毎月届く試算表を眺めても、売上と利益以外のどこを見ればよいか迷っていませんか。まずは預金の残高が通帳と合っているかを確かめ、ほかの残高や損益の動きを見ていきましょう。前月や前年同月と比べると、急な変化や、長く動かない金額に気づきやすくなります。
この記事では、社長が毎月確認したい箇所と、気になる数字を見つけたときの確認手順を紹介します。
決算書全体は経営者のための決算書の読み方、月次決算の進め方は中小企業の月次決算のやり方をご覧ください。
顧問税理士をお探しの方へ
会社の規模や記帳の状況をお聞きして、顧問料をお見積りします。
顧問契約のお見積り(無料)はこちら →数字で先に確かめたい方は、無料の決算診断はこちら。全国オンライン対応です。
月次試算表とは:決算書の「途中経過」
中小企業庁の『「中小会計要領」の手引き』は、日々記帳したものを毎月や四半期ごとなど定期的に集計することで、自社の経営状況を的確に把握していくことが重要だとしています。この毎月の集計表が月次試算表です。
試算表は、決算書と同じ2つの部分からできています。
| 部分 | 表しているもの | 見るときの単位 |
|---|---|---|
| 貸借対照表の部分(資産・負債・純資産) | 月末時点の残高 | その月末にいくら残っているか |
| 損益計算書の部分(売上・費用) | 期首からその月までの累計(当月分を並べる形式もある) | その月にいくら動いたか・期首から累計でいくらか |
決算のときには、期中の誤りの訂正や減価償却費の計上などの決算整理を行ってから決算書を作ります。月次試算表はその前の段階なので、決算書とまったく同じ数字にはなりません。それでも、月ごとの動きを見るには十分な情報が入っています。
見る前の前提として、その月の取引が月末まで記帳され、預金の残高が通帳と合っていることを確かめておきます。記帳が途中までしか終わっていない試算表は、どこを見ても正しい判断ができないからです。
社長が毎月確認したい5か所
1. 現金・預金:通帳や手元の現金と合っているか
最初に見るのは現金と預金の残高です。預金は月末の通帳(ネットバンキングの残高)と、現金は金庫やレジの実際の金額と一致しているかを確かめます。中小会計要領の手引きは、記帳漏れがあると、現金預金の帳簿残高と実際の在高が違ってくるなどの問題が生じると説明しています。
現金の残高がマイナスになっている試算表は、それだけで誤りがあると分かります。手元の現金がマイナスになることはないため、入金の記帳漏れか、出金の二重計上が起きています。
2. 売掛金と買掛金:回収と支払いが予定どおりか
売掛金は、売上を計上したがまだ入金されていない金額です。手引きは、得意先ごとに期日までに売掛金が支払われているか、支払われていなければ期日からどのくらい経過しているかを管理することが有用だとしています。
- 売掛金の残高が、売上の何か月分にあたるかを見る(たとえば回収条件が「月末締め翌月末払い」なら、月末の売掛金はおおむね当月の売上1か月分が目安。※説明のための架空の例です。)
- 得意先ごとの残高で、同じ金額が何か月も残っている先がないかを見る
- 買掛金も同じように、仕入先への支払いが遅れていないか、逆に払い済みの分が残っていないかを見る
3. 仮払金・仮受金などの仮の科目:残り続けていないか
仮払金・仮受金・立替金・未決済の科目などは、記帳した時点で内容が確定していない取引を一時的に置いておく科目です。いずれ正しい科目に振り替えるものなので、残高が月ごとに増え続けていたり、何か月も同じ金額で残っていたりするのは、確認が止まっているサインです。役員と会社の間の貸し借り(役員貸付金・役員借入金など)も、増減の理由を説明できるかを毎月確かめておきます。
4. 預り金・未払金:税金や保険料の納付が漏れていないか
