実家を相続するとき、土地の評価額が大きく、相続税がいくらになるのか不安ではありませんか。小規模宅地等の特例の要件を満たせば、自宅の土地は330平方メートルまで評価額を8割減らせます。誰が取得するかや土地の使い方で条件が変わり、適用には申告も必要です。
この記事では、自分の家で特例を使えるかを確認できるよう、取得者ごとの条件と面積の上限を整理します。減額の計算例に加え、事業用・貸付用の土地との違いや、遺産分割が間に合わない場合の手続きも分かります。
この記事の要点
- 割合と上限は、自宅が330平方メートルまで80%、特定事業用等が400平方メートルまで80%、貸付事業用が200平方メートルまで50%です。
- 例:6,000万円の自宅の土地を配偶者が取得すると、評価は1,200万円、相続税の総額は960万円から250万円になります。
- 自宅の土地は、配偶者は条件なし、同居の親族は申告期限まで住んで持ち続けること、別居の子は「家なき子」の要件が必要です。
- 申告書に適用を受ける旨を書き、書類を添付しないと使えません。未分割の土地は原則使えず、申告期限から3年以内に分割すれば更正の請求ができます。
- 貸付用の土地と併用する時は、面積を200平方メートルに換算します。上限を超えると、選んだ土地のすべてで使えません。
小規模宅地等の特例とは|4つの区分と、減る割合・面積の上限
この特例は、相続で取得した土地のうち、亡くなった人(被相続人)か、被相続人と生計が同じだった親族が、事業や住まいに使っていた土地について、相続税の計算に入れる評価額を減らします。条文は、減らした後の評価額を「小規模宅地等の価額に(20%または50%)を乗じて計算した金額」としています(措置法69条の4第1項)。
対象になる土地は、土地の使い方によって次の4つの区分に分かれます。区分ごとに、減らせる割合と、減らせる面積の上限が違います。
| 区分 | どんな土地か | 面積の上限 | 減る割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 亡くなった人(または生計が同じ親族)が住んでいた土地 | 330平方メートル | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 亡くなった人(または生計が同じ親族)が事業に使っていた土地(貸付けを除く) | 400平方メートル | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 被相続人と親族などが株式の50%超を持つ会社の事業に使われていた土地 | 400平方メートル | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | アパート・駐車場など、貸付けに使っていた土地 | 200平方メートル | 50% |
減る割合は、課税価格に入れる額を20%または50%にするという意味です。たとえば80%減なら、評価額の2割だけが課税価格に入ります。
対象になるのは「相続・遺贈で取得した宅地等」だけ
条文は、個人が「相続又は遺贈により取得した財産」のうちの宅地等を対象にしています。宅地等とは、土地または土地の上に存する権利で、建物や構築物の敷地になっているものです。次の点に注意が必要です。
- 建物は対象外です。減らせるのは土地(敷地の権利)の評価額で、家屋の評価額は減りません。
- 生前に贈与を受けた土地は対象外です。亡くなる年に贈与された土地を相続税の計算に加算する場合でも、相続・遺贈で取得したものではないので、特例は使えません(国税庁の質疑応答事例)。
- 棚卸資産に当たる土地は対象外です。不動産業者の販売用の土地などがこれにあたります(措置法施行令40条の2第4項)。
自宅の土地はいくら減る?減額の計算式と実額の例
自宅の土地(特定居住用宅地等)で減る金額は、次の式で決まります。
減る金額=土地の評価額×(330平方メートルまでの面積÷土地の面積)×80%
土地の面積が330平方メートル以下なら、土地全体が対象です。330平方メートルを超える場合は、超えた部分には特例が使えません。以下の表は、当事務所の無料の相続税シミュレーターと同じ計算で出した金額です。
例1:配偶者が自宅の土地を取得する場合
配偶者と子2人が相続人(基礎控除4,800万円)で、預貯金などが6,000万円、自宅の土地が6,000万円(200平方メートル)あるとします。法定相続分(配偶者2分の1、子は各4分の1)で分け、配偶者が自宅の土地をすべて取得し、子2人が預貯金などを取得する分け方を計算しました。
| 項目 | 特例を使わない | 特例を使う |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の減額 | 0円 | 4,800万円 |
