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会社設立後の社会保険手続きガイド|必要書類や提出期限、支払い時期も解説

会社設立
会社設立後の社会保険手続きガイド 必要書類や提出期限・支払い時期も解説

会社を設立し、いよいよ事業が本格始動する高揚感の中で、多くの経営者が最初に直面する「事務的な壁」が社会保険の手続きです。

「一人社長でも入らなければいけないのか?」「手続きの期限が短すぎて間に合わない」「結局、毎月いくら払うことになるのか?」といった疑問や不安は、プロの視点から見れば非常に正当なものです。なぜなら、社会保険は制度が複雑なだけでなく、手続きの遅れが将来的なキャッシュフローや社会的信用に直結するからです。

本記事では、会社設立後に最低限押さえておくべき社会保険の全容を、最短ルートで解説します。

法人化したら一人社長でも社会保険への加入は義務

結論からお伝えすると、法人はすべて強制適用事業所となるため、社長一人だけの会社であっても社会保険への加入は法律で義務付けられています。

これは健康保険法および厚生年金保険法に定められたルールであり、社長自身が労働者ではなく経営者であっても、役員報酬を受け取っている限り、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入しなければなりません。

ただし、一点だけ例外があります。それは役員報酬がゼロの場合です。設立直後で役員報酬を設定していない期間は、社長個人として被保険者の要件を満たさないため、加入したくても加入できません。この場合は、法人化前と同様に国民健康保険や国民年金への加入を継続することになります。

実務においては、社会保険料の負担を考慮して役員報酬額を決定する経営者も多いため、義務だから入るだけでなく、「キャッシュフローに合わせた役員報酬の設定」という経営計画の一部として捉えることが大切です。

会社設立時に対応すべき4つの保険

社会保険という言葉は、広義では健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険の4種類を指します。

会社の状況によって、どの保険への加入が必要になるかを一覧にまとめました。ご自身のケースで必要な手続きをまずここで確認しましょう。

保険の種類 株対象(加入条件) 手続き場所 主な提出書類 提出期限
健康保険
厚生年金保険
すべての法人
(役員報酬がある場合)
年金事務所 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
事実発生から
5日以内
労災保険 従業員を1人でも雇用する場合 労働基準監督署 労働保険 保険関係成立届 雇用の翌日から
10日以内
労働保険 概算保険料申告書 雇用の翌日から
50日以内
雇用保険 以下の条件をすべて満たす従業員を
1人でも雇用する場合

  • 週の所定労働時間が
    20時間以上
  • 31日以上の雇用見込み
ハローワーク 雇用保険 適用事業所設置届
雇用保険 被保険者資格取得届
10日以内

※介護保険については、40歳から64歳の方は健康保険に加入すると自動的に「介護保険」の対象となるため、個別の手続きは不要です。

【年金事務所】健康保険・厚生年金保険の手続き

最も優先順位が高く、かつ期限が事実発生から5日以内と非常にタイトなのが年金事務所での手続きです。まずは自身の手続きを済ませなければならないため、登記完了後に登記事項証明書(登記簿謄本)が手元に届いたらすぐに動く必要があります。

ここで必要となる主な書類は以下の通りです。

  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
  • 健康保険 被扶養者(異動)届

これらの書類は窓口へ持参する以外に、GビズIDを利用した電子申請(e-Gov等)も可能です。移動や待ち時間を削減し、本業の時間を確保するためにも、オンラインでの手続きを積極的に検討してみるとよいでしょう。

健康保険・厚生年金保険 新規適用届

会社として初めて社会保険に加入することを届け出る書類です。この際、発行日から90日以内の登記事項証明書(原本)の添付が求められます。また、法人番号指定通知書のコピーも必要ですが、手元にない場合は国税庁の法人番号公表サイトの画面を印刷したものでも代用可能です。

なお、事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、別途、賃貸借契約書のコピーなど、実際にそこで事業を行っていることが確認できる書類の添付が必要になる点に注意しましょう。

書類は以下、日本年金機構のWebサイトよりダウンロード可能です。
日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」(PDF)

記入例は以下をご覧ください。
日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 新規適用届(記入例)」(PDF)

