赤字決算の会社でも、融資の相談はできます。ただし「赤字になりました」だけでは話が進みません。赤字の理由を具体的に分けて説明し、それを解消する行動と数字、返済までの資金繰りを1つの計画にまとめて持っていくことが、相談の出発点になります。
計画に何を入れればよいかは、中小企業庁の経営改善計画策定支援の手引きと「収益力改善支援に関する実務指針」に、項目と「検討が不十分な例」まで示されています。この記事では、これらの一次資料をもとに、赤字の理由の説明資料と改善計画の作り方を整理します。融資審査が通らない理由一般ではなく、赤字の会社が相談に持っていく資料に絞ります。
赤字の会社でも相談はできる:制度の側から見る
赤字だから相談できない、ということはありません。たとえば日本政策金融公庫(以下「公庫」)の経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、社会的・経済的環境の変化などの外的要因で一時的に業況が悪化しているが、中長期的には業況が回復し発展することが見込まれる方を対象にしています。対象の例には「最近の決算期において、赤字幅が縮小したものの税引前損益または経常損益で損失を生じている方」も挙げられています。
もちろん、対象に当たることと融資を受けられることは別で、公庫も審査の結果で希望に沿えない場合があるとしています。ここで押さえておきたいのは、「赤字」にも種類があり、どの段階の損益が赤字なのかで説明の中身が変わることです。
| 赤字の段階 | 何が分かるか | 説明の中心になること |
|---|---|---|
| 営業損益が赤字 | 本業の売上で、原価と販売費・一般管理費をまかなえていない | 売上・原価・固定費のどこに原因があるか |
| 営業損益は黒字、経常損益が赤字 | 支払利息など本業以外の費用が重い | 借入れの総額と金利、返済の組み方 |
| 経常損益は黒字、税引前損益が赤字 | 特別損失など、その期だけの損失がある | 一時的な損失であることの裏付け |
| 減価償却前で見ると黒字 | 減価償却費を足し戻すと、現金を生む力は残っている | 設備投資の時期と、償却が終わる見通し |
公庫の経営者保証免除特例制度でも、要件の1つに「最近2期の決算期において、減価償却前経常利益が2期連続して赤字でないこと」が使われています。赤字の期が何期続いているか、減価償却前ではどうかは、説明の前に自分で確かめておきます。
赤字の理由を分解する:説明資料の作り方
赤字の理由は、外から見ても分かる言葉に分解して示します。中小企業庁の「収益力改善支援に関する実務指針」は、課題の洗い出しで「検討が不十分な事例」として次のような例を挙げています。
- 飲食業・宿泊業の減収の課題を「コロナ禍で来店客が少ないこと」とのみ抽出した例。どう経営努力をして何が足りなかったのか、サービスの内容や初動・アプローチに問題はなかったのか等、具体的な課題抽出が必要とされています。
- 建設業の減益の課題を「資材価格や運送コストの高騰の影響」とのみ抽出した例。市場は常に動くものであり、リスクのヘッジ状況や価格設定の妥当性等の具体的な課題抽出が必要とされています。
つまり、外部環境のせいだけで説明を終えず、「自社のどこに手を打てたか、打てるか」まで分けて書くことが求められます。分解の仕方は、次の表が目安です。
| 赤字の要因 | 分解の仕方 | 説明資料に載せるもの |
|---|---|---|
| 売上の減少 | 単価と数量、部門・店舗・得意先・製品別に分ける | 2〜3期分の推移と、減った区分・理由 |
| 原価の上昇 | 仕入値・ロス・外注費のどれが上がったか、価格に転嫁できたか | 原価の割合の推移、値上げ・交渉の状況 |
| 固定費の増加 | 人件費・家賃・減価償却費など、増えた科目と時期 | 増やした理由と、売上への効果の見込み |
| 一時的な損失 | 特別損失、その期だけの費用(移転・修繕・訴訟など) | 翌期以降に繰り返さないことの裏付け |
| 資金の流れの悪化 | 回収条件の長期化、支払条件の短縮、在庫の増加 | 回収・支払の条件の変化と在庫の中身 |
※説明のための架空の例です。飲食店2店舗の会社で、営業損益が赤字になったとします。全体の売上だけを見ると「客数の減少」に見えても、店舗別に分けると1店舗は黒字で、もう1店舗の夜の客数だけが大きく減っていた、という形で原因が絞れることがあります。原因が絞れれば、打つ手(その店舗のメニュー・営業時間の見直し、撤退の検討など)も具体的に書けます。
