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大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説

確定申告
大家・不動産オーナーの確定申告と節税|不動産所得・減価償却・青色申告を税理士が解説

「家賃収入の確定申告で、何を経費にできるのか分からない」「相続でアパートを引き継いだが、申告をどうすればいいのか」。賃貸物件をお持ちの大家・不動産オーナーの方から、確定申告と節税についてこうした相談を多くいただきます。不動産所得は、減価償却や修繕費の扱い、青色申告の使い方しだいで納税額が大きく変わる、工夫の余地が大きい所得です。

本記事では、大家・不動産オーナーの不動産所得の確定申告について、必要経費と減価償却の考え方、修繕費と資本的支出の区分、事業的規模(5棟10室)と青色申告特別控除、そして損益通算の注意点までを、2026年6月時点の国税庁の一次情報に基づいて整理します。年度で取り扱いが変わる論点は、その旨を明記します。

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不動産所得の計算と損益通算

不動産所得の金額は、次の式で計算します。

不動産所得の金額 = 総収入金額 − 必要経費

総収入金額には、毎月の家賃のほか、礼金・更新料・名義書換料や、敷金・保証金のうち返還を要しない部分、共益費などが含まれます。この所得が赤字になった場合、原則として給与所得など他の黒字の所得と損益通算(赤字と黒字を相殺)できます。

土地取得の借入金利子は損益通算が制限される

ここで必ず押さえておきたいのが、損益通算の制限です。不動産所得が赤字のとき、その損失のうち「土地等を取得するために要した借入金の利子に相当する部分」は、損益通算の対象になりません。建物分の利子は対象外(=通算可能)です。1本のローンで土地と建物を同時に取得した場合は、原則として借入金をまず建物の取得に充てたものとして扱い、土地分の利子を計算します。この取扱いは納税者に有利に働きますが、計算を誤ると申告に影響するため注意が必要です。

「赤字なら全部ほかの所得と相殺できる」と誤解している方が多い論点なので、土地の借入れがある場合はとくに気をつけてください。

必要経費と減価償却

不動産所得の必要経費には、固定資産税(都市計画税を含む)、損害保険料(火災・地震保険の当年分)、減価償却費、修繕費のほか、管理委託料、借入金利子、仲介手数料、入居者募集の広告費、税理士報酬などがあります。このうち節税の鍵を握るのが、減価償却費です。

この管理委託料を、ご自身やご家族が設立した法人へ支払う形にして所得を分散させる方法もあります。ただし料率の設定だけで判断すると否認されるおそれがあるため、進める前に不動産管理会社の設立と節税で3つの方式の違いと否認リスクをご確認ください。

建物は定額法で減価償却します。法定耐用年数は構造によって決まっています。

構造 住宅用の法定耐用年数
鉄筋コンクリート造(RC) 47年
重量鉄骨造(骨格材肉厚4mm超) 34年
木造 22年
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm以下) 19年

中古物件を取得した場合は、法定耐用年数ではなく簡便法で耐用年数を計算でき、減価償却を早めることができます。

  • 法定耐用年数を全部経過している場合:法定耐用年数 × 20%
  • 法定耐用年数を一部経過している場合:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%

計算した年数の1年未満の端数は切り捨て、2年未満になる場合は2年とします。たとえば築25年の木造(法定耐用年数22年・全部経過)であれば、22年 × 20% = 4.4年 → 4年で償却できます。減価償却の取りこぼしは、そのまま納めすぎにつながるため、構造と取得時期に応じた正しい計算が欠かせません。

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修繕費と資本的支出の区分

物件の修理やリフォームにかかった費用は、その年の必要経費になる「修繕費」と、資産として計上し減価償却していく「資本的支出」のどちらかに分かれます。この区分は税務調査でもよく問われるため、判定基準を押さえておきましょう。

次のいずれかにあてはまれば、修繕費として処理できます。

判定 基準
金額が小さい 一つの修理・改良等の金額が20万円未満
周期が短い おおむね3年以内の周期で行う修理・改良等
区分が不明な場合① その金額が60万円未満
区分が不明な場合② その金額が、その資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下

原状回復のための修理は修繕費、物件の価値を高めたり使用可能期間を延ばしたりする部分は資本的支出、というのが基本的な考え方です。大規模修繕やリフォームでは両者が混在することが多いため、工事の内容を区分して根拠を残しておくことが大切です。

