実家の土地を相続し、相続税の申告にはどの金額を書けばよいのか迷っていませんか。
土地の評価額は、路線価を使う地域か、固定資産税評価額に倍率を掛ける地域かで計算方法が分かれます。路線価を使う場合は、土地の形や道路との接し方に応じた調整も必要です。
この記事では、評価する土地の範囲の決め方から、計算と調整の手順、貸している土地の扱いまでを例で確認します。路線価図の見方は路線価の調べ方にまとめています。
この記事の要点
- 方式の選択:路線価地域は路線価方式、それ以外は倍率方式(固定資産税評価額×倍率)です。宅地は「1画地」ごとに評価します(評価通達11・21)。
- 計算の順番:1画地を決める→正面路線を決める→奥行価格補正→角地などの加算→間口・奥行・形・広さの補正→面積を掛ける、の順です。
- 土地の形と使い方の確認:間口が狭い・奥行が長い・形がいびつ・広い土地には補正率が掛かります。貸家の敷地は、自用地の価額から権利の分を引きます。
- 税額への影響:補正率0.94を1つ見落とすだけで、自宅の土地6,000万円と5,640万円の差が、子2人(配偶者なし)の納付税額で72万円になります。
土地の相続税評価は「時価」を通達で決めた方式で出す
相続や遺贈で取得した財産は、取得の時の時価で評価します(相続税法22条)。土地の時価は、売買の実例を一つずつ調べるのではなく、国税庁が毎年公開している路線価と評価倍率表を使い、評価通達の定めに沿って出します。国税庁のタックスアンサー(No.4602)は、土地家屋の評価を次のように整理しています。
| 評価する物 | 評価の方法 | 根拠 |
|---|---|---|
| 宅地(路線価地域) | 路線価に補正率を掛け、地積を掛ける | 評価通達11・13 |
| 宅地(倍率地域) | 固定資産税評価額に倍率を掛ける | 評価通達21 |
| 家屋 | 固定資産税評価額に1.0を掛ける(固定資産税評価額と同額) | 評価通達89 |
| 貸している土地・家屋 | 権利関係に応じて評価額を調整する | 評価通達25〜27など |
| 分譲マンション | 敷地利用権と区分所有権の合計(2024年以後は区分所有補正率の場合あり) | タックスアンサーNo.4602 |
土地は原則として、宅地・田・畑・山林などの地目ごとに評価します。建物の評価は建物(家屋)の相続税評価額で説明しています。
最初に決める「評価の単位」|1画地とは
宅地は、登記上の1筆ごとではなく、利用の単位となっている1区画の宅地(1画地)ごとに評価します。使い方によって、数え方は次のように変わります(国税庁タックスアンサー No.4603・評価通達7-2)。
| 土地の使い方 | 1画地の数え方 |
|---|---|
| 所有する宅地を自分で使っている(居住・事業を問わない) | その全体で1画地 |
| 一部を借地権で貸し、残りを自分で使っている/一部を貸家の敷地にし、残りを自分で使っている | それぞれの部分が1画地 |
| 貸家の敷地で、貸家が数棟ある | 原則として各棟の敷地ごとに1画地 |
| 所有する宅地の一部を自分で使い、残りを使用貸借で貸している | その全体で1画地(使用借権は零、貸した宅地も自用地の価額で評価) |
| 共同ビルの敷地 | 全体を1画地として評価し、各人の土地の価額の比で按分 |
相続した土地は、原則として取得者が取得した宅地ごとに判定します。ただし、親族間で宅地を分割した結果、分割後の画地が宅地として通常の用途に使えないなど、その分割が著しく不合理と認められる場合は、分割前の画地を1画地として評価します。自宅の敷地を兄弟で分ける場合などは、この点を確かめます。
路線価方式か倍率方式か
評価の方式は、土地の場所で決まります。市街地的な形態を形成している地域にある宅地は路線価方式、それ以外の宅地は倍率方式です(評価通達11)。国税庁の路線価図では、路線に路線価が書かれている地域が路線価方式、「倍率地域」と書かれている地域が倍率方式です。評価倍率表の「宅地」欄が「路線」となっていれば路線価地域です。調べ方の手順は路線価の調べ方で説明しています。
使う年分は、被相続人が亡くなった日の属する年分です。2026年に亡くなった場合は、令和8年分(2026年7月1日公開)の路線価図・評価倍率表を使います。
路線価方式の計算の順番
路線価は、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額で、千円単位で表示されます。評価額は、次の順に出します。
- 1画地を決める:上の表で、評価する土地の範囲を決めます。
- 正面路線を決める:複数の道路に面する土地は、路線価に奥行価格補正率を掛けた金額が高い方の路線を、原則として正面路線にします。金額が同じときは、路線に接する距離が長い方です。
