クラウド会計に税理士を招待するときは、招待の操作そのものより「税理士に何を頼むか」を先に決めることが大切です。月次のチェックだけなら閲覧中心、記帳まで頼むなら取引の登録ができる権限、決算・申告まで頼むなら決算書類の作成ができる権限、というように、依頼の範囲で必要な権限が決まるからです。
この記事では、税理士と契約した後の共有設定として、freee会計での招待の流れと権限セットの違い、依頼範囲ごとの権限の決め方、共有する前と契約を終えるときの確認点を整理します。税理士の選び方や見分け方は扱いません。
招待の前に決めること:依頼の範囲と担当者
招待の画面では、相手のメールアドレスと権限を入力します。ここで迷わないために、先に次の3点を社内で決めておきます。
- 依頼の範囲:月次の記帳チェック、記帳の代行、決算・申告書の作成、税務相談のどこまでを頼むか
- どの製品に招待するか:会計ソフトだけか、給与計算ソフトにも招待するか。給与のデータには従業員の個人情報が含まれます
- 社内の窓口と管理者:招待やメンバーの削除ができる人(管理者)を誰にするか。税理士に任せきりにせず、会社側にも管理者を置きます
依頼の範囲を決めるときは、資格の線引きも意識します。税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士の業務で、税理士または税理士法人でない者は、法律に別段の定めがある場合を除き、これらを行うことはできません(e-Gov法令検索『税理士法 第2条』・第52条)。freeeの認定アドバイザーには、税理士・公認会計士のほかに中小企業診断士なども含まれるため、税務の相談や申告を頼む相手が税理士かどうかは別に確かめます。
freee会計で税理士を招待する流れ
freee会計では、認定アドバイザーである税理士・公認会計士を「アドバイザー」として事業所に招待できます(freee ヘルプセンター『税理士・会計士にfreeeの情報を共有する』)。流れは次のとおりです。
- freee会計の「管理者」の権限を持つメンバーがログインし、メンバー一覧からアドバイザーの追加に進む
- 税理士側から聞いた事業所番号・担当者のメールアドレスと、付与するfreee会計の権限を入力する
- 送信すると、アドバイザーの欄に「承認待ち」と表示される
- 税理士側が連携申請を承認すると、事務所の担当者がゲストメンバー(外部招待メンバー)として登録される
招待の操作ができるのは管理者の権限を持つメンバーだけです。事務所の他の職員を追加するときも、会社側の管理者がアドバイザーの詳細画面から担当者を追加し、その人ごとにfreee会計とfreee人事労務の権限を選びます。給与計算を頼む場合は、freee人事労務にも社労士や税理士を招待できます(freee ヘルプセンター『社労士や税理士を招待できますか?』)。細かい画面の操作は、公式ヘルプの手順に沿って進めてください。
freee会計の権限セットと依頼範囲の対応
freee会計には、管理者、一般(経理)、取引登録のみ、閲覧のみ、一般(経理以外)、申請・承認の6つのデフォルトの権限セットがあります(利用できる権限セットは契約の内容で異なります)。権限セットごとにできる作業が決まっていて、振替伝票・決算書の作成・月締めなど決算に関わる作業は管理者だけができます(freee ヘルプセンター『freee会計のメンバー招待・権限』)。
| 権限セット | できる主な作業 | できない主な作業 |
|---|---|---|
| 管理者 | すべての作業。振替伝票、決算書・確定申告書類の作成、消費税申告書の作成、月締め・年度締め、開始残高の設定、メンバーの削除 | ― |
| 一般(経理) | 取引の登録・修正、口座の明細の登録、勘定科目・税区分の設定、レポート・帳簿の閲覧 | 振替伝票、決算書類の作成、月締め・年度締め、開始残高の設定、メンバーの削除 |
| 取引登録のみ | 手動での取引の登録 | レポート・帳簿の閲覧、口座の明細の操作、設定の変更 |
| 閲覧のみ | 登録された取引の確認、レポート・帳簿の閲覧・出力、固定資産台帳の確認 | 取引の登録・修正、決算書類の作成 |
この表をもとに、依頼の範囲と権限を対応させると次のようになります。
| 依頼の範囲 | 考えられる権限 | 判断の分かれ目 |
|---|---|---|
| 月次の記帳チェック(直すのは会社側) | 閲覧のみ | 指摘を受けて会社が直す運用なら、閲覧と出力で足りる |
| 月次の記帳チェック(税理士が直す) | 一般(経理) | 取引の修正までは一般(経理)でできるが、振替伝票は管理者だけ |
| 記帳の代行 | 一般(経理)または管理者 | 決算整理の振替伝票まで頼むかどうか |
| 決算・申告書の作成 | 管理者 | 決算書類・消費税申告書の作成、年度締めは管理者だけ |
freeeのヘルプでは、アドバイザーがその事業所の全機能を操作・閲覧することに問題がない場合は、管理者にすることを勧めています。決算・申告まで頼む場合は管理者が必要になることが多い一方、管理者はメンバーの削除や開始残高の設定もできるため、会社側にも管理者を残し、権限の変更を誰が行うかを決めておきます。
マネーフォワード クラウドを使っている場合
マネーフォワード クラウド会計を使っている場合も、考え方は同じです。依頼の範囲を決め、その範囲で必要な権限だけを税理士の担当者に与え、会社側にも管理できる人を残します。
ただし、招待の手順、選べる権限の名称と範囲、外部の会計事務所との連携の方法は、freeeとは異なります。権限の名前が似ていても、できる作業が同じとは限りません。招待の前に、マネーフォワード クラウドの公式ヘルプで、権限ごとに「仕訳の登録・修正」「決算書類の作成」「メンバーの管理」ができるかを確認し、上の表の「依頼の範囲」と突き合わせてください。