| 課税価格の合計 | 1億2,000万円 | 7,200万円 |
| 基礎控除 | 4,800万円 | 4,800万円 |
| 相続税の総額 | 960万円 | 250万円 |
| 納付税額の合計 | 480万円 | 208万3,200円 |
配偶者の納付税額は、どちらも配偶者の税額軽減で0円です。違いは子2人が払う分に出ます(特例なしで各240万円、特例ありで各104万1,600円)。特例で課税価格の合計が下がり、相続税の総額が小さくなるためです。
例2:同居の子が取得する場合|遺産の内訳別に比べる
配偶者がいなくて子2人が相続人(基礎控除4,200万円)の場合に、遺産の内訳が違うと特例の効き方がどう変わるかを比べます。同居の子が、自分の取り分(遺産の2分の1)の範囲で自宅の土地を取得し、残りをもう1人の子が取得する前提です。同居の子は、申告期限まで住み続けて土地を持ち続けるものとします。
預貯金中心:預貯金7,000万円+土地3,000万円(120平方メートル)
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 減額 | 0円 | 2,400万円 |
| 課税価格の合計 | 1億円 | 7,600万円 |
| 相続税の総額 | 770万円 | 410万円 |
| 納付税額の合計 | 770万円 | 409万9,900円 |
自宅中心:預貯金2,000万円+土地8,000万円(150平方メートル)
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 減額 | 0円 | 4,000万円 |
| 課税価格の合計 | 1億円 | 6,000万円 |
| 相続税の総額 | 770万円 | 180万円 |
| 納付税額の合計 | 770万円 | 180万円 |
保険金あり:預貯金3,000万円+土地5,000万円(150平方メートル)+死亡保険金2,000万円
| 項目 | 特例なし | 特例あり |
|---|---|---|
| 減額 | 0円 | 3,200万円 |
| 課税価格の合計 | 9,000万円 | 5,800万円 |
| 相続税の総額 | 620万円 | 160万円 |
| 納付税額の合計 | 620万円 | 159万9,900円 |
3つとも、特例なしの税額は770万円・770万円・620万円と近い金額です。特例ありでは、遺産に占める自宅の土地の割合が大きいほど減額が大きくなります。預貯金中心の家(減額2,400万円)と自宅中心の家(減額4,000万円)で、同じ遺産1億円でも差が出ています。保険金の例の課税価格は、保険金の非課税枠(500万円×2人=1,000万円)を引いた後の金額です。
特例を使うかどうか、使うならどの土地に使うかは、財産と家族の状況で変わります。分け方ごとに試算して比べてください。
なお、土地の評価額そのものの出し方は土地の相続税評価額の計算|路線価方式と倍率方式を例で解説で説明しています。自宅を相続する場合の全体は実家(自宅)の相続税はいくら?評価の出し方と小規模宅地等の特例で下がる額にまとめています。
例3:土地の面積が330平方メートルを超える場合
自宅の土地が400平方メートル、評価額8,000万円で、預貯金などが2,000万円あるとします。配偶者と子2人が相続人(基礎控除4,800万円)で、配偶者がすべてを取得した場合です。
| 項目 | 特例を使わない | 特例を使う |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の減額 | 0円 | 5,280万円 |
| 課税価格の合計 | 1億円 | 4,720万円 |
| 相続税の総額 | 630万円 | 0円 |
| 納付税額の合計 | 0円(配偶者の税額軽減) | 0円 |
減る金額は、8,000万円×(330平方メートル÷400平方メートル)×80%=5,280万円です。400平方メートルのうち330平方メートル分だけが対象で、70平方メートル分の評価額は減りません。
この例は納付税額が0円のままですが、特例を使うには申告が必要です。この点は、後の「申告・分割・書類」の章で説明します。
誰が取得すれば使える?特定居住用宅地等の取得者別の要件
自宅の土地は、取得する人によって要件が違います。国税庁の整理(タックスアンサー No.4124)をもとに、被相続人が住んでいた土地の場合を表にします。
| 取得する人 | 要件 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 配偶者 | 取得者ごとの要件はありません(居住や保有の継続は不要) | (要件なし) |
