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未成工事支出金と完成工事原価|決算で工事ごとに原価を分ける方法

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未成工事支出金と完成工事原価|決算で工事ごとに原価を分ける方法

工事の材料費や外注費は入力しているのに、決算で「どの現場の分ですか」と聞かれて整理が止まることはありませんか。結論は、工事番号ごとに原価を集め、当期の売上に対応する分と、翌期以降へ繰り越す分を分けることです。

この記事は「建設業の税金と決算の連載|一人親方から、経審を受ける会社まで」の第7回です。

本稿では、完成・引渡しの時点で売上を計上する工事を前提に、工事台帳の作り方と決算整理の手順を説明します。工事の進捗に応じて収益を計上する場合は、対応する原価の扱いも変わります。まず自社が採用する売上計上の方法を確認してから読み進めてください。

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未成工事支出金と完成工事原価の違い

未成工事支出金は、まだ売上原価として費用化していない工事原価などを、資産として管理する科目です。完成工事原価は、計上した工事売上に対応する原価です。国税庁の説明では、工事中に未成工事支出金で集計した資材購入費や外注工事費などを、完成・引渡しの時点で完成工事原価へ振り替えます。

「支出金」という名前でも、支払済みの金額を単純に合計する科目ではありません。原価がどの工事に対応するかを確認することが出発点です。未成工事支出金は貸借対照表の流動資産に、完成工事原価は損益計算書の売上原価に表示されます。

比較する点 未成工事支出金 完成工事原価
基本的な役割 まだ費用化していない工事原価などの管理 計上した工事売上に対応する原価の表示
決算書上の場所 貸借対照表の流動資産 損益計算書の売上原価
引渡時に売上計上する工事での確認 期末に未引渡しの工事に対応する残高か 当期に引き渡した工事の原価がそろっているか
管理に使う資料 工事台帳、納品書、日報、外注先の施工資料など 工事台帳、引渡資料、原価の請求書など

当期売上に対応しない原価を先に費用にすると、利益の計上時期がずれます。反対に、当期売上に対応する原価を資産に残すと、その期の利益が大きくなります。残高を利益調整のために決めず、工事の実態と資料から積み上げることが大切です。

法人の決算全体での確認事項は、建設業(法人)の税務・経費・税務調査対策|工事の期ズレ・外注費を税理士が解説で扱っています。

工事番号を付け、原価を費目別に集計する

原価は材料費と外注費だけではありません

工事原価とは、その工事の施工などにかかった費用です。法人税基本通達2-2-5と所得税基本通達36・37共-4では、材料費、労務費、外注費、経費に加え、受注や引渡しのために直接要した費用も原価の範囲に含めています。領収書の科目名だけでなく、何の工事のための支出かを確認します。

国土交通省の完成工事原価報告書は、材料費・労務費・外注費・経費の区分で整理します。材料費は工事に使う資材など、労務費は直接雇用の作業員の賃金などです。外注費は工事を請け負う外部業者への支払など、経費はそれら以外の工事に関する費用です。労務提供が中心の請負を労務費に含めて表示できる扱いもあるため、許可用の区分は手引きに合わせて確認します。

台帳には資料へ戻れる情報を残します

工事台帳とは、工事ごとの売上や原価を集める明細です。会計ソフトの部門機能や表計算でも管理できます。まずは工事番号、工事名、契約内容、着工・引渡しの状況をまとめ、原価明細に同じ番号を付けます。同じ取引先の現場が複数ある場合は、取引先名だけでまとめないようにします。

  • 材料費:納品先、納品日、資材の内容、工事番号を記録する。
  • 労務費:作業日報や勤怠から、各工事への従事時間を記録する。
  • 外注費:注文内容、施工期間、施工完了や検収の資料と照合する。
  • 経費:現場用の機械賃借料、運搬費などの用途を記録する。

