会社の住所を移した、社名を変えた、社長が交代した。法務局で登記を済ませて、手続きは終わったと思っていませんか。登記は法務局への手続きで、税務署には会社が別に「変わりました」と届け出ます(国税庁法人番号公表サイト)。都道府県・市町村にも、それぞれ届出をします。この記事では、どの変更で何を出すか、期限と提出先、税務署へ出す「異動届出書」の書き方、消費税・インボイス・給与の届出との関係を整理します。
根拠は、国税庁の手続の案内と届出書の記載要領、法人税法・所得税法、自治体の案内です。自治体の届出は、要否・期限・添付書類が自治体ごとに違うので、最後は本店のある自治体の案内で確かめてください。
この記事の要点
- 法務局で変更登記をすると、その情報は国税庁へ連絡され、法人番号公表サイトの情報は更新されます。それでも税務署には、別に異動の手続が必要です(国税庁法人番号公表サイト)。
- 税務署へは「異動届出書」を出します。本店の移転(納税地の異動)・社名(商号)の変更・代表者の変更・事業目的の変更・資本金の額の異動・解散などが対象です(国税庁 C1-8)。
- 時期は「異動等後速やかに」、出す先は「異動前の納税地の所轄税務署長」、添付書類は「なし」です(国税庁 C1-8)。
- 異動届出書の「消費税」の欄を「該当」にして出せば、消費税の異動届出書とインボイスの登録事項の変更届出書を重ねて出す必要はありません(国税庁 C1-8・記載要領)。
- 給与を払っている会社が、給与の事務をする事務所を移したり、社名を変えたりした時は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」も出します。期限は移転の日から1か月以内です(国税庁・所得税法230条)。
- 都道府県・市町村にも届け出ます。例えば東京都は変更の日から10日以内です(東京都主税局)。
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なぜ登記だけでは終わらないのか
登記は、会社の住所や社名、役員などを法務局の登記簿に記録して、世の中に公示する手続きです。税金の手続きは、これとは別に、税務署・都道府県・市町村がそれぞれの名簿で管理しています。
国税庁の法人番号公表サイトは、法務局で変更登記をすると、その情報は国税庁へ連絡され、法人番号公表サイトの情報も更新されると説明しています。そのうえで、税務署に対しては別途異動の手続が必要としています。
届出をしないままだと、税務署からの書類が古い住所や社名で届く、申告書や納付書の宛先と登記の内容が食い違う、といったことが起きます。登記を済ませたら、続けて税務の届出をする、と覚えておくと安全です。
どの変更で、何を出すか
税務署へ出す「異動届出書」は、国税庁の案内(C1-8)で、次の変更をした法人が出すものとされています:事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人の合併・分割、法人区分の変更、解散・清算結了、支店・工場等の異動など。
登記と並べると、次のとおりです。
| 登記した変更 | 税務署 | 都道府県・市町村 |
|---|---|---|
| 本店の移転(会社の住所の変更) | 異動届出書(納税地の異動)。給与の事務をする事務所が移るなら、給与支払事務所等の移転の届出も | 届出(移転先と移転元の両方が関わる場合があります) |
| 商号の変更(社名の変更) | 異動届出書。給与支払事務所等の名称が変わるなら、その届出も | 届出 |
| 代表取締役の交代 | 異動届出書(代表者の変更) | 届出 |
| 事業目的の変更 | 異動届出書 | 自治体の案内を確かめる |
| 増資・減資(資本金の額の変更) | 異動届出書 | 届出(資本金の額で税額が変わる税目があります) |
| 解散 | 異動届出書(解散の後も申告は続きます) | 届出 |
役員の任期が来て同じ人が続ける場合(登記の実務でいう「重任」)や、代表者以外の取締役・監査役だけの変更は、国税庁の案内に挙がる異動事項には含まれていません。自治体の届出の要否は、それぞれの案内で確かめてください。
税務署への異動届出書|期限・提出先・出し方
| 項目 | 国税庁の案内(C1-8) |
|---|---|
| 提出の時期 | 異動等後速やかに |
| 提出先 | 異動前の納税地の所轄税務署長 |
| 添付書類 | なし(異動の内容を確かめるため、定款等の写しを見せるよう求められる場合があります) |
| 出し方 | e-Tax で作成・提出。書面なら1部を持参または送付 |
本店を移した場合、会社の法人税の納税地は本店の所在地なので(法人税法16条)、納税地が変わります。法人税法は、納税地に異動があった場合、異動前の納税地の所轄税務署長に、遅滞なく届け出ることとしています(法人税法20条・法人税法施行令18条)。別の税務署の管轄へ移る場合も、出す先は移転前の税務署です。
異動届出書の書き方|押さえる欄
様式と記載要領は、国税庁の C1-8 のページにあります。押さえる欄は次のとおりです。
- 納税地の異動:本店を移した場合は、様式にある「納税地の異動」の段を使います。
- 異動事項・異動前・異動後:社名・代表者・事業目的などの変更は、何が、何から何に変わったかを書きます。
- 異動年月日(登記年月日):日付は各段に1つ書きます。記載要領の記載例は、本店を移した時(転出)について「法務局の本店移転登記の日を記載」としています。
- 「消費税」の欄:消費税の課税事業者やインボイスの登録を受けている会社は、「1:該当」を選びます(記載要領。次の節)。
- 給与支払事務所等の移転の有無:給与の事務をする事務所が移るか、移らないが名称等が変わるかを選びます。「有」または「無(名称等変更有)」の場合は、別の届出も必要です(記載要領)。
- 税理士署名:税理士が作成した場合に署名する欄です。
消費税・インボイスの届出は、異動届出書で兼ねられる
