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経理担当者が退職するときの引継ぎ項目|経理を外注へ切り替える手順

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経理担当者が退職するときの引継ぎ項目|経理を外注へ切り替える手順
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経理担当者の退職が決まったら、最終出社日から逆算して「口座とIDの権限」「未処理の取引」「期限のある税務・労務の手続き」「保存書類の置き場所」の4つを引き継ぎます。後任がいない場合や外注へ切り替える場合も、この4つを社内の誰か(多くは経営者)が一度受け取ってから外注先へ渡す、という順番は変わりません。

この記事では、退職決定から最終出社日までの段取り、引継ぎ項目の一覧、退職者のIDを止める順番、経理を外注へ切り替える手順を、法人の経理を前提に表とチェックリストで整理します。外注そのものの向き不向きは経理アウトソーシングのメリット・デメリットで扱っています。

退職が決まってから最終出社日までの段取り

引継ぎで時間がかかるのは、資料を作る作業より「退職者の頭の中にしかない手順」を書き出す作業です。退職が決まった直後に、次の順番で日程を組みます。

時期 やること 担当
退職決定の直後 引継ぎ先(社内の後任・経営者・外注先)を決める。最終出社日までの期限一覧を作る 経営者
引継ぎ期間の前半 業務の棚卸し(毎月・毎年・不定期の作業を書き出す)、IDと権限の一覧づくり 退職者
引継ぎ期間の後半 未処理の取引の整理、1か月分の締めを引継ぎ先と一緒に行う 退職者と引継ぎ先
最終出社日の前 権限の付け替え、パスワードの変更、保存書類の置き場所の確認 経営者
退職後 退職者のアカウントの停止、初めての月次・給与・納付を引継ぎ先だけで回す 引継ぎ先

外注へ切り替える場合は、外注先との契約と着手日を引継ぎ期間の前半に決めておくと、後半の「一緒に締める」作業に外注先も加われます。退職後に外注先を探し始めると、退職者に質問できない状態で資料を読み解くことになります。

引継ぎ項目の一覧:口座・ID・未処理・届出・保存書類

次の表は、法人の経理担当者が持っていることの多い項目です。自社に当てはまらない行は消し、当てはまる行には「どこにあるか」「誰に移すか」を書き込んで使います。

区分 項目 引継ぎで確かめること
口座・決済 預金口座、インターネットバンキング、法人カード、小口現金 ログインID・管理者権限・ワンタイムパスワードの端末を誰が持つか。振込の承認者は誰か
税務のID e-Taxの利用者識別番号と暗証番号、eLTAXの利用者ID、電子証明書 番号と暗証番号を会社として把握しているか。誰の端末で送信しているか
ソフト 会計ソフト、給与ソフト、経費精算、請求書発行の仕組み 管理者権限の付け替え、退職者のユーザーの停止日
未処理の取引 未記帳の明細、未払・未収、仮払金・立替金、未発行の請求書 最終出社日時点の残高と、その内訳の一覧
期限のある手続き 源泉所得税・住民税・社会保険料の納付、申告、法定調書、年末調整 次の期限と、その準備がどこまで進んでいるか
届出の控え 青色申告の承認、源泉所得税の納期の特例、消費税の各種届出、申告期限の延長の特例など 提出した控えの保管場所と、効いている届出の一覧
保存書類 帳簿、請求書・領収書、契約書、決算書・申告書の控え、電子で受け取った書類のデータ 紙とデータの保管場所、ファイル名の付け方
取引先との約束 支払サイト、振込手数料の負担、毎月の定額払い、口座振替の一覧 例外的な支払の有無

帳簿と書類の保存期間は、法人の場合、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間です。青色申告書を出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間になります(国税庁『タックスアンサーNo.5930 帳簿書類等の保存期間』)。退職者が個人のフォルダやメールに置いていた書類も、会社の保管場所へ移してからアカウントを止めます。

