給与計算ソフトを比べていても、料金や機能の違いが多く、自社に合うものを選びきれずにいませんか。まずは従業員数と必要な機能を整理し、使っている会計ソフトとの連携を軸に候補を絞ると選びやすくなります。年末調整や社会保険の手続きは、対応するプランまで確認しましょう。
この記事では、freee・マネーフォワード・弥生・ジョブカンの料金や機能を比べ、導入前の確認点を整理します。
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クラウド給与計算ソフトを選ぶ前に押さえる4つの基準
ソフトを比較する前に、自社が何を重視するのかを整理しておくと選定がスムーズになります。給与計算ソフトの選定で外せない基準は、大きく次の4つです。
1. 給与計算と料率の自動更新
給与計算ソフトの中核機能です。健康保険・厚生年金・雇用保険・所得税といった各種料率が、法令改定にあわせて自動で更新されるかどうかは必ず確認してください。2026年4月からは「子ども・子育て支援金制度」の導入にともない、健康保険料・介護保険料などの算出方法にも変更が生じています。手動更新のソフトでは、こうした改定への対応漏れが計算ミスに直結します。
2. 年末調整のオンライン対応
年末調整は、給与担当者にとって1年で最も負担の重い業務のひとつです。従業員がスマートフォンやパソコンからアンケート形式で申告書を入力し、源泉徴収票・給与支払報告書まで自動作成できるソフトを選べば、紙の配布・回収・転記の手間が大幅に減ります。電子申告(e-Tax・eLTAX)まで対応しているかも重要なチェックポイントです。
令和8年分の年末調整は、基礎控除の引上げなど主要な改正の施行日が令和8年12月1日とされているため、ソフト側が改正後の計算表に対応しているかの確認が例年以上に重要になります。製品ごとの実際の進め方はfreee・マネーフォワードで年末調整を行う手順【令和8年分】で解説しています。
3. 社会保険・労働保険の電子申請
入退社にともなう社会保険の資格取得・喪失届、算定基礎届などを、e-Gov・マイナポータルとのAPI連携でシステム上から電子申請できると、役所への持参や郵送が不要になります。手続きの多い事業者ほど効果が大きい機能です。
4. マイナンバーの安全な管理
給与・年末調整業務ではマイナンバーの取り扱いが避けられません。アクセス権限の制御や暗号化など、マイナンバーを安全に保管・出力できる仕組みを備えているかを確認しましょう。主要なクラウドソフトはいずれもマイナンバー管理機能を標準で備えています。
これら4つに加えて、後述する「会計ソフトとの連携」を最初から視野に入れておくと、バックオフィス全体の効率が大きく変わります。
クラウド給与計算ソフト4製品の比較表
ここからは、代表的な4製品を具体的に比較します。まずは全体像を一覧表で確認してください。料金は2026年6月時点・各社公式サイトに基づく目安であり、プラン・従業員数・契約形態により変動します。
| ソフト | 料金の目安(2026年6月時点) | 特徴 | 向いている事業者 |
|---|---|---|---|
| freee人事労務 | ミニマム年払い月額2,000円〜(最小5名・1名追加400円〜)。上位プランでスターター3,000円、スタンダード4,000円、アドバンス5,500円 | 勤怠・給与・労務・年末調整をワンプラットフォームで統合。freee会計との一体運用が強み | freee会計を使う、または導入予定の中小企業・スタートアップ |
| マネーフォワード クラウド給与 | クラウドシリーズのパッケージ料金に含まれる(スモールビジネス年払い月額4,480円・ビジネス6,480円等)。超過分は給与・年末調整 各300円/名(6名以上) | 会計・給与・経費・請求をひとつのIDで統合。金融機関連携が豊富 | バックオフィス全般をMFクラウドで統合したい法人 |
| 弥生給与 Next | プラン・利用人数に応じた料金(公式の料金シミュレーションで算定)。2カ月の無料体験あり | 110種類以上の帳票、e-Gov・マイナポータルAPI連携。弥生会計 Nextと連携 | 従来の弥生製品を使ってきた事業者・帳票出力を重視する企業 |
| ジョブカン給与計算 | 全機能 月額400円/人(従業員5名以下は無料) | シンプルな従量課金。ジョブカン勤怠管理・労務HRと連携 | 勤怠管理を含めて低コストで揃えたい中小企業 |
各製品の詳細を、以下で順に解説します。
freee人事労務