| 亡くなった人と同居していた親族 | 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、土地を相続開始時から申告期限まで持ち続けること | 小規模宅地等の特例の要件|配偶者・同居の親族・家なき子の判定表 |
| 同居していない親族(いわゆる家なき子) | 被相続人に配偶者も同居の相続人もいないこと、3年以内に自分・配偶者・3親等内の親族・特別な関係の法人の家に住んでいないこと、今の家を過去に所有していないこと、申告期限まで土地を持ち続けること | 家なき子特例|持ち家のない子が使える要件と、2018年改正後に使えない場合 |
| 亡くなった人と生計を一にしていた親族が住んでいた土地を取得した、その親族 | 相続開始前から申告期限まで引き続きその家に居住し、土地を申告期限まで持ち続けること | 小規模宅地等の特例の要件|配偶者・同居の親族・家なき子の判定表 |
要件をそろえるうえで、押さえておきたい点が4つあります。
- 「居住の用」は生活の拠点で判断します。国税庁の質疑応答事例は、建築中の仮住まい、特例を使うためだけに一時的に入った建物、趣味や保養が主な建物は、住んでいた事実があっても生活の拠点とはいえないとしています。
- 入院で空き家になっていても対象です。退院後は従前どおり住める状況だった場合は、空き家だった期間の長さを問わず、被相続人の居住の用だった土地として扱われます(質疑応答事例)。
- 老人ホームに入っていた場合は別の定めがあります。要介護認定などの要件を満たせば、入所前に住んでいた自宅の土地が対象になります。詳しくは老人ホームに入っていた親の自宅と小規模宅地等の特例で説明しています。
- 二世帯住宅は登記の形で変わります。区分所有の登記があるかどうかで、同居とみなされる範囲が違います。詳しくは二世帯住宅の小規模宅地等の特例|区分登記かどうかで変わるで説明しています。
居住用の土地が2か所以上ある場合は、被相続人が主として居住していた1か所だけが対象です(措置法施行令40条の2第11項)。
共有で取得すると、要件を満たす人の持分の部分だけが対象
1つの土地を複数の人が共有で取得した場合、減る対象になるのは、要件を満たす人が取得した持分の割合に応じた部分だけです(措置法施行令40条の2第12項)。
例:評価額6,000万円(200平方メートル)の自宅の土地を、配偶者と別居の子が2分の1ずつの共有で取得したとします。別居の子が家なき子の要件を満たさない場合、対象になるのは配偶者の持分の部分だけです。減る金額は、6,000万円×1/2×80%=2,400万円です。別居の子の持分の部分3,000万円は、減りません。共有にする前に、取得者ごとに要件を確かめておく必要があるのはこのためです。
事業用・貸付用の土地の場合
事業や貸付けに使っていた土地にも、特例があります。居住用ほど条件は単純ではないため、全体像だけを表にします。
| 区分 | 取得者の主な要件 |
|---|---|
| 特定事業用宅地等 | 被相続人の事業を申告期限までに引き継いで申告期限まで営み、土地を申告期限まで持ち続けること(生計が同じ親族の事業なら、相続開始前から申告期限まで事業を続けること) |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 申告期限に会社の役員であり、土地を申告期限まで持ち続けること |
| 貸付事業用宅地等 | 被相続人の貸付事業を申告期限までに引き継いで申告期限まで続け、土地を申告期限まで持ち続けること(生計が同じ親族の貸付事業なら、相続開始前から申告期限まで続けること) |
注意したい点は次のとおりです。
- 貸付事業は規模を問いません。不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業と、事業と称するに至らない貸付けで相当の対価を得て継続的に行うものが「貸付事業」です(国税庁 タックスアンサー No.4124)。
- 使用貸借の土地は対象外です。無償で貸していた土地は対象になりません。
- 最近になって始めた事業・貸付けは対象外になることがあります。相続開始前3年以内に新たに事業の用や貸付事業の用に供された土地は、原則として特定事業用宅地等・貸付事業用宅地等になりません。
- その例外もあります。一定の規模以上の事業を行っていた場合(特定事業用)や、3年を超えて事業的規模の貸付けを続けていた場合(貸付事業用)は、対象外になりません。
- 不動産貸付業・駐車場業は「特定事業用」には入りません。貸付けは「貸付事業用」(50%)の区分です。
事業用・貸付用の詳しい要件と、アパートの土地の評価を組み合わせた計算は貸付事業用宅地と特定事業用宅地|アパート・店舗の土地の小規模宅地等の特例で説明しています。
