税務調査の最後に、調査担当者から「申告に誤りがあったので修正申告をしてください」と勧められることがあります。この修正申告の勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断で、応じない場合は、税務署長が調査結果に基づいて更正という処分をします。どちらになるかで、その後に結果を争う手続が変わります。
修正申告は自分で出す申告なので、後から誤りに気付いても不服申立てはできず、更正の請求という手続で見直しを求めます。更正は税務署長の処分なので、再調査の請求か審査請求で、処分の取消しや変更を求めることができます。
この記事では、法人・個人に共通する国税通則法の手続に沿って、調査が終わるときの3つの形、修正申告の勧奨に応じる場合と応じない場合の違い、更正の請求、再調査の請求と審査請求の期限と流れ、不服申立て中の納付の扱いを整理します。調査の途中での受け答えは「税務調査の質問にどう答える?」で扱っています。
税務調査の終わり方は3つある
調査を終えるときの手続は、国税通則法74条の11に定められています(国税通則法74条の11(e-Gov法令検索))。結果は大きく3つに分かれます。
| 調査の結果 | 税務署の手続 | 納税者の次の手続 |
|---|---|---|
| 申告に誤りがないと認められた(実地の調査) | その時点で更正決定等をすべきと認められない旨を書面で通知 | 手続は不要 |
| 誤りがあると認められた | 調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額とその理由)を説明し、修正申告または期限後申告を勧奨 | 修正申告をするかどうかを選ぶ |
| 勧奨に応じなかった | 調査結果に基づいて更正などの処分 | 処分に不服があれば、再調査の請求か審査請求 |
誤りがあると認められた場合、調査担当者は、更正決定等をすべきと認めた額とその理由を含めて、調査結果の内容を説明します(同条2項)。国税庁の税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)では、説明は原則として口頭で行い、納税者からの要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはないとしています。説明の場では、指摘された項目ごとの金額と理由を書き留め、分からない点はその場で質問しておくと、修正申告をするか、更正を受けて争うかを考える材料になります。
修正申告を勧奨する場合、調査担当者は、修正申告をすると不服申立てはできないが更正の請求はできることを説明し、その旨を記載した書面を交付しなければなりません(同条3項)。税務代理人がいる場合は、納税者の同意があれば、これらの説明や書面の交付を税務代理人に対して行うことができます(同条4項)。
修正申告の勧奨に応じるかどうかは任意
FAQでは、修正申告の勧奨に応じるかどうかは、あくまでも納税者の任意の判断であり、応じない場合は調査結果に基づき更正等の処分を行うとしています。そのうえで、勧奨に応じなかったからといって、修正申告に応じた場合と比べて不利な取扱いを受けることは基本的にはないと説明しています。
過少申告加算税(国税通則法65条)の割合も、調査を受けた後の修正申告と、更正を受けた場合とで同じです。所得税の例では、国税庁が次のように案内しています(国税庁タックスアンサーNo.2026「確定申告を間違えたとき」)。
| 修正申告・更正の時期 | 過少申告加算税 |
|---|---|
| 調査の事前通知の前に自主的に修正申告 | かからない |
| 事前通知の後、調査による更正を予知する前に修正申告 | 新たに納める税金の5%(当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%) |
| 調査を受けた後に修正申告、または更正を受けた | 新たに納める税金の10%(同じく超える部分は15%) |
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来するものについては、調査で帳簿の提示や提出を求められて応じなかった場合などに、さらに5%または10%が加算されます。加算税と延滞税の全体は「税務調査の追徴課税とは?」で扱っています。
修正申告と更正で違いが出るのは、納付の期限と、その後に内容を争う手続です。
| 項目 | 修正申告をした場合 | 更正を受けた場合 |
|---|---|---|