- 奥行価格補正:正面路線価に、奥行距離に応じた奥行価格補正率を掛けます(評価通達15)。
- 加算:角地なら側方路線の分(評価通達16)、正面と裏に路線があれば二方路線の分(評価通達17)を足します。
- 補正:間口が狭い、奥行が長い、形がいびつ、広いといった土地は、補正率を掛けます。
- 面積を掛ける:1平方メートル当たりの価額に、地積を掛けます。
補正率の率は、国税庁の「調整率表」に載っています。補正と通達の対応は次のとおりです。
| 補正・加算 | 当てはまる土地 | 根拠(評価通達) | 率を決める材料 |
|---|---|---|---|
| 奥行価格補正 | 路線価方式のすべての宅地 | 15 | 奥行距離・地区区分 |
| 側方路線影響加算 | 正面と側方に路線がある角地・準角地 | 16 | 地区区分・角地か準角地か |
| 二方路線影響加算 | 正面と裏面に路線がある土地 | 17 | 地区区分 |
| 三方又は四方路線影響加算 | 3方向・4方向が路線に接する土地 | 18 | 調整率表 |
| 間口狭小補正・奥行長大補正 | 間口が狭い・奥行が長い土地 | 20-4 | 間口距離、奥行距離÷間口距離、地区区分 |
| 不整形地補正 | 形がいびつな土地 | 20 | かげ地割合・地積区分 |
| 規模格差補正 | 三大都市圏で500㎡以上、その他で1,000㎡以上の宅地 | 20-2 | 地積と、式のB・C |
| セットバック | 建替え時に道路として提供する部分がある宅地 | 24-6 | その部分は70%相当額を控除 |
なお、地区区分は、ビル街・高度商業・繁華街・普通商業・併用住宅・普通住宅・中小工場・大工場の7つです(評価通達14-2)。自宅の多くは普通住宅地区で、以下の表も普通住宅地区の値を中心に載せます。
奥行価格補正率(普通住宅地区)
| 奥行距離 | 補正率 |
|---|---|
| 4m未満 | 0.90 |
| 4m以上6m未満 | 0.92 |
| 6m以上8m未満 | 0.95 |
| 8m以上10m未満 | 0.97 |
| 10m以上24m未満 | 1.00 |
| 24m以上28m未満 | 0.97 |
| 28m以上32m未満 | 0.95 |
| 32m以上36m未満 | 0.93 |
| 36m以上40m未満 | 0.92 |
| 40m以上44m未満 | 0.91 |
| 44m以上48m未満 | 0.90 |
奥行が10m以上24m未満の標準的な形の土地は、補正率が1.00です。それより浅い土地、深い土地では下がります。48m以上の奥行や、他の地区区分の列は、国税庁の調整率表で確かめてください。
角地・裏面路線の加算率
角地(正面と側方に路線がある土地)には、側方路線の路線価を正面とみなして計算した額に、地区区分ごとの加算率を掛けた額を足します。正面と裏面に路線がある土地は、二方路線影響加算率を使います。
| 地区区分 | 側方路線(角地) | 側方路線(準角地) | 二方路線 |
|---|---|---|---|
| ビル街 | 0.07 | 0.03 | 0.03 |
| 高度商業・繁華街 | 0.10 | 0.05 | 0.07 |
| 普通商業・併用住宅 | 0.08 | 0.04 | 0.05 |
| 普通住宅・中小工場 | 0.03 | 0.02 | 0.02 |
| 大工場 | 0.02 | 0.01 | 0.02 |
側方路線に宅地の一部しか接していないときは、加算額を接している割合で調整します。また、角地として使えない形状の土地では、側方路線影響加算率に代えて二方路線影響加算率を使います(国税庁タックスアンサー No.4604)。地区の異なる2つ以上の路線に接する土地では、正面路線の地区の奥行価格補正率と加算率を使います(同 No.4605)。
間口狭小補正率(普通住宅地区)
間口が狭い土地に掛ける補正率です。間口距離で決まります。
| 間口距離 | 間口狭小補正率 |
|---|---|
| 4m未満 | 0.90 |
| 4m以上6m未満 | 0.94 |
| 6m以上8m未満 | 0.97 |
| 8m以上 | 1.00 |
奥行長大補正率(普通住宅地区)
奥行が長い土地に掛ける補正率です。奥行距離を間口距離で割った値で決まります。
| 奥行距離÷間口距離 | 奥行長大補正率 |
|---|---|
| 2以上3未満 | 0.98 |
| 3以上4未満 | 0.96 |
| 4以上5未満 | 0.94 |
| 5以上6未満 | 0.92 |
| 6以上 | 0.90 |
国税庁の評価明細書では、間口狭小補正率と奥行長大補正率は、該当するものを掛ける欄になっています。間口が狭く、しかも奥行が長い土地は、両方が該当し得ます(評価通達20-4は、間口が狭小な宅地と奥行が長大な宅地のそれぞれに補正率を乗じると定めており、例2はその両方に当たる例です)。