freee人事労務は、東証プライム上場のfreee株式会社が提供するクラウド人事労務ソフトです。給与計算だけでなく、勤怠管理・入退社手続き・年末調整・マイナンバー管理までをひとつのプラットフォームで完結できる点が特徴です。料金はミニマムプランが年払いで月額2,000円から(最小5名、6名目以降は1名あたり月額400円から)で、用途に応じてスターター・スタンダード・アドバンスといった上位プランが用意されています。
年末調整・マイナンバー管理は最下位のミニマムプランから対応し、社会保険の電子申請はスターター以上のプランで利用できます。従業員がアンケート形式で年末調整の情報を入力でき、源泉徴収票や給与支払報告書の自動作成・電子申告まで一気通貫で行えます。経理や労務の専門知識が少ない事業者でも操作しやすい設計が、freee全体に共通する強みです。
マネーフォワード クラウド給与
マネーフォワード クラウド給与は、同じく東証プライム上場のマネーフォワード株式会社が提供するサービスです。最大の特徴は、会計・給与・経費・請求書などを「マネーフォワード クラウド」シリーズとしてひとつのIDで統合管理できる点にあります。給与計算と年末調整は法人向けパッケージプランの基本料金に含まれており、スモールビジネスプランが年払いで月額4,480円、ビジネスプランが6,480円といった水準です。基本人数を超える分は、給与・年末調整それぞれ1名あたり月額300円(6名以上から)の従量課金となります。
年末調整は、書類の配布・回収から年税額の計算、行政機関への電子手続きまでをクラウド化でき、クラウド給与と連携すれば従業員情報の二重入力も不要です。金融機関・サービス連携の幅広さもマネーフォワードの強みで、バックオフィス全体を一社のサービスで統合したい法人に適しています。
弥生給与 Next
弥生給与 Nextは、会計ソフトで長年の実績を持つ弥生株式会社が提供するクラウド給与計算ソフトです。給与・賞与計算の自動化、給与明細のWeb配信に加え、110種類以上の帳票出力に対応している点が大きな特徴です。社会保険・労働保険の手続きは、e-Gov・マイナポータルとのAPI連携によりシステム上で完結します。料金は求める機能と利用人数に応じて複数のプランから選ぶ形で、公式サイトの料金シミュレーションで算定でき、2カ月間すべての機能を試せる無料体験も用意されています。
従来からデスクトップ版の弥生製品を使ってきた事業者にとって、操作感の親和性が高く移行しやすいのもメリットです。帳票の網羅性を重視する企業や、紙・Excel運用からの脱却を図る企業に向いています。
ジョブカン給与計算
ジョブカン給与計算は、株式会社DONUTSが提供する「ジョブカン」シリーズの給与計算ソフトです。Web給与明細や年末調整を含む全機能を、1人あたり月額400円というシンプルな従量課金で利用できます。従業員5名以下であれば無料で使える点も、小規模事業者には魅力です。所得税や各社会保険料は法令に準拠した形で自動計算され、料率・税率も自動更新されます。
マイナンバーはジョブカン労務HRまたはジョブカン給与計算で登録したものを年末調整帳票に出力でき、勤怠管理(ジョブカン勤怠管理)との連携で打刻データから給与計算までをつなげられます。勤怠から給与までを低コストでまとめて揃えたい中小企業に適した選択肢です。
機能比較:年末調整・社会保険・マイナンバー対応
選定基準でも触れたとおり、給与計算ソフトの価値は「給与計算そのもの」よりも、その周辺業務をどこまで自動化できるかに表れます。4製品の対応状況を整理します。
| 機能 | freee人事労務 | マネーフォワード クラウド給与 | 弥生給与 Next | ジョブカン給与計算 |
|---|---|---|---|---|
| 給与・賞与計算の自動化 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 料率・税率の自動更新 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 年末調整(従業員Web入力) | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| 社会保険・労働保険の電子申請 | 対応(スターター以上) | 対応 | 対応(e-Gov・マイナポータルAPI連携) | 対応(労務HR連携等) |
| マイナンバー管理 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
| Web給与明細 | 対応 | 対応 | 対応 | 対応 |
