会計ソフトへの入力は社内でできても、処理が合っているかの確認まで担うのは不安ではありませんか。日々の入力は社内、毎月の確認や決算・申告は会計事務所に頼む分け方ができます。社内で毎月の入力時間を確保できるかを確かめ、誤りを誰が直すかも先に決めておきましょう。
この記事では、自計化と記帳代行を組み合わせる際の分担、毎月の進め方、切り替えの手順を整理します。サービスの基本は、「記帳代行とは」の記事もご覧ください。
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自計化・記帳代行・組合せの違い
3つの形の違いは、「誰が入力し、誰が確認し、誰が直すか」です。
| 項目 | 自計化(社内で完結) | 記帳代行 | 組合せ(入力は社内・確認は外部) |
|---|---|---|---|
| 入力する人 | 社内の担当者 | 外部(会計事務所・代行業者) | 社内の担当者 |
| 確認する人 | 社内(同じ担当者になりやすい) | 入力した外部が自分で確認 | 入力していない外部 |
| 誤りを直す人 | 社内 | 外部 | 誤りの種類ごとに決める |
| 数字が見える時期 | 入力した時点 | 資料を渡して入力が終わった後 | 入力した時点(確認後に確定) |
| 社内に要る手間 | 入力・確認・修正のすべて | 資料をそろえて渡す | 入力と、指摘を受けた修正 |
| 外部に渡すもの | 決算時の帳簿データ | 通帳・カード明細・請求書・領収書など | 会計ソフトの閲覧権限と、質問のある取引の資料 |
どの形でも、帳簿を付けて保存する義務を負うのは法人自身です。青色申告の承認を受けている法人は、財務省令で定めるところにより、帳簿書類を備え付けて取引を記録し、保存しなければなりません(法人税法126条)。財務省令では、資産・負債・資本に影響する一切の取引を複式簿記の原則に従って記録すること(法人税法施行規則53条)、仕訳帳と総勘定元帳を備えること(同54条)が定められています。入力を社内でするか外部に頼むかは、この義務を誰の手で果たすかの違いです。
入力は社内、確認は外部に分けるときの月の流れ
組合せの形では、1か月を次の順で回します。社内と外部の受け渡しが2回あるので、それぞれの期日を先に決めておきます。
- 社内:請求書・領収書・通帳とカードの明細をそろえる。
- 社内:会計ソフトに入力する。口座とカードの明細は取込みの機能を使い、科目を当てはめる。
- 社内:月の締めをする。預金の帳簿残高と通帳の残高、現金の帳簿残高と手元の現金を合わせ、売掛金と未払金の残りを確かめる。
- 外部:仕訳を確認する。科目・消費税の税区分・計上の時期・重複・漏れを見る。
- 外部から社内へ:指摘と質問を一覧にして返す。
- 社内または外部:誤りを直す。
- 外部:直した後の試算表を確定し、報告する。
組合せで一番もめやすいのは、6の「誰が直すか」です。外部がその場で直すと社内の担当者が同じ誤りを繰り返しやすく、社内が直すと往復に時間がかかります。科目の当てはめの誤りは社内が直す、税区分や決算に関わる処理は外部が直す、のように、誤りの種類ごとに分けておくと迷いません。
直した跡を残すことも決めておきます。国税庁『優良な電子帳簿のススメ!』は、優良な電子帳簿の要件の1つに「訂正・削除・追加の履歴が残ること」を挙げています。会計ソフトの履歴の機能を使えば、誰がいつ何を直したかを後から確かめられます。なお、優良な電子帳簿の要件はこれだけではないため、その適用を受けるかどうかは別に確かめてください。
社内に残す範囲と、外部に任せる範囲の分け方
作業ごとに、どちらが持つと無理がないかを整理すると次のとおりです。会社の人手や取引の形で変わるので、目安として使ってください。
| 作業 | 主な担当 | 分け方の目安 |
|---|---|---|
| 請求書・領収書の回収と保存 | 社内 | 取引の現場にいる人でないと集められない |
| 預金・カード明細の取込み | 社内 | 会計ソフトとの連携で、件数が多くても入力の手間は少ない |
| 売上・仕入の計上 | 社内 | 取引先や入金の予定を知っているのは社内 |
| 経費の科目の当てはめ | 社内(迷う取引は外部へ質問) | 同じ取引は毎回同じ科目で処理する |
| 給与・源泉所得税・社会保険料の仕訳 | どちらでも | 給与計算をどこでしているかに合わせる |
| 消費税の税区分 | 社内で入力し、外部の確認を必ず通す | 課税・非課税・対象外の区分やインボイスの有無で税額が変わる |
| 固定資産と減価償却 | 外部 | 資産に計上するか費用にするかの判断がある |
| 決算整理と申告書の作成 | 税理士 | 申告書の作成は税理士の業務 |
申告書の作成は、税務書類の作成として税理士の業務に当たります(税理士法2条1項2号)。税理士でない者は、法律に別段の定めがある場合を除き、税理士業務を行えません(税理士法52条)。一方、会計帳簿の記帳の代行は、税理士が税理士業務に付随して行える財務に関する事務として定められています(同法2条2項)。入力をどこまで社内で持つかは会社が決められますが、決算と申告書の作成は税理士に頼む前提で分担を組みます。
社内で入力するときの土台になるのが、よく出る取引の科目・税区分・摘要の書き方を一覧にした「入力ルール表」です。外部と一緒に作っておき、ルール表に無い取引だけを質問する形にすると、確認と修正の往復が減ります。科目は、同じ取引を毎回同じ科目で処理するのが基本です。
組合せが向く会社・向かない会社
次の項目に多く当てはまるほど、組合せの形が回りやすくなります。
| 見るところ | 組合せが向く | 記帳代行の方が合う |
