個人事業を会社に移したら、その年の確定申告は会社の分だけでよいのか迷っていませんか。法人成りしても、廃業までの事業所得などに応じて、個人の確定申告が必要です。法人1期目の申告も別に進めるため、個人と会社の収支や期限を分けて整理しましょう。
この記事では、個人の最後の申告に含める所得と、廃業・設立の届出、法人1期目の申告準備をまとめます。事業用の資産を会社へ移す方法は、個人から法人への資産引継ぎの記事をご覧ください。
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法人成りした年に出てくる申告と届出
まず、個人と法人のそれぞれで、どの手続がいつまでに必要かを一覧にします。個人事業税の申告と都道府県への届出の期限は、東京都の案内に基づいています。他の道府県で事業をしていた場合は、その道府県の案内で確認します。
| 誰の手続 | 手続 | 期限 | 提出先 |
|---|---|---|---|
| 個人 | 個人事業の開業・廃業等届出書 | 廃業した日の属する年分の確定申告期限まで | 税務署 |
| 個人 | 青色申告の取りやめ届出書(取りやめる場合) | やめようとする年分の確定申告期限まで(国税庁の手続案内は廃業届とあわせた提出を案内) | 税務署 |
| 個人 | 事業廃止届出書(消費税の課税事業者で、他に課税売上となる所得がない場合) | 事業を廃止したとき | 税務署 |
| 個人 | 事業開始(廃止)等申告書 | 廃止の日から10日以内(東京都) | 都税事務所など |
| 個人 | 個人事業税の申告 | 廃止の日から1か月以内(東京都) | 都税事務所など |
| 個人 | 所得税の確定申告 | 翌年3月15日 | 税務署 |
| 個人 | 消費税の確定申告(課税事業者の場合) | 翌年3月31日 | 税務署 |
| 法人 | 法人設立届出書 | 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 | 税務署 |
| 法人 | 青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日と1期目終了の日のいずれか早い日の前日まで | 税務署 |
| 法人 | 法人税等の確定申告 | 1期目終了の日の翌日から2か月以内 | 税務署・都道府県・市町村 |
個人の届出のうち、廃業届の期限は国税庁の手続案内で「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。一方、都道府県への届出や個人事業税の申告は、廃業から短い期間で期限が来ます。法人設立の準備と重なる時期なので、先に一覧を作っておくと漏れを防げます。
個人の最後の確定申告に含めるもの
個人事業を廃業した年も、所得税の確定申告は翌年2月16日から3月15日までに行います。令和8年中に法人成りした場合は、令和8年分として2027年3月15日までに申告します。
事業所得と、法人からの役員報酬
最後の確定申告には、1月1日から廃業日までの事業所得を記載します。法人成りした後に会社から役員報酬を受け取っていれば、それは給与所得として同じ年分の申告に含めます。会社で年末調整を受けていても、国税庁の案内では、給与を1か所から受けていて給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要とされています。事業所得がこれを超えていれば、確定申告が必要です。
廃業した後に払った経費
廃業した後に、個人事業の時代の経費の支払いや損失が生じることがあります。所得税法63条では、事業を廃止した後に生じた事業の費用や損失で、廃止しなかったら必要経費に算入されるべき金額は、廃止した日の属する年分またはその前年分の必要経費に算入すると定めています。最後の申告書を出した後に生じた場合は、更正の請求で直す場面があります。
消費税の課税期間は12月31日まで
個人事業者の消費税の課税期間は、年の途中で事業を廃止した場合でも1月1日から12月31日までです。課税事業者だった人は、廃業した年の分を翌年3月31日までに申告します。廃業時に在庫や備品を法人へ譲渡した場合の消費税の扱いは、資産引継ぎの方法によって変わるため、上で挙げた記事で確認してください。
個人事業税の見込控除
個人事業税は、ふつうは前年分の所得に対して翌年に課税され、課税された年の必要経費になります。ところが廃業すると、翌年には事業所得がないため、事業税を経費にする年がなくなります。そこで所得税基本通達37-7は、事業を廃止した年分の所得に課税される事業税について、その課税見込額を廃止した年分の事業所得の計算上、必要経費に算入できるとしています。
課税見込額は、通達に示された算式で計算します。算式では、見込控除前の所得の金額に事業税の課税標準の加減算を反映し、事業税の税率を用いて計算します。この取扱いを使わない場合は、事業税の賦課決定があった時点で、所得税法63条と152条(各種所得の金額に異動を生じた場合の更正の請求の特例)を適用して直すことになると、同じ通達の注に書かれています。
見込控除を使うか、賦課決定の後に更正の請求をするかで、最後の確定申告の税額と手続の回数が変わります。どちらで進めるかは、個人事業税がかかる業種かどうかと、所得の金額によって判断します。詳しくは国税庁『所得税基本通達〔租税公課〕』で確認できます。
個人事業税の申告は廃業から1か月以内
東京都の案内では、個人で事業を営む人は所得税の確定申告をすれば個人事業税の申告は不要ですが、年の途中で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止は4か月以内)に個人事業税の申告をしなければならないとされています。課税の対象は、その年の1月1日から廃止の日までの所得です。
廃業と設立の届出で出し忘れやすいもの
