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
会社設立・開業の後の税務を任せたい方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見
参考資料
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、会社設立から税務顧問までのワンストップ支援を専門とする。
最終更新日: 2026年10月24日