| 新たに納める税金の納期限 | 修正申告書を提出した日 | 更正通知書を発した日から1か月後の日 |
| 理由の示され方 | 調査結果の説明(原則として口頭) | 処分の理由が附記される |
| 内容に不服があるとき | 更正の請求 | 再調査の請求または審査請求 |
延滞税は、どちらの場合も原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかります。ただし、期限内に申告していて、法定申告期限から1年を経過した後に修正申告や更正があった場合は、その1年を経過する日の翌日から修正申告書を出した日(更正は更正通知書を発した日)までの期間は計算に含めません(偽りその他不正の行為により税を免れた場合などを除く。国税通則法61条1項)。納期限の翌日から2か月を経過する日までは低い割合(令和8年中は年2.8%)、それ以後は高い割合(同じく年9.1%)で、修正申告と更正とでは、割合が切り替わる基準になる納期限の日が上の表のとおり異なります。
FAQでは、理由附記の対象は申請に対する拒否処分や不利益処分の全体で、白色申告者に対する増額更正や加算税の賦課決定にも理由が附記されるとしています。指摘の内容がすべて事実と法令に照らして正しいと考える場合は修正申告で是正する形になり、指摘に納得できない点がある場合は、勧奨に応じずに更正を受け、その処分を不服申立てで争う形になります。どちらになるかは、争点の内容と手元の証拠で変わります。
修正申告をした後に誤りに気付いたとき(更正の請求)
修正申告は納税者が自分で出す申告で、税務署長の処分ではありません。そのため、調査結果の説明に納得して修正申告をした後に、その内容に誤りがあると考えても、不服申立てという手段はとれません。この場合に使うのが更正の請求です。
- 期限:原則として法定申告期限から5年以内(国税通則法23条1項。法人税の純損失等の金額に関するものは10年)
- 書類:正しいと考える税額や請求の理由など法令で定められた事項を記載した「更正の請求書」と、請求の理由の基礎となる「事実を証明する書類」を提出
- その後:税務署長が調査し、減額の更正をするか、更正をすべき理由がない旨を通知(同条4項)
更正の請求に対して一部だけを認める更正や、更正をすべき理由がない旨の通知は、国税不服審判所が不服申立ての対象となる処分に挙げているものです。加算税の賦課決定も、同じく不服申立ての対象となる処分に挙げられています。修正申告書の書き方や提出の流れは「修正申告のやり方」で扱っています。
更正を受けた後の再調査の請求と審査請求
更正などの処分に不服がある場合は、処分をした税務署長などに対する「再調査の請求」と、国税不服審判所長に対する「審査請求」のどちらかを選んで申し立てます(国税通則法75条1項)。審査請求は、再調査の請求を経ずに直接することもできます(国税不服審判所「不服申立手続等」)。
| 項目 | 再調査の請求 | 審査請求 |
|---|---|---|
| 申し立てる先 | 処分をした税務署長など | 国税不服審判所長 |
| 期限 | 処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内 | 同じく3か月以内。再調査の請求の決定を経た場合は、再調査決定書謄本の送達があった日の翌日から1か月以内 |
| その後 | 決定になお不服があれば審査請求へ。請求をした日の翌日から3か月を経過しても決定がなければ、決定を経ずに審査請求ができる | 裁決になお不服があれば、裁決があったことを知った日の翌日から6か月以内に裁判所へ訴えを提起できる |
いずれの申立ても、処分があった日の翌日から1年を経過するとできません(同法77条3項)。どの期限も、正当な理由があるときは例外になります。また、税務署長がした処分でも、通知書に国税局の職員の調査に基づくものである旨の記載がある場合は、再調査の請求先は国税局長になります。
国税不服審判所は、審査請求書が届いてから裁決までに通常要する標準的な期間を1年と定めています。審査請求では手数料などを納める必要はなく、証拠書類等の写しを請求する場合に原則1枚10円の手数料がかかります。審査請求人は、原処分庁の答弁書に対する反論書や、自らの主張を裏付ける証拠書類等を提出することができます。
不服申立てをしても納付は止まらない
不服申立ては、その目的となった処分の効力、処分の執行や手続の続行を妨げません(国税通則法105条1項)。更正を受けた税額の納期限は来るので、納付しないままでいると、延滞税は納付する日までの日数に応じてかかります。
