レンタルスペースで部屋を貸すとき、アパートの家賃と同じように消費税はかからないのでしょうか。会議室や撮影場所、コワーキングスペースとしての利用料は、利用期間にかかわらず原則として課税売上です。内装や家具の費用も、支払ったときにすべて経費になるとは限りません。
この記事では、個人と法人の運営者向けに、消費税と所得区分、内装・備品の費用、予約サイト経由の入金の扱いを整理します。
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時間貸しの利用料は消費税の課税売上
消費税では、住宅の貸付けは非課税です。ただし国税庁のタックスアンサーNo.6226によると、非課税になるのは、契約で住宅用に供することが明らかにされているものなどに限られます。さらに、貸付期間が1か月未満の場合と、旅館業法に規定する旅館業に係る施設の貸付けは、非課税の住宅の貸付けから除かれます。
会議、撮影、教室、作業場所として使うレンタルスペースやコワーキングスペースは、人が住むための貸付けではありません。そのため利用料は非課税の要件に当たらず、時間貸しでも月額会員でも課税売上として扱います。
| 貸し方 | 消費税の扱い |
|---|---|
| 居住用として契約したアパート・マンションの賃貸(1か月以上) | 非課税 |
| 会議室・スタジオ・イベントスペースの時間貸し | 課税 |
| コワーキングの月額会員・固定席 | 課税(住宅の貸付けではない) |
| 宿泊させる貸付け(旅館業・民泊) | 課税(利用期間が1か月以上でも非課税にならない) |
利用者の都合による予約の取消しで受け取るキャンセル料は、消費税法基本通達5-5-2により、逸失利益等に対する損害賠償金なら資産の譲渡等の対価に当たりません。時期にかかわらず一定額を取消手数料として受け取る定めのものは、役務の提供の対価として課税されます。利用規約でどちらの性質かを確認して区分します。
簡易課税を選ぶ場合の事業区分
簡易課税の事業区分は、おおむね日本標準産業分類の大分類を基礎に判定します。国税庁のタックスアンサーでは、不動産業は第6種事業(みなし仕入率40%)、サービス業等は第5種事業(同50%)です。日本標準産業分類では、不動産賃貸業(貸家業、貸間業を除く)の中に貸事務所業やその他の不動産賃貸業が置かれています。場所を貸すことが中心のレンタルスペースか、サービスの提供が中心のコワーキングかで当てはめが変わり得るので、区分の根拠を整理したうえで、一般課税と試算して比べます。
物件を借りて運営する場合の家賃
自社や自分で物件を借りてレンタルスペースにする場合、支払う家賃が消費税の課税仕入れになるかは、貸主との契約の用途で決まります。事業用として借りている物件の家賃は課税仕入れです。契約で住宅用とされている物件の家賃は住宅の貸付けとして非課税なので、仕入税額控除の対象になりません。
物件を借りる段階で、契約書の用途欄が事業用になっているか、転貸(又貸し)が認められているかを確認しておきます。
個人で運営する場合の所得区分
所得税法26条は、不動産所得を、不動産等の貸付け(他人に不動産等を使用させることを含みます)による所得で、事業所得や譲渡所得に当たるものを除いたものと定めています。部屋を時間単位で使わせるだけのレンタルスペースは、この「他人に不動産等を使用させること」に当たるのが基本です。
一方で、所得税基本通達26-4は、食事を供さないアパートや貸間の所得は不動産所得、食事を供する下宿等の所得は事業所得又は雑所得とする区分を示しています。受付やドリンク、備品の貸出し、イベント運営などのサービスが利用料の中心になっているコワーキングは、場所を使わせることとサービスのどちらが収入の主な源かを見て所得区分を判断します。所得区分は申告書の書き方や必要経費のまとめ方に関わるので、開業時に確認しておきます。大家としての確定申告の基本は不動産オーナーの確定申告の記事で整理しています。
内装・設備の減価償却と少額の資産
借りた物件に間仕切りや床、照明などの内装工事をした場合、その費用は自分の資産(造作)として減価償却します。国税庁の耐用年数の適用等に関する取扱通達1-1-3は、建物についての造作は、建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質等を勘案して合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についての造作は建物附属設備の耐用年数により償却するとしています。
- 賃借期間の定めがあり、更新ができず、有益費の請求や買取請求もできない場合は、賃借期間を耐用年数として償却できる
- 同一の建物についての造作は、種類ごとでなく全部をまとめて一つの資産として耐用年数を見積もる
- 所得税でも、この取扱通達に準じて扱うこととされている
家具や備品を買ったとき
机、椅子、モニターなどの備品は、取得価額が10万円未満なら事業に使い始めた年度に全額を経費にでき、10万円以上20万円未満なら3年間で均等に経費にする一括償却を選べます。青色申告の中小企業者等には、令和11年3月31日までに取得した取得価額40万円未満(令和8年3月31日までの取得は30万円未満)の資産を全額経費にできる特例があり、法人・個人とも年300万円が限度です。詳しくは少額減価償却資産の特例の記事で整理しています。