不整形地補正率(普通住宅地区・抜粋)
形がいびつな土地は、土地を囲む長方形(想定整形地)との差で「かげ地割合」を出し、地積区分とあわせて補正率の表から補正率を選びます。かげ地割合は、(想定整形地の地積−不整形地の地積)÷想定整形地の地積です。普通住宅地区の地積区分は、不整形地の地積が500㎡未満ならA、500㎡以上750㎡未満ならB、750㎡以上ならCです。
| かげ地割合 | 地積区分A | 地積区分B | 地積区分C |
|---|---|---|---|
| 10%以上 | 0.98 | 0.99 | 0.99 |
| 15%以上 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
| 20%以上 | 0.94 | 0.97 | 0.98 |
| 25%以上 | 0.92 | 0.95 | 0.97 |
| 30%以上 | 0.90 | 0.93 | 0.96 |
| 40%以上 | 0.85 | 0.88 | 0.92 |
| 50%以上 | 0.79 | 0.82 | 0.87 |
| 60%以上 | 0.70 | 0.73 | 0.78 |
この表は抜粋です。付表の不整形地補正率表は、かげ地割合10%から65%まで5%刻みで決まっています。表に無い割合(35%・45%など)は、国税庁の「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」で、その割合以下で最も近い行を確かめてください。
不整形地の評価には、不整形地を区分して整形地を求める方法、近似整形地を求める方法など4つの計算方法が通達に定められています(評価通達20)。補正率は、どの方法でも付表の不整形地補正率表から選びます。
例として、想定整形地が18m×22m=396㎡、不整形地が300㎡なら、かげ地割合は(396−300)÷396=24.2%です。20%以上の行の地積区分A(500㎡未満)の0.94が補正率の目安です。
奥行価格補正後の1平方メートル当たりの価額が250,000円なら、250,000円×0.94×300㎡=70,500,000円です(この例では間口は広く、間口狭小補正率は1.00の前提です)。
地積規模の大きな宅地(規模格差補正率)
三大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の宅地で、普通商業・併用住宅地区か普通住宅地区にあるものは、規模格差補正率を掛けます(評価通達20-2)。次の土地は対象外です。三大都市圏とは、首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域です。
- 市街化調整区域にある宅地(宅地分譲の開発行為ができる区域を除く)
- 工業専用地域にある宅地
- 容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域にある宅地
規模格差補正率は、次の式で出します。
「(地積×B+C)÷地積×0.8」
小数点以下第2位未満は切り捨てます。B・Cは地積と地域で決まり、次の表のとおりです。
三大都市圏のB・C
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 75 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 475 |
三大都市圏以外のB・C
| 地積 | B | C |
|---|---|---|
| 1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.90 | 100 |
| 3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
| 5,000㎡以上 | 0.80 | 500 |
計算例|普通住宅地区の土地を5通りで計算する
数字は、補正率の使い方を見るための例です。路線価と地積は設例です。
例1:角地(側方路線あり)
正面路線価280,000円、側方路線価240,000円、奥行は両方向とも18m、地積200㎡の普通住宅地区の土地です。
- 正面路線は、280,000円×1.00=280,000円と、240,000円×1.00=240,000円を比べ、高い方の280,000円の路線です。
- 側方路線影響加算額は、240,000円×1.00×0.03=7,200円です。
- 1平方メートル当たりの価額は、280,000円+7,200円=287,200円です。
- 評価額は、287,200円×200㎡=57,440,000円です。
例2:間口が狭く奥行が長い土地