共有する前に確認すること
招待すると、税理士の担当者は会社の帳簿や取引の情報を見られるようになります。共有の前に、次の点を確かめておくと安心です。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 契約の範囲と権限が一致しているか | 頼んでいない作業ができる権限を与えると、誰がどの修正をしたかの管理が難しくなる |
| 給与計算ソフトへの招待の要否 | 給与のデータには従業員の個人情報が含まれる。個人データの取扱いを委託する場合、委託先は第三者に当たらない一方、委託元には委託先を監督する義務がある(個人情報の保護に関する法律第25条・第27条) |
| 月締めの運用 | 税理士が確認を終えた月を締める運用にすると、確認済みの月の取引が後から変わるのを防げる。freee会計では月締めは管理者の作業 |
| 会社側の管理者 | 担当者の交代や契約の終了のときに、会社側でメンバーを削除・変更できるようにする |
税理士には、正当な理由なく業務上知り得た秘密を漏らしてはならない守秘義務があり、税理士でなくなった後も同様です(税理士法第38条)。それでも、共有する範囲を必要な分にとどめておくことは、会社側の情報管理として意味があります。
クラウド会計に慣れた税理士を探す段階の注意点は、クラウド会計に対応した税理士の見分け方にまとめています。記帳の代行を頼む相手が税理士かどうかで何が変わるかは経理代行と税理士の違いで扱っています。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
契約を終えるとき・担当者が代わるとき
顧問契約を終えたときは、税理士の担当者をメンバーから削除します。freee会計では、設定のメンバー一覧から削除でき、freee人事労務では権限管理のメンバー一覧から削除します。
削除の前に、次の点を確かめておきます。
- 税理士が作成した決算書・申告書の控えや、仕訳の根拠となる資料を会社側で受け取っているか
- 差戻し中の申請や下書きが残っていないか。freee会計では、メンバーを削除すると、そのメンバーが申請者の差戻し中の経費精算などを他のメンバーが修正・再申請できなくなることがあると案内されています
- 新しい税理士に引き継ぐ場合、新旧の担当者が同時に操作する期間を作るか、どの月から担当を切り替えるか
法人の帳簿と書類は、確定申告書の提出期限の翌日から7年間(青色申告で欠損金が生じた事業年度は10年間)保存する必要があります(国税庁『No.5930 帳簿書類等の保存期間』)。税理士との契約が終わっても、帳簿の保存の義務は会社に残るため、データの書き出しや控えの受け取りを契約の終了前に済ませておきます。
まとめ:依頼の範囲から権限を逆算する
- 招待の前に、依頼の範囲・招待する製品・会社側の管理者を決める
- freee会計は6つのデフォルトの権限セットがあり、振替伝票・決算書類の作成・月締め・年度締めは管理者だけができる
- 月次チェックだけなら閲覧のみ、記帳の修正まで頼むなら一般(経理)、決算・申告まで頼むなら管理者が目安
- マネーフォワード クラウドは権限の名称と範囲が異なるため、公式ヘルプで作業ごとに確認する
- 税務の相談・申告を頼む相手が税理士かを確かめ、契約の終了時は削除の前に控えと資料を受け取る
権限は後から変更できるので、最初は依頼の範囲に合わせて必要な分だけを与え、運用しながら調整していくのが無理のない進め方です。
freee・マネーフォワードで経理を回したい方へ
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、クラウド会計を使った顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 税理士にIDとパスワードを教えて、社長のアカウントでログインしてもらってもよいですか?
アカウントを共有すると、誰がどの操作をしたかの記録が分けられず、権限を絞ることもできません。担当者が代わったときにパスワードの変更が必要になるなど、管理の手間も増えます。会計ソフトに用意された招待の機能で、担当者ごとのアカウントを使ってもらう方が安全です。
Q. 閲覧のみの権限でも、税理士は決算の準備ができますか?
帳簿やレポートを確認・出力することはできるため、内容のチェックや決算の検討はできます。ただし、freee会計では振替伝票や決算書類の作成は管理者だけができるため、決算整理の仕訳や申告書の作成までをソフト上で頼む場合は、その時期だけ権限を変えるなどの調整が必要です。
Q. 税理士が仕訳を直した内容は、会社側で分かりますか?
担当者ごとのアカウントで招待していれば、登録者で取引を絞り込むなどして、誰が登録したかを追えます。直してもらった内容の理由は、月次の報告やコメントで共有してもらうよう、最初に取り決めておくと後で確認しやすくなります。
Q. 認定アドバイザーでない税理士にも共有できますか?
freee会計では、認定アドバイザーは通常のメンバーとは異なる方法で招待します。認定アドバイザーでない税理士は、従業員などと同じ内部メンバーとして招待されます。個人事業主の一部の契約内容では、認定アドバイザー以外をメンバーとして招待できないため、招待の前に契約内容を確認しておきます。どちらの方法になるかは、招待の前に税理士に確認しておくと手続がスムーズです。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月22日
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