「うちの会社の実効税率って結局いくらなの?」——資金繰り表や事業計画を作る場面で、この問いに即答できる経営者は意外と多くありません。表面税率の15%・23.2%は誰もが知っていても、法人住民税・法人事業税・特別法人事業税まで含めた「実効税率」を正確に押さえている企業は限られます。
さらに2026年は、税負担の前提が2つ動いた年です。令和7年4月1日以後に開始する事業年度から、所得が年10億円を超える事業年度は年800万円以下の部分の税率が15%ではなく17%になりました。そして令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から、防衛特別法人税(税率4%)の申告が始まっています。本記事では、これらを織り込んだうえで、法人税率・地方税率を階層別に整理し、中小企業の実効税率の計算式を国税庁・財務省・総務省の一次情報で組み立て直します。
法人税の基本税率(2026年)
普通法人の法人税率
国税庁のタックスアンサーNo.5759にもとづく、令和7年4月1日以後に開始する事業年度の税率は次のとおりです。
| 法人の区分 | 課税所得 | 税率 |
|---|---|---|
| 資本金1億円超の普通法人 | 全所得 | 23.2% |
| 資本金1億円以下の中小法人 | 年800万円以下の部分 | 15%(軽減税率) |
| 資本金1億円以下の中小法人で所得が年10億円超の事業年度 | 年800万円以下の部分 | 17% |
| 適用除外事業者に該当する法人 | 年800万円以下の部分 | 19%(本則税率) |
| 資本金1億円以下の中小法人 | 年800万円超の部分 | 23.2% |
ここで押さえておくべきは、15%という数字が租税特別措置法にもとづく時限的な軽減税率であり、本則税率は19%だという点です(措法42の3の2)。財務省の令和7年度税制改正の解説によると、この特例の適用期限は令和9年3月31日までに開始する各事業年度まで2年延長されました。
2026年からの新しい分岐——15%か17%か
令和7年度税制改正で新設されたのが、この17%区分です。財務省の解説では「所得の金額が年10億円を超える事業年度について、その事業年度の所得の金額のうち年800万円以下の金額に適用される税率が17%(改正前:15%)とされました」と記されています。適用は令和7年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税からです。
実務上のポイントは3つあります。
- 判定は「資本金」ではなくその事業年度の所得金額が年10億円を超えるかで行う
- 事業年度が1年に満たない場合、「年10億円」は 10億円 ÷ 12 × その事業年度の月数 で月割りする
- 17%が適用されるのは年800万円以下の部分のみ。年800万円超の部分は従来どおり23.2%
所得10億円という水準は多くの中小企業には届きませんが、資本金1億円以下のまま高収益を上げている企業では現実的な論点になります。「資本金1億円以下だから15%」という理解のままだと、税負担見込みを16万円(800万円 × 2%)分だけ低く見積もることになります。
適用除外事業者は本則19%——資本金だけで判定しない
もう一つの落とし穴が適用除外事業者です。これに該当すると、軽減税率の適用が停止され、年800万円以下の部分にも本則税率19%が適用されます。
財務省の解説によると、適用除外事業者とは、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度(基準年度)の所得の金額の合計額を各基準年度の月数の合計数で除し、これに12を乗じて計算した金額が15億円を超える法人です(設立後3年を経過していない場合や、基準年度において合併・分割等があった場合は調整が入ります)。
つまり「資本金1億円以下」という形式要件を満たしていても、直前3年の所得の年平均が15億円を超えていれば軽減税率は使えません。資本金の額だけで判定すると誤ります。
軽減税率が適用されない法人
資本金1億円以下でも、次に該当する法人は対象から除かれます(国税庁タックスアンサーNo.5759注1)。
- 相互会社および外国相互会社
- 大法人(資本金または出資金の額が5億円以上の法人、相互会社・外国相互会社、受託法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人
- 完全支配関係があるすべての大法人が有する株式・出資の全部を、そのうちいずれか一の法人が有するものとみなした場合に完全支配関係が生じる普通法人
- 投資法人
- 特定目的会社
- 受託法人