路線価200,000円、間口5m、奥行20m、地積100㎡の普通住宅地区の土地です。奥行20mの奥行価格補正率は1.00、間口5mの間口狭小補正率は0.94です。奥行距離÷間口距離は20÷5=4で、奥行長大補正率は0.94です。この土地は間口狭小と奥行長大の両方に当たるため、評価額は、200,000円×1.00×0.94×0.94×100㎡=17,672,000円です。補正を見落とすと、20,000,000円と評価してしまい、2,328,000円の差が出ます。
例3:奥行が長い土地
路線価200,000円、間口8m、奥行35m、地積280㎡の普通住宅地区の土地です。奥行35mの奥行価格補正率は0.93、奥行距離÷間口距離は35÷8=4.375で奥行長大補正率は0.94(間口8mの間口狭小補正率は1.00)です。評価額は、200,000円×0.93×0.94×280㎡=48,955,200円です。
例4:地積規模の大きな宅地
三大都市圏にある普通住宅地区の700㎡の土地で、容積率などの除外条件に当たらないものとします。路線価400,000円、奥行25mです。
- 奥行25mの奥行価格補正率は0.97なので、400,000円×0.97=388,000円です。
- 388,000円×700㎡=271,600,000円です。
- 規模格差補正率は、(700×0.95+25)÷700×0.8=0.7885…で、小数点以下第2位未満を切り捨てて0.78です。
- 評価額は、271,600,000円×0.78=211,848,000円です。
例5:正面と裏面に道路がある土地
正面路線価250,000円、裏面路線価200,000円、地積180㎡の普通住宅地区の土地です。形は長方形で、間口9m・奥行20m(奥行はどちらの路線からも20m)と置きます。二方路線影響加算率は0.02です(上の表)。
- 正面路線価の奥行価格補正後の額は、250,000円×1.00=250,000円です。
- 二方路線影響加算額は、200,000円×1.00×0.02=4,000円です。
- 1平方メートル当たりの価額は250,000円+4,000円=254,000円です。
- 奥行距離÷間口距離は20÷9=2.22で、奥行長大補正率は0.98です(間口9mの間口狭小補正率は1.00)。評価額は、254,000円×0.98×180㎡=44,805,600円です。
倍率方式の計算
倍率方式は、路線価が定められていない地域の土地の評価方法です。固定資産税評価額に、評価倍率表の倍率を掛けます(評価通達21)。たとえば、固定資産税評価額が18,000,000円で倍率が1.1なら、18,000,000円×1.1=19,800,000円です(倍率は設例の仮定です)。固定資産税評価額は、都税事務所や市(区)役所・町村役場で確認できます。納税通知書に同封される課税明細書でも見られます。
路線価の設定されていない道路にだけ接している路線価地域内の土地は、税務署長に申し出て、特定路線価を設定してもらえます。設定には概ね1〜2か月かかるため、申告期限までの日数を見て早めに申し出ます(評価通達14-3)。
宅地以外の土地|農地・山林の評価の見方
田・畑・山林・原野などは、地目ごとに、地域の実情に応じた方式で評価します。評価倍率表には、地目ごとに分類と評価の方式、倍率が書かれています。農地は、純農地・中間農地・市街地周辺農地・市街地農地に分かれ、市街地周辺農地や市街地農地で「比準」「市比準」「周比準」とあれば、付近の宅地の価額に比準して評価する地域です(国税庁の評価倍率表の説明)。山林・原野も同じように、純山林・中間山林・市街地山林などの分類があります。農地の納税猶予や評価の詳しい説明は農地の相続税にまとめています。
貸している土地・借りている土地の評価
他人に貸している土地や、借地権がある土地は、自用地(誰の権利の目的にもなっていない土地)の価額を出してから、権利の分を調整します。式は次のとおりです。
| 土地の状態 | 評価額の式 | 根拠 |
|---|---|---|
| 借地権 | 自用地の価額 × 借地権割合 | No.4611 |
| 貸宅地(借地権の目的) | 自用地の価額 − 自用地の価額 × 借地権割合 | No.4613 |
| 貸家建付地 | 自用地の価額 − 自用地の価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合 | 評価通達26・No.4614 |
借地権割合は、路線価図のアルファベット(A=90%〜G=30%)で確認します。借家権割合は、令和8年分の東京都のページでは100分の30です(評価通達94)。賃貸割合は、貸家の各独立部分(扉や壁で他の部分と遮断され、独立した出入口を持つ部分)のうち、課税時期に賃貸されている部分の床面積の割合です。継続的に賃貸されていた部屋が一時的に空室だったと認められるときは、賃貸されていたものとして扱って差し支えないとされています。
