「副業の収入が増えてきたので、会社を作って節税できないか」。給与のほかに副業収入があるサラリーマンから、こうした相談が増えています。副業を法人化すると節税につながる可能性はありますが、コストやリスクもあるため、損益分岐点を理解したうえで判断することが大切です。
本記事では、サラリーマンが会社を設立して節税できる仕組みと、そのメリット・コスト・注意点を、2026年時点の情報で整理します。過度な節税をうたうものではなく、メリットとデメリットの両面から中立的に解説します。
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サラリーマンが会社を設立すると節税になる仕組み
給与にかかる所得税は、給与所得控除を差し引いた後の所得に、超過累進税率(住民税と合わせて最大約55%)で課税されます。副業収入をそのまま個人の所得に上乗せすると、本業の給与と合算されて高い税率が適用されます。ここで副業を会社(法人)に移すと、次のような節税の余地が生まれます。
第一に、会社から自分へ支払う役員報酬に給与所得控除を使えるため、同じ収入でも課税対象を圧縮できます。第二に、法人は個人事業より経費として認められる範囲が広く、事業に関連する支出を計上しやすくなります。第三に、配偶者などの家族を役員にして役員報酬を支払えば、所得を分散して世帯全体の税率を下げられる場合があります。第四に、資本金1,000万円未満の新設法人は、設立後一定期間の消費税が免除される可能性があります。
節税メリットが出る損益分岐点の考え方
法人化のメリットは、副業の利益が一定額を超えたあたりから出始めます。個人の所得税・住民税の限界税率が、法人の実効税率(中小法人でおおむね30%前後)を上回る水準になると、法人に利益を移すほうが有利になりやすいためです。法人税率は、中小法人で所得800万円以下が15%、超過部分が23.2%です。
ただし、後述するコスト(社会保険・均等割・設立費用など)を回収できるだけの利益が必要なため、副業の利益が小さいうちは、コストがメリットを上回ってしまいます。最適な損益分岐点は、本業の給与水準・副業の利益・家族構成によって変わるため、一律の金額で語ることはできません。判断には個別の試算が欠かせません。法人化を検討すべき水準の目安は法人成りの年収目安はいくら?もご参照ください。
会社設立に伴うコストと注意点
サラリーマンが会社を設立する際は、次のコスト・リスクを必ず確認してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立コスト | 株式会社で約20〜25万円、合同会社で約6〜10万円の実費 |
| 法人住民税の均等割 | 赤字でも最低でも年7万円程度が発生 |
| 社会保険 | 法人から役員報酬を受け取る場合、社会保険の論点が生じる(本業での加入との関係を要確認) |
| 税理士報酬など | 法人の決算・申告は複雑なため、顧問料などの固定費がかかる |
| 事業実態 | 実態のない会社は税務上否認されるリスクがある |
とくに注意したいのが事業実態です。節税だけを目的に、実態のない事業を法人化しても、税務調査で「実質的に給与所得」と判断され、経費や所得分散が否認されるリスクがあります。また、勤務先の就業規則で副業や会社役員への就任が制限されている場合もあるため、事前の確認が必要です。会社のお金は自由に使えず、役員報酬として受け取る必要があり、役員報酬は原則として期首から3か月以内に決めた金額を1年間変更できない点にも注意してください。
サラリーマンの会社設立が向いているケース・向かないケース
向いているのは、副業の利益がコストを十分に上回る水準まで育っている、事業として継続的・実態のある活動である、家族に事業を手伝ってもらえる、といったケースです。反対に、副業の利益が小さい、単発的で事業実態が乏しい、勤務先が副業や役員就任を禁止している、といった場合は、法人化のメリットよりコスト・リスクが上回る可能性が高くなります。法人化のメリット全体は個人事業主が法人化するメリットで解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. サラリーマンでも会社を設立できますか?
A. 設立できます。ただし、勤務先の就業規則で副業や会社役員への就任が制限されている場合があるため、事前に確認が必要です。会社の代表者になること自体は、法律上サラリーマンでも問題ありません。
Q2. どのくらいの副業収入があれば節税になりますか?
A. 個人の限界税率が法人の実効税率(おおむね30%前後)を上回る水準が一つの目安ですが、社会保険や均等割などのコストを回収できる利益が必要です。最適なラインは本業の給与や家族構成で変わるため、個別の試算をおすすめします。「必ず得をする」と断定できるものではありません。
Q3. 会社設立で使える経費はどこまで広がりますか?
A. 法人は個人より経費として認められる範囲が広く、事業に関連する支出を計上しやすくなります。ただし、私的な支出まで経費にできるわけではなく、事業との関連性が前提です。実態のない経費計上は否認されるリスクがあります。
Q4. 会社設立のデメリットは何ですか?
A. 設立コスト(株式会社で約20〜25万円)、赤字でも発生する法人住民税の均等割(年7万円程度〜)、社会保険の論点、税理士報酬などの固定費、そして事業実態がない場合の否認リスクです。
Q5. 家族に役員報酬を払えば節税になりますか?
A. 家族を役員にして役員報酬を支払えば、所得を分散して世帯全体の税負担を下げられる場合があります。ただし、実際に業務に従事していることや、報酬額が業務内容に見合っていることが前提で、過大な報酬は否認されるおそれがあります。
参考資料
サラリーマンの会社設立は、副業の利益が十分に育ち、事業実態がある場合には有効な節税策になり得ます。一方で、社会保険や均等割などのコスト、事業実態の否認リスクもあるため、損益分岐点を試算したうえで慎重に判断することが大切です。
リーパル会計事務所では、1,100社以上の関与実績をもとに、法人化の損益分岐シミュレーションから設立手続き、設立後の税務までをサポートしています。副業の法人化を検討中の方は、お気軽にご相談ください。
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、法人化・節税の支援を専門とする。
最終更新日: 2026年7月2日
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