健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届

社長本人や従業員など、実際に保険に加入する個人ごとに作成する書類です。

この書類は、原則として本人確認書類などの添付は必要ありません。ただし、60歳以上の方を退職後すぐに再雇用する場合や、特定の国民健康保険組合に引き続き加入する場合などは、別途証明書類を求められることがあります。「自分のケースはどうかな?」と不安な方は、事前に年金事務所へ確認しておくと二度手間を防げます。

書類は以下、日本年金機構のWebサイトよりダウンロード可能です。
日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」(PDF)

記入例は以下をご覧ください。
日本年金機構「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届(記入例)」(PDF)

健康保険 被扶養者(異動)届

家族を自分の扶養に入れる場合に提出します。配偶者を扶養に入れる際は、国民年金の「第3号被保険者」としての手続きもセットで行うのが一般的です。

この手続きでは、以下に記載する扶養認定の3条件を満たしているか、事前にチェックしておきましょう。

  • 収入要件:年収が130万円未満(60歳以上等は180万円未満)であること
  • 居住要件:原則として日本国内に住所があること(※留学や海外赴任への同行など例外あり)
  • 同居要件:配偶者や子、父母などは別居していても認められますが、叔父叔母や甥姪などの場合は同居が条件となります

収入を証明する退職証明書や非課税証明書、続柄を確認するための住民票など、状況によって必要な添付書類が異なるため、早めに準備を進めておきましょう。

また、これらの手続きを行う際、対象者に40歳から64歳の方がいれば自動的に介護保険の対象となります。健康保険の仕組みの中に組み込まれているため、別途、介護保険のための書類を用意する必要はありません。

書類は以下、日本年金機構のWebサイトよりダウンロード可能です。
日本年金機構「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」(PDF)

記入例は以下をご覧ください。
日本年金機構「健康保険 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)(該当・記入例)」(PDF)

【労働基準監督署】労災保険の手続き

従業員を一人でも雇った場合に、まず最初に行うのが労働基準監督署での手続きです。労災保険は、会社単位で保険関係が成立したことを届け出て、先に1年分の保険料を概算で納付する仕組みになっています。

労働保険 保険関係成立届

初めて従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内に提出します。この届出を出すことで、労働保険の番号が発行されます。

労働保険 概算保険料申告書

その年度末までの保険料を見積もって支払うための書類です。こちらは従業員を雇い入れた日の翌日から50日以内に提出・納付する必要があります。

実務上は、保険関係成立届と同時に提出することが一般的ですので、二度手間にならないようセットで準備しておきましょう。また、手続き時には労働者名簿や賃金台帳、出勤簿などの提示を求められることもあるため、雇用契約の内容がわかる書類を揃えておくとスムーズです。

参考:厚生労働省「労働保険の成立手続」

【ハローワーク】雇用保険の手続き

労災保険の手続きが完了し、労働保険番号が決まったら、次はハローワークで雇用保険の手続きを行います。ハローワークでは「本当にここで事業を行っているか」の実態を厳しくチェックされるのが特徴です。

雇用保険 適用事業所設置届

事業所を設置した日の翌日から10日以内に提出します。
法人の登記簿謄本だけでなく、事務所の賃貸借契約書や営業許可証、公共料金の領収書など、事業の実態を確認できる書類を一式持参しましょう。特にバーチャルオフィスや自宅兼事務所の場合は、実態確認が細かくなるケースがあるため注意が必要です。

書類は以下、ハローワークのWebサイトよりダウンロード可能です。
ハローワーク「雇用保険適用事業所設置届」

雇用保険 被保険者資格取得届

対象となる従業員を雇用した月の翌月10日までに提出します。
年金事務所の手続きと同様に、こちらもGビズIDによる電子申請が可能です。ハローワークは窓口が混雑することも多いため、オンライン手続きの活用を強くおすすめします。

書類は以下、ハローワークのWebサイトよりダウンロード可能です。
ハローワーク「雇用保険被保険者資格取得届」

加入後いつから支払いが始まる?支払い時期と注意点

「手続きは終わったが、最初のお金はいつ出ていくのか?」というキャッシュフローの悩みは、経営者にとって切実です。ここには大きな時差が存在します。

健康保険・厚生年金は翌月末から引き落とし

健康保険と厚生年金は、月単位で計算され「当月分を翌月末日までに支払う」のが原則です。例えば4月に加入した場合、最初の支払いは5月末になります。
給与計算の実務では「前月分の保険料を当月の給与から控除する」形が一般的です。つまり、5月に支払う給料から4月分の保険料を天引きし、会社負担分と合わせて5月末に納付するサイクルです。納付には金融機関窓口のほか、Pay-easy(ペイジー)による電子納付も活用できます。