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期限の近い手続きを先に洗い出す

引継ぎの途中で期限を落とすと、延滞税などの負担につながる場合があります。最終出社日から3か月先までに来る期限を、次の表のように並べておきます。

手続き(法人) 期限 引継ぎで確かめること
源泉所得税の納付 原則、給与などを支払った月の翌月10日まで。納期の特例の承認を受けていれば1月から6月分は7月10日、7月から12月分は翌年1月20日 納期の特例を受けているか、納付の方法
法人税の確定申告 各事業年度終了の日の翌日から2か月以内(延長の特例を受けている場合を除く) 決算の準備状況、顧問税理士との連絡
消費税の確定申告(課税事業者) 課税期間の終了の日から2か月以内(消費税申告期限延長届出書を出している場合を除く) 適用している計算方法の届出
社会保険料の納付 納入告知書で通知された額を月末まで 口座振替かどうか
住民税(特別徴収)の納入 市区町村の通知書で確認 給与からの控除額の変更通知の受取先
年末調整・法定調書 年末調整は年の最後の給与の支払時、源泉徴収票の交付は翌年1月31日まで 回収済みの申告書と、外注の有無
退職者の源泉徴収票の交付 年の中途で退職した人(退職する経理担当者本人を含む)には、退職の日以後1か月以内 退職者本人の分を誰が作って交付するか

源泉所得税の納付期限は国税庁『タックスアンサーNo.2505』、法人税の申告期限は法人税法74条に定めがあります。決算月の前後に退職が重なる場合は、決算の資料がどこまでそろっているかを最優先で確認してください。

退職者のIDを止める順番

アカウントは「止める前に、会社側に権限を移す」が原則です。先に止めてしまうと、管理者がいなくなって設定を変えられない、e-Taxにログインできない、といった事態が起きます。

  1. 経営者または後任に、各サービスの管理者権限を付ける(会計ソフト・給与ソフト・インターネットバンキング・経費精算)。
  2. e-Taxの利用者識別番号と暗証番号、eLTAXの利用者IDを会社として控え、暗証番号を変更する。
  3. 共有していたパスワードを変更する(共通のメールアドレス、クラウドストレージなど)。
  4. 口座振替や引落しの通知先のメールアドレスが退職者個人になっていないか確かめ、会社のアドレスに変える。
  5. 最終出社日の後に、退職者のユーザーを停止する。データは削除せず、閲覧できる状態で残す。

e-Taxの利用者識別番号や暗証番号が分からなくなった場合、新しく利用者識別番号を取得し直すと、それまでの「メッセージボックス」などの内容は引き継がれません。国税庁のe-Taxホームページは、現在の利用者識別番号や暗証番号が分からない場合は「変更等届出」の手続きを行うよう案内しています(国税庁『e-Tax ご利用の流れ』)。退職前に番号を控えておけば、この手間は避けられます。

経理を外注へ切り替える手順

外注へ切り替える場合は、引継ぎ項目を外注先が受け取れる形にする工程が加わります。順番は次のとおりです。

手順 内容 決めておくこと
1. 範囲を決める 記帳、給与計算、支払の準備、請求書の発行、申告のどこまでを外に出すか 社内に残す作業(支払の承認・現金の管理など)
2. 依頼先の資格を確かめる 申告書の作成・提出の代理、税務相談まで頼むなら税理士(税理士法2条・52条)。社会保険の届出の代行は社会保険労務士 どの資格者が関与するか
3. 資料の流れを決める 通帳・カード明細・請求書・領収書を、いつ・どの方法で外注先へ渡すか 締切日と、受け渡しの手段
4. 権限を渡す 会計ソフトへの招待、明細の連携、閲覧権限の付与 外注先に付ける権限の範囲(閲覧だけか、入力もか)
5. 書面を整える 税理士に申告を頼む場合は、税理士が税務代理権限証書を税務署に提出する(税理士法30条)。e-Taxの代理送信の設定 電子申告の名義と送信者
6. 並走する 退職者・外注先・社内の担当で1か月分を一緒に締める 並走する月と、質問の窓口
7. 初月を締める 外注先だけで締め、試算表を受け取る 月次の報告の時期と形式