実務指針は、財務分析では過去の損益の変動原因を確認し、同業データとの比較にはローカルベンチマークの活用も有用としています。売上増加率・営業利益率・労働生産性・EBITDA有利子負債倍率・営業運転資本回転期間・自己資本比率といった指標を2〜3期並べると、どこが悪化したのかを説明しやすくなります。
改善計画に入れる項目:中小企業庁の着眼点
改善計画の項目は、中小企業庁の「経営改善計画策定支援に関する手引き」に、着眼点を踏まえて策定する計画等として列挙されています。金融支援を伴う本格的な計画の場合と、早期の基本的な改善のための計画の場合を並べると、次のとおりです。
| 項目 | 経営改善計画(金融支援を伴う) | 早期経営改善計画 |
|---|---|---|
| 会社概要表(株主、役員構成、役員等との資金貸借、沿革等) | 入れる | - |
| ビジネスモデル俯瞰図 | 入れる(グループ企業等があれば企業集団の状況を含む) | 入れる |
| 経営課題の内容と解決に向けた基本方針 | 入れる | 入れる |
| アクションプラン | 入れる(伴走支援計画を含む) | 入れる |
| 計数計画(実態貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等) | 入れる | 損益計画 |
| 資金繰表(実績・計画) | 入れる | 入れる |
| 金融支援の依頼内容(条件変更、融資行為等)、資産保全表 | 入れる | - |
表の「-」は、中小企業庁のページの一覧に挙がっていない項目です。新たな融資の相談で使う場合でも、この項目立ては使えます。ビジネスモデル俯瞰図は、誰に・何を・どう売り、どこから仕入れているかという収益の仕組みや商流を見える化したものです。会社概要表に「役員等との資金貸借」が入っている点は見落としやすいところで、社長への貸付金や社長からの借入金があれば、その中身も説明できるようにしておきます。
アクションプランと数値計画の作り方
アクションプランは「誰が・何を・いつまでに」
実務指針は、アクションプランについて、実施責任者(主担当)、取組内容、取組方法、スケジュールを具体的かつ実行可能な形で検討し、取組状況が確認できる目標水準を設定するとしています。各取組でどれだけ収益が改善するかを数値化することも挙げられています。
検討が不十分な例として、小売業で「商品をPRして3年後の売上を10%増加」とだけ書いた例が挙げられています。どの商品を、どの消費者に、何を訴求点として、どの手段で売るのか、行動できるレベルまで書くことが求められます。
数値計画は過去の実績から積み上げる
数値計画について、実務指針は次の着眼点を示しています。
- 売上高は、部門別・店舗別・得意先別などの区分ごとに、過去の実績の推移をもとに見通しを立てる
- 売上高は金額だけでなく、単価と数量などの構成要素に分けて検討する
- 原価・費用は、変動費なら変動比率、固定費なら金額で、過去の実績をもとに見通しを立てる
- 計画年度ごとに大きな変動がある場合は、その具体的な根拠を示す
また、市場などの変動要因については、事業者にとって不利な状況になることも考慮に入れて検討する必要があるとされています。売上が順調に伸びる前提だけで組んだ計画は、説明の場で根拠を問われます。慎重な前提で組んでも返済が回ることを示せるかが、計画の説得力を左右します。
資金繰り表と、金融機関への説明の仕方
赤字の会社の相談では、損益の計画と同じくらい、月ごとの資金の動きが大事です。実務指針は、資金繰りの検討の着眼点として、売掛金の回収条件と買掛金の支払条件の確認、受注状況や季節性を踏まえた月次の売上・仕入・外注の見込み、税金や社会保険料・借入金返済・設備投資や修繕予定などの支出の確認を挙げています。そのうえで月次の資金収支を計算し、資金不足が懸念される場合は対応策を検討するとしています。資金繰り表の作り方そのものは資金繰り表の作り方で扱っています。
金融機関への説明について、実務指針は、経営者が自社の財務状況、経営状況、キャッシュフローの状況、金融支援が必要な理由を理解した上で、取引金融機関に報告・相談する必要があるとしています。計画を作った人に任せきりにせず、経営者が自分の言葉で説明できることが前提です。
相談の場で求められる資料は、借入先によって違います。公庫の日本政策金融公庫『よくあるご質問』では、返済条件の見直しの相談について、税務申告書・決算書、資金繰り表、経営改善計画書等の資料をお願いしているとしています。新たな融資の相談でも、少なくとも次の資料はそろえておくと話が早く進みます。
