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法人成りしたときの会計ソフトの切り替え|個人の事業所から法人用へ移す手順

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法人成りしたときの会計ソフトの切り替え|個人の事業所から法人用へ移す手順

個人事業主が法人成りをしたら、会計ソフトでは個人の帳簿をそのまま法人の帳簿に切り替えるのではなく、法人用の事業所(帳簿)を新しく作ります。個人と法人は別の納税者で、会計期間も申告書も違うためです。個人の帳簿は廃業日までの記帳と確定申告に使い、その後も保存期間のあいだ残します。

この記事では、freee会計の公式ヘルプを例に、法人成りの年に個人と法人それぞれで会計ソフトに必要な作業、法人の開始残高の入れ方、個人の事業所から移すものと移さないもの、個人の帳簿の締め方と保存を整理します。法人成りをするかどうかの判断や、個人向けの会計ソフトの比較は扱いません。ほかの会計ソフトを使っている場合も、考え方は同じですので、各社のヘルプで「法人成り」の手順を確かめてください。

法人成りで会計ソフトの帳簿は別になる

freeeのヘルプ『freee会計の初期設定の流れ(法人成りをした場合)』では、個人事業主版と法人版で使える機能が違うため、法人成りのときは別に法人の事業所を作成して法人の経理を始めるよう案内しています。個人事業主の事業所を法人の事業所に直接切り替えることはできません。

帳簿が別になる理由は、会計ソフトの都合だけではありません。個人と法人では、次のように帳簿の前提が違います。

項目 個人事業主の帳簿 法人の帳簿
会計期間 1月1日から12月31日まで(変更できない) 設立初年度は設立日から最初の決算日まで
申告 所得税の確定申告(青色申告決算書など) 法人税の確定申告(決算書・勘定科目内訳明細書など)
純資産の科目 元入金・事業主貸・事業主借 資本金・繰越利益剰余金など
預金口座 個人名義の口座 法人名義の口座

このため、法人成りの年は、同じ事業について個人の帳簿(1月1日から廃業日まで)と法人の帳簿(設立日から)の2つを並行して扱う時期ができます。

法人成りの年に残る手続と、帳簿に必要なもの

会計ソフトの作業は、税金の手続と結びついています。法人成りの年に個人と法人それぞれで残る主な手続は次のとおりです。

対象 手続 期限 帳簿に必要なもの
個人 個人事業の開業・廃業等届出書(廃業) 廃業した年分の確定申告期限まで 廃業日を決めておく
個人 所得税の確定申告(1月1日から廃業日までの所得) 翌年3月15日(受付は2月16日から) 廃業日までの記帳と決算
個人 個人事業税の申告 廃止の日から1か月以内(東京都の案内) 廃業日までの事業の所得
個人(消費税の課税事業者) 消費税の事業廃止届出書・消費税の確定申告 届出は速やかに。確定申告は翌年3月31日 廃業日までの課税売上・課税仕入の集計
法人 法人設立届出書 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 設立日を会計期間の開始日にする

個人の確定申告は、会計ソフトの個人の事業所で廃業日までの帳簿を締めて作ります。個人事業税の申告期限は、所得税の確定申告とは別に、廃止の日から1か月以内です(東京都主税局の案内)。所得税・住民税・個人事業税・消費税の申告の関係は、個人事業主の確定申告のやり方もあわせてご覧ください。

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法人の事業所を作る:開始残高と設立前の支出

法人の事業所では、設立日時点の残高を開始残高として登録します。freeeのヘルプ『【法人】開始残高設定を設定する(新設法人の場合)』では、設立初年度の会計期間は「法人の設立日から最初の決算日まで」とされ、開始残高として資本金や設立日までにかかった費用などを登録します。入力する主な項目は次のとおりです。

  • 資本金(現金での出資、自動車や不動産などの現物出資)
  • 設立の手続で支払った経費
  • 設立前に購入した自動車やパソコンなどの固定資産
  • 設立までにかかったその他の経費
  • 役員が立て替えた金額

準備しておく書類として、登記簿謄本・定款、設立日までにかかった経費の領収書、設立前に購入した固定資産の価格が分かるものが挙げられています。

開始残高と取引の二重計上に注意

設立日以前の費用や固定資産は、開始残高として入れる方法と、設立日の日付で取引として登録する方法があります。両方で入れると二重計上になります。freeeのヘルプは、開始残高を設定した後で設立日以前の領収書をファイルボックスにアップロードし、そこから取引を登録してしまうミスがよくあるとしています。

消費税の課税事業者になる場合

freeeでは、開始残高として入力した内容はすべて消費税の課税対象外として扱われます。設立初年度から課税事業者になり一般課税を選ぶ場合は、設立日以前に購入した固定資産や経費の仕入税額を計上するため、開始残高ではなく取引として登録するよう案内されています。簡易課税を使う場合は、開始残高で入力して問題ないとされています。freeeのヘルプは2割特例も挙げていますが、2割特例は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間に限る経過措置のため(国税庁『No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)』)、2026年10月1日以後に設立した法人の設立初年度には使えません。

新しく設立した法人は基準期間がないため原則として免税事業者ですが、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人や特定新規設立法人は納税義務が免除されません(国税庁『No.6501 納税義務の免除』)。また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合や、消費税課税事業者選択届出書を出している場合は納税義務が免除されません。インボイスの登録も個人と法人で別です。国税庁のインボイスQ&Aでは、個人事業者が法人を設立して事業を始める場合(個人事業者として事業を続ける場合を除く)、法人としての手続に加えて、個人事業者としての廃業の手続(事業廃止届出書の提出)が必要としています。法人成り後の消費税の扱いの詳細は法人成りで消費税が免税になる期間と条件で扱っています。

