役員報酬を変えたり設備を買ったりするとき、顧問税理士への相談は決めた後でよいと思っていませんか。時期や届出の期限で税金の扱いが変わるものは、実行前に相談することで選択肢を確かめられます。金額や予定日、契約書の案をそろえて伝えると、具体的な判断につながります。
この記事では、役員報酬・設備投資・採用・借入など、事前に相談したい場面と確認点を紹介します。契約自体の利点は顧問税理士をつくるメリットで確認できます。
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事前に相談したほうがよい理由:時期と届出は後から変えにくい
税金の扱いの中には、取引の金額だけでなく「いつ決めたか」「事前に届け出たか」で結論が分かれるものがあります。実行したあとでは、時期や届出の期限を戻すことはできません。場面ごとの主な論点は次のとおりです。
| 場面 | 事前に確かめたいこと | 関係する期限・要件の例 |
|---|---|---|
| 役員報酬を変える | 改定の時期、賞与の届出 | 定期同額給与の改定時期、事前確定届出給与の届出期限 |
| 設備や備品を買う | 取得価額と取得の時期による扱いの違い | 10万円未満、20万円未満、少額減価償却資産の特例の基準 |
| 人を雇う | 給与の支払に伴う届出と納付 | 給与支払事務所等の開設届出(1か月以内)、源泉所得税の納付期限 |
| 借入をする | 決算書の内容と納税の時期 | 確定申告・中間申告の納付時期 |
| 取引の形や事業を変える | 消費税の扱い、届出の要否 | 簡易課税制度の選択届出の期限など |
役員報酬を変える前
法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・一定の業績連動給与のいずれにも当たらないものは、損金の額に算入されません(国税庁『No.5211 役員に対する給与』)。
会社として役員報酬を変えること自体は、いつでもできます。ただし、変えた後の給与が定期同額給与として損金に算入されるかには要件があります。通常の改定として扱われるのは、その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(申告期限の延長の特例で税務署長の指定を受けた法人は、指定月数に2を加えた月数)を経過する日までにされた改定などで、この時期を過ぎた改定は、臨時改定事由や業績悪化改定事由に当たる場合を除いて定期同額給与になりません。
役員賞与を損金に算入するには、原則として、事前確定届出給与として税務署に届け出た内容どおりに支給する必要があります(届出が要らない給与もあります)。届出期限は、原則として、株主総会等の決議によりその定めをした日から1か月を経過する日と、会計期間開始の日から4か月を経過する日のうち、いずれか早い日とされています。期限の日付は決議日などで変わるので、決議の予定が決まった段階で相談しておくと安全です。改定の時期の考え方は役員報酬の3か月ルールで詳しく扱っています。
役員報酬の変更は、社会保険の標準報酬月額にも関わります。社会保険の手続を外部に頼む場合は社会保険労務士の領域なので、顧問の社会保険労務士がいれば、あわせて伝えておきます。
設備や備品を買う前
同じ設備でも、取得価額と取得の時期で、買った期に全額を経費(損金)にできるか、資産に計上して数年かけて償却するかが分かれます。
| 取得価額(1単位ごと) | 扱い | 出典 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 取得して事業に使った事業年度に損金にできる | 国税庁タックスアンサーNo.5403 |
| 20万円未満 | 各事業年度ごとに一括して3年間で償却する一括償却資産の方法も選べる | 国税庁タックスアンサーNo.5403 |
| 中小企業者等の少額減価償却資産 | 令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満(改正前は30万円未満)を、一定の要件のもとで取得価額の全額を損金に算入できる。適用を受ける事業年度の取得価額の合計額には300万円の上限がある | 国税庁タックスアンサーNo.5408 |
取得価額は、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定します。国税庁『No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示』は、応接セットならテーブルと椅子の1組で判定する例を挙げています。少額減価償却資産の特例は、青色申告書を提出する中小企業者等が、令和11年3月31日までに取得などして事業の用に供した資産が対象で、貸付け(主要な事業として行われるものを除きます)の用に供した資産は対象外です。適用を受けるには、事業の用に供した事業年度に損金経理し、確定申告書に明細書を添付する必要があります(国税庁『No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例』)。どの扱いが会社にとって有利かは、その期と翌期以降の利益の見込みで変わるので、買う前に試算してもらうと判断しやすくなります。
人を雇う前
初めて従業員を雇う会社や、役員だけだった会社が給与の支払を始めるときは、税務署への届出と毎月の納付が始まります。
- 給与支払事務所等の開設届出:給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設した場合、その事実があった日から1か月以内に所轄税務署長に届け出ます(国税庁『給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出』)。