法人成りの手続では、会社設立の登記や設立届に意識が向き、個人側の届出が後回しになりがちです。国税庁の手続案内は、事業を廃止する人に次の2点を求めています。
- 青色申告をやめる場合は「青色申告の取りやめ届出書」も提出する。
- 消費税の課税事業者(課税事業者を選択している人を含む)で、廃止する事業のほかに不動産所得などの課税売上に当たる所得がない場合は「事業廃止届出書」も提出する。
このほか、法人成りした年は、前年の所得を基に計算された所得税の予定納税の通知が届くことがあります。国税庁の手続案内では、廃業や休業をした場合などで、その年分の申告納税見積額が予定納税基準額より少なくなると見込まれるときは、減額を申請できるとされています。第1期分と第2期分の減額申請は、その年の7月1日から7月15日までに提出します。
法人1期目の申告で確認すること
法人の側では、1期目の決算日の翌日から2か月以内に、法人税・地方法人税などの確定申告書を税務署に、法人事業税・法人住民税の申告書を都道府県と市町村に提出します。1期目から青色申告をするには、承認申請書を期限内に出しておく必要があります。普通法人の設立事業年度の期限は、設立の日以後3か月を経過した日と、その事業年度終了の日のいずれか早い日の前日までです。
1期目の消費税
新たに設立された法人は、基準期間がないため原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、事業年度開始の日の資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である場合などは免除されません。インボイス制度の適格請求書発行事業者の登録を受けている場合も、納税義務は免除されません。個人のときに登録していた事業者が法人でも登録するかどうかで、1期目の扱いが変わります。免税になる期間と条件の詳細は、法人成りで消費税が免税になる期間の記事で扱っています。
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2つの申告を並べたときの日程の例
※説明のための架空の例です。2026年6月30日に個人事業を廃業し、2026年7月1日に3月決算の会社を設立した場合、主な期限は次のように並びます。
| 手続 | この例での期限 |
|---|---|
| 個人事業税の申告(東京都の場合) | 廃止の日から1か月以内 |
| 法人設立届出書 | 設立の日以後2か月以内 |
| 法人の青色申告の承認申請書 | 設立の日以後3か月を経過した日の前日まで(1期目終了の日より早いため) |
| 個人の所得税の確定申告(令和8年分) | 2027年3月15日 |
| 個人の消費税の確定申告(課税事業者の場合) | 2027年3月31日 |
| 法人1期目(2026年7月1日〜2027年3月31日)の確定申告 | 2027年5月31日 |
この例では、個人の最後の確定申告と法人1期目の決算が2027年2月から5月に続きます。個人の帳簿は廃業日で締め、法人の帳簿は設立日から始めるため、廃業日前後の入出金がどちらのものかを分けておくと、2つの申告を並行して進めやすくなります。
まとめ:法人成りした年は個人と法人の期限を1枚に並べる
- 個人の最後の確定申告には、1月1日から廃業日までの事業所得と、法人からの役員報酬(給与所得)を含める。
- 廃業した年分の個人事業税は、課税見込額を必要経費に算入できる(所得税基本通達37-7)。使わない場合は賦課決定の後に更正の請求で直す。
- 個人事業税の申告は、東京都の案内では廃止の日から1か月以内。廃業届・青色申告の取りやめ届・事業廃止届出書も確認する。
- 予定納税の通知が届いた場合、廃業などで所得が減る見込みなら7月1日から7月15日までに減額申請ができる。
- 法人1期目は、設立届・青色申告の承認申請の期限と、消費税の納税義務の有無を確認する。
どの手続をどちらの名義で行うかを最初に整理しておくと、同じ年に2つの申告が重なっても期限を落とさずに進められます。
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よくある質問
Q. 個人事業の廃業届は、法人を設立したらすぐに出す必要がありますか?
税務署へ出す個人事業の開業・廃業等届出書は、国税庁の手続案内では、廃業した日の属する年分の確定申告期限までに提出することとされています。ただし、都道府県への事業廃止の申告書(東京都では10日以内)や個人事業税の申告(東京都では1か月以内)は期限が短いため、こちらを先に確認します。
Q. 法人成りした年も、個人の予定納税は払う必要がありますか?
予定納税の通知を受けた場合は、原則として納付します。廃業や休業をした場合などで、その年分の申告納税見積額が予定納税基準額より少なくなると見込まれるときは、減額申請ができます。第1期分・第2期分の減額申請は7月1日から7月15日まで、第2期分だけの減額申請は11月1日から11月15日までです。
Q. 事業税の見込控除をしなかった場合、取り返す方法はありますか?
所得税基本通達37-7の注では、見込控除によらない場合、事業税の賦課決定があった時に、所得税法63条と152条の規定の適用があるとされています。賦課決定の後に、更正の請求で廃業した年分の所得を直す流れになります。
Q. 法人1期目の申告は、個人の確定申告と同じ時期にまとめて出せますか?
期限は別々です。個人の所得税は翌年3月15日まで、法人は1期目終了の日の翌日から2か月以内です。決算日によっては時期が重なることもありますが、申告書と提出先はそれぞれ別に用意します。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月24日
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