記帳代行の見積りで「月の仕訳数」を聞かれても、何を数えればよいのか戸惑いますよね。仕訳数は、領収書の枚数や通帳の行数とは一致しないことがあります。見積りを同じ条件で比べるため、まず依頼先に、仕訳の本数と行数のどちらを数えるのか確認しましょう。
この記事では、資料と仕訳の数がずれる例や、自社の月の仕訳数を把握する手順を紹介します。料金の考え方は税理士の記帳代行と仕訳数で確認できます。
顧問税理士をお探しの方へ
会社の規模や記帳の状況をお聞きして、顧問料をお見積りします。
顧問契約のお見積り(無料)はこちら →料金の目安を先に知りたい方は、顧問料・乗り換え診断はこちら。全国オンライン対応です。
仕訳とは何か、取引件数とどう違うか
仕訳は、1つの取引を借方と貸方に分けて、勘定科目と金額で記録することです。青色申告の承認を受けている法人は、全ての取引を借方と貸方に仕訳する帳簿(仕訳帳)と、勘定科目の種類別に整理する帳簿(総勘定元帳)を備えます(法人税法施行規則54条)。仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日・内容・勘定科目・金額を記載します(同55条)。個人の青色申告者にも、仕訳帳と総勘定元帳を備える定めがあります(所得税法施行規則58条)。ただし、財務大臣の定める簡易な記録の方法によることもできます(同56条1項ただし書)。55万円・65万円の青色申告特別控除は正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)による記帳が要件なので、仕訳帳と総勘定元帳まで付けるのは主にこの控除を受ける人で、簡易な記録の方法による人は10万円の控除の対象になります。
「仕訳数」は、この仕訳帳に記録される仕訳の数のことです。似た言葉と並べると、違いは次のとおりです。
| 数えるもの | 何を数えるか | ずれが出る例 |
|---|---|---|
| 取引件数 | 実際に起きた売買・支払・入金などの数 | 掛けで売った取引は、売上の計上と入金の2回記録することがある |
| 資料の数 | 通帳・カード明細の行数、請求書や領収書の枚数 | 口座間の資金移動は、2冊の通帳に1行ずつ出るが仕訳は1本 |
| 仕訳の本数 | 仕訳帳に記録した仕訳の数 | 給与の支払のように、1本の中に科目が何行も並ぶ仕訳がある |
| 仕訳の行数 | 仕訳の中の借方・貸方の行の数 | 1本の複合仕訳が4行になることがある |
見積りの「仕訳数」が本数を指すのか行数を指すのかは、依頼先によって違うことがあります。自社で数えるときも、見積りを頼むときも、どちらで数えたかを添えるのが確実です。
通帳1行が1仕訳にならない典型例
資料の数と仕訳の数がずれやすい取引を並べます。※説明のための架空の例です。実際の仕訳は、記帳の方法や科目の付け方で変わります。
| 場面 | 資料に出る数 | 仕訳の数 | ずれる理由 |
|---|---|---|---|
| 掛けで売って、後日振込で入金 | 請求書1枚、通帳1行 | 2本(売上の計上・入金) | 計上と入金を別の日に記録する |
| 入金のときに振込手数料が差し引かれた | 通帳1行 | 1本・3行 | 入金額と手数料を分けて記録する |
| 自社の口座Aから口座Bへ資金を移した | 通帳2行(口座ごとに1行) | 1本 | 2冊の通帳にまたがるが、取引は1つ |
| 借入金を返済した | 通帳1行 | 1本・3行 | 元金と利息を分けて記録する |
| カードで経費を支払い、翌月に口座から引き落とされた | カード明細の行数+通帳1行 | 利用ごとの仕訳+引落しの仕訳 | 利用と引落しを別に記録する |
| 給与を支払った | 通帳1行または人数分の行 | 1本・数行 | 総額・源泉所得税・社会保険料を分けて記録する |
反対に、資料の数より仕訳が少なくなることもあります。例えば、2つの口座の間で資金を移した取引や、後で説明する日々の売上をまとめて記録する場合です。通帳の行数を仕訳数の目安にするときは、こうした取引がどれだけあるかで上下に補正します。
複合仕訳と「行数」の数え方
複合仕訳は、借方か貸方の一方または両方に、2つ以上の科目が並ぶ仕訳です。給与の支払を例にすると、次のように1本の仕訳の中に4行が並びます。※説明のための架空の例です。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 給与手当(総支給額) | 普通預金(振込額) |
| 預り金(源泉所得税) | |
| 預り金(社会保険料の本人負担分) |
この仕訳は、本数で数えると1本、借方と貸方の科目の数で数えると4行です。複合仕訳の多い会社では、本数と行数の差が大きくなります。給与を人ごとに分けて記録するか、総額で1本にするかでも数は変わります。
会計ソフトの仕訳帳では、1本の仕訳を1つの番号でまとめて表示するものが多く、行数と本数のどちらも数えられます。見積りを頼む相手に「仕訳数は本数ですか、行数ですか」と確かめ、同じ数え方で自社の数を伝えます。
自社の月の仕訳数を把握する手順
把握の仕方は、すでに会計ソフトで記帳しているかどうかで分かれます。
会計ソフトで記帳している場合
- 仕訳帳を1か月分出し、仕訳の本数と行数を数える。
- 決算の月、賞与を払った月、繁忙期など、仕訳が多い月も同じように数える。
- 12か月分の平均と、最も多い月の数を控える。
- 決算整理の仕訳(減価償却・未払費用・前払費用など)は月の数と分けて数える。
まだ記帳していない、または資料しかない場合
資料の種類ごとに数え、仕訳の数に置き換えます。
| 資料 | 数える単位 | 仕訳に置き換えるときの見方 |
|---|---|---|
| 通帳 | 口座ごとの月の明細行数 | 自社口座の間の資金移動は2行で1本と数える |
