「ちょっと会社のお金を借りるだけ。そのうち返すから大丈夫」。
社長が会社のお金を個人的に借りると、会社の帳簿には「役員貸付金」が残ります。無利息のままだと、本来払うべき利息との差額が、社長への給与として課税されることがあります。決算書に残った役員貸付金は、金融機関からも厳しく見られがちです。
この記事は、リーパル会計事務所のキャラクター・りーぱるくん、思い立ったらすぐ動くイノシシ社長、慎重派の経理担当リスさんの会話で進みます。
※りーぱるくん以外の登場人物と会社は、説明のための架空の例です。記事の内容は2026年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいています。
登場人物

リーパル会計事務所のりーぱるくんです。会社のお金が出ていく話も、戻ってくる話も、順番に整理していきます。

イノシシ社長だ!社員8人の販促物の制作会社をやってる。思い立ったら即行動がモットーだ!

経理のリスです。どんぐりも会社のお金も、コツコツ数えて大事にしまっておく派です。
社長が会社のお金を借りると「役員貸付金」になる

りーぱるくん、聞いてくれ。自宅のリフォーム代が足りなくて、会社の口座から300万円借りたんだ。自分の会社だし、問題ないよな?

社長、その話、今日はじめて聞きました……。帳簿にどう書けばいいんですか。

会社のお金を社長個人が借りたときは、会社の帳簿では「役員貸付金」という資産になります。会社から見ると「社長にお金を貸していて、返してもらう権利がある」状態です。

返すつもりはあるぞ。いつかは。

その「いつか」が問題になりやすいんです。順番に見ていきましょう。
会社と社長は、法律上は別の人格です。会社の口座のお金は、社長のものではなく会社のものです。社長個人の支払いに会社のお金を使えば、会社から社長への貸付け(役員貸付金)として記録することになります。
使い道や金額が決まる前に一時的に出したお金は「仮払金」として処理されることもあります。ただ、精算されないまま残っていると、実態に合わせて社長への貸付けなどに整理し直すことになります。
無利息だと、利息との差額が「社長の給与」になる

会社から借りるのに、利息なんて払わなくていいだろ?自分の会社なんだから。

そこが一つ目の落とし穴です。会社が役員に無利息や低い利息でお金を貸すと、本来払うべき利息との差額は、社長への給与として課税されることになっています。

えっ、借りただけなのにお給料の扱いですか。

「本来払うはずの利息を払っていない分だけ、社長が得をしている」と考えるんです。
国税庁は、役員や使用人にお金を貸したときの利息の基準を、次のように示しています(タックスアンサーNo.2606)。
| 貸付けの状況 | 基準になる利率 |
|---|---|
| 会社が銀行などから借りたお金を、社長に貸した | その借入金の利率 |
| それ以外で、2026年中に貸し付けた | 年1.3% |
| (参考)それ以外で、2022年〜2025年中に貸し付けた | 年0.9% |
利率は、貸し付けた年によって決まります。この利率で計算した利息と、社長が実際に払う利息との差額が、給与として課税されます。
イノシシ社長の場合(2026年に300万円を無利息で借りた)
300万円 × 1.3% = 年3万9,000円
無利息で1年間借りたままなら、この3万9,000円が社長への給与として課税されます。社長が会社に年1.3%の利息(年3万9,000円)を払っていれば、差額はゼロです。

年3万9,000円か。思ったより大したことないな。

社長、金額より「知らないうちにお給料の扱いになっていた」のが怖いんです。

そのとおりです。給与として扱われれば所得税の対象になります。後から税務調査で指摘されて直すのは、手間もかかります。
なお、次のいずれかに当たる場合は、給与として課税しなくてよいとされています。
- 災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要になり、その資金に充てるため、合理的な金額・返済期間で貸し付ける場合
- 会社の借入金の平均調達金利など、合理的と認められる貸付利率を決めて、その利率で貸し付ける場合
- 上の基準の利率で計算した利息と、実際に払う利息との差額が、1年間で5,000円以下の場合
たとえば、2026年に38万円を無利息で1年間借りた場合、1.3%で計算した利息は4,940円です。差額が5,000円以下なので、給与として課税しなくてよいことになります。300万円の場合は、この例外には当たりません。
決算書に残ると、銀行からの見え方が変わる

りーぱるくん、来年は新しい印刷機を買うために、銀行から借りる予定なんです。役員貸付金があると影響しますか?