日付、相手先、費目、金額に加え、請求書や日報の保存場所も残すと確認しやすくなります。請求書に複数現場がまとめられているときは、内訳を確認して工事ごとに分けます。未確認分は確認待ちの一覧に置き、担当者と確認内容を記録しましょう。

ここでの費目区分と、税務上の外注費・給与の判定は別の確認事項です。一人親方の日々の記帳や経費整理は、建設業の一人親方の確定申告ガイド|経費・外注費・インボイスを税理士が解説も参考になります。

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共通費と、未払・前払の内容を整理する

共通費は、使った実態に沿って配分します

複数現場で使う機械や、現場を掛け持ちする作業員の費用は、請求書だけでは分けにくいものです。こうした共通費を、基準を使って各工事へ分けることを「配賦」といいます。まず工事に直接ひも付く費用を振り分け、残った共通費について配分方法を検討します。

社内運用の例として、共用するレンタル機械の料金は使用時間、掛け持ち作業員の賃金は従事時間を基に分ける方法が考えられます。これは一律の法定ルールではありません。費用の性質と記録から、自社の施工実態を説明できる方法を選びます。売上額だけで分けると実際の使用状況とかけ離れないか、という視点も必要です。

配分する費用の範囲、基準、元にした記録、計算結果を残しましょう。本社全体の管理費用まで一括して工事原価へ移すのではなく、工事との関係を確認します。利益の結果に合わせて期末だけ配分方法を変える運用は避け、変更が必要なら理由と影響を記録します。

支払日と請求書の日付だけで分けないようにします

決算では、未払いの原価と、先払いしただけの金額を分けて確認します。材料の納品や外注工事の履行が済んでいても、請求書がまだ届いていない場合があります。一方、前払いしていても施工が始まっていない場合があります。支払一覧だけで台帳を作ると、この違いを拾えません。

法人税基本通達2-2-1は、当期収益に対応する原価が期末までに未確定の場合、期末の状況から適正に見積もる扱いを示しています。個人事業でも、完成して引き渡した工事の原価が未確定なら、年末の状況により適正に見積もる扱いがあります。対象になる費用かを契約内容などから判断し、根拠となる数量や見積書を残します。

未使用の資材、外注先への前渡し、施工済みの未払分は、台帳上でも内容を区別しましょう。特に前渡しは、発生済みの施工原価と同じ欄へ混ぜないことが有効です。倉庫に残る資材は数量と保管場所を確認し、既に現場へ投入した分との二重集計を防ぎます。

架空の例で、期末残高と振替を確認する

次は説明のための架空の例です。引渡時に売上を計上する事業者が、甲工事と乙工事を進めています。甲工事は当期に引渡し済み、乙工事は期末に未引渡しです。金額は消費税の処理を省略した説明用の数値で、前渡金や材料貯蔵品などの別途調整はないものとします。

項目 甲工事 乙工事 合計
期首の未成工事支出金 100万円 0円 100万円
当期発生原価 300万円 200万円 500万円
当期の完成工事原価へ振替 400万円 0円 400万円
期末の未成工事支出金 0円 200万円 200万円

甲工事は、期首から繰り越した原価と当期発生分を合わせ、完成工事原価へ移します。乙工事の当期発生原価は、未成工事支出金として翌期へ繰り越します。甲工事の期首残高を集計から落とさないことがポイントです。

この例の検算は、期首100万円+当期発生500万円-期末200万円=完成工事原価400万円です。工事別に計算した結果と、全工事を合計した結果の両方を照合します。実際には、資材の返品や他現場への振替などがあれば、その増減も説明できる明細にします。

仕訳は、期中の入力方法に合わせます

この例で期中から未成工事支出金に原価を集めているなら、甲工事の引渡時の振替は「借方:完成工事原価400万円/貸方:未成工事支出金400万円」です。工事台帳でも同じ金額を減らし、残る乙工事の明細と帳簿を一致させます。