グループ会社として親会社が大法人の場合、子会社の資本金が小さくても軽減税率が使えないケースがあります。また令和7年度税制改正で、この制度の対象法人から通算法人が除外されました。グループ通算制度を採用している場合は、軽減税率を前提にした計画を見直す必要があります。
2026年4月からの新負担——防衛特別法人税
税率4%・基礎控除年500万円
2026年の法人税負担を語るうえで外せないのが防衛特別法人税です。令和7年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」により防確法が改正され、この税が創設されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 納税義務者 | 各事業年度の所得に対する法人税を課される法人 |
| 課税標準 | 課税標準法人税額(基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額) |
| 税率 | 4% |
| 適用開始 | 令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から |
| 申告 | 防衛特別法人税確定申告書の提出が必要。税額が0であっても申告は必要 |
| 中間申告 | 令和9年4月1日以後に開始する事業年度から提出が必要 |
ポイントは、基礎控除が年500万円の法人税額ベースであるという点です。法人税額が年500万円を超えなければ課税額は生じません。法人税額500万円は、課税所得ベースでおおむね2,000万円台以上の水準に対応するため、多くの中小企業では実際の納税額は発生しない設計になっています。
ただし、税額が0でも申告書の提出は必要です。ここが実務でもっとも影響が大きい部分で、2026年4月1日以後開始事業年度からは、これまで法人税・地方税の申告だけで済んでいた法人にも申告事務が1本増えます。国税庁は、e-Taxでの受付開始時期やリリース前の別表のイメージデータ提出について案内を出しています。
法人税に加算される税金
法人住民税
法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2種類で構成されます。
法人税割:法人税額に一定の税率を乗じます。
- 都道府県民税:法人税額 × 1.0%(標準税率)
- 市区町村民税:法人税額 × 6.0%(標準税率。東京23区は都が一括して課税)
均等割:法人の資本金等の額・従業者数に応じて定額が課されます(年額7万円〜数百万円)。利益の有無にかかわらず課される最低限の税金です。
法人事業税・特別法人事業税
法人事業税は所得に対して課される地方税です。総務省が示す資本金1億円以下の普通法人の標準税率は次のとおりです。
| 課税所得(資本金1億円以下の普通法人) | 法人事業税 所得割(標準税率) |
|---|---|
| 年400万円以下の金額 | 3.5% |
| 年400万円超〜年800万円以下の金額 | 5.3% |
| 年800万円超の金額 | 7.0% |
これに加えて特別法人事業税(国税)が上乗せされます。資本金1億円以下の普通法人の場合、法人事業税の所得割額に37%を乗じた額が特別法人事業税になります。所得割7.0%の帯であれば、7.0% × 37% = 約2.6%相当が上乗せされる計算です。
重要な点:法人事業税・特別法人事業税は、原則として申告により納付すべきことが確定した事業年度(=通常は翌期)の損金に算入されます。つまり当期に発生した事業税は翌期の課税所得を減らす効果があります。実効税率の計算式でこの効果を織り込むのは、この性質があるためです。
実効税率を「約30〜34%」と捉えるか、小数第2位まで把握しているかで、月次の利益管理の精度はまったく変わります。月商規模・利益水準・所在地(道府県・市町村による超過税率の違い)まで含めて、自社固有の実効税率を一度算出しておくと、四半期ごとの資金繰り見直しの土台になります。リーパル会計事務所の月次サービスでは、年初に自社用の実効税率カードを作成し、毎月の利益見込みに即時で適用しています。
実効税率の計算
実効税率とは、課税所得に対して実際に負担する税金の比率です。法人税・法人住民税・法人事業税(特別法人事業税を含む)をすべて合算して計算します。
実効税率の計算式(概算)
厳密な実効税率は以下の考え方で算出できますが、地方税率は都道府県・市区町村によって異なるため、概算として理解してください。
実効税率 = (法人税率 + 法人税率 × 住民税率 + 事業税率)÷(1 + 事業税率)
分母の「1 + 事業税率」で割るのが、事業税が翌期の損金になる効果を反映した部分です。ここでいう事業税率には、特別法人事業税の上乗せ分も含めて考えます。
中小企業の実効税率(概算)
| 課税所得の帯 | 概算実効税率 |
|---|---|
| 800万円以下(軽減税率15%適用部分) | 約21〜23% |