いずれの製品も、年末調整・社会保険・マイナンバーという給与計算の三大論点には標準的に対応しています。つまり「どれを選んでも基本機能で困ることは少ない」というのが2026年時点の実情です。だからこそ、最終的な選定の決め手になるのは料金体系と、後述する会計ソフトとの連携です。
なお、社会保険料や所得税の計算根拠そのものを確認したい場合は、日本年金機構の公式サイトで最新の保険料額表を参照することをおすすめします。ソフトの自動計算を過信せず、年に一度は計算ロジックの前提を確認しておくと安心です。
税理士が考える「会計ソフト連携」という選定軸
ここまで4製品を中立的に比較してきましたが、リーパル会計事務所が給与計算ソフトの選定でもっとも重視しているのは、「どの会計ソフトと一体で運用するか」という視点です。
給与計算の結果は、最終的に会計帳簿へ「給与手当」「法定福利費」「預り金」などの仕訳として反映されます。給与計算ソフトと会計ソフトが別々のメーカーだと、毎月この仕訳を手入力するか、CSVを書き出して取り込む手間が発生します。一方、同じメーカーで揃えれば、給与計算の確定と同時に会計側へ仕訳が自動連携され、転記ミスも二重入力もなくなります。
この観点で見ると、選択肢は自然と整理されます。
- freee会計を使っている、または導入予定 → freee人事労務。給与の確定から会計仕訳までがシームレスにつながります。
- マネーフォワード クラウド会計を使っている → マネーフォワード クラウド給与。同一IDのクラウドシリーズで、会計・給与・経費・請求が一体運用できます。
- 弥生会計 Nextを使っている → 弥生給与 Next。弥生製品同士の親和性が高く、移行もスムーズです。
リーパル会計事務所はfreee・マネーフォワードクラウド両方の認定アドバイザーとして、クラウド会計の導入支援を1,000社超手がけてきました。その経験から申し上げると、給与計算ソフトを単体で「安いから」「機能が多いから」という理由だけで選ぶと、後から会計連携でつまずき、結局は手作業が残るケースが少なくありません。会計ソフトをすでに使っている場合は、まず同一メーカーの給与計算ソフトを第一候補にするのが、バックオフィス全体の効率を最大化する近道です。
会計ソフト自体の選び方に迷っている方は、あわせてfreeeとマネーフォワードクラウドを徹底比較|税理士が両方使って分かった違いや、クラウド会計ソフトおすすめ5選|個人事業主・法人別の選び方もご参照ください。会計と給与をセットで設計することで、月次の経理工数を大きく圧縮できます。
「自社の会計ソフトに合う給与計算ソフトがどれか分からない」という場合は、リーパル会計事務所が業務フローをヒアリングしたうえで、中立的に最適な組み合わせをご提案します。
会計ソフトや給与ソフトの導入・運用を税理士に任せるなら、クラウド会計を本当に使いこなせる事務所かどうかを見極めることが欠かせません。契約前に確認したいチェックポイントはクラウド会計に対応した税理士の見分け方で解説しています。
失敗しない導入の進め方
クラウド給与計算ソフトの導入は、勢いで契約するのではなく、次の手順で進めると失敗が少なくなります。
- 現状の給与計算業務を棚卸しする:従業員数、雇用形態(正社員・パート・アルバイト)、勤怠管理の方法、年末調整の対象人数を整理します。
- すでに使っている会計ソフトを確認する:会計ソフトと同一メーカーの給与計算ソフトを第一候補にします。
- 無料体験で実際の給与計算を試す:多くのソフトに無料トライアルがあります。実際の従業員データで1か月分を試算し、操作感と計算結果を確認してください。
- 料金を従業員数で試算する:従量課金のソフトは、従業員数が増えると月額が変わります。1〜2年後の人員計画も加味して比較しましょう。
- 専門家に連携設定を相談する:給与計算ソフトと会計ソフトの連携設定、勘定科目のマッピングは、最初に正しく設計しておくと後の運用が楽になります。
特に重要なのが、3番目の無料体験です。カタログ上の機能がそろっていても、自社の給与体系(各種手当・控除の構成)にフィットするかは、実際に入力してみないと分かりません。
リーパル会計事務所では、クラウド会計の導入支援の一環として、給与計算ソフトの選定から初期設定、会計ソフトとの連携設定までを月額1万円からの経理BPOパッケージの中でサポートしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. クラウド給与計算ソフトはどれを選んでも年末調整に対応していますか?
