「家族にも給料を払えば、そのぶん経費が増えて節税になるはず」。
家族に給料を払うこと自体は珍しくありません。ただ、個人事業主が生計を一にする家族に払う給料は、原則として経費になりません。青色申告で事前に届出をした場合など、特別なルールの範囲内でだけ認められます。会社の場合はルールが変わり、働きに見合った金額かどうかが問われます。
この記事は、リーパル会計事務所のキャラクター・りーぱるくん、思い立ったらすぐ動くイノシシ社長、慎重派の経理担当リスさんの会話で進みます。
※りーぱるくん以外の登場人物と会社は、説明のための架空の例です。記事の内容は2026年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいています。
登場人物

リーパル会計事務所のりーぱるくんです。家族とお金の話は、気持ちと数字の両方から整理します。

イノシシ社長だ!社員8人の販促物の制作会社をやってる。妻にも電話番と経理の手伝いをしてもらってるぞ。

経理のリスです。どんぐりも会社のお金も、コツコツ数えて大事にしまっておく派です。

社長の妻です。今日は、わたしのお給料の話と聞いて来ました。
家族への給料が「節税になる」と言われる理由

妻には電話番と経理の手伝いをしてもらってる。月50万円払えば、そのぶん会社の経費が増えて税金が減る。名案だろ!

あら、うれしい。

家族に給料を払う考え方そのものは、珍しくありません。給料を受け取る家族の側では「給与所得控除」が使えるので、家族全体で見ると税金が軽くなることがあります。

でも、月50万円って、わたしのお給料より……いえ、何でもないです。

リスさんの気持ち、よく分かります。実はそこが大事なポイントなんです。
家族への給料が節税になると言われる理由は、主に2つです。
- 払った給料が、事業や会社の経費になる
- 受け取った家族の側で給与所得控除が差し引かれ、所得が家族に分かれる(所得税は所得が高いほど税率が上がるため、分けると全体の税金が軽くなりやすい)
ただし、経費にできるかどうかのルールは、個人事業主と会社でまったく違います。
個人事業主の場合:家族への給料は「原則として経費にならない」

りーぱるくん、実はわたしの姉が個人でカフェをやっていて、旦那さんがフルタイムで手伝っているんです。旦那さんへのお給料は経費になりますか?

個人事業主が、生計を一にする家族に払う給料は、原則として経費になりません。

え、払ってるのに?

はい。ただし特別な取扱いがあります。青色申告なら「青色事業専従者給与」、白色申告なら「事業専従者控除」です。
青色申告:青色事業専従者給与(届出が必要)
青色申告の方は、次の要件をすべて満たすと、家族に払った給料のうち相当な金額を経費にできます(国税庁タックスアンサーNo.2075)。
- 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
- その年の12月31日時点で15歳以上であること
- その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合は、事業に従事できる期間の2分の1を超える期間)、その事業に専ら従事していること
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を、経費にしようとする年の3月15日までに税務署へ出していること(その年の1月16日以後に開業した場合や、新たに専従者がいることになった場合は、その日から2か月以内)
- 届出書に書いた方法で、書いた金額の範囲内で実際に支払っていること
- 仕事の内容に見合った、相当な金額であること(過大な部分は経費になりません)
給料を増やすときや、専従者が増えるときは、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく出す必要があります。
白色申告:事業専従者控除(上限あり)
白色申告の場合、家族に払った給料そのものは経費になりません。その代わり、家族が専らその事業に従事していれば、次のいずれか低い金額を差し引けます。
| 専従者 | 差し引ける金額(いずれか低い方) |
|---|---|
| 配偶者 | 86万円、または「この控除をする前の事業所得等 ÷(専従者の数+1)」 |
| その他の親族(15歳以上) | 1人50万円、または同上 |

届出を出し忘れたら、どうなるんだ?

期限までに届出がない年は、青色事業専従者給与として経費にできません。開業したばかりの方や、家族が新しく手伝い始めた方は、期限に特に注意してください。
見落としやすい点:配偶者控除・扶養控除とは一緒に使えない
青色事業専従者として給料を受け取る家族や、白色申告の事業専従者は、配偶者控除・配偶者特別控除や扶養控除の対象になりません。給料を払った方が得か、配偶者控除などを使った方が得かは、金額によって変わります。
会社の場合:働きに見合った金額なら経費になる

うちは会社だから、さっきの専従者のルールは関係ないんだな?

