記帳代行は毎月頼むべきか、決算のときに年1回まとめて頼んでもよいのか、迷っていませんか。取引が少なく、期の途中で利益や税額を確認する予定がなければ、年1回でも進められる場合があります。融資や納税資金の準備に数字を使うなら、その時期に帳簿が整っている必要があります。
この記事では、毎月と年1回の違い、自社に合う頻度の決め方、四半期ごとに頼む方法を紹介します。契約の範囲は、税務顧問と決算のみの違いもご確認ください。
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毎月と年1回まとめての違い
記帳の頻度で変わるのは、作業の総量よりも「数字が見える時期」と「確認のしやすさ」です。
| 項目 | 毎月の記帳 | 年1回まとめての記帳 |
|---|---|---|
| 試算表が見られる時期 | 資料を渡した月の翌月ごろから毎月 | 決算の作業が終わるまで見られない |
| 決算の作業 | 期中の入力が済んでいるので、決算整理が中心 | 12か月分の入力と決算整理を、申告期限までの2か月で行う |
| 不明な取引の確認 | 1か月前の取引なので、記憶や資料をたどりやすい | 1年近く前の取引を思い出す必要がある |
| 資料の紛失 | 毎月回収するので欠けに早く気付く | 決算時に欠けが分かり、再発行を頼むことになる |
| 納税額の見込み | 期末前に利益と税額の見当がつく | 決算が終わるまで分からない |
| 依頼の内容 | 毎月の資料回収と入力、試算表の作成 | 年1回の資料回収と入力 |
法人税の確定申告は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(法人税法74条)。年1回まとめての場合、期末が過ぎてから資料を集め、入力し、決算と申告までをこの2か月で終える日程になります。
期中の試算表が必要になる場面
法人で期中の数字が要る場面は、主に次の4つです。どれも期限や提出書類が決まっているため、その時期に記帳が追いついているかが分かれ目になります。
| 場面 | 時期・条件 | 記帳の頻度との関係 |
|---|---|---|
| 役員報酬の改定 | 定期同額給与として損金に算入される通常の改定は、会計期間開始の日から3か月(申告期限の延長の特例で税務署長の指定を受けた法人は、指定の月数に2を加えた月数)を経過する日まで | 前期の着地と当期の見込みを、期首から3か月以内に見て金額を決める |
| 役員賞与(事前確定届出給与) | 原則として、株主総会等の決議の日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日のいずれか早い日までに届出 | 期の早い時期に、支給できる額の見当をつける必要がある |
| 法人税の中間申告 | 事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内。前期の実績による方法のほか、6か月を1事業年度とみなす仮決算による方法がある | 仮決算を選ぶには、期首から6か月分の帳簿が整っている必要がある |
| 融資の申込み | 日本政策金融公庫(国民生活事業)は、決算後6か月以上経過している場合などに試算表の準備を求めている | 申込みの時点で直近の試算表を出せるか |
役員報酬の3か月は「改定してよいか」の期限ではなく、改定後の給与が定期同額給与として損金に算入されるかの要件です(国税庁『タックスアンサーNo.5211 役員に対する給与』)。この時期を過ぎた改定は、臨時改定事由や業績悪化改定事由に当たる場合を除き、定期同額給与になりません。考え方は役員報酬の改定時期で詳しく扱っています。
中間申告は、前期の法人税額から計算した金額が10万円以下である場合などは提出が要りません(法人税法71条)。仮決算による中間申告は、事業年度開始の日以後6か月の期間を1事業年度とみなして所得を計算する方法です(法人税法72条)。どちらが有利かは前期と当期の利益の差で変わるため、数字で試算しないと決まりません。仮決算という選択肢を持てるかどうかが、記帳の頻度で分かれます。
融資では、日本政策金融公庫の小規模事業者・個人事業主向けの案内が、試算表について「決算後6カ月以上経過している場合または事業を始めたばかりで決算を終えていない方」に準備を求めています(日本政策金融公庫『小規模事業者/個人事業主の方【国民生活事業】』)。期の後半に融資を申し込む可能性があるなら、その時点の試算表を出せる状態にしておく必要があります。
年1回まとめてで回る場合と、その条件
期中の数字を使う場面が無い会社では、年1回まとめての記帳でも決算と申告は行えます。ただし、次の条件がそろっていることが前提です。
- 取引が少なく、12か月分を申告期限までの2か月で入力から決算まで終えられる量である。
- 期中に役員報酬や役員賞与を変える予定が無い。
- 期中に融資を申し込む予定が無い。
- 中間申告がある場合は、前期の実績による方法で納めることを前提にしてよい。
- 請求書・領収書などを毎月決まった場所にまとめ、紛失しない保管ができる。
あわせて、2つの点を確かめておきます。1つは会社法です。会社法432条は、株式会社に対して適時に正確な会計帳簿を作成することを求めています。記帳の頻度を決めるときは、この「適時に」も前提に置いてください。
