「去年は過去最高の利益だった。なのに、通帳の残高はむしろ減っている」。
利益が出た会社の社長から、とてもよく聞く話です。理由の多くは、税金が利益が出たときではなく、決算日の翌日から2か月以内と、その期の途中(中間申告)にまとめて出ていくことにあります。中間申告は追加の税金ではなく前払いですが、資金繰りの上では「税金を2回払った」ように見えます。
この記事では、架空の会社を使って、1年の中で税金のお金がいつ出ていくのかを順番に並べます。
※登場する会社・人物は説明のための架空の例です。
登場人物:過去最高益の翌年に慌てた山田社長
山田社長の会社は、3月決算・創業5年目。前期は売上が大きく伸び、過去最高の利益が出ました。経理は社員の佐藤さんが担当しています。
5月の終わりに確定申告の納税を済ませ、「これで今年の税金は終わり」と思っていた山田社長。ところが8月末に消費税の中間申告の納付があり、さらに秋になって、佐藤さんから「11月末に、法人税と消費税の中間申告の納付があります」と言われます。
「え、また払うの? 去年の分はもう払ったよね?」
山田社長の疑問に答えるために、今日のポイントを3つに絞ります。
- 法人は、決算日の翌日から2か月以内に、申告と納付がまとめて来る
- 利益が出た翌期は、期の途中で「前払い(中間申告)」が来る
- 消費税は、前期の税額が大きいほど前払いの回数が増える
ポイント1:決算日の翌日から2か月以内に、申告と納付がまとめて来る
法人は、事業年度の終了の日(決算日)の翌日から2か月以内に確定申告書を提出し、同じ期限までに税金を納めます。消費税も、課税期間の終了の日の翌日から2か月以内に申告・納付します。
3月決算の山田社長の会社なら、5月末ごろが目安です(期限の日が土日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限になります)。
「申告期限の延長」をしていても、納付は2か月以内が基本
定時株主総会の関係で、法人税の申告期限を延ばす「申告期限の延長の特例」を受けている会社もあります。ただし、延長を受けて、延長された期間に納める法人税がある場合には、その期間について利子税がかかります。そのため実務では、延長を受けていても、決算日の翌日から2か月以内に見込みの税額を納めるのが原則になります。
つまり、決算が終わってから納税までの準備期間は、思っているより短いということです。
ポイント2:利益が出た翌期は、期の途中で「前払い」が来る
山田社長が驚いたのが、この中間申告です。
法人税は、事業年度が6か月を超える会社の場合、事業年度開始の日から6か月を経過した日から2か月以内に中間申告をします。前期の実績で計算する方法(予定申告)では、税額は次のとおりです。
| 計算のしかた(予定申告) | 前期が12か月の場合 |
|---|---|
| 前期の確定法人税額 × 6 ÷ 前期の月数 | 前期の確定法人税額の半分 |
たとえば、前期の確定法人税額が300万円だった会社なら、中間申告で納めるのはその半分の150万円です。この金額が10万円以下なら、中間申告は不要です。
山田社長の会社は3月決算なので、4月から9月までの6か月が経過したあと、11月末ごろが中間申告の期限の目安になります。
中間申告は「追加の税金」ではなく「前払い」
ここが大事なところです。中間申告で納めた税金は、その期の確定申告で精算されます。期末に計算した年間の税額から中間で納めた分を差し引き、払い過ぎていれば還付されます。
ですから、税金の総額が増えるわけではありません。ただ、お金が出ていくタイミングが前に寄るので、資金繰りの上では重く感じます。特に「前期だけ利益が大きかった」会社では、今期の業績に比べて前払いの額が大きくなりがちです。
今期の業績が大きく落ちているときは
前期の実績で計算する予定申告のほかに、今期の最初の6か月を1つの事業年度とみなして計算する「仮決算による中間申告」という方法もあります。前期より業績が大きく落ちている場合に検討されることがありますが、原則として、予定申告の税額が10万円以下で中間申告が不要な場合や、仮決算で計算した税額が予定申告の税額を超える場合には使えません。決算と同じ手間もかかるので、使うかどうかは会社ごとの数字を見て判断することになります。
ポイント3:消費税は、前期の税額が大きいほど前払いの回数が増える
消費税にも中間申告があります。法人税と違うのは、前期の消費税額によって回数が変わることです。
| 直前の課税期間の確定消費税額 (地方消費税を含まない) |
中間申告の回数 | 1回あたりの目安 |
|---|---|---|
| 48万円以下 | 原則不要(任意の中間申告制度あり) | ― |
| 48万円超 400万円以下 | 年1回 | 前期の税額 × 6/12 |
| 400万円超 4,800万円以下 | 年3回 | 前期の税額 × 3/12 |
| 4,800万円超 | 年11回 | 前期の税額 × 1/12 |