| 800万円超 | 約33〜34% |
この「800万円の壁」は節税設計において非常に重要です。課税所得が800万円を大きく超えると税負担が約33〜34%に上がるため、各種の適法な節税策で課税所得を調整する中小企業が多く見られます。なお上記は標準税率ベースの概算であり、東京都のように超過税率を採用している自治体では上振れします。東京都の中小法人で課税所得800万円超の場合、概算実効税率は約34%程度です。
法人税率と節税の関係:800万円の壁を意識した設計
課税所得800万円の壁を意識する
中小企業の法人税実効税率は、課税所得800万円を境に大きく変わります。800万円以下では約21〜23%、800万円超では約33〜34%——この差は10ポイント以上です。
「今期の課税所得が1,200万円になりそうだ」という場合、800万円超の400万円部分には33%前後が適用されます。この400万円を適法な節税手法(経営セーフティ共済・少額減価償却・決算賞与等)で圧縮できれば、実効税率差の分だけ手元資金が増えます。
| 課税所得 | 実効税率(概算) | 税負担額の目安 |
|---|---|---|
| 600万円 | 約22% | 約132万円 |
| 800万円 | 約22〜23% | 約176〜184万円 |
| 1,000万円 | 約22〜23%と33%が混在 | 約244万円前後 |
| 1,500万円 | 約22〜33%が混在 | 約410万円前後 |
上記は標準税率ベースの概算です。自治体の超過税率、法人住民税の均等割、そして2026年4月1日以後開始事業年度からの防衛特別法人税を加味すると、実際の負担はこれより上振れします。
利益水準別の節税優先度
課税所得が800万円以下の法人:800万円の軽減税率枠内に収まっているため、急いで節税対策をする緊急度は低めです。ただし事業成長とともに800万円超になるケースに備え、経営セーフティ共済・小規模企業共済への加入は早めに検討する価値があります。
課税所得が800万円超の法人:33%超の実効税率が適用される帯が存在するため、積極的な節税対策が有効です。役員退職金・経営セーフティ共済の前納・設備投資による特別償却等を組み合わせます。
所得が年10億円に近づいている法人:軽減税率が15%から17%に切り替わる分岐に加え、防衛特別法人税の負担も本格化します。所得水準そのものが税率構造を変える帯に入るため、単年度の節税だけでなく資本政策まで含めた検討が必要です。
詳しい節税手法については中小企業が使える法人税の節税対策15選をあわせてご覧ください。また、決算前の節税タイミングについては決算直前でもできる法人の節税対策10選も参考にしてください。防衛特別法人税の詳細は防衛特別法人税はいつから?対象企業と影響額で解説しています。
法人税負担を正確に把握するための実務ポイント
中間申告・中間納付
法人税は決算後の確定申告のほか、事業年度が6か月を超える法人は中間申告・中間納付が必要です。前期の法人税額をベースに概算で中間納付を行い、確定申告時に精算します。前期の年間法人税額が20万円以下の法人は中間申告が不要です。
防衛特別法人税についても、令和9年4月1日以後に開始する事業年度からは中間申告書の提出が必要になります。2026年4月1日以後開始事業年度は確定申告のみですが、翌年度からは中間納付の資金も見込んでおく必要があります。
試算表による事前シミュレーション
決算時に慌てないよう、期中から税引前利益を把握し、課税所得の見込みを試算することが重要です。税率を理解するだけでは資金繰りは安定しません。重要なのは「自社の実効税率 × 今期の利益見込み」を毎月最新化することです。試算表をクラウド会計でリアルタイムに見られる体制が整っていれば、決算月の3か月前には税負担見込みが±10%の精度で見えるようになります。リーパル会計事務所では、freee・マネーフォワードクラウドのデータと連動した税負担シミュレーションを月次でご提供しています。
その他の動向
外形標準課税
資本金1億円超の大法人を対象とする外形標準課税(付加価値割・資本割)については、減資による対象外し行為への対応を含む見直しが進められています。中小企業に直接影響する変更は限られますが、グループ企業の場合は親会社・子会社の関係で留意が必要です。
グローバルミニマム課税(GloBE)
多国籍企業を対象とした最低税率15%のグローバルミニマム課税(GloBE)が日本でも適用されています。対象は連結総収入金額が7.5億ユーロ以上の大規模グループであり、一般的な中小企業には直接影響しません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人税率15%と23.2%のどちらが適用されるか、どう判断しますか?