もう1つは、紙の領収書をスキャンしてデータで保存する場合です。スキャナ保存には入力期間の要件があり、受領後速やか(おおむね7営業日以内)に入力する方法か、業務処理サイクルの期間(最長2か月以内)を経過した後速やか(おおむね7営業日以内)に入力する方法のどちらかによります(国税庁『はじめませんか、書類のスキャナ保存』)。年1回まとめて資料を送り、その時にスキャンする流れでは、この期間に収まりません。その場合は紙の原本を保存しておく前提で考えます。
間を取る選び方:四半期ごと・決算前だけ毎月
毎月か年1回かの二択にしなくても、試算表を使う時期に合わせて頻度を決める方法があります。
| 頻度 | 向いている会社 | 注意すること |
|---|---|---|
| 毎月 | 融資・役員報酬・中間申告の判断に期中の数字を使う会社、取引が多い会社 | 毎月の資料回収日を決め、遅れない運用にする |
| 四半期ごと | 取引は多くないが、期中に数字を何度か見たい会社 | 3か月分の不明取引がたまるので、回答の時間を見込む |
| 期首と期末前だけ見込みを作る | 期中の変化が小さく、役員報酬の改定と納税の準備だけ数字が要る会社 | 期首から3か月以内、期末の数か月前など、使う時期を先に決める |
| 年1回 | 取引が少なく、期中に数字を使う予定が無い会社 | 資料の保管と、決算時の作業日程を先に確保する |
記帳の頻度は、途中で変えることもできます。融資の予定ができた、取引が増えた、役員報酬を見直したい、といった変化があれば、その時点から頻度を上げ、期首からの入力を追いつかせます。
頻度を決めるためのチェックリスト
次の質問に答えると、自社に必要な頻度が見えてきます。「はい」が1つでもあれば、少なくともその時期には記帳が追いついている必要があります。
- 原則として期首から3か月以内に、役員報酬の金額を見直す可能性があるか。
- 役員賞与を事前確定届出給与で支給する予定があるか。
- 法人税の中間申告があり、仮決算による方法も比べたいか。
- 決算から6か月以上たった時期に、融資を申し込む可能性があるか。
- 決算の数か月前に、納税額の見込みを知って資金を準備したいか。
- 月の取引量が多く、12か月分を決算期の2か月で処理すると間に合わないおそれがあるか。
- 紙の領収書をスキャナ保存して、原本を捨てる運用にしたいか。
見積りは、頻度のほか、月の取引量(通帳の明細行数・請求書や領収書の枚数)、口座とカードの数、資料の渡し方、試算表の報告の形で変わります。頻度ごとに見積りを取り、条件をそろえて比べてください。
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まとめ:記帳の頻度は「期中の数字をいつ使うか」で決める
- 毎月と年1回の違いは、作業の総量より、試算表が見える時期と不明取引の確認のしやすさ。
- 役員報酬の改定(原則として期首から3か月以内)、事前確定届出給与の届出、中間申告の仮決算、融資の申込みで、期中の数字が要る。
- 年1回で回すなら、取引が少ない・期中に数字を使わない・資料を保管できる、が前提。会社法の「適時に」とスキャナ保存の入力期間も確かめる。
- 四半期ごとや、期首と期末前だけ見込みを作る方法もある。途中で頻度を上げることもできる。
どの頻度が合うかは、取引量と期中の予定で変わります。上のチェックリストの答えを添えて依頼先に相談すると、頻度ごとの比較がしやすくなります。
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よくある質問
Q. 年1回まとめてにすれば、記帳代行の負担は軽くなりますか?
入力する取引の量は、毎月でも年1回でも変わりません。年1回の場合は、1年近く前の取引の確認や、欠けた資料の再発行に時間がかかることがあります。どちらが軽いかは取引量と資料の保管状態で変わるため、頻度ごとに見積りを取って比べてください。
Q. 期の途中から毎月の記帳に切り替えられますか?
切り替えられます。その場合は、期首から切り替え時点までの分を先に入力して追いつかせ、その後を毎月の流れにします。融資の申込みや役員報酬の見直しなど、数字が必要になる時期が分かっていれば、その前に追いつくよう日程を組みます。
Q. 融資を受ける予定がなければ、年1回でも問題ありませんか?
融資以外にも、役員報酬の改定、事前確定届出給与の届出、中間申告の仮決算、納税資金の準備で期中の数字が要る場合があります。これらの予定が無く、取引も少ない会社であれば、年1回でも決算と申告は行えます。会社法の「適時に正確な会計帳簿を作成」という定めも前提に置いてください。
Q. 個人事業主の場合も同じ考え方ですか?
期中の数字をいつ使うかで決める、という考え方は同じです。ただ、役員報酬や法人税の中間申告は法人の制度なので当てはまりません。個人事業主は、所得税の予定納税や消費税の中間申告の有無、融資の予定などで、期中の数字が要るかを確かめてください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月23日
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