この区分は国税分の消費税額で判定します。申告書や納付書の合計額(地方消費税込み)で見ると区分を読み違えるので注意してください(納付するときは地方消費税もあわせて納めます)。また、表の計算は直前の課税期間が12か月の場合で、12か月に満たない場合は計算方法が異なります。消費税にも仮決算による中間申告がありますが、計算結果がマイナスでも中間申告で還付を受けることはできず、期限後に仮決算の中間申告書を出すこともできません。
消費税は、売上と一緒にお客様から預かって入ってくるお金です。通帳の上では自分の会社のお金と区別がつかないため、つい運転資金に回してしまいがちです。年3回・年11回の会社では、このズレが毎回のように効いてきます。
山田社長の会社の1年を並べてみる
3月決算で、前期に法人税の中間申告が必要になる程度の利益が出ていて、消費税の中間申告が年3回になる会社を例に、税金のお金が出ていく月を並べると次のようになります。
| 時期(目安) | 出ていくお金 |
|---|---|
| 5月末ごろ | 前期の確定申告分(法人税・地方税・消費税) |
| 8月末ごろ | 消費税の中間申告(1回目) |
| 11月末ごろ | 法人税・地方税の中間申告 + 消費税の中間申告(2回目) |
| 2月末ごろ | 消費税の中間申告(3回目) |
| 翌5月末ごろ | 今期の確定申告分(中間で納めた分を差し引いた残り) |
※期限の日が土日・祝日に当たる場合は翌日になります。実際の期限は会社の決算日や届出の状況で変わります。
こうして並べると、山田社長の「また払うの?」の正体が見えてきます。利益が出た翌年は、確定申告の納税と、その年の前払いが同じ1年の中に重なるのです。
慌てないために、社長が今からできること
1. 決算の2〜3か月前に「着地見込み」を出す
決算が終わってから税額を知るのでは、準備期間は2か月しかありません。決算の2〜3か月前に、今期の利益と税額の見込みを一度出しておくと、5月の納税にも、その後の中間申告にも備えられます。月次の数字を見る習慣がある会社ほど、この見込みは正確になります。
2. 消費税は「預かっているお金」として取り分けておく
売上が入るたびに、消費税相当分を別の口座へ移しておくやり方があります。通帳の残高がそのまま「使えるお金」に見える状態をなくすだけで、中間申告の月に慌てることが減ります。
3. 1年の納税カレンダーを先に作る
上の表のように、自分の会社の決算日から、確定申告・中間申告の月を先に書き出しておきましょう。資金繰り表に税金の行を入れておくと、残高が足りなくなる月が事前に分かります。
4. 期限に間に合わないときは、放置しない
納付が期限に遅れると、遅れた日数に応じて延滞税が自動的にかかります。日数で計算されるので、遅れてしまった分は早く納めるほど少なくて済みます。どうしても資金が足りない場合は、放置せずに早めに税理士や税務署に相談してください。
まとめ:税金は「決算の2か月後」と「その期の途中」に出ていく
今日の話を1文にすると、こうなります。
税金は、利益が出たその時ではなく、決算日の翌日から2か月以内と、その期の途中の中間申告で出ていく。
- 法人は、決算日の翌日から2か月以内に申告・納付する(延長の特例を受けて延長期間に納める法人税には、利子税がかかる)
- 法人税の中間申告は、前期の確定法人税額の半分が目安(10万円以下なら不要)
- 消費税の中間申告は、前期の税額(国税分)によって年1回・3回・11回と増える
- どれも前払いなので総額は増えないが、資金繰りの上では重なって見える
あなたの会社の次の納税は、何月に、どのくらいの金額になりそうでしょうか。すぐに答えが出ない場合は、まず今期の着地見込みを出すところから始めてみてください。決算書の数字から会社の状態を確かめたい法人の方は、決算書の診断ツールもご利用いただけます。
関連記事:赤字でも法人税はかかる?法人住民税・均等割の仕組み/経営者のための決算書の読み方
よくある質問
Q. 中間申告で納めた税金は、余分に取られたものですか?
いいえ。中間申告は年間の税額の一部を前払いする仕組みで、その期の確定申告で精算されます。払い過ぎていれば還付されます。
Q. 前期が赤字だった場合も、法人税の中間申告は必要ですか?
前期の実績で計算した中間分の法人税額が10万円以下であれば、中間申告は不要です。前期が赤字で確定法人税額が無い場合は、この計算による税額も出ません。ただし、消費税の中間申告は前期の消費税額で別に判定されるので、税目ごとに確認してください。
Q. 申告期限の延長の特例を受けていれば、納付も3か月後でよいですか?
申告期限は延びますが、延長された期間に納める法人税には利子税がかかります。そのため実務では、決算日の翌日から2か月以内に見込みの税額を納めるのが原則です。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月10日
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