レンタルスペースで特に注意するのが、貸付けの用に供した資産の扱いです。令和4年4月1日以後に取得した資産で貸付けの用に供したものは、これらの少額の取扱いの対象から除かれます。ただし主要な事業として行われる貸付けは除外の対象外です。本業が別にあり、空いている部屋を副業的に貸している場合は、家具や備品を通常の減価償却で処理する必要がないかを確認します。
予約サイトの手数料と入金の記帳
予約サイト経由の利用では、利用者が支払った利用料からサイトの手数料を差し引いた金額が、後日まとめて入金されることがあります。売上は利用日に利用料の総額で計上し、入金までは未収入金とします。差し引かれた手数料は支払手数料として別に記帳します。入金額だけを売上にすると、売上と経費の両方が実際より小さくなり、消費税の課税売上高の判定にも影響します。
※説明のための架空の例です。3月30日に利用された予約の利用料1万1,000円(税込)から、予約サイトの手数料3,300円(税込)を差し引いた7,700円が4月末に入金される場合、3月の帳簿では売上1万1,000円を計上し、手数料3,300円を支払手数料、差額の7,700円を未収入金とします。4月末の入金で未収入金を消します。
法人の場合、法人税法22条の2第1項により、役務の提供に係る収益は原則として役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入します。利用日より前に利用料を受け取った予約は、利用日までは前受金とし、決算日をまたぐ予約は利用日の属する期の売上にします。
予約サイトの手数料は、国内の事業者に支払う役務の対価なら課税仕入れです。仕入税額控除を受けるには、サイトの事業者が発行する適格請求書や、手数料の明細の記載事項を確認して保存します。
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開業から決算までのチェックリスト
- 物件の賃貸借契約の用途が事業用になっているか、転貸が認められているかを確認した
- 利用料を課税売上として記帳し、キャンセル料は利用規約に沿って損害賠償金と取消手数料に分けている
- 内装工事の見積書・請求書を保存し、造作と建物附属設備を分けて資産に計上した
- 家具や備品の取得価額と、貸付けが主要な事業かどうかを確認してから少額の取扱いを選んだ
- 予約サイトごとに利用日ベースの売上と入金明細を照合し、決算日の未収入金と前受金の内訳を作っている
まとめ:課税売上と貸付けの資産の扱いを押さえる
- レンタルスペース・コワーキングの利用料は住宅の貸付けではないので課税売上。貸付期間が1か月以上でも変わらない
- 借りた物件の家賃は、事業用の契約なら課税仕入れ、住宅用の契約なら非課税
- 個人は不動産所得が基本だが、サービスが中心なら事業所得の区分を検討する
- 内装は造作として合理的に見積った耐用年数で償却。少額資産の特例は、主要な事業でない貸付けに使う資産には使えない
- 予約サイト経由の売上は総額で計上し、手数料は別に記帳する
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よくある質問
Q. 1か月以上の長期で部屋を貸せば、利用料は非課税になりますか?
なりません。非課税になるのは住宅の貸付けで、契約で住宅用に供することが明らかなものなどに限られます。事務所や作業場所として使わせる貸付けは、期間が1か月以上でも課税です。
Q. 自宅の一室をレンタルスペースにしています。家賃や光熱費は経費になりますか?
個人の場合、家事上の経費に関連する経費は、主たる部分が業務の遂行上必要で、その部分を明らかに区分できる場合にその部分だけが必要経費になります。貸している部屋の面積や利用時間などで業務分を区分し、その根拠を記録しておきます。
Q. 内装工事の費用は何年で償却しますか?
建物の耐用年数、造作の種類、用途、使用材質等を勘案して合理的に見積った年数です。建物附属設備についての工事はその設備の耐用年数によります。賃借期間の定めがあり、更新ができず、有益費の請求や買取請求もできない契約なら、賃借期間を耐用年数にできます。
Q. 本業とは別に空き部屋をレンタルスペースにしました。10万円未満の椅子は全額経費にできますか?
令和4年4月1日以後に取得して貸付けの用に供した資産は、主要な事業として行われる貸付けの場合を除き、取得価額10万円未満の少額の減価償却資産の取扱いや一括償却の対象から除かれます。副業的な貸付けに使う椅子なら、通常の減価償却で処理する必要がないか確認します。
Q. 予約サイトから手数料を引かれて入金されます。売上はどちらの金額ですか?
利用者が支払った利用料の総額が売上で、差し引かれた手数料は支払手数料です。入金額だけを売上にすると、消費税の課税売上高や仕入税額控除の計算がずれます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年11月1日
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