手順2は見落とされやすい点です。税理士法は、税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士の業務とし、税理士又は税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じています。記帳だけを頼む先と、申告まで頼む先が分かれる場合は、資料の受け渡しが二重にならないように流れを決めます。e-Taxの利用者識別番号は、関与税理士に開始届出書を代理送信してもらって取得することもできます。

外注先に見積りを頼むときは、月の取引量(通帳の明細行数・請求書の枚数)、口座とカードの数、給与を払う人数、決算月、資料の状態(未処理がどれだけ残っているか)を伝えると、見積りの条件がそろいます。そろえる資料は顧問税理士に見積りを頼む前にそろえておく資料も参考にしてください。

引継ぎが間に合わなかったときの優先順位

急な退職で引継ぎ期間が取れない場合は、次の順番で手を付けます。帳簿の空白は後から埋められますが、期限を過ぎた納付や申告は取り戻せないためです。

  1. 直近の納付期限(源泉所得税・社会保険料・住民税)と支払予定(給与・取引先への支払)を確定させる。
  2. インターネットバンキングと会計ソフトの管理者権限を会社側に戻す。
  3. 申告期限が近い場合は、顧問税理士または依頼予定の税理士に状況を伝える。
  4. 通帳・カード明細を最終記帳日の翌日から取り直し、未記帳の期間を特定する。
  5. 請求書・領収書を月ごとに集め、欠けている月を一覧にする。

4と5は、記帳が数か月たまった状態からの立て直しと同じ作業になります。外注先に頼む場合は、未記帳の期間と、明細や証憑がそろっているかを最初に伝えてください。

まとめ:引継ぎは「権限・未処理・期限・保存」の4つで漏れを防ぐ

  • 退職が決まったら、最終出社日から逆算して引継ぎ先と期限一覧を先に決める。
  • 口座・ソフト・e-Taxの権限は、止める前に会社側へ移す。e-Taxの利用者識別番号と暗証番号は会社として控える。
  • 源泉所得税は原則翌月10日まで、法人税の確定申告は事業年度終了の日の翌日から2か月以内。近い期限から洗い出す。
  • 帳簿と書類の保存は、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金の生じた事業年度などは10年間)。
  • 外注へ切り替えるなら、範囲・依頼先の資格・資料の流れ・権限・書面を決めてから、1か月の並走で締める。

引継ぎの一覧は、外注先が変わるときや次の担当者を迎えるときにもそのまま使えます。

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よくある質問

Q. 退職者のパソコンや会計ソフトのデータは、すぐに消してよいですか?

消す前に、会社の保管場所へ移してください。法人は帳簿と書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)保存しなければなりません。ユーザーは停止しても、データは閲覧できる状態で残すのが安全です。

Q. e-Taxの暗証番号を退職者しか知らない場合はどうなりますか?

国税庁のe-Taxホームページは、利用者識別番号や暗証番号が分からない場合は「変更等届出」の手続きを案内しています。新しく番号を取り直すと、それまでのメッセージボックスの内容は引き継がれません。退職前に番号を控え、暗証番号を変更しておくと手続きが要りません。

Q. 引継ぎの間だけ、退職者に業務委託で手伝ってもらうことはできますか?

記帳や資料の整理を手伝ってもらうこと自体は、契約の内容次第です。ただし、申告書の作成や税務相談は税理士の業務とされているため、退職者が税理士でない場合は、その範囲を頼むことはできません。委託する作業の範囲を書面で決めておいてください。

Q. 外注先が決まるまでの間、経営者が自分で入力しておくべきですか?

入力よりも、通帳・カード明細・請求書・領収書を月ごとにそろえておくことを優先してください。外注先が決まれば、そろった資料から入力を始められます。納付と支払の期限だけは、外注先が決まる前でも経営者が管理する必要があります。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月21日

参考資料

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