個人の事業所から移すもの・移さないもの

データ 扱い 方法(freeeの場合)
自分で追加した勘定科目・取引先・品目・部門・メモタグ 移す 個人の事業所で書き出し、法人の事業所で取り込む
本来は法人として記帳すべき取引 移す 個人の事業所で取引を書き出し、必要な取引に絞り込み、口座名などを合わせて取り込む
廃業日までの個人の取引 移さない 個人の事業所に残し、個人の確定申告に使う
個人名義の銀行口座・カードの連携 原則として移さない 法人名義の口座・カードを法人の事業所に新しく登録する

注意したいのは、設立日の後も個人の口座で法人の売上を受け取ったり、法人の経費を個人のカードで払ったりしている期間です。その取引は法人の取引なので、法人の事業所に入れる必要があります。freeeのヘルプでは、個人の事業所で記帳していた取引を書き出して必要な取引に絞り込み、口座名などを合わせてから法人の事業所に取り込む手順が示されています。法人の側では、個人の口座で受け払いした分を、代表者との貸し借り(立替金や借入金など)として整理する形になります。

個人から法人へ引き継ぐ資産と負債

個人で使っていた車両・備品・在庫などを法人に引き継ぐ場合、個人の帳簿では資産を手放した記録、法人の帳簿では取得した記録を、同じ日付・同じ金額で入れます。引き継ぎの方法(売買か現物出資か)や価額の決め方で、個人と法人の両方の税金に影響が出ます。方法の選び方は個人から法人への資産引継ぎで扱っており、どの方法がよいかは数字で試算しないと決まりません。

個人の事業所の締め方と保存

個人の事業所は、法人成りの後も廃業日までの記帳と確定申告のために使います。締めるまでの流れの例です。

  1. 廃業日までの取引をすべて登録する(廃業日より後の取引は法人の事業所へ)。
  2. 廃業日時点の売掛金・買掛金・未払金を確かめ、個人で回収・支払うものと法人に引き継ぐものを分ける。
  3. 法人に引き継いだ資産は、引き継いだ日付で個人の帳簿から外す。
  4. 青色申告決算書(または収支内訳書)と確定申告書を作り、翌年3月15日までに申告する。
  5. 個人の帳簿と決算書を書き出して保存する。

freeeのヘルプでは、個人事業としての確定申告が必要なくなったときに、個人の事業所のお支払いを停止するよう案内しています。お支払いを停止して有効期限を過ぎた場合も、再び有料プランを契約すれば過去のデータを参照できるとされています。一方、事業所そのものを削除すると、保存されているすべてのデータが削除されます。

個人の帳簿は、法人成りの後も保存義務が続きます。収入金額や必要経費を記載した帳簿は7年間の保存が必要です(国税庁『個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について』)。会計ソフトの事業所を削除する前に、保存期間の残っている年分の帳簿を書き出しておく必要があります。

まとめ:帳簿は2つ、境目は設立日と廃業日

  • 法人成りでは、個人の帳簿を切り替えるのではなく、法人用の事業所を新しく作る。
  • 個人の帳簿は1月1日から廃業日まで、法人の帳簿は設立日から。境目の日付をまず決める。
  • 法人の開始残高は資本金と設立前の支出。開始残高と取引の両方に入れると二重計上になる。
  • 一般課税の課税事業者になる場合、設立前の支出は開始残高ではなく取引で登録する案内がある。
  • 個人の事業所は確定申告まで使い、その後も帳簿を保存期間のあいだ残す。

どこまでを個人の取引とし、どこからを法人の取引とするかで、両方の申告の数字が変わります。境目の取引は、記帳の前に一覧にしておくと整理しやすくなります。

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よくある質問

Q. 個人の事業所に法人の取引をまとめて入れて、後で分けてもよいですか?

後から分けることはできますが、手間が増えます。freeeのヘルプでも、本来法人として記帳すべき内容を個人の事業所で記帳していた場合は、取引を書き出して絞り込み、法人の事業所に取り込み直す手順になります。設立日以降の取引は、最初から法人の事業所に入れるほうが混乱が少なくなります。

Q. 個人で連携していた銀行口座を、法人でもそのまま使えますか?

法人の帳簿は法人の取引を記録するものなので、法人の取引は法人名義の口座で受け払いするのが基本です。個人名義の口座で法人の取引を受け払いすると、法人の帳簿では代表者との貸し借りとして1件ずつ整理する必要が出ます。法人名義の口座ができたら、法人の事業所に登録して連携を設定します。

Q. 個人の会計ソフトの契約は、いつ止めればよいですか?

廃業した年分の確定申告が終わるまでは、個人の帳簿を使います。freeeのヘルプでも、個人事業としての確定申告が必要なくなったときにお支払いを停止するよう案内しています。止める前に、保存期間内の帳簿と決算書を書き出しておくと、ソフトを使わなくなった後も内容を確かめられます。

Q. 法人の開始残高に、個人の預金残高を入れてもよいですか?

個人名義の預金は法人の資産ではないため、法人の開始残高には入りません。法人の開始残高に入るのは、資本金として払い込んだお金や、設立前に法人のために支払った費用などです。個人から法人へ資産を引き継ぐ場合は、売買や現物出資として別に記録します。

この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月20日

参考資料

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