経営者保証は「頼めば外れる」ものではありませんが、会社が3つの状態を整えれば外せる可能性があります。3つとは、①会社と社長のお金の分離、②会社だけで返せる財務基盤、③正確な決算書や試算表の適時の開示で、「経営者保証に関するガイドライン」が定めています。今からやることは、この3つを自分で点検し、足りない所を将来も保てる形に整えてから、金融機関に見直しを申し入れることです。
会社が銀行からお金を借りるたびに、社長個人が連帯保証人になる。業績が安定してきた会社の社長に向けた記事です。保証を外すかを決めるのは金融機関で、申し入れるのは会社と社長です。
この記事では、銀行が見る3つの要件、社長が自分で点検できる表、申し入れの順番、早期経営改善計画の上乗せ(上限10万円)の使い方を、ガイドラインの本文と中小企業庁の資料に沿って整理します。
この記事の要点
- 3つの要件は、①会社と社長のお金の分離、②会社だけで返済できる財務基盤、③正確な財務情報の適時適切な開示です。
- ガイドラインは法的な拘束力のない自主的なルールで、保証を外すかの最終判断は金融機関にゆだねられています。
- 見直しを申し入れる前に、3つの状態を将来にわたって保てるよう整えることが、会社と社長の側に求められています。
- 早期経営改善計画(補助の上限は計画づくり50万円・伴走30万円)では、保証の解除に向けた交渉の準備に、2/3・上限10万円の上乗せがあります。申し入れは社長ご本人が行うのが普通で、専門家が資料づくりを支えます。
経営者保証とは|外すと何が変わるか
中小企業庁は、経営者保証を「中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること」と説明しています。会社が返済できなくなった時、社長個人が会社に代わって返済を求められる、ということです。
中小企業庁は、経営者保証には経営への規律付けや資金調達を助ける面がある一方、思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因になっているという指摘もある、としています。
この課題に対して、全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」を作りました(2013年12月5日公表、2014年2月1日から適用)。中小企業・経営者・金融機関に共通の自主的なルールで、法的な拘束力はありません。関係者が自発的に尊重し、守ることが期待されています。
経営者保証を外すために銀行が見る3つの要件
ガイドラインの第4項は、経営者保証なしで資金を調達したい会社に、まず次の経営状況を求めています。
| 要件 | ガイドラインが書いていること(要旨) |
|---|---|
| ① 会社と社長の関係の区分・分離 | 業務・経理・資産の持ち方で会社と社長を分け、役員報酬・賞与、配当、社長への貸付などのお金のやりとりを、社会通念上適切な範囲に収める体制を整える |
| ② 財務基盤の強化 | 財務状況と経営成績を良くして返済能力を高め、信用力を強くする |
| ③ 正確な把握と適時適切な情報開示 | 資産負債(社長のものを含む)、事業計画や業績の見通しと進み具合を、求めに応じて正確に開示・説明する。計画や見通しが変わったら自分から報告する |
①と③については、公認会計士や税理士などの外部専門家が検証し、その結果を金融機関に開示することが望ましい、とも書かれています。
金融機関はどこまで満たせば検討するのか
金融機関の側の対応として、ガイドラインは次の要件が将来にわたって満たされると見込まれる時の検討を定めています。会社の経営状況・資金の使い道・回収の見込みなどを総合的に判断して、保証を求めないことや代わりの手法を検討する、という書き方です。
- 会社と社長個人の資産・経理がはっきり分かれている
- 会社と社長の間のお金のやりとりが、社会通念上適切な範囲を超えない
- 会社だけの資産・収益力で借入を返せると判断できる
- 会社から適時適切に財務情報などが提供されている
- 社長などから十分な物的担保の提供がある
中小企業庁の解説は、3つの要件の全部または一部を満たせば、保証なしで融資を受けられる可能性、すでに出している保証を見直せる可能性がある、としています。満たし方の度合いに応じて、金融機関が保証を求めないことや、代わりの手法(停止条件付保証契約など)を検討する、という書き方です。
経営者保証を外したい時に自分で点検する表