例1の土地(自用地57,440,000円、借地権割合E=50%)で比べます。
| 土地の状態 | 評価額 |
|---|---|
| 自用地(自宅など) | 57,440,000円 |
| 貸家建付地・全室賃貸(賃貸割合100%) | 57,440,000円−57,440,000円×0.5×0.3×1.0=48,824,000円 |
| 貸家建付地・賃貸割合80% | 57,440,000円−57,440,000円×0.5×0.3×0.8=50,547,200円 |
| 貸宅地(借地権の目的・借地権割合50%) | 57,440,000円−57,440,000円×0.5=28,720,000円 |
| 借地権 | 57,440,000円×0.5=28,720,000円 |
社宅の敷地のように、借地借家法が一般に適用されない家屋の敷地は、貸家建付地にならず自用地として評価します。アパートの評価はアパート・貸家の相続税評価、借地権と底地は借地権・底地の相続税評価で詳しく説明しています。
評価額が税額にどれだけ効くか
土地の評価額は、そのまま課税価格に入ります。補正の見落としが税額にどれだけ響くかを、補正率0.94が1つだけ掛かる場合(間口狭小補正だけが当たる土地など)で比べます。自宅の土地(200㎡)が補正前の6,000万円か、補正率0.94を反映した5,640万円か、その他の財産(預貯金など)が6,000万円、小規模宅地等の特例を使わない場合です。当事務所の無料の相続税シミュレーターと同じ計算で出した金額です。
| 項目 | 子2人(配偶者なし)・土地6,000万円 | 子2人(配偶者なし)・土地5,640万円 | 配偶者と子2人(法定相続分で取得)・土地6,000万円 | 配偶者と子2人(法定相続分で取得)・土地5,640万円 |
|---|---|---|---|---|
| 納付税額の合計 | 1,160万円 | 1,088万円 | 480万円 | 448万5,000円 |
| 相続税の総額 | 1,160万円 | 1,088万円 | 960万円 | 897万円 |
| 課税価格の合計 | 1億2,000万円 | 1億1,640万円 | 1億2,000万円 | 1億1,640万円 |
| 基礎控除 | 4,200万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 4,800万円 |
土地の評価額が360万円違うと、子2人の場合の納付税額は72万円、配偶者と子2人(法定相続分)の場合は31万5,000円違います。評価額を見直すと、税額も動く場合があるということです。小規模宅地等の特例を使う場合は、減額の前の土地の評価額が基準になるため、評価額の誤りは減額後の金額にも響きます(小規模宅地等の特例|自宅の土地が8割減になる要件と計算例)。自分の土地の評価額を入れて税額を試したいときは、相続税シミュレーターで確かめられます。
評価に使う資料と取り寄せ先
| 資料 | わかること | 入手先・見る場所 |
|---|---|---|
| 路線価図・評価倍率表 | 路線価、借地権割合、地区区分、倍率 | 国税庁の財産評価基準書(税務署・国税局でも閲覧可) |
| 登記事項証明書 | 所在、地目、地積、所有者 | 法務局(国税庁のタックスアンサーは法務局ホームページの案内を参照するよう示しています) |
| 固定資産税の課税明細書 | 固定資産税評価額(倍率方式で使う)、家屋の評価額 | 毎年の納税通知書。評価額は都税事務所や市区町村の窓口でも確認できます |
| 図面(公図・測量図など) | 間口・奥行、形、道路との接し方 | 手元の資料や法務局。計算に使う間口・奥行は、図面と現地で確かめます |
| 賃貸借契約書・賃貸の状況 | 貸家建付地・貸宅地・借地権の判定、賃貸割合 | 契約書、家賃の台帳など |
地積は、課税時期における実際の面積によります(評価通達8)。登記簿の面積と実測の面積が違う土地は、評価の前に実測図などの資料があるかを確かめます。
評価を出す前の確認チェックリスト
- 使う年分:被相続人が亡くなった日の属する年分の路線価図・評価倍率表か。
- 路線価地域か倍率地域か:路線価図と倍率表で、土地の場所を確かめたか。
- 1画地の範囲:借地権や貸家の敷地として貸している部分と自分で使う部分を分けたか(使用貸借の部分は自分で使う部分と合わせて1画地)。
- 地積(面積):登記簿の面積と、実際の面積に違いがないか。評価は実際の地積で行うのが基本です。
- 形と間口・奥行:間口、奥行、角地・裏道・形の特徴を図面で確かめたか。
- 地区区分:路線価図の凡例で、補正率の列(普通住宅か普通商業か)を選んだか。
- 貸しているか:賃貸借契約書と賃貸の状況(空室を含む)を確かめたか。
