帳簿づけを外に頼んでいると、確定申告まで同じ相手に任せられたら助かりますよね。税理士でない記帳代行業者に任せられるのは、原則として帳簿づけや集計までです。提携税理士が担当する場合も、申告書を誰が作り、誰と契約するのかを確かめる必要があります。
この記事では、記帳代行業者に頼める範囲と、申告を担当する税理士の確認方法を整理します。業務全体の分担は経理代行と税理士の違いも参考にしてください。
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税理士業務とは何か(税理士法2条)
税理士法2条1項は、税理士が他人の求めに応じて業として行う事務を、次の3つと定めています。この3つが「税理士業務」です。
| 業務 | 条文の中身(要約) | 場面の例 |
|---|---|---|
| 税務代理(1号) | 税務署などに対する申告・申請・請求・不服申立てや、調査・処分に関して税務署などに対してする主張・陳述を、代理し、または代行すること | 申告書の提出を代わりに行う、税務調査で納税者に代わって説明する |
| 税務書類の作成(2号) | 税務署などへの申告等に係る申告書・申請書・請求書・不服申立書その他、税法に基づいて作成し提出する書類を作成すること | 法人税・消費税・所得税の申告書を作る |
| 税務相談(3号) | 申告等や申告書等の作成に関し、課税標準等の計算に関する事項について相談に応じること | この支出が経費になるか、税額がいくらになるかの相談に答える |
そして税理士法52条は、税理士または税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行ってはならないと定めています。52条に違反した者は、2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(同法59条)。
国税庁『タックスアンサーNo.9204 にせ税理士にご注意』は、税理士業務を行えるのは税理士、税理士法人、国税局長に通知をした弁護士および弁護士法人に限られ、その他の個人や法人が有償・無償を問わず税理士業務を行うと52条違反として罰せられる、と案内しています。「無料なら作ってもよい」という扱いにはなりません。
「別段の定め」には、弁護士が国税局長に通知して税理士業務を行える定め(同法51条)や、行政書士がゴルフ場利用税・自動車税・軽自動車税・事業所税その他政令で定める租税に関して税務書類を作成できる定め(同法51条の2)があります。記帳代行業者であることを理由に税理士業務を行える定めは、条文にはありません。
記帳代行業者に頼めること・頼めないこと
税理士法2条1項に挙がっている3つの業務に、会計帳簿の記帳は入っていません。税理士にとって記帳の代行は、税理士業務に付随して行える「財務に関する事務」として2項に定められています。この違いから、税理士でない記帳代行業者に頼めることと頼めないことは次のように分かれます。
| 作業 | 税理士でない記帳代行業者 | 理由 |
|---|---|---|
| 領収書や通帳をもとに会計ソフトへ入力する | 頼める | 記帳は2条1項の税理士業務に含まれない |
| 帳簿を集計して試算表を作る | 頼める | 帳簿の作成と集計の範囲 |
| 法人税・消費税・所得税の申告書を作る | 頼めない | 税務書類の作成(2条1項2号) |
| 申告書を代わりに提出する | 頼めない | 税務代理(2条1項1号) |
| 経費になるか、税額がいくらかの相談に答えてもらう | 頼めない | 税務相談(2条1項3号) |
| 税務調査で税務署に対して説明してもらう | 頼めない | 税務代理(2条1項1号) |
注意したいのは、記帳の途中で出てくる判断です。入力の作業では「この支出はどの科目か」を決めますが、「この支出は経費になるか」「申告でどう扱うか」まで踏み込むと、課税標準等の計算に関する相談になります。記帳代行業者に記帳を頼む場合も、判断の要る取引は税理士に確認する流れを先に決めておくと、線を越えずに済みます。
「提携する税理士が申告します」と案内されたときの確認点
記帳代行業者が、記帳は自社で行い、申告は提携する税理士が行う、という形を案内することがあります。この形で頼む場合は、申告書の作成と税務代理を実際に誰が引き受けるのかを、次の点で確かめます。
- 申告書を作る税理士の氏名(または税理士法人の名称):見積りや契約書に書かれているか。
- 申告書の作成と税務代理の契約の相手:記帳の契約と、申告の契約が誰と誰の間で結ばれるか。
- 申告書への署名:税理士または税理士法人が税務書類を作成したときは、作成した税理士がその書類に署名し、税理士である旨などを付記します(税理士法33条2項・3項)。提出した申告書の控えで確かめられます。
- 税理士の登録:次の章の手順で、名前の挙がった税理士が登録されているかを確かめる。
税理士は、52条に違反する者に自分の名義を利用させてはなりません(税理士法37条の2)。申告書に税理士の名前だけを載せ、実際には税理士でない者が作っている形は、この名義貸しの禁止に当たり得ます。また、税理士でない者は、税理士・税理士事務所やこれらに類似する名称を用いてはならないと定められています(同法53条)。