ガイドラインの要件を、社長が自分の会社で確かめられる形にしたのが次の表です。項目は当事務所がガイドラインの本文から整理したもので、ここに全部丸が付けば外れる、という基準ではありません。どこが足りないかを見つけるための目安として使ってください。
| 要件 | 点検すること | よくある引っかかり |
|---|---|---|
| ① 分離 | 会社の口座と社長個人の財布が分かれているか | 個人の支払いを会社の口座やカードで払っている |
| ① 分離 | 社長への貸付金・社長からの借入金の残高と理由を説明できるか | 使い道の分からない支出が社長への貸付金に積み上がっている |
| ① 分離 | 社長の自宅や車を会社が使う時、契約と金額が決まっているか | 口約束で、毎月の金額がばらばら |
| ① 分離 | 役員報酬・配当が会社の利益や返済の余力と釣り合っているか | 返済が苦しい年も報酬を下げていない |
| ② 財務基盤 | 会社の利益と手元資金だけで、毎年の返済ができるか | 返済のたびに社長が個人のお金を入れている |
| ③ 情報開示 | 決算書だけでなく、月次の試算表をすぐに出せるか | 試算表が数か月遅れで、銀行に聞かれても出せない |
| ③ 情報開示 | 事業計画と、その進み具合を説明できるか | 計画が無い、または作ったまま見ていない |
| ③ 情報開示 | 業績が変わった時、聞かれる前に銀行へ伝えているか | 悪い数字ほど決算まで黙っている |
「試算表を早く出してと銀行に言われたが、すぐに出せない」「銀行から、内容の分からない支出について質問された」という相談はよくあります。③の情報開示は、月次の締めが毎月決まった日に終わる仕組みがあって初めてできます。月次の締めの進め方は月次決算の進め方の記事も参考にしてください。
見直しを申し入れる順番
すでに出している経営者保証の見直しについて、ガイドラインの第6項は、会社・社長の側と金融機関の側の対応を分けて書いています。
- 会社と社長が、3つの状態を整える:保証の解除などを申し入れる前に、第4項の経営状況を将来にわたって保てるよう努めることとされています。
- 会社と社長が、金融機関に申し入れる:経営の改善が図られたことなどを示して、解除や変更を申し入れます。
- 金融機関が検討し、結果を説明する:金融機関は、保証の必要性や適切な保証金額を、改めて真摯かつ柔軟に検討し、その結果を丁寧かつ具体的に説明することとされています。
全部を外すかどうかの二択とは限りません。ガイドラインは、金融機関の側に、停止条件付・解除条件付の保証契約、ABL(売掛金や在庫などを担保にする融資)、金利の上乗せといった、保証の役割を代わりに果たす手法を用意するよう求めています。
停止条件付・解除条件付の保証契約とは
ガイドラインの注によると、停止条件付保証契約は「会社が特約の条件(コベナンツ)に反しない限り、保証の効力が生じない契約」です。解除条件付保証契約は「会社が特約の条件を満たした場合に、保証の効力がなくなる契約」です。中小企業庁は、特約の例として、定期的な財務情報の提出義務や、他の金融機関への担保提供の制限を挙げています。
早期経営改善計画で経営者保証の解除に取り組む場合
早期経営改善計画(Vアップ事業)は、計画づくり(上限50万円)と伴走(上限30万円)の費用の2/3を補助する制度です。これとは別に、経営者保証の解除に向けた金融機関交渉の費用に、2/3・上限10万円を上乗せできる枠があります(任意)。中小企業庁のFAQは、この枠について次のように書いています。
| 項目 | FAQの答え(要旨) |
|---|---|
| 対象になる計画 | 早期経営改善計画を作り、計画を終えた後に経営者保証の解除を目指す計画 |
| 想定する取り組み | ガイドラインの「既存の保証契約の適切な見直し」 |
| 専門家がしてよいこと | 交渉を頼まれた弁護士の費用のほか、弁護士以外の専門家は、社長が自分で金融機関と交渉する時のサポート(説明資料や質問への対応資料づくり)。報酬を得て弁護士以外が交渉することは非弁行為に当たる |
| 解除の合意が得られなかった時 | 会社の負担の証憑・交渉の実績・交渉内容の分かる資料や説明資料を協議会に示せば、2/3(上限10万円)の支援を受けられる |
| 申請の時期 | 伴走の費用の支払申請と同時 |
| 過去に計画を終えた会社 | 保証解除の支援だけを後から使うことはできない |
計画づくりと伴走の3年間で、①〜③の状態を数字で示せるようにし、その上で社長が銀行に見直しを申し入れる、という流れです。制度の全体と費用の計算は早期経営改善計画の費用はいくら国が持つ?2/3補助の上限と使える会社にまとめています。