- 源泉所得税の納付:原則として、給与を支払った月の翌月10日までに納めます。給与の支給人員が常時10人未満の場合は、申請により半年分をまとめて納める納期の特例を受けられます(国税庁タックスアンサーNo.2505)。対象は給与・退職金と税理士等の一定の報酬から源泉徴収した分に限られ、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する分から適用されます。それまでの分や原稿料などの報酬の分は翌月10日までに納めます。
- 年末調整:その年の最後に給与を支払うときに、1年間の源泉徴収税額の過不足を精算します。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険などの加入手続を外部に頼む場合は、社会保険労務士の領域です(会社が自分で手続することもできます)。税の手続と社会保険の手続は別々に期限があるので、採用の予定が決まった段階で、税理士と社会保険労務士の両方に伝えておくと漏れを防げます。
借入をする前
金融機関から借りるときは、決算書や試算表を提出することがあります。借入の申込みの前に、直近の試算表が月次で締まっているか、決算書の内容について説明を求められそうな点がないかを顧問税理士と確かめておくと、面談で答えやすくなります。
資金繰りの面では、納税の時期も借入の計画に関わります。法人税・消費税の確定申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です(国税庁『申告と納税』)。前期の法人税額などによっては、期の途中に中間申告と納付も必要になります。借入の額や時期を決める前に、今後の納税の見込み額と時期を聞いておくと、資金の不足を見通しやすくなります。
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取引の形や事業を変える前
新しい事業を始める、売上の相手が変わる、外注を増やすといった変化は、消費税の扱いや届出に関わることがあります。
- 簡易課税制度の選択:簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は、原則として、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出します(国税庁タックスアンサーNo.6505)。期が始まってから気づいても、原則としてその期には間に合いません。
- 消費税の納税義務:課税事業者になるかどうかは、基準期間(法人は原則として前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下か、特定期間(法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月)の課税売上高が1,000万円を超えるかなど、過去の期間の数字で判定します(国税庁タックスアンサーNo.6501)。売上の規模が変わる見込みがあるときは、どの期から影響するかを確かめます。
- 個人への外注:原稿料や講演料など、個人(居住者)に支払う報酬・料金の中には、源泉徴収が必要なものがあります(国税庁タックスアンサーNo.2792)。新しく個人に仕事を頼むときは、支払の前に源泉徴収の要否を確かめます。
どの選択が会社に合うかは、売上と仕入の見込みで試算しないと決まりません。簡易課税の考え方は簡易課税制度のメリット・デメリットで扱っています。
まとめ:「時期」と「届出」が絡む判断は、決める前に相談する
- 役員報酬は、改定の時期によって定期同額給与として損金に算入できるかが分かれます。役員賞与は事前確定届出給与の届出期限があります。
- 設備は、取得価額(1単位ごと)と取得の時期で、全額を損金にできるか、償却するかが分かれます。
- 人を雇うと、給与支払事務所等の開設届出(1か月以内)と源泉所得税の納付が始まります。
- 借入の前は、試算表の状態と、今後の納税の時期・見込み額を確かめます。
- 取引や事業を変える前は、消費税の届出の期限(簡易課税は課税期間の初日の前日まで)を確かめます。
相談するときは、金額・時期・相手先・契約書の案など、決めようとしていることの中身を具体的に伝えると、期限や要件に当てはめた答えが返ってきやすくなります。
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よくある質問
Q. どのくらい前に相談すればよいですか?
関係する期限から逆算します。簡易課税の選択は課税期間の初日の前日まで、役員賞与の届出は決議の日などから期限が決まるので、決める日の予定が立った時点で相談すると余裕があります。決算に関わる相談は、決算月より前に伝えておくと選べる手が多くなります。
Q. 実行したあとに相談しても意味はありますか?
あります。帳簿の付け方や申告での扱いを正しくするためにも、実行した内容は早めに伝える必要があります。ただし、改定の時期や届出の期限のように、後から変えられない要件は、事後の相談では選べる手が限られます。
Q. 顧問契約の中で、こうした相談はどこまでできますか?
相談の範囲や回数は契約ごとに違います。試算や書類の作成を伴う相談が契約に含まれるか、別の扱いになるかを、契約書や事務所の説明で確かめておくと安心です。
Q. 相談のときに何を用意すればよいですか?
決めようとしていることの金額、時期、相手先、契約書や見積書の案があれば、それを用意します。役員報酬なら改定後の額と株主総会等の予定日、設備なら見積書と使い始める予定日のように、期限や要件に当てはめるのに必要な情報をそろえます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月28日
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