複数の土地に使う時の面積の調整|貸付用があると200平方メートルに換算
特例を受ける土地を何か所も選ぶ場合は、面積の上限を満たす必要があります。判定は、特例を受ける土地を取得した全員の分を合わせて行います(措置法施行令40条の2第5項)。
貸付用の土地がない場合
特定居住用(330平方メートルまで)と、特定事業用等(400平方メートルまで)は、それぞれの上限の範囲内であれば、両方を使えます。合計は最大730平方メートルです(国税庁 No.4124)。
貸付用の土地がある場合
貸付事業用宅地等を選ぶ時は、次の式で計算した面積が200平方メートル以下であることが条件です(措置法69条の4第2項3号)。
(特定事業用等の面積)×200/400+(特定居住用の面積)×200/330+(貸付事業用の面積)≦200平方メートル
この式に当てはめた例です。
| 選んだ土地(平方メートル) | 式の計算結果 | 判定 |
|---|---|---|
| 貸付用200 | 200 | 使える |
| 居住用165+貸付用100 | 100+100=200 | 使える |
| 居住用165+貸付用120 | 100+120=220 | 使えない |
| 事業用200+貸付用100 | 100+100=200 | 使える |
| 居住用330+貸付用1 | 200+1=201 | 使えない |
選んだ土地が限度面積を満たさないと、選んだ土地のすべてで特例が使えません。国税庁の通達(措置法通達69の4-11)は、一部の土地だけが外れるのではなく、選択した土地のすべてについて適用がないとしています。上限を超えそうなときは、どの土地を選ぶかを見直す必要があります。
申告・分割・書類|特例を受けるための手続き
要件を満たしていても、手続きをしなければ特例は使えません。この章は、手続き面の注意点です。
申告書に書いて、書類を添える
特例は、相続税の申告書に「適用を受けようとする旨」を記載し、計算の明細書など財務省令で定める書類を添付した場合に限り使えます(措置法69条の4第7項)。添付する書類は、次のものが中心です(措置法施行規則23条の2第8項)。
- 小規模宅地等の課税価格の計算に関する明細書
- 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し(共同相続人全員が自署・押印し、印鑑証明書が付いたもの)
- 特例を受ける土地を取得した全員の選択の同意を証する書類、限度面積要件を満たす旨を記載した書類(措置法施行令40条の2第5項)
- 取得者の要件に応じた書類(家なき子の場合は3年前からの住所を示す書類、老人ホームの場合は介護保険の被保険者証の写しなど)
申告をしなかった場合や、記載・添付がなかった場合でも、税務署長がやむを得ない事情があると認めるときは、書類の提出があれば特例を適用できる場合があります(措置法69条の4第8項)。ただし、これは例外です。
申告期限までに分割されていない土地は、原則として使えない
条文は、申告期限までに共同相続人などによって分割されていない土地には、特例を適用しないと定めています(措置法69条の4第4項)。ただし、申告期限から3年以内に分割された場合は、特例を受けられます。
国税庁(タックスアンサー No.4208)が説明している手順は、次のとおりです。
- 申告期限までに、分割が決まっていない部分は、民法の相続分(または包括遺贈の割合)で取得したものとして、特例なしで申告・納税します。
- このとき、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。
- 申告期限から3年以内に分割できたら、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に、更正の請求をして特例を使った税額に直します。
3年以内に分割できないやむを得ない事情(訴えの提起など)がある場合は、税務署長の承認を受けることで、期間を延ばせる定めがあります(措置法69条の4第4項ただし書)。分割がまとまらない時の申告の全体は遺産分割がまとまらない時の相続税申告|未分割申告と「3年以内の分割見込書」で説明しています。
申告期限の数え方と逆算の日程
申告期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は死亡日)の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。期間の計算は、初日を数えず、最後の月の応当日の前日に満了します(国税通則法10条1項)。期限の日が日曜日や祝日などにあたる場合は、その翌日が期限になります(同条2項)。土曜日と12月29日〜31日も、この延長の対象です(国税通則法施行令2条2項)。