預り金には、給与から差し引いた源泉所得税や社会保険料の本人負担分が入ります。源泉徴収した所得税は、原則として給与などを実際に支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている場合は、1月から6月までの分を7月10日、7月から12月までの分を翌年1月20日までに納めます。ただし、納期の特例の対象は、給与や退職金と、税理士、弁護士、司法書士などの一定の報酬から源泉徴収した分に限られます。それ以外の報酬から源泉徴収した分は、原則どおり翌月10日までの納付です。また、特例は申請書を出した月の翌月に源泉徴収する分から適用されます。
源泉所得税の預り金は、納付期限が来れば納付で減るはずです。納付の時期を過ぎても残高が積み上がっているときは、納付漏れか、納付の記帳漏れのどちらかです。未払金・未払費用も、毎月の支払いと合わせて増減しているかを見ます。
5. 損益:売上・粗利・固定費の動き
損益の部分では、売上高、売上総利益(粗利)とその率、人件費や家賃などの固定費、営業利益を見ます。見方の基本は「比べる」ことです。
| 比べる相手 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 前月 | 直近の変化(売上の伸び・費用の急増) | 季節の影響を受ける業種は、前月比だけでは判断しにくい |
| 前年同月 | 季節の影響をならした変化 | 前年に特殊な取引があった月は、その分を除いて見る |
| 期首からの累計と予算 | 決算までの着地の見込み | 決算でまとめて計上する費用(減価償却費など)が入っていないことがある |
異常な数字の見つけ方:4つの視点
5か所を見るときに、次の4つの視点を当てはめると、おかしな数字を早く見つけられます。
| 視点 | 例 | よくある原因 |
|---|---|---|
| 符号がおかしい | 現金・預金・売掛金・買掛金・商品の残高がマイナス | 記帳漏れ、二重計上、入金と売上の結び付けの誤り |
| 前月・前年同月から大きく変わった | 粗利率が急に上下した、ある費用が倍になった | 仕入や売上の計上月のずれ、科目の誤り、実際の変化 |
| あるはずのものが無い・2回ある | 家賃・給与・リース料・保険料など毎月の費用が、ある月だけ無い、または2か月分ある | 請求書の未着・未処理、引落しと請求書の二重計上 |
| 動かない | 仮払金や特定の得意先の売掛金が何か月も同じ金額 | 内容の確認待ち、回収の遅れ、入金の消込み漏れ |
粗利率の急変は、在庫の扱いが原因になっていることもあります。月次で棚卸しをしていない会社では、仕入れた月に費用が大きく出て、売れた月に利益が大きく出るなど、月ごとの粗利がぶれやすくなります。月次で在庫を数えているかどうかで、粗利率の見方が変わります。
数字がおかしいときに確かめる順番
異常な数字を見つけたら、次の順で確かめると原因にたどり着きやすくなります。
- 通帳・カード明細と照らす:預金残高、カードの未払金の残高が明細と合っているか
- 請求書の計上月を確かめる:売上・仕入・経費の請求書が、正しい月に計上されているか
- 未処理の取引を探す:届いていない請求書、立替精算の未処理、現金の出し入れの記録漏れ
- 科目を確かめる:同じ種類の支出が月によって違う科目に入っていないか
- 担当者や依頼先に質問する:上の4つで分からないものは、取引の中身を知る担当者や、記帳を任せている先に確認する
社長が自分で仕訳を直す必要はありません。「この科目のこの金額は何か」と聞ける状態にしておくことが、月次で試算表を見る目的です。
月次の数字を決算と資金繰りに使う
月次試算表で累計の利益が分かっていれば、決算の数か月前から、利益と税金の見込みを立てられます。法人税の確定申告は、原則として各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に行うと法人税法74条で定められています(定款の定めなどにより申告期限の延長の特例を受けている法人は、延長後の期限)。決算月に入ってから数字をまとめ始めると、見込みを立てる時間が足りなくなります。
決算前にどのような手当てができるか、またそれが自社に合うかどうかは、累計の数字をもとに試算しないと決まりません。月次の数字が早く固まっているほど、検討に使える時間が長くなります。