A. 本記事で比較したfreee人事労務・マネーフォワード クラウド給与・弥生給与 Next・ジョブカン給与計算は、いずれも年末調整のオンライン対応(従業員のWeb入力・源泉徴収票の自動作成・電子申告)に対応しています。ただし、freee人事労務のように年末調整の効率化機能や社会保険の電子申請が上位プラン以上で利用可能なケースもあるため、必要な機能が含まれるプランかどうかを契約前にご確認ください。
Q2. 料金はどのソフトが一番安いですか?
A. 従業員数や必要な機能によって変わるため、一概には言えません。少人数であれば、従業員5名以下が無料のジョブカン給与計算や、年払いで月額2,000円からのfreee人事労務のミニマムプランが低コストです。一方、会計・経費・請求まで統合したい場合は、マネーフォワード クラウドのパッケージプランが総合的に割安になることもあります。料金は2026年6月時点の各社公式情報に基づく目安であり、プランや人数で変動するため、最新の正確な金額は各社公式サイトでご確認ください。
Q3. 会計ソフトと給与計算ソフトは同じメーカーで揃えるべきですか?
A. 必須ではありませんが、リーパル会計事務所では強くおすすめしています。同一メーカーで揃えると、給与計算の結果が会計帳簿へ自動で仕訳連携され、手入力やCSV取り込みの手間とミスがなくなります。freee会計ならfreee人事労務、マネーフォワード クラウド会計ならマネーフォワード クラウド給与、というように、会計ソフトを起点に選ぶのが効率的です。
Q4. 社会保険の手続きもソフトでできますか?
A. はい。本記事で紹介した各ソフトは、e-Gov・マイナポータルとのAPI連携などにより、資格取得・喪失届や算定基礎届といった社会保険・労働保険の電子申請に対応しています。役所への持参や郵送が不要になるため、入退社の多い事業者ほど効果が大きい機能です。
Q5. 現在Excelで給与計算しています。クラウドに移行するメリットは何ですか?
A. 最大のメリットは、料率・税率の自動更新による計算ミスの防止です。Excel運用では法令改定のたびに手動で計算式を直す必要があり、見落としが計算ミスにつながります。加えて、Web給与明細の自動配信、年末調整のオンライン化、会計ソフトへの仕訳自動連携により、給与にまつわる業務全体を大幅に効率化できます。
まとめ:機能横並びの今、決め手は「会計連携」
2026年時点で、主要なクラウド給与計算ソフトは、給与計算・料率自動更新・年末調整・社会保険電子申請・マイナンバー管理といった基本機能をいずれも標準的に備えています。機能だけで優劣をつけるのが難しいからこそ、選定の決め手になるのは料金体系と、すでに使っている会計ソフトとの連携です。
- 経理の知識が少なく、freee会計と一体で運用したい → freee人事労務
- 会計・給与・経費・請求をひとつのIDで統合したい → マネーフォワード クラウド給与
- 帳票出力を重視し、弥生製品との親和性を求める → 弥生給与 Next
- 勤怠管理を含めて低コストで揃えたい → ジョブカン給与計算
「結局どれが自社に合うのか決められない」という方は、まず使っている会計ソフトを起点に第一候補を絞り、無料体験で実際の給与データを試すところから始めてください。リーパル会計事務所では、freee・マネーフォワードクラウド両方の認定アドバイザーとして、特定の製品に偏らない中立的な選定アドバイスと、会計ソフトを含めたバックオフィス全体の設計をご提供しています。給与計算ソフトの選定でお悩みの経営者・経理担当者の方は、初回無料相談でお気軽にご相談ください。
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参考資料
- freee人事労務 料金プラン(公式)
- マネーフォワード クラウド 価格・料金プラン(公式)
- 弥生給与 Next 料金プラン(公式)
- 日本年金機構(社会保険料額表)
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参考資料
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、freee・マネーフォワードクラウド両方の認定アドバイザーとして、クラウド会計・給与の導入支援を1,000社超手がける。
最終更新日: 2026年10月24日