|---|---|---|
| 社内の人手 | 入力に充てる時間を毎月決まって取れる担当者がいる | 担当者が他の業務と兼務で、入力の時間が月によってぶれる |
| 取引の形 | 多くが口座振込・口座振替・カードで、明細の取込みで入力できる | 現金の取引が多く、取込みで入力できる部分が少ない |
| 数字を見たい時期 | 月末を待たずに、入力した時点で数字を見たい | 毎月の試算表が決まった時期に届けば足りる |
| 証憑の管理 | 社内で回収して保存する仕組みがすでにある | 資料がまとまらず、回収から外部に頼みたい |
| 担当者が抜けたとき | 入力の手順が書面にあり、別の人が引き継げる | 一人しか入力できず、退職や休職で止まるおそれが大きい |
判断の分かれ目は、社内の入力時間を毎月安定して取れるかどうかです。社内の入力が数か月止まると外部の確認も止まり、結局まとめて記帳代行に頼むことになります。担当者が一人しかいない会社は、入力の手順と入力ルール表を書面にして、別の人が引き継げる状態にしてから組合せに移ると安全です。
記帳代行から組合せへ切り替える手順
記帳代行を頼んでいた会社が、入力を社内に戻して確認だけを外部に残す場合は、次の順に進めます。
- 切り替える時期を決める。事業年度の途中で切り替えると、1期の中で入力の仕方が変わるため、期首から切り替える方が帳簿がそろいます。
- 会計ソフトの契約の持ち方を決める。会社名義で契約し、外部には確認と修正に必要な権限を付けます。
- 口座とカードの明細の取込みを設定する。
- 入力ルール表を作る。記帳代行で使っていた科目と税区分の付け方を、外部から一覧でもらって土台にします。
- 証憑の保存の仕方を決める。紙のまま保存するか、スキャンして保存するか、メールやウェブで受け取った請求書などの電子取引データをどこに保存するかを決めます。
- 最初の数か月は外部の確認を細かく受け、指摘の多い取引をルール表に足していく。
会計ソフトを会社名義で持つ理由の1つは、帳簿の保存期間です。法人の帳簿書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた事業年度などは10年間です(国税庁『タックスアンサーNo.5930 帳簿書類等の保存期間』)。外部との契約が終わっても、帳簿のデータは会社が保存し続ける必要があります。
電子取引データについては、電子のまま保存することが義務付けられています(国税庁『電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について』)。記帳代行のときに外部へ転送していた請求書のデータも、社内で入力する形に変えた後は、保存の場所と方法を社内で決め直します。
反対に、自計化で社内だけで回していた会社が確認を外部に頼む場合は、まず直近の試算表と仕訳のデータを外部に見てもらい、科目や税区分の付け方の誤りがどれだけあるかを確かめてから、毎月の確認の範囲を決めます。
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まとめ:入力と確認を分けるなら「誰が直すか」と「入力ルール表」を先に決める
- 自計化・記帳代行・組合せの違いは、誰が入力し、誰が確認し、誰が直すか。帳簿を付けて保存する義務はどの形でも法人にある。
- 組合せでは、社内の入力と締め、外部の確認、修正、試算表の確定の順で月を回し、受け渡しの期日を決めておく。
- 誤りを直す担当は、誤りの種類ごとに分ける。修正の履歴が残る形で直す。
- 決算と申告書の作成は税理士の業務。社内に残す範囲は、取引の現場でしか分からない作業を中心に決める。
- 社内の入力時間を毎月安定して取れるかが、組合せが回るかどうかの分かれ目。
どこまでを社内で持つかは、会社の人手と取引の形で変わります。上の表で自社に当てはまる項目を確かめてから、外部と分担を相談してください。
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よくある質問
Q. 外部の確認を受けていれば、入力の誤りは外部の責任になりますか?
帳簿を備え付けて取引を記録し、保存する義務を負うのは法人自身です。外部がどこまで確認するかは依頼の内容で決まるため、確認の対象(科目・税区分・計上時期など)と、確認しないものを、依頼の時点で書面にしておいてください。
Q. 会計ソフトは会社と会計事務所のどちらの都合で選びますか?
毎日使うのは社内の担当者なので、担当者が使いやすいか、自社の口座やカードの明細を取り込めるかを先に見ます。そのうえで、確認する外部がそのソフトに対応しているかを確かめます。選び方と導入の進め方は会計ソフト導入の流れで扱っています。
Q. 外部の確認は毎月でなく、決算のときだけでもよいですか?
決算のときだけ確認を受ける形もとれます。ただ、科目や税区分の誤りが1年分たまるため、決算のときの修正が多くなり、同じ誤りが1年続くこともあります。期中に試算表を融資や役員報酬の判断に使う予定があるなら、少なくともその前に確認を受けておく方が安全です。
Q. 個人事業主でも、入力は自分、確認は外部という分け方ができますか?
考え方は同じで、分け方もできます。ただ、帳簿の付け方の定めは所得税法の側にあり、法人とは条文が違います。確定申告書の作成を外部に頼む場合は、法人と同じく税理士の業務に当たる点に注意してください。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月24日
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