例:2026年12月10日に亡くなった場合の日程です。
| 項目 | 日付 | 数え方 |
|---|---|---|
| 相続開始 | 2026年12月10日(木) | 死亡日(知った日も同じとした場合) |
| 10か月の満了日 | 2027年10月10日(日) | 翌日の12月11日から数えて、10か月後の応当日の前日 |
| 申告期限 | 2027年10月12日(火) | 10月10日は日曜日、翌日の10月11日は祝日(スポーツの日)のため、翌日の12日 |
| 3年以内の分割の目安 | 2030年10月12日まで | 申告期限から3年 |
3年以内の分割の期限は、申告期限から数えます。期限の日が休日にあたる時の扱いを当てにせず、余裕を持って分割を終えるのが安全です。住み続ける・持ち続ける期間も、同じ申告期限までです(配偶者が取得する居住用の土地は、この要件がありません)。
小規模宅地等の特例でよくある誤り
実際に多い誤りを、原因となる条文とあわせて並べます。
- 「共有にすれば、全員の持分に使える」と思っている。対象になるのは、要件を満たす人の持分の部分だけです。
- 「税額が0円なら申告は要らない」と思っている。特例は申告書に書いて使う制度です。特例や配偶者の税額軽減で税額が0円になる場合も、申告が必要です。基礎控除との関係は相続税の基礎控除の記事で説明しています。
- 「家屋の評価も下がる」と思っている。下がるのは土地だけです。
- 「自宅の土地なら誰が相続しても使える」と思っている。取得する人の要件があります。たとえば別居の子は、家なき子の要件を満たさないと対象外です。
- 「申告期限の前に売っても、使える」と思っている。同居の親族・家なき子・生計が同じ親族の居住用、事業用、貸付用は、申告期限まで土地を持ち続けることが要件です。配偶者が取得する居住用の土地には、この保有の要件はありません。
- 「遺産分割がまとまっていなくても、特例が使える」と思っている。申告期限までに分割されていない土地は、原則として使えません。
- 「貸付用の土地も、居住用と同じ面積まで使える」と思っている。貸付用を選ぶ時は、面積を200平方メートルに換算して調整します。
- 「生前に贈与された自宅の土地にも使える」と思っている。相続・遺贈で取得した土地だけが対象です。
自分の家に当てはめる確認表
特例が使えるかを、順に確かめるための表です。1つでも「いいえ」があれば、その箇所の記事で要件を確認してください。
| 確認すること | 「いいえ」の時 |
|---|---|
| 土地は、亡くなった人(または生計が同じ親族)が住んでいた・事業や貸付けに使っていた土地ですか | 居住・事業・貸付けのいずれにも使っていなかった土地は対象になりません(入院や老人ホームへの入所などの例外は別)。使い方を確認する |
| 相続・遺贈で取得した土地ですか(生前贈与ではない) | 贈与で取得した土地は対象外 |
| 取得する人は、居住用なら「配偶者」「同居の親族」「家なき子」「生計が同じ親族」のどれかに当たりますか | 取得者を変えるか、要件を再確認する |
| 申告期限まで、住み続ける・事業を続ける・土地を持ち続けられますか | 期限前の売却・転居・貸付けで要件を外れる |
| 面積は、区分ごとの上限(330・400・200平方メートル)に収まっていますか(貸付用があれば換算式も) | 上限を超える部分は減らない。換算式を超えると選んだ土地のすべてで使えない |
| 申告期限までに、遺産分割の協議がまとまりそうですか | 分割見込書を付けて申告し、3年以内の分割を目指す |
| 相続税の申告書に適用を受ける旨を書き、書類を添付しますか | 申告をしないと使えない |
自分の場合を試算するには
特例を使うと、分け方ごとに税額が変わります。当事務所の無料の相続税シミュレーターでは、家族構成と財産を入れて、分け方ごとの税額と二次相続を含めた合計を比べられます。
土地が複数ある、事業用や貸付用が混ざる、遺産分割がまとまらないといった場合や、申告書の作成をまかせたい場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。
特例と一緒に確認したい記事は、次のとおりです。
- 配偶者がどこまで税額を軽くできるか:配偶者の税額軽減(1億6千万円まで)
- 申告の全体:相続税の申告の期限(10か月)・流れ・必要書類
- 遺産分割協議書の書き方:ひな形と、相続税の特例に必要な記載
- 配偶者居住権が付く自宅の扱い:配偶者居住権の評価と二次相続での効果
よくある質問
土地が330平方メートルを超えていたら、特例は使えませんか。
