年末調整を外部に頼んでも、会社の手を離れる作業は一部です。従業員へ申告書を配って回収し、記載の漏れを確かめ、12月の給与で還付や徴収を反映し、源泉徴収票を本人に渡すまでは、給与を支払う会社が動きます。外注先が受け持つのは、給与と税額の集計、年税額の計算、源泉徴収票や給与支払報告書の作成・提出といった「計算と帳票」の部分が中心です。
この記事では、令和8年分の年末調整を外注する前提で、会社と外注先の分担、従業員から集める書類、2026年10月から2027年1月までの日程を表にまとめます。令和8年分から変わる1月の提出(源泉徴収票のみなし提出)も扱います。
書類の一覧そのものは年末調整の必要書類一覧、令和8年分の控除額の改正は令和8年分の年末調整の変更点で扱っています。ここでは「誰が・いつ・何をするか」に絞ります。
年末調整の責任は会社に残る:外注で任せられる範囲
国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』は、年末調整を、1年間の給与総額が確定する年末に納めるべき税額を計算し、それまでに源泉徴収した税額との過不足を精算する手続と説明しています。源泉徴収をして国に納めるのは給与の支払者です。作業を外に出しても、誰に年末調整をするか、いつ精算するか、いつ納めるかの責任は会社に残ります。
分担は、次の表のように「会社にしかない情報を出す側」と「計算と帳票を作る側」に分けると決めやすくなります。
| 作業 | 会社がすること | 外注先に任せやすいこと | 分担を決めるときの注意 |
|---|---|---|---|
| 対象者の確定 | 在籍者・入退社日・他社からの給与の有無を伝える | 年末調整の対象かどうかの判定 | 入退社の連絡が遅れると計算がずれる |
| 申告書の配付・回収 | 従業員への配付、回収、提出の催促 | 様式と記載例の用意、回収方法の設計 | 紙か電子かを10月中に決める |
| 申告書の内容確認 | 記入漏れ・証明書の添付漏れの一次確認 | 控除額の検算、記載誤りの指摘 | 従業員の質問を誰が受けるか |
| 給与・税額の集計 | 1月から12月までの給与・賞与と源泉徴収税額のデータを渡す | 集計、年税額の計算 | 12月の給与・賞与の確定日 |
| 過不足額の精算 | 給与で還付・徴収を実行する | 精算額の一覧の作成 | 給与計算を誰がしているか |
| 源泉所得税の納付 | 納付手続き(金融機関・e-Taxなど) | 納付額の算出、所得税徴収高計算書の作成 | 納期の特例を受けているか |
| 源泉徴収票の交付 | 従業員へ渡す | 作成 | 電子交付には本人の承諾などの要件がある |
| 給与支払報告書の提出 | 提出内容の承認 | 作成、eLTAXでの提出 | どちらの利用者IDで出すか |
| 申告書の保存 | 原本の保存 | 使い終えた書類の返却 | 保存期間は7年 |
依頼先は、税理士、社会保険労務士、給与計算の代行会社などに分かれます。税理士法は、税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士の業務とし(2条)、税理士又は税理士法人でない者が税理士業務を行うことを禁じています(52条)。税務署に出す書類の作成や、控除の判断にかかわる相談をどこまで頼めるかは依頼先の資格によって変わるため、契約前に範囲を書面で確かめてください。
年末調整の対象かどうかを会社で先に分ける
対象者を決める材料(入退社日、他の勤務先の有無、年間の給与の見込み)は会社にしかありません。外注先へデータを渡す前に、次の表で振り分けておくと、申告書の回収漏れや、対象外の人を計算に入れる手戻りを防げます。表は国税庁『令和8年分 年末調整のしかた』の区分を短くまとめたものです。
| 年末調整の対象になる人 | 年末調整の対象にならない人 |
|---|---|
| 1年を通じて勤務している人 | 主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人 |
| 年の中途で就職し、年末まで勤務している人 | 2か所以上から給与を受けていて、他の支払者に扶養控除等(異動)申告書を出している人や、申告書を出していない人(乙欄適用者) |
