期の途中からでも税理士と契約できます。ただし、法人税は事業年度ごと、個人の所得税は1月1日から12月31日までの1年ごとに計算するので、申告の対象になる期の初め(期首)までさかのぼって帳簿を整える必要があります。さかのぼる範囲と作業量は、期首からどこまで記帳が済んでいるかと、前期の決算が確定しているかで決まります。
この記事では、期中に契約するときにさかのぼる範囲の決め方、期首の残高を確定させるための資料、契約までに期限が来ている税金の手続、準備するもののチェックリストを、法人と個人事業主に分けて整理します。契約する時期そのものの考え方は税理士と顧問契約を結ぶタイミングで扱っています。
期中に契約しても、申告は期の全体が対象になる
法人税法22条1項は、内国法人の各事業年度の所得の金額を、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額としています。個人の所得税について、国税庁『No.2070 青色申告制度』は、1年間(1月1日から12月31日までの間)に生じた所得金額を正しく計算し申告するためには、日々の取引を帳簿に記帳することが必要だと説明しています。
つまり、期の途中で契約しても、申告書に載るのは期首からの1年分の取引です。契約より前の取引も、帳簿に正しく記録されている必要があります。
| 区分 | 申告の対象になる期間 | 期首の残高の根拠 | 確定申告の期限 |
|---|---|---|---|
| 法人 | 事業年度 | 前期末の確定した貸借対照表 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 |
| 個人事業主 | 1月1日から12月31日まで | 前年末の貸借対照表(青色申告で作成している場合) | 令和8年分の所得税は令和9年3月15日(月) |
期限は、国税庁『申告と納税』に載っています。期の後半に契約するほど、さかのぼる記帳と決算の準備を短い期間で進めることになります。
さかのぼる範囲の決め方:記帳の状態で4つに分かれる
さかのぼる範囲は、期首から契約時点までの記帳がどこまで済んでいるかで変わります。
| 状況 | さかのぼる範囲 | 主に必要なもの |
|---|---|---|
| 期首から会計ソフトに入力済み | 入力済みの内容を期首から確認し、誤りを直す | 会計ソフトのデータ、通帳・カード明細、請求書・領収書 |
| 前の税理士が途中まで記帳していた | 前の税理士の記帳分を引き継ぎ、その後を記帳する | 前の税理士からの会計データ、前期の決算書・申告書 |
| 期首から記帳していない | 期首から契約時点まで全部を記帳する | 期首からの通帳・カード明細、請求書・領収書、給与の資料 |
| 前期の申告もまだ終わっていない | 前期の期首から記帳し、前期の決算・申告を先に済ませる | 前期分も含めた上記の資料一式 |
「期首から入力済み」の場合でも、新しい税理士は期首の残高と入力の内容を確かめます。入力が済んでいることと、申告に使える状態であることは別なので、確認の範囲と作業量を見積りの段階で聞いておきます。
前期の申告が終わっていない場合
前期の決算・申告が済んでいないと、当期の期首の残高が確定しません。この場合は前期から順に片付けることになり、期限を過ぎている場合は期限後の申告になります。国税庁の『申告と納税』は、申告期限を過ぎてから申告すると加算税や延滞税が課される場合があるとしています。
期首の残高を確定させる資料
さかのぼる記帳の出発点は、期首の残高です。前期末の貸借対照表の数字と、当期の帳簿の期首の数字が一致していないと、その後の記帳をすべて正しく入れても決算が合いません。次の資料で確定させます。
- 前期の決算書・申告書の控え:前期末の貸借対照表、損益計算書、法人税・消費税の申告書(法人)、確定申告書と青色申告決算書(個人)
- 勘定科目の内訳の分かる資料:売掛金・買掛金・借入金などの相手先ごとの残高
- 固定資産の台帳:取得日・取得価額・前期までの償却額
- 繰り越している欠損金の額(法人):前期の申告書に記載された金額
- 前期末の預金残高の証明になるもの:期末日時点の通帳の残高など
前の税理士から引き継ぐ場合は、会計データと決算書・申告書の控えを受け取る段取りを、解約の手続とあわせて決めておきます。変更の手続の流れは税理士の変更手続きと注意点で扱っています。
契約までに期限が来ている税金の手続を確かめる
期の途中には、確定申告とは別に期限が来る手続があります。契約の時点で、すでに期限が過ぎているもの、これから来るものを確かめます。
| 手続 | 対象 | 期限・要件 |
|---|---|---|
| 法人税の中間申告 | 法人(事業年度が6か月を超える普通法人。設立後最初の事業年度などを除く) | 事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内。前事業年度の法人税額を基に計算した金額が10万円以下の場合などは不要 |
| 消費税の中間申告 | 法人・個人の課税事業者 | 直前の課税期間の消費税の年税額(地方消費税を除く)が48万円を超える場合に必要 |
| 所得税の予定納税 | 個人事業主 | 5月15日現在で確定している前年分の所得金額や税額などを基に計算した予定納税基準額が15万円以上の場合。第1期分は7月1日〜7月31日、第2期分は11月1日〜11月30日に納付 |
