「工事の売上は、契約したときと完成したときのどちらで計上するのか」「外注費で処理していた職人への支払いが、税務調査で給与だと指摘されないか」。建設業を法人で営む経営者から、税務についてこうした相談を多くいただきます。建設業は工事の収益計上時期や外注費の扱いなど、税務調査で必ず問われる固有の論点が多い業種です。
本記事では、建設業の法人の税務について、工事収益の計上時期、未成工事支出金と期ズレ、外注費と給与の区別、設備投資減税までを、2026年6月時点の国税庁・中小企業庁の一次情報に基づいて整理します。年度で取り扱いが変わる数値は、その旨を明記します。
建設業の税務調査で見られるところ(外注費・期ズレ・現場経費)は、建設業の税務調査|外注費・期ズレ・現場の経費で見られるところで詳しく解説しています。
建設業で工事の売上をいつ計上するか(完成・引渡しと期ズレ)は、工事の売上はいつ計上するか|完成・引渡しの基準と、期をまたぐ工事の期ズレで詳しく解説しています。
工事収益の計上時期|進行基準と完成基準
建設業で最初に押さえるべきは、工事の売上をいつ計上するかです。法人税法では、一定の大きな工事について工事進行基準(工事の進捗度に応じて売上を計上する方法)の適用を求めています。
具体的には、長期大規模工事として、工期が1年以上、請負金額が10億円以上などの要件をすべて満たす工事は、工事進行基準が強制適用されます。これに該当しない工事は、工事進行基準と工事完成基準(引渡しの時に売上を計上する方法)のいずれかを選べます。自社の工事がどちらに該当するかを確認し、社内の計上ルールを一貫させることが重要です。
未成工事支出金と期ズレに注意
建設業の税務調査で最も多く問われるのが、売上と原価の計上時期(期ズレ)です。完成基準を採用している場合、完成・引渡しが済んだ工事の売上を翌期に繰り延べていないか、逆に完成前の工事の原価を当期の費用にしていないかが焦点になります。
完成前に投じた材料費・労務費・外注費は、未成工事支出金(棚卸資産)として資産に計上し、対応する売上を計上する時期まで費用にしません。これにより原価の期ズレを防ぎます。あわせて、完成前に受け取った代金は未成工事受入金(前受金)として処理します。これらの計上時期のズレは、利益操作とみなされやすいため、工事ごとに収支を管理することが欠かせません。
期ズレや外注費の区分など、建設業で問われる論点への備えは、法人の税務調査対策の一部にすぎません。事前に用意すべき書類から調査当日の受け答えまでの全体像は、法人の税務調査対策|事前準備・当日の対応で体系的に確認できます。
外注費と給与の区別|源泉・消費税のダブル否認リスク
建設業のもう一つの最重要論点が、職人への支払いが外注費か給与かという区別です。判定は契約書の名称ではなく実態で行われ、次のような要素を総合的に勘案します。
- 他人が代替して業務を遂行できるか
- 作業時間が指定されるなど時間的な拘束を受けるか
- 作業の内容・方法について指揮監督を受けるか
- 完成物が不可抗力で滅失した場合に、既に行った分の報酬を請求できるか
- 材料や道具が供与されているか
この区別が重要なのは、外注費として処理していた支払いが税務調査で給与と認定されると、二重の追徴が生じるためです。一つは、給与であれば必要だった源泉所得税の徴収漏れ。もう一つは、外注費として行っていた消費税の仕入税額控除の否認です。常用(人工)での支払いが多い建設業では、この「ダブル否認」が典型的な指摘事項になります。請負契約書を整え、代替性や自前の道具といった事実を残しておくことが、追徴の防止につながります。個人の一人親方側の論点は、建設業の一人親方の確定申告ガイドもあわせてご参照ください。
外注費が給与と認定されたり、売上の期ズレを指摘されたりして修正が生じると、本税に加えて加算税・延滞税といった追徴課税が上乗せされます。実際にどの程度の負担になるのかは、追徴課税はいくらになる?計算方法と加算税・延滞税の種類で計算方法を確認できます。
設備投資減税・消費税の事業区分
建設業は機械や車両への投資が多く、設備投資減税を活用できる場面があります。中小企業投資促進税制では、一定の機械装置(1台160万円以上)などを取得した場合に、取得価額の30%の特別償却か7%の税額控除(税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等が対象)を選べます。適用期限は令和7年度税制改正で令和9年(2027年)3月31日まで延長されています。設備投資減税の詳細は、中小企業投資促進税制とは?特別償却・税額控除の違いと活用方法で解説しています。
消費税で簡易課税を選ぶ場合、建設業は工事の内容によって事業区分が分かれます。
| 工事の形態 | 事業区分 | みなし仕入率 |
|---|---|---|
| 材料を自分で調達して施工 | 第3種事業 | 70% |
| 元請から材料の支給を受け労務(手間)のみ提供 | 第4種事業 | 60% |
区分を誤ると過大控除として否認されることがあるため、取引の実態に応じた区分が必要です。なお、これらの控除率・適用期限はいずれも改正で変わる可能性があるため、適用にあたっては最新年度の情報を確認してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 工事の売上は契約時と完成時のどちらで計上しますか?
A. 長期大規模工事(工期1年以上・請負金額10億円以上などをすべて満たす工事)は工事進行基準が強制されます。それ以外の工事は、進行基準か完成基準のいずれかを選べます。一度決めた計上基準は継続して適用することが重要です。
Q2. 未成工事支出金とは何ですか?
A. 完成前の工事に投じた材料費・労務費・外注費を、対応する売上を計上する時期まで資産として計上しておくための勘定です。これにより、原価だけが先に費用化されて利益が圧縮される「期ズレ」を防ぎます。
Q3. 外注費が給与と認定されると、どうなりますか?
A. 源泉所得税の徴収漏れとして遡って徴収され、不納付加算税や延滞税が加わります。さらに、外注費として行っていた消費税の仕入税額控除も否認され、消費税の追徴につながります。実態が雇用に近い支払いは、この二重の追徴に注意が必要です。
Q4. 税務調査で建設業はどこを見られますか?
A. 最も多いのは売上・原価の計上時期(期ズレ)です。完成・引渡し済みの工事の売上が翌期に繰り延べられていないか、未成工事支出金が適切に計上されているかが重点的に確認されます。外注費と給与の区別も頻出の論点です。
Q5. 機械を購入したら税金は安くなりますか?
A. 中小企業投資促進税制の対象になる機械装置(1台160万円以上)などであれば、取得価額の30%の特別償却か7%の税額控除を選べます。適用期限や対象設備は年度で変わるため、購入前に最新の要件を確認することをおすすめします。
参考資料
- 国税庁:法人税基本通達 第4節 工事の請負に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例
- 国税庁:大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて
- 国税庁:No.6509 簡易課税制度の事業区分
- 中小企業庁:中小企業投資促進税制
建設業の法人の税務は、工事収益の計上時期、未成工事支出金、外注費と給与の区別という、税務調査で必ず問われる論点が中心です。これらは、工事ごとの収支管理と契約・実態の整備を進めておけば、過度に恐れる必要はありません。
リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績と税務調査対応の知見をもとに、freee・マネーフォワードクラウドでの工事台帳・未成工事支出金の管理から、外注費の整理、設備投資減税の活用までをサポートしています。建設業の税務に不安のある経営者の方は、お気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、建設業をはじめとする中小企業の法人税・税務調査対応を専門とする。
最終更新日: 2026年6月29日
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