| 年の中途で退職した人のうち、死亡により退職した人、著しい心身の障害で退職し再就職が見込まれない人、12月中に支給期の到来する給与を受けた後に退職した人 | 年の中途で退職した人のうち、左の欄に当たらない人 |
| パートタイマーなどが退職し、令和8年中の給与総額が136万円以下の人(退職後に他の勤務先から給与を受ける見込みがある人を除く) | 非居住者 |
| 海外転勤などで年の中途に非居住者となった人 | 日雇労働者など(日額表の丙欄適用者) |
対象にならない人は、自分で確定申告をして税額を精算します。国税庁は、対象外の人には期限までに確定申告書を出すよう、扶養控除等(異動)申告書を出していない人には申告書を出すよう、会社から指導することを求めています。この声かけは従業員と接点のある会社の役目です。
年の中途で入社した人のうち、前の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を出していた人は、前職分の給与と徴収税額を含めて年末調整をします。確認には前の勤務先が交付した源泉徴収票を使うため、入社手続きの時点で回収する流れにしておくと、12月に慌てずに済みます。
従業員から集める書類と、会社が先に見ておくこと
申告書は、従業員が会社を経由して税務署長に提出する書類です(所得税法194条など)。会社は受け取った申告書を保存し、税務署長から求められたときに提出します。外注先に原本やデータを渡す前に、会社で次の点を見ておくと差し戻しが減ります。
| 書類 | 出す人 | 法令上の提出期限 | 会社が先に見ておくこと |
|---|---|---|---|
| 令和9年分 扶養控除等(異動)申告書 | 2027年1月以降も給与を受ける人 | 2027年の最初の給与の支払を受ける日の前日まで | 前年から異動が無い人は「簡易な申告書」も出せる |
| 令和8年分 扶養控除等(異動)申告書の異動 | 年の途中で扶養親族などが変わった人 | 異動後、最初の給与の支払を受ける日の前日まで | 結婚・出産・就職などの変化が反映されているか |
| 令和8年分 基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・所得金額調整控除申告書 | それぞれの控除を受ける人 | 令和8年の最後の給与の支払を受ける日の前日まで | 配偶者や19歳以上23歳未満の親族の所得の見積額が書かれているか |
| 令和8年分 保険料控除申告書と控除証明書 | 生命保険料・地震保険料・自分で払った国民年金保険料などを控除する人 | 令和8年の最後の給与の支払を受ける日の前日まで | 証明書の添付漏れ |
| 住宅借入金等特別控除申告書 | 住宅ローン控除の2年目以降の人 | 年末調整の際に提出 | 最初の年分は確定申告が必要なため、年末調整では受けられない |
| 前の勤務先の源泉徴収票 | 年の中途で入社した人 | (法令の期限ではなく計算の前提) | 前職分の給与と徴収税額の確認に使う |
法令上の期限は「最後の給与の支払を受ける日の前日」ですが、その日までに計算を終えて12月の給与に反映しなければなりません。外注先が計算する日数を逆算し、会社の回収締切は12月の給与よりかなり前に置く必要があります。回収締切は外注先と相談して決め、従業員には日付で伝えます。
令和9年分の扶養控除等(異動)申告書は、記載事項が前年と変わらない場合に限り、異動がない旨だけを書いた「簡易な申告書」を出せます(所得税法194条2項)。国税庁のリーフレットは、住所や氏名の変更、扶養親族の増減、年齢による区分の変化などに1つでも当たれば簡易な申告書は出せないとしています。どちらの様式を配るかは会社と外注先で揃えておきます。
2026年10月から2027年1月までの日程
年末調整は、その年の最後に給与を支払う時に行います。通常は12月です。会社と外注先の動きを月ごとに並べると次のとおりです。
| 時期 | 会社 | 外注先 |
|---|---|---|
| 2026年10月 | 依頼範囲の確定、在籍者と入退社の一覧の提出、回収方法の決定 | 様式・記載例・回収スケジュールの提示 |
| 2026年11月 | 申告書の配付・回収・催促、記入漏れの一次確認 | 回収分から内容確認、不足の指摘 |
| 2026年12月 | 12月の給与・賞与の確定データを渡す、精算額を給与に反映して支払う | 集計、年税額と過不足額の計算、精算額の一覧の作成 |