資金の面では、利益が出ていても売掛金の回収が遅れたり在庫が増えたりすると、手元の資金は減ります。手引きは、仕入れた在庫が売れずに眠っていると、売り上げて代金を回収するまでの間そのお金が使えず、資金繰りを圧迫する原因になると説明しています。損益の部分だけでなく、売掛金・在庫・預金の残高の動きを合わせて見ることで、黒字なのにお金が足りないという状態を早めに察知できます。
毎月の試算表を受け取るために決めておくこと
試算表を毎月見る習慣は、試算表が毎月早く届くことが前提です。経理担当者や外部の依頼先と、次の点を決めておくと続けやすくなります。
| 決めておくこと | 内容 |
|---|---|
| 資料の締め日 | 請求書・領収書・通帳の写しなどを、毎月何日までに渡すか |
| 試算表の受け取り日 | 翌月の何日ごろに試算表を受け取るか |
| 見る資料の形 | 当月だけの表か、月ごとに並べた推移表か、前年同月との比較表か |
| 質問の窓口 | 数字について誰に聞くか、回答をどう受け取るか |
記帳や試算表の作成を外部に任せる場合、作業量は毎月の仕訳数、資料の届き方(紙か、通帳やカードのデータ連携か)、業種による取引の複雑さで変わります。依頼先を比べるときは、試算表がいつ届くのかと、数字について質問できるかを確かめておきます。
まとめ:5か所を、4つの視点で毎月比べる
- 月次試算表は、決算整理の前の「決算書の途中経過」。見る前に、預金残高が通帳と合っているかを確かめる
- 毎月見る5か所は、現金・預金、売掛金と買掛金、仮の科目、預り金と未払金、損益
- 異常は、符号(マイナス)、前月・前年同月との差、毎月の費用の欠落や重複、動かない残高で見つける
- 源泉所得税の預り金は原則として翌月10日(納期の特例の対象分は7月10日・翌年1月20日)の納付で減るはず。積み上がっていれば確認する
- 累計の利益と資金の動きを毎月つかんでおくと、決算前の検討と資金繰りに時間を使える
試算表を読むことは、社長が仕訳を覚えることではなく、「どの数字がおかしいか」に気付いて質問できるようになることです。
顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 試算表と決算書は何が違いますか?
試算表は帳簿を集計した途中経過で、決算書は決算整理(誤りの訂正、減価償却費の計上など)を行ったあとの最終的な書類です。月次試算表には、決算でまとめて計上する費用がまだ入っていないことがあるため、累計の利益は決算の利益と一致しないことがあります。
Q. 毎月、試算表のどこから見ればよいですか?
最初に預金残高が通帳と合っているかを見ます。ここがずれていると、ほかの数字も信用できないためです。そのあとで、売掛金・仮の科目・預り金の残高、最後に損益を前月・前年同月と比べます。
Q. 仮払金が毎月残っています。問題がありますか?
仮払金は、内容が確定するまで一時的に置く科目なので、いずれ正しい科目に振り替える必要があります。何か月も残っている場合は、精算が済んでいないのか、内容の確認が止まっているのかを担当者に確かめます。決算の時期にまとめて調べると、内容を思い出せないことが増えます。
Q. 売上は伸びているのに預金が減っています。なぜですか?
売上の代金がまだ回収されていない(売掛金が増えている)、在庫が増えている、借入金の返済や設備の購入があった、などが考えられます。損益の部分だけでなく、売掛金・商品・借入金・預金の残高の動きを並べて見ると、どこにお金が出ていったかが分かります。
Q. 前年同月と比べるのはなぜですか?
業種によっては、売上や費用に季節による波があります。前月とだけ比べると季節の波を変化と見誤ることがあるため、前年の同じ月と比べて、その年に固有の変化かどうかを確かめます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月28日
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見