労働保険は年1回の概算・確定精算

労働保険は少し特殊で、年度分をまとめて前払いする「概算払」という仕組みです。
初回は、保険関係が成立した翌日から50日以内に、その年度末(3月31日)までの分を申告・納付します。
2年目以降は、毎年6月〜7月に前年度分の過不足を精算し、新年度分を払う「年度更新」という作業を行います。

注意!初回の支払いが2ヶ月分になるケース

口座振替の登録が間に合わない場合や、手続きのタイミングによっては、初回の請求が2ヶ月分まとめて届くことがあります。特に設立直後は手元の現金を厚く持っておきたい時期ですので、最初の数ヶ月は社会保険料の2ヶ月分一括払いが起きうることを念頭に置いておきましょう。

社会保険料の支払いシミュレーション

具体的なコスト感を見てみましょう。社会保険料は「標準報酬月額(ざっくりとした月収)」に料率をかけて計算します。

厚生年金保険料率:18.300%(労使折半で本人は9.15%)
健康保険・介護保険料率:都道府県により異なりますが、40歳〜64歳なら介護保険(1.62%)が加算されます。

例えば、役員報酬を月額30万円に設定した場合、会社負担と個人負担を合わせた合計の保険料は月額約9万円前後(※東京都の例)になります。
給与計算の実務で1円未満の端数が出た場合は、「50銭以下切り捨て、50銭超は切り上げ」というルールがあります。こうした細かな計算が毎月の負担になるため、クラウド給与ソフトなどを活用して自動化するのがスマートな経営への第一歩です。

参考:協会けんぽ 令和8年度保険料額表|都道府県毎の保険料額表
参考:協会けんぽ 被保険者の方の健康保険料額(令和8年3月~)東京都
参考:協会けんぽ 費用の負担|健康保険制度の概要

社会保険に未加入だった場合のリスク3つ

「まだ利益が出ていないから」と加入を先延ばしにするのは、非常にリスクが高い行為です。放置してしまうと、主に以下の3つの不利益が生じる可能性があります。

  • 最大2年の遡及徴収による多額の支払い
  • 延滞金の発生と財産の差し押さえ
  • 採用難や社会的信用の低下

最大2年の遡及徴収
未加入が発覚すると、過去2年分にさかのぼって保険料を請求されます。一人社長であっても、2年分ともなれば数百万円単位のキャッシュが一気に失われ、倒産リスクに直結します。

延滞金と法的ペナルティ
督促を無視し続ければ延滞金が発生し、最悪の場合は財産の差し押さえといった滞納処分を受けることもあります。

採用・社会的信用の損失
今や求職者は社会保険完備を当然の条件として見ています。また、融資を受ける際や大手企業との取引開始時に、社会保険の加入証明を求められるシーンも増えており、未加入は事業成長のブレーキとなります。

【Q&A】会社設立時の社会保険でよくある疑問

Q:副業で会社を設立しましたが、本業の会社でも社会保険に入っています。

A:「二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出する必要があります。両方の報酬を合算して保険料を算出し、それぞれの会社で按分して支払う仕組みになります。

Q:70歳以上の役員や従業員はどうなりますか?

A:厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、健康保険には引き続き加入します。75歳以上になると後期高齢者医療制度へ移行するため、健康保険も脱退することになります。

Q:外国人従業員を雇う際の注意点は?

A:日本人と同様の基準を満たせば加入は必須です。加えて、雇用保険の手続きの際には「外国人雇用状況報告」をハローワークに行う義務があります。

まとめ

会社設立後の社会保険手続きは、経営者が本業に集中するために最初に片付けるべきハードルです。
5日、10日という短い期限の中で、登記簿原本の準備や、ハローワークでの実態確認書類の提示など、実務上の細かなポイントは意外と多いものです。

リーパル会計事務所では、こうした複雑なバックオフィス業務をITやクラウドを活用して効率化し、経営者が本来の業務に集中できる環境づくりをサポートしています。

「自分の場合はいくら払うのが最適か」「手続きをスムーズに終わらせたい」とお悩みの方は、ぜひ一度、リーパル会計事務所へご相談ください。円滑な事業運営のスタートを、実務の面からサポートいたします。

 

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