| 2027年1月12日 | 12月支払分の源泉所得税を納付(原則。1月10日が日曜日、1月11日が成人の日のため) | 納付額と所得税徴収高計算書の作成 |
| 2027年1月20日 | 納期の特例を受けている場合、7月から12月までの分を納付 | 同上 |
| 2027年1月31日 | 源泉徴収票を全受給者に交付 | 源泉徴収票・給与支払報告書の作成と市区町村への提出 |
源泉所得税は原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている場合は、7月から12月までに源泉徴収した分の期限が翌年1月20日になります(国税庁『タックスアンサーNo.2505』)。国税の期限が日曜日や祝日などに当たるときは、その翌日が期限とみなされます(国税通則法10条2項)。2027年1月10日は日曜日、1月11日は成人の日(1月の第二月曜日)で休日のため、12月に支払った給与の源泉所得税の納付期限(原則)は2027年1月12日(火)になります。
精算で納め過ぎが出た人への還付は、年末調整をした月分として納める源泉徴収税額から差し引いて行います。納期の特例を受けている会社では、7月から12月までの分から差し引きます。外注先が出す納付額は、この還付を差し引いた後の金額かどうかを確かめてから納めます。
年末調整の後に、扶養親族の異動や保険料の支払、住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合は、源泉徴収票を交付する2027年1月末日まで、年末調整をやり直せます。1月中に追加の書類が出てきたときの受付窓口と、外注先への連絡方法を決めておくと、やり直しが間に合います。
令和8年分から変わる1月の提出:源泉徴収票のみなし提出
令和9年1月1日以後に提出すべき令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票は、市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、税務署へ提出したものとみなされます(国税庁『令和9年1月から源泉徴収票の提出方法が変わります』)。税務署提出用の源泉徴収票を作って出す必要がなくなり、提出範囲も給与支払報告書と同じになります。
| 項目 | 令和8年分(2027年1月の提出)の扱い |
|---|---|
| 税務署への源泉徴収票 | 給与支払報告書を市区町村へ出せば提出不要 |
| 法定調書合計表 | 給与支払報告書を出した場合は不要。ただし報酬の支払調書など他の調書を税務署へ出すときは、その調書について記載した合計表が要る |
| 給与支払報告書 | 2027年1月1日現在の住所地の市区町村へ、2027年1月31日までに提出(年の中途の退職者は退職時の住所地) |
| 従業員への源泉徴収票 | みなし提出の場合でも、すべての受給者に2027年1月31日までに交付 |
給与支払報告書の提出範囲は、年の中途で退職した人で年中の支払金額が30万円以下の場合を除くすべての給与です(国税庁『タックスアンサーNo.7411』)。国税庁のリーフレットは、eLTAXで出した令和8年分以後の給与支払報告書がマイナポータル連携の対象になり、書面や光ディスクで出したものは対象にならないとしています。
外注する場合は、給与支払報告書を誰の利用者IDで出すか、提出後の受付結果を会社がどう確認するかを決めておきます。税務署へ源泉徴収票を出さなくなっても、従業員への交付は残ります。報酬・料金の支払調書などを出す会社は、その提出と合計表も残る点を、作業一覧から落とさないようにします。
外注先に渡すデータと、契約前に決めておくこと
年末調整の外注で手戻りが多いのは、データの受け渡しと締切の認識違いです。契約前に次の項目を一覧にして、どちらが担うかを書き込んでおくと、12月に慌てずに済みます。
- 1月から12月までの給与・賞与の支給額、社会保険料、源泉徴収税額(12月分は確定見込み日も)
- 入社・退職者の一覧と、中途入社者の前職の源泉徴収票
- 2027年1月1日現在の従業員の住所(給与支払報告書の提出先が決まる)
- 申告書の回収方法(紙・クラウドの年末調整機能など)と、会社の回収締切