事業的規模(5棟10室)と青色申告特別控除

不動産の貸付けが「事業的規模」にあたるかどうかで、受けられる税務上のメリットが大きく変わります。判定の目安は、独立した部屋がおおむね10室以上、独立家屋(戸建て)はおおむね5棟以上という「5棟10室基準」です。

事業的規模に該当すると、次のようなメリットを受けられます。

  • 青色申告特別控除が最高65万円(または55万円)になる(事業的規模でない業務的規模の場合は最高10万円)
  • 青色事業専従者給与を経費にできる(生計を一にする親族へ支払う給与)
  • 資産損失(建物の取壊し・除却等)を全額その年の必要経費にできる

65万円の青色申告特別控除を受けるには、複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書の添付、期限内申告に加えて、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存のいずれかが必要です。規模が5棟10室に満たない業務的規模の場合は、青色申告でも控除は最高10万円にとどまります。事業的規模化は、大家の節税を考えるうえで重要な分岐点です。青色申告の要件は、青色申告のメリット7選|白色申告との違いと65万円控除を受ける条件もあわせてご参照ください。

なお、家賃収入のうち居住用住宅の貸付けは消費税が非課税ですが、店舗や事務所など事業用の貸付けは課税対象です。店舗併設の物件では、住宅部分と店舗部分を合理的に区分する必要があります。令和7年分(2025年分)の所得税の確定申告期間は、2026年2月16日(月)から3月16日(月)までです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 家賃収入はいくらから確定申告が必要ですか?

A. 家賃収入から必要経費を引いた不動産所得が、所得控除の合計額を上回る場合に、原則として確定申告が必要です。給与所得者で不動産所得などの合計が20万円以下の場合は申告不要となる例外もありますが、住民税の申告は別途必要になることがあります。所得控除の金額は年度で変わるため、最新年度の数値を確認してください。

Q2. 中古物件は減価償却を早くできると聞きました。本当ですか?

A. はい。中古物件は簡便法で耐用年数を計算でき、新築より短い期間で償却できます。法定耐用年数を全部経過していれば「法定耐用年数 × 20%」、一部経過していれば「(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%」で計算します。早期に多くの減価償却費を計上できるため、節税効果が高まります。

Q3. リフォーム費用はその年の経費にできますか?

A. 内容によります。一つの工事が20万円未満、またはおおむね3年以内の周期で行う修理であれば修繕費として全額その年の経費にできます。区分が不明な場合でも、60万円未満、または前年末の取得価額のおおむね10%以下であれば修繕費にできます。物件の価値を高める部分は資本的支出として減価償却します。

Q4. 5棟10室に届かないと青色申告はできませんか?

A. 青色申告自体は規模に関わらずできますが、青色申告特別控除の金額が変わります。5棟10室の事業的規模であれば最高65万円(要件を満たす場合)、業務的規模であれば最高10万円です。専従者給与や資産損失の全額計上も、事業的規模であることが前提となります。

Q5. 不動産所得が赤字なら、給与の税金は全部取り戻せますか?

A. 必ずしも全額ではありません。不動産所得の赤字は原則として給与所得などと損益通算できますが、赤字のうち土地等を取得するための借入金利子に相当する部分は損益通算の対象外です。土地の借入れがある場合は、通算できる金額が制限される点に注意してください。

参考資料

大家・不動産オーナーの確定申告は、減価償却・修繕費・事業的規模という3つの論点をどう設計するかで、納税額が大きく変わります。とくに減価償却の取りこぼしや、修繕費と資本的支出の誤った区分は、納めすぎや税務調査での指摘につながりやすいポイントです。

リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績と税務調査対応の知見をもとに、中古物件の耐用年数の最適化や土地建物の価格按分、事業的規模化や資産管理会社(法人化)の検討まで、不動産オーナーの状況に合わせてサポートしています。freee・マネーフォワードクラウドの固定資産台帳を活用すれば、減価償却の計上漏れも防げます。不動産所得の申告に不安のある方は、お気軽にご相談ください。

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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、不動産オーナーの確定申告・節税・税務調査対応を専門とする。

最終更新日: 2026年9月15日

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