期中は材料費・外注費などへ入力し、決算時に未完成分を資産へ振り替える運用もあります。ただし、期首残高の取崩しや会計ソフトの自動振替の有無で必要な仕訳は変わります。上の仕訳を重ねて入力する前に、自社の処理方法と既存の仕訳を確認してください。

決算前に工事台帳と帳簿を照合する

決算作業は、対象工事の一覧をそろえるところから始めます。現場担当者には、期末の施工状況だけでなく、引渡しの資料、未着の外注請求、残った資材も確認してもらいます。経理側は、その情報と台帳、会計帳簿を突き合わせます。

請求書の到着後に修正した場合は、台帳と会計帳簿の双方へ反映します。合計が合わないときは、工事番号の付け忘れ、前期残高の引継ぎ、重複入力、共通費の配分漏れを順に確認すると整理しやすくなります。毎月照合しておけば、決算時の確認も進めやすくなります。

自社で確かめるチェックリスト

  • 各工事の売上計上方法と、期末の引渡し・進捗の状況を確認したか。
  • 材料費、労務費、外注費、経費を工事番号ごとに集計したか。
  • 共通費の配分に使った記録と計算根拠を残したか。
  • 請求書が未着の原価や、施工済みの未払分を確認したか。
  • 前渡しや未使用資材を区別し、二重集計を防いだか。
  • 工事別の期首・増減・期末残高が会計帳簿と一致しているか。
  • 引渡し済みの工事の原価が、理由なく資産に残っていないか。
  • 消費税の処理時期を、原価の振替とは別に確認したか。

消費税は、原価を費用化する時期と分けて確認します

仕入税額控除とは、売上に係る消費税から、仕入れなどに係る消費税を差し引く仕組みです。実際の課税仕入れ(消費税の対象となる仕入れ)に基づいて計算する場合、未成工事支出金に含まれる課税仕入れは、原則として資材の引渡しや外注先の役務提供完了の属する課税期間で控除の対象になります。

国税庁は、未成工事支出金として経理した課税仕入れを、自社が工事目的物を引き渡した課税期間に計上する処理も、継続適用を条件に認めています。ただし、単なる前払金の支払で課税仕入れの時期が決まるわけではありません。科目の振替日だけで消費税の処理を判断しないようにしましょう。

建設業許可や経営事項審査に向けた決算書の整理は、経営事項審査と決算書|建設業の決算変更届と評価が変わる科目の付け方で説明しています。まず本稿の工事別明細を整え、その数字を提出用の財務諸表へつなげてください。

まとめ

未成工事支出金と完成工事原価は、工事売上に原価を対応させるために分けて管理します。工事番号を共通にし、直接の原価と共通費を資料から集計することが出発点です。期末は引渡しや進捗、未払・前払、未使用資材を確認し、台帳の残高と会計帳簿を照合しましょう。消費税の処理時期は、完成工事原価への振替と分けて確認します。

よくある質問

Q. 一人親方でも工事ごとの原価管理は必要ですか?

所得税基本通達でも、請負収入に対応する原価の範囲が示されています。通常の所得計算で年をまたぐ工事があるなら、売上に対応する原価を分ける資料が必要になります。現金主義の特例などを適用している場合は、適用内容を確認してください。管理は、工事名と原価の明細をまとめるところから始められます。

Q. 請求書が届いていない費用は、届いた翌期に回してよいですか?

到着日だけでは決められません。当期売上に対応する工事原価なら、未確定でも適正な見積計上を検討します。注文書、施工状況、数量などから根拠を確認しましょう。契約の範囲や費用の性質を確認し、当期売上と無関係な費用を混ぜないようにします。

Q. 未成工事支出金の合計が合えば、工事別の内訳は省けますか?

内訳を残す運用を勧めます。合計だけでは、引渡し済み工事の原価が残っているか、翌期にどの金額を取り崩すかを確認しにくいためです。工事ごとに期首残高、当期の増減、期末残高をつなげ、請求書などへ戻れるようにします。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日

参考資料

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