| 源泉所得税の納付 | 給与などを支払っている法人・個人 | 原則、所得を支払った月の翌月10日。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている場合、給与・退職金と税理士等の一定の報酬から源泉徴収した分は1〜6月分が7月10日、7〜12月分が翌年1月20日(それ以外の報酬・料金は翌月10日) |
中間申告や源泉所得税の納付が漏れていた場合は、新しい税理士と、どの手続をいつ済ませるかを最初に決めます。税務署から届いた通知や納付書があれば、まとめて渡します。
さかのぼる記帳で確認に時間がかかるもの
さかのぼる記帳では、通帳やカード明細だけでは中身が分からない取引の確認に時間がかかります。次のような取引は、資料やメモを先に用意しておくと、確認の往復を減らせます。
- 現金での支払い:通帳に出てこないので、領収書やレシートが記録の手がかりになります。
- 使い道が明細から分からない振込や引き出し:相手先や内容をメモで補います。
- 事業用と私用が混ざった支払い(個人事業主):同じ口座やカードで私用の支払いもしている場合は、どれが事業用かを区別します。
- 会社と役員の間のお金の出入り(法人):役員が立て替えた経費や、会社から役員への支払いは、内容を説明できる資料を用意します。
- 売上の入金と請求書の対応:入金額と請求額が違う場合(振込手数料の差引きなど)は、どの請求書の入金かを確かめます。
準備するもののチェックリスト
期中の契約では、最初の打合せまでに次のものをそろえておくと、さかのぼる範囲と作業量の見積りが具体的になります。
| 資料 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|
| 前期の決算書・申告書の控え | 決算書、法人税・消費税の申告書 | 確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書 |
| 期首からの取引の記録 | 事業用の全口座の通帳・明細、法人カードの明細 | 事業用の口座の通帳・明細、事業で使うカードの明細 |
| 請求書・領収書 | 売上・仕入・経費の請求書と領収書 | 同左 |
| 会計データ | 会計ソフトのデータ(入力している場合) | 同左 |
| 給与の資料 | 給与台帳、源泉所得税の納付の控え | 従業員や家族に給与を払っている場合は同左 |
| 届出書の控え | 青色申告の承認、消費税の届出、源泉所得税の納期の特例の承認など | 同左 |
| 税務署からの通知 | 中間申告の案内、納付書など | 予定納税の通知など |
そろわない資料があっても、何が欠けているかが分かれば、さかのぼる範囲と再発行の手配を相談できます。見積りを頼む前の準備は顧問税理士に見積りを頼む前にも参考になります。
まとめ:期首までさかのぼり、期首の残高と期中の手続を先に固める
- 期の途中から契約しても、法人は事業年度、個人は1月1日から12月31日までの全体が申告の対象です。
- さかのぼる範囲は、期首からの記帳の状態と、前期の申告が終わっているかで決まります。
- 期首の残高は、前期の決算書・申告書、内訳の資料、固定資産の台帳で確定させます。
- 法人税・消費税の中間申告、予定納税、源泉所得税の納付など、期中に期限が来る手続を確かめます。
- 通帳・カード明細・請求書・領収書・会計データ・届出書の控えを最初の打合せまでにそろえます。
契約が期の後半になるほど、さかのぼる記帳と決算の準備が重なります。資料の状態を早めに伝えると、作業の順番を決めやすくなります。
顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 期の途中から契約すると、契約前の月の記帳も頼む必要がありますか?
申告は期の全体が対象なので、契約前の月の記帳も申告に使える状態になっている必要があります。自社で入力済みなら確認と修正、未入力なら記帳そのものを、誰が行うかを契約時に決めます。
Q. 個人事業主が年の途中から依頼する場合、いつからの資料が要りますか?
所得税は1月1日から12月31日までの1年分を申告するので、その年の1月1日からの通帳・カード明細・請求書・領収書が要ります。青色申告で貸借対照表を作っている場合は、前年末の貸借対照表も出発点になります。
Q. 決算月の直前に契約しても間に合いますか?
法人の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内なので、決算月の直前の契約でも、資料がそろっていれば対応できることがあります。記帳の状態と期限を最初の問い合わせで伝え、引き受けられるかを確かめてください。
Q. 期首の残高が前期の決算書と合わないときは、どうなりますか?
当期の帳簿の期首の数字は、前期末の確定した貸借対照表に合わせるのが出発点です。合わない原因が会計ソフトへの入力にあるのか、前期の決算書そのものにあるのかを、新しい税理士と確かめます。前期の申告に誤りがあった場合は、直す手続も別に検討します。
Q. 期の途中で税理士を替えると、前の税理士の作業分はどうなりますか?
前の税理士が記帳していた分は、会計データと資料を受け取って新しい税理士が引き継ぎます。どの月まで記帳済みか、決算に向けた調整がどこまで済んでいるかを、受け渡しの際に一覧にしておくと二重の作業を防げます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月22日
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