評価の計算には、国税庁の「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」を使えます。路線価方式の計算を順に記入する様式です。
よくある誤り
- 固定資産税評価額をそのまま使う:倍率地域でも倍率を掛けます。路線価地域では固定資産税評価額ではなく路線価で評価します。
- 路線価を面積に掛けるだけ:奥行価格補正率などの補正率を忘れると評価額が高く出る場合があり、側方路線影響加算や二方路線影響加算を忘れると、その分だけ評価額が低く出ます。
- 登記簿の1筆を1画地とする:評価は利用の単位で行います。借地権を設定して貸している部分や貸家の敷地にしている部分と、自分で使う部分は分けます(使用貸借の部分は自分で使う部分と合わせて1画地です)。
- 貸している土地を自用地で評価する:貸家建付地や貸宅地の評価で、権利の分を引けるのに引いていないケースがあります。
- 使用貸借の土地に権利の評価を引く:使用借権は零として扱い、貸した宅地も自用地の価額で評価します。
- 規模格差補正を二重に考える:地積規模の大きな宅地の補正は、奥行価格補正・路線の加算・不整形地補正などを計算した後の価額に掛けます(評価通達20-2)。
よくある質問
固定資産税評価額と路線価の評価額は、どちらが高くなりますか。
土地によって違います。国税庁は、路線価を地価公示価格等を基にした価格の80%程度を目途に定めていると説明しています。一方、固定資産税評価額は、市区町村が固定資産税のために付けている別の評価です。相続税の評価では、路線価地域は路線価、倍率地域は固定資産税評価額に倍率を掛けます。
土地の面積が登記簿と実際で違うときは、どちらで評価しますか。
評価に使う地積は、課税時期における実際の面積です(評価通達8)。倍率方式では、実際の面積が台帳の地積と異なるときの取扱いについて、国税庁が質疑応答事例を公表しています。実測図などがあるときは、評価の前に取扱いを確かめます。
私道や、道路にする部分がある土地は、どう評価しますか。
私道そのものの用に供されている宅地は、通常に計算した価額の100分の30で評価します。その私道が不特定多数の人の通行に使われているときは、評価しません(評価通達24)。また、建替えのときに道路として提供しなければならない部分(セットバック部分)は、通常の評価額から70%相当額を引いて評価します(評価通達24-6)。路線価が設定されていない道路にだけ接している場合は、特定路線価の設定を申し出ることができます。
アパートの敷地に空室があるときは、どう評価しますか。
賃貸割合を使います。課税時期に賃貸されている独立部分の床面積の割合です。継続的に賃貸されていた部屋が、課税時期の前後の1か月程度などの一時的な期間だけ空室だったと認められるときは、賃貸されていたものとして扱えます(国税庁タックスアンサー No.4614)。
自分で評価した金額が合っているか、確かめる方法はありますか。
国税庁の評価明細書に沿って、路線価・補正率・地積を順に記入し、各行の値を表と見比べます。評価通達の補正は、土地の形や使い方に応じて複数が重なることがあります。判断が難しい土地は、税務署や税理士に確認してください。
まとめ
土地の評価は、1画地を決め、路線価方式か倍率方式かを確かめ、補正と加算を順に当てはめ、面積を掛ける、という流れです。貸している土地は、自用地の価額を出した上で権利の分を調整します。
補正率は、奥行・間口・形・広さ・角地かどうかで決まり、評価額が数%〜20%違うこともあります。評価額は課税価格に入り、特例を使うときも基準になるため、早めに確かめておく価値があります。実際の土地の評価の確認や申告を任せたい場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 相続税法22条
- 財産評価基本通達11・13・14-2・14-3・15・16・17(国税庁)、20・20-2・20-4(国税庁)、21・24-6(国税庁)、26(国税庁)
- No.4602 土地家屋の評価(国税庁)
- No.4603 宅地の評価単位・No.4604 路線価方式による宅地の評価・No.4605 地区の異なる2以上の路線に接する宅地の評価(国税庁)
- No.4606 倍率方式による土地の評価・No.4607 特定路線価の設定の申出(国税庁)
- No.4611 借地権の評価・No.4613 貸宅地の評価・No.4614 貸家建付地の評価(国税庁)
- 土地及び土地の上に存する権利の評価明細書・調整率表(国税庁)
- 財産評価基準書 令和8年分(東京都)借家権割合・令和8年分の路線価等について(国税庁)
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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