| カード明細 | カードごとの月の利用行数 | 利用の行数に、引落しの1本を足す |
| 発行した請求書 | 月の枚数 | 掛けで売る場合は、計上の1本が入金とは別に増える |
| 受け取った請求書 | 月の枚数 | 掛けで買う場合は、計上の1本が支払とは別に増える |
| 現金の領収書・レシート | 月の枚数 | 口座やカードを通らないので、枚数がそのまま仕訳になりやすい |
| 給与 | 支給の回数と人数 | 総額で1本か、人ごとに分けるかで変わる |
数えるのは最低でも3か月分にし、月ごとの差を見ます。現金の領収書は、通帳やカードに出てこないため、見落とすと実際の仕訳数より少なく伝えてしまいます。
記帳の方法で仕訳数が変わる場面
同じ取引量でも、どの方法で記帳するかで仕訳の数は変わります。記帳の方法は好みで選べるものばかりではなく、申告の種類や消費税の課税の有無で決まる部分があります。
| 区分 | 定められている記帳 | 仕訳数への影響 |
|---|---|---|
| 法人(青色申告) | 一切の取引を複式簿記の原則に従って記録する(法人税法施行規則53条) | 取引ごとに仕訳を起こすので、数は取引量に近くなる |
| 個人の青色申告で55万円・65万円の控除を受ける場合 | 取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳する | 法人と同じく取引ごとの仕訳になる |
| 個人の青色申告で10万円の控除を受ける場合 | 財務大臣の定める簡易な記録の方法によることもできる | 記録の方法しだいで、取引ごとの仕訳の形にならないこともある |
| 個人の白色申告 | 一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額をまとめて記載するなど簡易な方法でもよい | 日々の合計でまとめれば、仕訳の数は少なくなる |
| 消費税の課税事業者 | 取引の年月日・内容・税率ごとに区分した金額・相手方などを帳簿に記載する | 税率の異なる取引は分けて記録するため、行数が増えることがある |
個人の青色申告特別控除の要件は国税庁『タックスアンサーNo.2072 青色申告特別控除』に、白色申告者の記帳は国税庁『タックスアンサーNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度』にあります。
消費税の帳簿には特例もあります。小売業その他これに準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業者は、現金売上げについて、課税と課税以外に区分した日々の現金売上げのそれぞれの総額で記載することができます(国税庁『タックスアンサーNo.6621 帳簿の記載事項と保存』)。この場合も税率の異なるごとに区分する必要があります。店頭の現金売上が多い業種では、レシートの枚数ではなく、営業日の数と税率の区分の数が仕訳数の目安になります。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
まとめ:仕訳数は「何を1と数えたか」を添えて伝える
- 仕訳数は、取引件数・資料の数・仕訳の本数・仕訳の行数のどれで数えるかで変わる。
- 掛けの売上、口座間の資金移動、借入金の返済、カード払い、給与の支払で、資料の数と仕訳の数がずれる。
- 複合仕訳の多い会社では、本数と行数の差が大きい。見積りの相手がどちらで数えるかを確かめる。
- 把握するときは3か月分以上を数え、平均と最も多い月を控える。現金の領収書を見落とさない。
- 法人と個人の青色申告(55万円・65万円の控除)は複式簿記、個人の白色申告は簡易な方法も可。記帳の方法で仕訳数は変わる。
見積りは、仕訳数のほか、資料の状態、口座とカードの数、業種、決算月でも変わります。数えた月と数え方を添えて伝えると、依頼先ごとの見積りを同じ条件で比べられます。
顧問税理士をお探しの方(法人・個人事業主)
リーパル会計事務所は、1,100社以上の関与実績があるMF公認・freee認定の会計事務所です。全国オンラインで、顧問契約のご相談とお見積りを承っています。
よくある質問
Q. 通帳の明細の行数を、そのまま仕訳数として伝えてもよいですか?
目安にはなりますが、口座間の資金移動、掛けの売上や仕入、複合仕訳、現金の取引で実際の仕訳数とずれます。伝えるときは「通帳の行数で数えた」と添え、口座とカードの数、現金の領収書のおおよその枚数も一緒に伝えてください。
Q. 月によって仕訳数が大きく違う場合は、どの月の数を伝えますか?
平均と、最も多い月の両方を伝えてください。決算の月や賞与を払った月、季節による繁忙期は、仕訳が増えやすい月です。多い月を伝えないと、その月の作業が見積りに入っていないことがあります。
Q. 口座やカードの明細を会計ソフトに自動で取り込めば、仕訳数は減りますか?
取込みで減るのは入力の手間で、仕訳の数そのものは取引の数と記帳の方法で決まります。取り込んだ明細も、科目と税区分を確かめて仕訳として登録するため、確認の作業は1件ずつ残ります。
Q. 法人と個人事業主で、仕訳数の数え方は変わりますか?
本数と行数の数え方は同じです。ただ、個人の白色申告は日々の合計をまとめて記載するなど簡易な方法でもよいとされているため、同じ取引量でも法人より仕訳数が少なくなることがあります。どの方法で記帳するかを先に決めてから数えてください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月25日
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
顧問税理士をお探しの方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見