金融機関は決算書を見て融資を判断します。役員貸付金が大きいと「会社のお金が社長個人に流れている」「本当に返ってくるのか分からない」と受け止められやすいんです。

返すって言ってるのに……。

返済の約束が書面になっていて、実際に返済が進んでいれば説明できます。逆に、毎年少しずつ増えているだけだと、資産として見てもらえないこともあります。
金融機関は、決算書の資産の中身を一つずつ確かめます。役員貸付金は、回収できるかどうかが社長個人の事情に左右されるため、会社の資産としては割り引いて見られることが多い科目です。融資を予定している会社ほど、早めに整理しておきたいところです。
役員貸付金を増やさない・減らすための3つの手順

よし、分かった。今日中に全部返す!……と言いたいところだが、300万円はすぐには無理だ。

一度に返せなくても大丈夫です。大事なのは、借りたお金を「きちんとした貸し借り」にしておくことです。
1. 契約書を作り、返済の約束を形にする
金額、利率、返済期日、毎月の返済額を決めて、会社と社長の間で金銭消費貸借契約書を作ります。利息を上で紹介した利率を下回らないように決めて実際に受け取れば、差額が給与として課税されることはありません。会社は受け取った利息を収益として計上します。
2. 返済の元手を決める(役員報酬の見直しは時期に注意)
社長が返済するお金は、多くの場合、会社からの役員報酬が元手になります。役員報酬を上げて返済に回す方法もありますが、役員報酬を期の途中で変えると、増やした部分が法人税の計算で経費(損金)にならないことがあります。役員報酬の改定は、原則として事業年度の開始から3か月以内に行います。詳しくは役員報酬の3か月ルールの記事をご覧ください。
3. 会社のお金を個人の支払いに使わないルールを作る
個人の買い物に会社のカードや口座を使わない、立て替えたら月末までに精算する、といったルールを決めておくだけで、役員貸付金が増えるのを防げます。

社長、カードの明細に家族旅行みたいなものがあったら、今後は全部確認させてもらいますね。

リスさんの目が光ってる……。
まとめ:会社のお金を借りるなら「契約・利息・返済」をそろえる
今日の話を1文にすると、こうなります。
社長が会社のお金を借りること自体は禁止されていないが、契約・利息・返済の実態がないと、給与としての課税や融資の評価で不利になる。
- 社長個人のために会社のお金を使うと「役員貸付金」として帳簿に残る
- 無利息の場合、2026年中の貸付けなら年1.3%で計算した利息との差額が、社長の給与として課税されることがある(差額が年5,000円以下などの例外あり)
- 決算書の役員貸付金は、金融機関から割り引いて見られやすい
- 契約書・利息・返済計画をそろえ、個人の支払いに会社のお金を使わないルールを作る

借りたお金は、決めたとおりに返す。会社のお金は、きちんと会社に戻しましょう。

……りーぱるくん、そのアフロで言われると、妙に説得力があるな。

社長、感心してないで返済計画を作りましょう。
あなたの会社の決算書に、役員貸付金や仮払金が残っていないでしょうか。決算書の数字から会社の状態を確かめたい法人の方は、決算書の診断ツールもご利用いただけます。
関連記事:経営者のための決算書の読み方/銀行融資の審査が通らない理由と対策
よくある質問
Q. 反対に、社長が会社にお金を貸している場合(役員借入金)は問題になりますか?
会社が社長から無利息で借りていても、社長に給与として課税される問題は通常起きません。ただし、社長に万一のことがあると、会社への貸付金は社長の相続財産になります。金額が大きい場合は、早めに整理の方法を考えておくと安心です。
Q. 短い期間で返すなら、利息は気にしなくてよいですか?
期間が短くても、無利息であれば考え方は同じです。ただ、貸付けの金額と期間によっては、基準の利率で計算した利息との差額が年5,000円以下に収まり、給与として課税しなくてよい場合もあります。
Q. 仮払金と役員貸付金は何が違いますか?
仮払金は、使い道や金額がまだ確定していない支出を一時的に記録しておく科目で、出張費の前渡しなど、後で精算することが前提です。精算されないまま残っているものは、実態に合わせて経費や役員貸付金などに振り替える必要があります。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月11日
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