A. 資本金1億円以下の中小法人であれば、年間の課税所得のうち800万円以下の部分に15%、800万円超の部分に23.2%が適用されます。課税所得が800万円を超える場合は2段階の税率が混在します。ただし所得が年10億円を超える事業年度は800万円以下の部分が17%、適用除外事業者に該当する場合は本則の19%になります。
Q2. 資本金1億円以下なら必ず15%ですか?
A. いいえ。(1)所得が年10億円を超える事業年度は17%、(2)直前3年の所得の年平均額が15億円を超える適用除外事業者は19%、(3)資本金5億円以上の大法人の完全支配下にある法人・投資法人・特定目的会社・相互会社等は軽減税率の対象外、(4)通算法人は令和7年度改正で対象から除外されました。資本金の額だけでは判定できません。
Q3. 防衛特別法人税は中小企業も納めるのですか?
A. 課税標準は基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額なので、法人税額が年500万円以下であれば納付する税額は生じません。ただし、税額が0であっても防衛特別法人税確定申告書の提出は必要です。令和8年(2026年)4月1日以後に開始する事業年度から対象になります。
Q4. 設立初年度から軽減税率は適用されますか?
A. 原則として適用されます。ただし事業年度が12か月に満たない場合、800万円の基準は月割り計算(800万円 × 月数 ÷ 12)となります。所得10億円で17%に切り替わる基準も同様に月割りされます。
Q5. 赤字(欠損)の場合、法人税はゼロになりますか?
A. 課税所得がゼロ以下であれば法人税・法人事業税はゼロですが、法人住民税の均等割(年額7万円〜)は課されます。また、欠損金は青色申告法人であれば翌期以降10年間繰り越して将来の課税所得から控除できます。なお防衛特別法人税も、税額が生じない場合でも申告書の提出は必要です。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。法人税率は毎年の税制改正で細部が変わります。2026年は15%と17%の分岐、そして防衛特別法人税という新しい申告義務が加わりました。表面税率だけを追っていても、地方税の超過税率や各種特例が絡みあい、自社の実効税率は思ったより動きます。リーパル会計事務所では、改正情報を翌期計画に反映した税負担シミュレーションをご提供し、利益管理と納税計画を一体運用するスタイルでサポートしています。実効税率の算出と資金繰り反映に課題を感じている経営者の方は、お気軽にお声がけください。
関連記事
参考資料
- 国税庁 タックスアンサー No.5759 法人税の税率
- 財務省 令和7年度税制改正の解説(租税特別措置法等(法人税関係)の改正)
- e-Tax 防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項について
- 国税庁 防衛特別法人税に関する納付手続等について
- 総務省 地方税制度 法人事業税
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、中小企業の法人節税・税務調査対応を専門とする。
最終更新日: 2026年8月28日
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