どこに相談するか
中小企業庁は、経営者保証の全般の相談先として、取引のある金融機関、商工会議所・商工会、中小企業団体中央会を挙げています。ガバナンス体制の整備を含めた収益力改善の相談先としては、中小企業活性化協議会と認定経営革新等支援機関を挙げています。
中小企業庁の資料は、協議会や認定支援機関の「収益力改善支援」でガバナンス体制の整備に取り組むことで、会社の信用度が高まり、経営者保証の解除や金融機関との取引の改善ができるかもしれない、としています。
よくある誤り
- 「ガイドラインがあるから外してもらえる」と考える:法的な拘束力はなく、最終判断は金融機関です。申し入れの前に、3つの状態を整えるのは会社と社長の側です。
- 決算書だけ整えればよいと考える:ガイドラインは、事業計画や業績の見通しとその進み具合の開示、変化があった時の自発的な報告まで求めています。
- 専門家に交渉を丸ごと任せようとする:弁護士以外の専門家が報酬を得て金融機関と交渉することは非弁行為に当たります。税理士などに頼めるのは、社長が交渉するための資料づくりです。
- 社長への貸付金を放っておく:会社と社長のお金のやりとりは、①の要件そのものです。残高と理由を説明できる状態にしておきます。
よくある質問
経営者保証を外すと、金利が上がることはありますか?
ガイドラインは、保証の役割を代わりに果たす手法の一つとして「金利の一定の上乗せ」を挙げています。保証を外す代わりに金利などの条件が変わることはあり得るので、金融機関から示された条件を比べて決めます。
赤字の年があると、外すのは難しいですか?
ガイドラインは、会社だけの資産・収益力で返済できると判断できることを、金融機関が検討する時の要件の一つにしています。単年の赤字だけで決まるとは書かれていませんが、返済の余力をどう示すかは重要です。改善の道筋を計画にして、進み具合を報告できる状態にしておくことが準備になります。
事業承継の時に後継者が保証を引き継がなければいけませんか?
ガイドラインには事業承継時の対応の項目があり、事業承継に焦点を当てた特則も公表されています。後継者の保証の扱いは、取引のある金融機関と早めに相談してください。
早期経営改善計画を作らないと、保証の見直しは申し入れられませんか?
そうではありません。見直しの申し入れは、会社と社長がいつでも金融機関に行えます。早期経営改善計画は、3つの状態を整えて示すための道具の一つで、交渉の準備の費用に上乗せの補助がある、という位置づけです。
まとめ
- 経営者保証を外すには、①会社と社長のお金の分離、②会社だけで返せる財務基盤、③適時適切な情報開示の3つを整えます。
- ガイドラインは自主的なルールで、最終判断は金融機関です。申し入れの前に、3つの状態を将来も保てるようにするのが会社の側の役目です。
- 全部外すか残すかだけでなく、停止条件付・解除条件付の保証契約や金利の上乗せといった代わりの手法もあります。
- 早期経営改善計画では、保証の解除に向けた交渉の準備に、2/3・上限10万円の上乗せがあります。解除の申し入れは社長ご本人が銀行へ行うのが普通で、専門家は申し入れのための資料づくりで支えます。
リーパル会計事務所にご依頼の場合
経営者保証の見直しに向けた資料づくりは、早期経営改善計画の中でお受けしています。銀行との交渉は社長ご本人が行い、当事務所は説明の資料と数字をそろえます。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした資料
- 中小企業庁「経営者保証」(経営者保証とは・ガイドラインの3要件・相談先・ガバナンス体制の整備支援)
- 経営者保証に関するガイドライン(経営者保証に関するガイドライン研究会):第4項(1)(2)・第6項(1)(2)・注6
- 全国銀行協会「経営者保証に関するガイドライン」(本文・特則などの掲載ページ)
- 【金融機関を除く支援機関用】早期経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年3月31日改訂):Q8-1〜Q8-6
- 早期経営改善計画策定支援に関する手引き(2026年3月31日改訂):3 支払費用
この記事は2026年10月時点の制度・公表資料に基づいて書いています。
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見