- 従業員からの質問の受付窓口と、外注先へ回す範囲
- 精算額を反映する給与(通常は12月の給与)と、その給与計算の担当
- 源泉所得税の納付を誰が行うか、納期の特例の有無
- 源泉徴収票の交付方法(紙・電子)と、電子交付の承諾の取り方
- 申告書の原本の保管場所(保存期間は7年)
見積りは、従業員数のほか、中途入社・退職者の数、住宅ローン控除を受ける人の数、給与データの形式(会計ソフトや給与ソフトから出せるか)、申告書を紙で回収するか電子で回収するかで変わります。依頼の前にこれらを数えておくと、見積りの比較がしやすくなります。
扶養控除等申告書などの保存期間は、申告書の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間です(国税庁タックスアンサーNo.2503)。外注先に原本を預ける場合も、返却の時期を契約に入れておきます。
まとめ:年末調整の外注は「会社にしかない情報」を先に渡す
- 年末調整の責任と、申告書の回収・精算の実行・源泉徴収票の交付は会社に残る。外注先の中心は集計・計算・帳票の作成と提出。
- 対象者の判定材料(入退社・他の勤務先・年間給与の見込み)は会社が先に整理して渡す。
- 保険料控除申告書などの法令上の期限は「その年最後の給与の支払を受ける日の前日」。会社の回収締切は計算日数を逆算して前に置く。
- 源泉所得税の納付は原則2027年1月12日(1月10日が日曜日、11日が成人の日のため)、納期の特例なら2027年1月20日。
- 令和8年分から、市区町村へ給与支払報告書を出せば源泉徴収票の税務署への提出は不要。従業員への交付は2027年1月31日までに必要。
依頼範囲と締切を10月中に表にしておけば、外注先が変わっても同じ流れで回せます。
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リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。税務顧問に加えて、給与計算・年末調整もオプションでお引き受けしています。
よくある質問
Q. 11月に外注先を決めても、令和8年分の年末調整に間に合いますか?
申告書の配付と回収は会社側で先に進められるため、外注先の決定が遅れても回収作業は止める必要がありません。間に合うかどうかは、従業員数、中途入退社の人数、給与データの形式で変わります。依頼先には、12月の給与の支払日と、申告書の回収状況を最初に伝えてください。
Q. 12月の給与のあとに退職する人は、年末調整の対象ですか?
12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人は、年末調整の対象になります。年の中途で退職した人のうち、この条件などに当たらない人は対象外で、次の勤務先での年末調整か確定申告で精算します。退職日と最後の給与の支給日を、外注先に正確に伝えてください。
Q. 年末調整のあとに従業員から保険料の控除証明書が出てきたら、どうなりますか?
年末調整の後に保険料を支払った場合や証明書が出てきた場合は、源泉徴収票を交付する2027年1月末日まで、年末調整をやり直せます。やり直しの計算を外注先に頼めるか、追加の費用がかかるかは、契約前に確認しておくと安心です。
Q. 源泉徴収票を税務署に出さなくてよくなったなら、従業員にも渡さなくてよいですか?
渡す必要があります。源泉徴収票のみなし提出の特例で市区町村に給与支払報告書を出した場合でも、すべての受給者に2027年1月31日までに交付しなければなりません。電子で渡す場合は、本人の承諾を得るなどの要件があります。
Q. 給与計算はすでに外注していますが、年末調整も同じ先に頼むべきですか?
同じ先なら給与データの受け渡しが1回で済み、精算額を12月の給与に反映する流れも一つにまとまります。一方で、控除の判断にかかわる相談や税務書類の作成は税理士の業務とされているため、依頼先の資格で頼める範囲が変わります。給与計算の外注先が年末調整のどこまでを受けるかを確かめてから決めてください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月19日
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