なお、署名の有無は書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない、とも定められています(同法33条4項)。署名は「税理士が作ったか」を確かめる手がかりの1つで、署名が無いことだけで申告の効力が決まるわけではありません。
依頼先が税理士かどうかを確かめる手順
税理士となるには、税理士名簿に氏名・生年月日・事務所の名称と所在地などの登録を受けなければなりません(税理士法18条)。税理士は、事務所の所在地を管轄する税理士会に所属し、日本税理士会連合会に備える名簿に登載されています。確かめ方は次のとおりです。
- 依頼先の税理士の氏名(法人なら税理士法人の名称)と、事務所の所在地を聞く。
- 日本税理士会連合会の「税理士情報検索サイト」で、氏名や事務所所在地などから検索する。このサイトでは、現在税理士名簿に登録のある税理士と税理士法人の情報を参照できます(日本税理士会連合会『税理士に相談する』)。
- 面談のときは、税理士証票の提示を受けて確かめる。登録を受けた税理士は、日本税理士会連合会が発行する税理士証票を持っています。
- 検索で確かめられないときは、日本税理士会連合会に電話で問い合わせる(電話番号は国税庁のタックスアンサーNo.9204に載っています)。
- 相手が弁護士・弁護士法人の場合は、国税局の総務課に問い合わせる。
名刺やウェブサイトの肩書きだけで判断せず、検索の結果と、契約書・申告書に出てくる名前が一致するかを確かめます。登録が確認できた後は、記帳・申告・相談のどこまでを、どの税理士が担当するかを契約で決めます。
頼み方の3つの形と、それぞれで確かめること
記帳と申告をどう分けて頼むかで、確かめることが変わります。
| 形 | 記帳 | 申告書の作成・税務相談 | 確かめること |
|---|---|---|---|
| 記帳は代行業者、申告は自分で選んだ税理士 | 記帳代行業者 | 税理士・税理士法人 | 帳簿データの受け渡しの方法と時期、判断の要る取引の確認先 |
| 記帳から申告まで税理士・税理士法人 | 税理士(付随業務) | 同じ税理士・税理士法人 | 記帳・決算・申告・相談の範囲が契約に書かれているか |
| 代行業者が提携する税理士を紹介 | 記帳代行業者 | 紹介された税理士・税理士法人 | 申告の契約の相手、署名する税理士、その税理士の登録 |
どの形でも、見積りは記帳の量(仕訳数)、申告の種類(法人税・消費税・所得税・地方税)、決算の作業の範囲、資料の状態で変わります。形ごとに見積りを取り、範囲をそろえて比べてください。
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まとめ:申告書の作成・税務代理・税務相談は税理士にしか頼めない
- 税理士業務は、税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つ(税理士法2条1項)。
- 税理士・税理士法人(と国税局長に通知をした弁護士・弁護士法人)以外は、有償・無償を問わず税理士業務を行えない(同法52条)。
- 記帳は税理士業務に含まれないため、税理士でない記帳代行業者に頼めるのは記帳と試算表の範囲まで。
- 「提携する税理士が申告」の形では、申告の契約の相手、署名する税理士、その税理士の登録を確かめる。
- 登録は、日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトや税理士証票で確かめられる。
記帳と申告を別々に頼むか、まとめて頼むかは、会社の取引量と社内の体制で変わります。どの形でも、申告書を作る人が税理士であることを依頼の前に確かめてください。
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よくある質問
Q. 料金を取らずに申告書を作ってもらうなら、税理士でなくても問題ありませんか?
問題になります。国税庁は、税理士等以外の個人や法人が有償・無償を問わず税理士業務を行うと税理士法52条違反として罰せられる、と案内しています。無料かどうかは、税理士業務に当たるかどうかの判断に関係しません。
Q. 記帳代行業者に「この支出の科目はどれか」と聞くのも駄目ですか?
帳簿に入力するための科目の当てはめは、記帳の作業の中で出てくる確認です。一方、経費になるか、税額がいくらになるかといった、申告や課税標準等の計算に関する相談に応じることは税務相談で、税理士業務に当たります。判断が要る取引は、税理士に確認する流れにしておくと安全です。
Q. 個人事業主の所得税の確定申告書も同じですか?
同じです。所得税の確定申告書も、税務署に提出する申告書として税務書類の作成の対象です。帳簿付けを記帳代行業者に頼み、確定申告書の作成は税理士に頼む、という分け方になります。
Q. 税理士情報検索サイトで名前が見つかれば、それで安心ですか?
検索で確かめられるのは、税理士名簿に登録されているかどうかです。登録が確認できても、記帳・申告・相談のどこまでを誰が担当するか、申告書に署名するのは誰かは別に確かめてください。契約書と申告書に出てくる名前が、検索で確かめた名前と一致しているかも見ておきます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月26日
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