使えます。330平方メートルまでの部分に80%の減額がかかり、超えた部分は減りません。たとえば400平方メートルの土地なら、330平方メートル分(土地の評価額の330/400)が対象です。
特例が使える土地が2か所以上ある場合、どちらに使うかは選べますか。
選べます。特例を受ける土地を取得した全員が同意し、選んだ土地が面積の上限を満たす必要があります(措置法施行令40条の2第5項)。ただし、居住用の土地が2か所以上ある時は、被相続人が主として居住していた1か所に限られます。選び方で税額が変わるため、試算して比べてください。
建物にも使えますか。
使えません。特例で減らせるのは、土地(土地の上に存する権利を含みます)の評価額だけです。家屋は、固定資産税評価額による評価のままです。
申告期限までに遺産分割がまとまりませんでした。特例はあきらめるべきですか。
あきらめる必要はありません。「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書に添付して、特例なしで申告・納税します。申告期限から3年以内に分割できれば、分割があったことを知った日の翌日から4か月以内に更正の請求をして、特例を使った税額に直せます(国税庁 No.4208)。
申告期限より後に、土地を売ってもよいですか。
同居の親族などが取得する場合の要件は、申告期限まで土地を持ち続けることです。申告期限の後に売却することは、この特例の要件には影響しません(配偶者が取得する居住用の土地には、保有の継続要件そのものがありません)。ただし、売却には譲渡所得の税金などが別にかかります。詳しくは相続した土地を売却した時の税金|譲渡所得の計算と使える特例で説明しています。
まとめ
- 小規模宅地等の特例は、相続・遺贈で取得した土地の評価額を、区分に応じて80%または50%減らす制度です。面積の上限は、特定居住用が330平方メートル、特定事業用等が400平方メートル、貸付事業用が200平方メートルです。
- 自宅の土地で減る金額は、土地の評価額×(330平方メートルまでの面積÷土地の面積)×80%です。例では、評価額6,000万円の土地を配偶者が取得すると、相続税の総額が960万円から250万円に下がります。
- 居住用の土地は、配偶者・同居の親族・家なき子・生計が同じ親族のそれぞれに要件があります。申告期限まで住み続けて持ち続けることが、多くの場合の条件です。
- 貸付用の土地と併用する時は、面積を200平方メートルに換算して調整します。上限を超えると、選んだ土地のすべてで使えなくなります。
- 申告書に適用を受ける旨を書いて書類を添付します。申告期限までに分割されていない土地は、分割見込書を付けて申告し、申告期限から3年以内に分割すれば更正の請求で特例を使えます。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 租税特別措置法:69条の4第1項(特例の内容)・第2項(限度面積要件)・第3項(特定事業用・特定居住用・特定同族会社事業用・貸付事業用宅地等の定義)・第4項(未分割の場合)・第7項・第8項(申告要件)
- 租税特別措置法施行令:40条の2(第4項 対象となる宅地等・第5項 選択と同意の書類・第11項 居住用が2以上ある場合)
- 租税特別措置法施行規則:23条の2(第8項 添付書類)
- 措置法通達(相続税関係)69の4-10・69の4-11(面積の調整と限度面積を満たさない場合)
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 No.4124 Q&A(事業的規模でない不動産貸付けの場合)
- 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- 国税庁 質疑応答事例 相続開始の年に被相続人から贈与を受けた宅地に係る小規模宅地等の特例の適用の可否
- 国税庁 質疑応答事例 「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」の判定
- 国税庁 質疑応答事例 入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例
- 相続税法:27条1項(申告書の提出期限)
- 国税通則法:10条(期間の計算・期限の特例)、国税通則法施行令:2条2項
- 内閣府 「国民の祝日」について(祝日一覧CSV):2027年10月11日はスポーツの日
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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