国税庁の案内(C1-8)と記載要領は、「法人の消費税異動届出書」や「適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書」の対象になる変更について、異動届出書の「消費税」の欄を「該当」にして出せば、これらを重ねて出す必要はないとしています。
インボイスの登録を受けている会社の社名と本店の所在地は、国税庁の公表サイトに載っています。これは会社が変更を届け出て、税務署が登録を直すことで変わります。異動届出書の消費税の欄を「該当」にし忘れないようにします。
給与を払っている会社は「給与支払事務所等」の届出も
役員報酬や給与を払っている会社は、給与の事務をする事務所(多くは本店)を税務署に届け出ています。この事務所を移した時は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を出します。
- 時期:移転の事実があった日から1か月以内(国税庁の案内)
- 出す先:移転前の事務所の所在地の所轄税務署
- 根拠:所得税法230条、所得税法施行規則99条
異動届出書の記載要領は、事務所が移らなくても、社名の変更などで名称等が変わる場合(「無(名称等変更有)」)にも、この届出が必要としています。
都道府県・市町村への届出
法人住民税は都道府県と市町村が、法人事業税は都道府県が課税します。こちらも、それぞれの定めで異動の届出をします。要否・期限・添付書類は自治体ごとに違います。
- 東京都:異動届出書を、廃止・変更の日から10日以内に出します(東京都主税局)。
- 大阪市:異動の届出は遅滞なく出し、登記事項証明書など(写し可)を添付します。解散の時は別の様式で、期限も別です(大阪市)。
- 神戸市:異動があった場合は、異動届と添付資料を2か月以内に出します。本店の移転・社名・代表者・資本金・解散などの場合は、履歴事項全部証明書のコピーを添付します(神戸市)。
本店を別の都道府県・市町村へ移した場合は、移転前と移転後の両方の自治体が関わることがあります。それぞれの自治体の案内で確かめてください。
登記の後の届出の流れ
- 法務局で変更の登記を済ませ、登記事項証明書を取る(自治体の届出で写しを求められることがあります)。
- 税務署へ異動届出書を出す。消費税の課税事業者・インボイスの登録を受けている会社は、消費税の欄を「該当」にする。
- 給与の事務をする事務所が移った・名称等が変わった場合は、給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書も出す。
- 都道府県・市町村へ、それぞれの様式で異動の届出を出す。
- 銀行口座・社会保険・取引先への連絡など、税務以外の変更も進める。
届出書の作成はリーパル会計事務所へ
税務署・都道府県・市町村への届出書の作成と提出は、税理士に頼めます。リーパル会計事務所では、登記の後の異動届出書などの作成と提出を承っています。変更の内容と日付を伺い、どこに何を出すかを確かめたうえで作成します(登記の後の税務の届出(異動届出書)の作成)。
登記の申請書や議事録の作成は、当事務所では行っていません。登記の書類の文面を作る時は、法務局の記載例のほか、入力した事実から記載例の形で書類を作る無料のツール touki(運営:株式会社Leapal Technologies)もあります。
よくある質問
法務局で登記をすれば、税務署にも自動で伝わりますか。
登記の情報は国税庁へ連絡され、法人番号公表サイトの情報は更新されます。ただし、税務署には別に異動の手続が必要です(国税庁法人番号公表サイト)。
本店を別の税務署の管轄へ移しました。どちらの税務署に出しますか。
移転前の納税地を所轄する税務署長に出します(国税庁 C1-8・法人税法20条)。給与支払事務所等の移転の届出も、移転前の事務所の所在地の所轄税務署へ出します。
役員が任期満了で同じ人に再任されました。税務署への届出は要りますか。
同じ人の再任は、国税庁の案内に挙がる異動事項(代表者の変更など)には含まれていません。代表取締役が別の人に替わった場合は、代表者の変更として異動届出書を出します。
社長の住所が変わりました。届出は要りますか。
国税庁の案内(C1-8)に挙がる異動事項は「代表者の変更」で、代表者の住所の変更そのものは挙がっていません。自治体の扱いも含めて、届出の要否は提出先の案内で確かめてください。当事務所でも確かめたうえで作成します。
添付書類は要りますか。
税務署への異動届出書は、添付書類は「なし」とされています。ただし、異動の内容を確かめるため、定款等の写しを見せるよう求められる場合があります(国税庁 C1-8)。自治体には、登記事項証明書の写しの添付を求めるところがあります。
まとめ
- 登記は法務局への手続きです。税務署・都道府県・市町村には、会社が別に届け出ます。
- 税務署へは異動届出書を、異動等の後速やかに、異動前の納税地の所轄税務署長へ出します。添付書類はなしです。
- 消費税の欄を「該当」にすれば、消費税の異動届出書とインボイスの登録事項の変更届出書は重ねて出さなくて済みます。
- 給与の事務をする事務所が移る・名称等が変わる場合は、給与支払事務所等の届出(1か月以内)も出します。
- 自治体の届出は、要否・期限・添付書類が自治体ごとに違います。
届出書の作成と提出は、リーパル会計事務所が承ります。
参考にした法令・資料
- 国税庁 C1-8 異動事項に関する届出・異動届出書の記載要領等
- 国税庁 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
- 国税庁 消費税異動届出手続
- 国税庁法人番号公表サイト 名称・所在地等の変更の届出
- 法人税法:16条、20条
- 法人税法施行令:18条
- 所得税法:230条
- 東京都主税局 法人事業税・法人都民税(届出・申請)
- 大阪市 法人設立、異動等の届出
- 神戸市 法人市民税の異動届
この記事は2026年10月時点の法令と、国税庁・自治体などの公表資料に基づいて書いています。
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