一方で、差し押さえた財産の換価は、財産の価額が著しく減少するおそれがある場合などを除き、不服申立てについての決定や裁決があるまでできません(同項ただし書)。また、再調査審理庁などは、必要があると認める場合、申立てや職権で、処分に係る国税の徴収を猶予したり、滞納処分の続行を停止したりすることができます(同条2項)。国税庁の手続案内では、再調査の請求人が徴収の猶予等を申請できる時期は、再調査決定の時までとされています。
申し立てるかどうかを決める前に確かめること
更正を受けて争うか、修正申告をして後から更正の請求をするかを考える前に、次の点を整理しておきます。
- 指摘の内容と金額:どの取引をいくら、どの理由で誤りとしているか。更正を受けた場合は、附記された理由。
- 争点の種類:事実の認定(取引があったか、いつの取引か)の争いか、法令の解釈(経費に当たるか、どの年分に計上するか)の争いか。
- 証拠:審査請求では主張を裏付ける証拠書類等を提出できるので、契約書・請求書・やり取りの記録など、手元にある書類。
- 期限:処分の通知を受けた日の翌日から3か月。修正申告の後の更正の請求は、原則として法定申告期限から5年。
- 納付:争う場合でも納期限は来る。徴収の猶予を求める手続がある。
税理士法2条は、税理士の業務である税務代理に、国税不服審判所を含む税務官公署に対する不服申立ての代理と、調査や処分に関する主張・陳述の代理を含めています。FAQでは、税務代理人の同席の下で調査結果の内容を説明することも可能とされています。
まとめ:修正申告か更正かで、後から争う手続が変わる
- 調査で誤りがあると認められると、額と理由を含む調査結果の内容が説明され、修正申告を勧奨されることがある。
- 勧奨に応じるかどうかは任意で、応じなければ更正を受ける。過少申告加算税の割合は同じ。
- 修正申告をすると不服申立てはできず、見直しは更正の請求(原則として法定申告期限から5年以内)で求める。
- 更正には、再調査の請求か審査請求(通知を受けた日の翌日から3か月以内)で不服を申し立てられる。
- 不服申立てをしても納付は止まらない。徴収の猶予を求める手続がある。
どの手続になるかは指摘の内容と手元の証拠で変わるので、調査結果の説明を受けた段階で、項目ごとの金額と理由を整理してください。
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よくある質問
Q. 修正申告の勧奨を断ると、不利な扱いを受けますか?
国税庁のFAQでは、勧奨に応じるかどうかは納税者の任意の判断で、応じなかったからといって修正申告に応じた場合と比べて不利な取扱いを受けることは基本的にはないとしています。応じない場合は、調査結果に基づいて更正などの処分が行われます。過少申告加算税の割合も、調査後の修正申告と更正とで同じです。
Q. 調査結果の説明を書面でもらうことはできますか?
FAQでは、調査結果の説明は原則として口頭で行い、要望に応じて調査結果の内容を記載した書面を交付することはないとしています。実地の調査で誤りがないと認められた場合は、その旨が書面で通知されます。修正申告を勧奨される場合は、不服申立てができないことなどを記載した書面が交付されます。
Q. 再調査の請求をした後に、審査請求もできますか?
再調査の請求についての決定になお不服がある場合は、再調査決定書謄本の送達があった日の翌日から1か月以内に審査請求ができます。再調査の請求をした日の翌日から3か月を経過しても決定がない場合も、決定を経ずに審査請求ができ、その場合、再調査の請求は取り下げられたものとみなされます。
Q. 税務署の「再調査」と「再調査の請求」は同じものですか?
別のものです。FAQでは、再調査は、調査が終わった後に新たに得られた情報に照らして誤りがあると認めるときに行われる質問検査等で、処分の見直しを求める事後救済手続の「再調査の請求」とは異なると説明しています。同じ税目・期間について再調査が行われる場合でも、その理由は説明されません。
Q. 不服申立てをしている間は、税金を納めなくてよいですか?
不服申立ては処分の効力や執行を妨げないので、納期限は来ます。納付しないままでいると延滞税がかかります。必要があると認められる場合は、申立てにより徴収の猶予や滞納処分の続行の停止を受けられることがあります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月22日
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