はい。会社が家族を雇って払う給料は、ほかの社員と同じく、実際に働いていて仕事に見合った金額なら、会社の経費になります。専従者給与のような届出もいりません。

じゃあ月50万円でいこう!

社長、「仕事に見合った金額」です。

リスさんの言うとおりです。役員の親族など、役員と特殊な関係にある社員に払う給料のうち、不相当に高額な部分は会社の経費になりません。高すぎるかどうかは、仕事の内容や会社の収益、ほかの社員の給料、同業・同規模の会社の水準などに照らして判断されます。

わたしを役員にする場合は、どうなるんですか?

役員にする場合は、役員報酬のルールが当てはまります。毎月同じ額で払う、金額の改定は原則として事業年度の開始から3か月以内に行う、といった決まりを守る必要があります。
会社で家族に給料を払うときに確かめておきたいことは、次のとおりです。
- 実際に働いていること(仕事の内容、出勤の記録、仕事のやり取りが残っているか)
- 同じような仕事をしているほかの社員と比べて、高すぎないか
- 給料は口座振込で払い、給与台帳に記録すること
- ほかの社員と同じように源泉徴収をし、年末調整をすること
- 役員にする場合は、役員報酬の決め方と改定の時期のルールを守ること
あわせて、社会保険料も考えておく必要があります。会社で働く家族は、働き方によって社会保険に加入することになり、会社と本人の両方に保険料がかかります。
結局、家族に給料を払うと得なのか

で、結局、得なのか損なのか、どっちなんだ。

家族が実際に働いていて、仕事に見合った金額で払うなら、税金の面では得になることが多いです。ただ、給料の額によっては配偶者控除が使えなくなる(配偶者特別控除に切り替わる)、働き方によっては社会保険料がかかる、受け取った家族にも所得税や住民税がかかる、といった点もあります。金額を決める前に、一度試算してみるのが確実です。

月50万円の話は、いったん保留ですね。

姉にも、まず届出の期限を伝えておきます。
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まとめ:家族だからこそ「働いた記録」と「見合った金額」
今日の話を1文にすると、こうなります。
家族への給料は「実際に働いていて、仕事に見合った金額」が大前提。個人事業主は、届出などの特別なルールの範囲でしか経費にならない。
- 個人事業主が生計を一にする家族に払う給料は、原則として経費にならない
- 青色申告なら、届出をした「青色事業専従者給与」のうち相当な金額を経費にできる(届出期限は原則3月15日)
- 白色申告は「事業専従者控除」(配偶者86万円・その他の親族50万円が上限)
- 専従者になると、配偶者控除・扶養控除などは使えない
- 会社の場合は働きに見合った金額なら経費になるが、親族への不相当に高額な部分は経費にならない

家族だからこそ、ほかの社員と同じように記録を残しておく。それが一番の安心材料になります。
あなたの家族は、どんな仕事を、どれくらいの時間手伝っているでしょうか。まずは仕事の内容と時間を書き出してみると、払える給料の目安が見えてきます。
関連記事:青色申告承認申請書の書き方と提出期限/扶養控除はいくらまで?/役員報酬の適正額はいくら?
よくある質問
Q. 届出を出していない年に払った給料を、後から専従者給与として経費にできますか?
できません。青色事業専従者給与は、経費にしようとする年の3月15日(その年の1月16日以後に開業した場合などは、その日から2か月以内)までに届出を出していることが要件です。翌年から経費にしたい場合は、期限までに届出を出しましょう。
Q. 家族がほかに仕事を持ちながら、週に何日か手伝っている場合も専従者になれますか?
専従者は「その年を通じて6か月を超える期間、その事業に専ら従事していること」が要件です。ほかに仕事を持っている場合などは、要件を満たさないことがあります。手伝い方に合わせて確認してください。
Q. 会社の場合、家族に払う給料に金額の上限はありますか?
決まった上限額はありません。ただし、役員の親族などに払う給料のうち、仕事の内容やほかの社員の給料などに照らして不相当に高額な部分は、会社の経費として認められません。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月11日
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