- 決算書と各勘定科目の明細(実務指針は、ガバナンスのチェックポイントとして少なくとも直近3年分あるかを挙げています)
- 税務申告書の控え(受付の証跡。電子申告の場合は受付通知)
- 直近の試算表と資金繰り表(求められたときに出せる体制か)
- 赤字の理由の説明資料と改善計画(アクションプラン、数値計画、資金繰り計画)
計画づくりを専門家と進める場合の公的な支援
自社だけで計画を作るのが難しい場合は、国の支援事業を使って専門家と作る方法もあります。中小企業庁『早期経営改善計画策定支援』は、資金繰りの管理や自社の経営状況の把握などの基本的な経営改善に取り組む中小企業者等が、国が認定した税理士などの専門家である認定経営革新等支援機関の支援を受けて計画を作る際、その費用の2/3を補助するものです。計画策定後は、数値計画と実績の差異やアクションプランの取組状況を確認し、計画の進捗を金融機関等に報告する伴走支援も示されています。
借入金の返済負担などで金融支援を伴う本格的な経営改善が必要な場合は、中小企業庁『経営改善計画策定支援』があり、認定経営革新等支援機関に支払う計画策定支援の費用の2/3を中小企業活性化協議会が負担します。どちらの事業も補助の上限や対象経費が決まっているので、利用を考える場合は中小企業庁の手引きで最新の条件を確認してください。
どちらの支援を使うか、そもそも計画を作って融資を相談するのがよいのかは、赤字の原因、借入れの残高と返済の状況、手元資金の見通しによって変わります。数字を並べて試算しないと決まらないので、まずは決算書と試算表から現状を整理することから始めます。
まとめ:赤字の相談は「理由の分解」と「計画と資金繰り」をセットで
- 赤字でも融資の相談はできる。公庫には一時的に業況が悪化した方向けの貸付もある(結果は審査による)
- 営業損益・経常損益・税引前損益・減価償却前のどこが赤字かで、説明の中身が変わる
- 赤字の理由は外部環境だけで終わらせず、単価・数量・区分・科目に分解して示す
- 計画の項目は、中小企業庁の手引きの一覧(会社概要表、ビジネスモデル俯瞰図、アクションプラン、計数計画、資金繰表など)が使える
- 数値計画は過去の実績から積み上げ、不利な状況も考慮し、大きな変動には根拠を示す
- 経営者自身が、財務状況と金融支援が必要な理由を説明できることが前提になる
融資審査が通らない理由の全体像は銀行融資の審査が通らない理由と対策で扱っているので、あわせて確認してください。
創業融資も相談したい方へ
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。税務顧問とあわせて、創業融資の獲得支援も行っています。
よくある質問
Q. 赤字の理由が「景気や物価の影響」の場合、そのまま説明してよいですか?
事実として書くのはかまいませんが、それだけでは足りません。中小企業庁の実務指針は、減益の課題を「資材価格や運送コストの高騰の影響」とのみ抽出した例を検討が不十分な例とし、リスクのヘッジ状況や価格設定の妥当性などの具体的な課題抽出が必要としています。外部要因に対して自社が何をしたか、これから何をするかまで書きます。
Q. 債務超過になっていても相談できますか?
相談すること自体はできます。経営改善計画の項目には実態貸借対照表を含む計数計画があり、純資産のマイナスがいつ、どう解消していくかを数字で示すことになります。融資するかどうかは借入先の個別の判断なので、結果は相談してみないと分かりません。
Q. 改善計画は自分で作ってもよいですか?
自分で作ってもかまいません。この記事の項目立て(ビジネスモデル俯瞰図、課題と基本方針、アクションプラン、数値計画、資金繰り表)に沿って作ると、抜けが少なくなります。資金繰りや数値計画の作成に手が回らない場合は、認定経営革新等支援機関の支援を受けて作る国の支援事業もあります。
Q. 計画を出した後は、何をすればよいですか?
計画どおりに進んでいるかを確かめ、報告することです。中小企業庁の早期経営改善計画策定支援では、計画策定後に、数値計画と実績の差異やアクションプランの取組状況を確認し、差異があれば対応策を検討し、進捗を金融機関等に報告する流れが示されています。毎月の試算表で計画と実績を比べておくと、この報告がしやすくなります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月22日
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