早期経営改善計画(国の通称は「Vアップ事業」)を使えば、専門家と作る経営改善計画の費用の3分の2を、各都道府県の中小企業活性化協議会が負担します。上限は計画づくり50万円・その後3年間の伴走(進み具合の確認)30万円で、対象は専門家が協議会の依頼を承諾した日以降の作業の分です。使えるのは返済条件の変更(リスケ)が要らない中小企業で、赤字や債務超過でも対象になります。
赤字の決算が続いたり、資金繰りの先行きが読めなかったりして、銀行への説明の材料が欲しい社長に向けた記事です。
この記事では、補助の計算例、使える会社と使えない会社の判定表、申し込みから伴走までの流れ、計画を作って言えること・言えないことを、中小企業庁の手引きとFAQに沿って整理します。
この記事の要点
- 費用の2/3を協議会が負担します。上限は計画づくり50万円、伴走30万円(計画を出した後の最初の決算から3年分)です。
- 経営者保証の解除に向けた準備や、事業承継の相手探しの資料づくりには、それぞれ上限10万円の上乗せがあります(任意)。
- 赤字や債務超過でも使えます。使えないのは、リスケが必要な会社、過去に同じ制度を使った会社などです。
- 計画は事前に相談したメインバンク(または準メイン)へ出します。銀行の同意は要りませんが、融資を約束するものでもありません。
早期経営改善計画とは|何を作り、誰に出す計画か
早期経営改善計画は、資金繰りの管理や採算の管理といった基本的な経営改善に取り組む中小企業が、国の認定を受けた専門家(認定経営革新等支援機関。税理士・公認会計士・中小企業診断士など)の支援を受けて作る計画です。正式名は「早期経営改善計画策定支援」で、通称は「Vアップ事業」です。
手引きは、この制度の目的を、計画を金融機関に出すことを通じて銀行との関係を作り、会社が自分の経営を見直すきっかけにすることだと書いています。月次の試算表や資金繰りの計画を、適時に正確な内容で金融機関へ開示・説明できるようになることも目的に入っています。
計画に入れるもの
2026年3月31日の改定で、実態貸借対照表が計画の必須の中身に加わりました。いま計画に入れるものは次のとおりです。
| 中身 | 何を書くか |
|---|---|
| ビジネスモデル俯瞰図 | 誰に何を売り、どこから仕入れ、どう利益が出ているかを1枚の図にする |
| 経営課題と基本方針 | 現状の分析から見えた課題と、解決の方向 |
| アクションプランと伴走の計画 | 誰が・いつまでに・何をするか。その確認の予定 |
| 実態貸借対照表・損益計画などの数値計画 | 帳簿の資産・負債を実際の値打ちに直した表と、改善の効果を数字にした計画 |
| 資金繰り表(実績と計画) | 過去の資金の動きと、これからの資金の予定 |
実態貸借対照表の直し方に決まった方法はなく、FAQは、直す項目と計算の根拠を示して主要な金融機関と目線を合わせることを勧めています。
計画の期間と伴走の3年間
計画期間は3〜5年程度が一般的です。ただし、計画を出した後の最初の決算から3年間は、伴走と協議会への報告が義務になっているため、少なくとも3年後の決算期までは計画に入れます。
伴走では、決算期は決算書、中間決算期は試算表をもとに、計画と実績の差とアクションプランの進み具合を確かめ、差の原因と対応を考え、会社が銀行に報告する準備をします。
早期経営改善計画の費用はいくら国が持つ?補助の上限
補助の対象は、認定支援機関に払う費用のうち、支援する専門家(当事務所が支援する場合は当事務所)が協議会からの業務の依頼(委嘱)を承諾した日以降の作業の分だけです。それより前の作業は対象になりません。上限は費用の種類ごとに決まっています。
| 費用の種類 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| 計画づくり(計画策定支援) | 2/3 | 50万円 |
| 伴走(3年分の合計) | 2/3 | 30万円 |
| 事業承継の相手探しのための企業概要書(任意・事業承継・引継ぎ支援センターへの相談が条件) | 2/3 | 10万円 |
| 経営者保証の解除に向けた金融機関交渉(任意) | 2/3 | 10万円 |
計画づくりと伴走の上限を合わせると80万円です。上乗せの2つは、条件に当たる取り組みをする時だけ使います。経営者保証の解除の準備については、経営者保証を外したい社長へ。銀行が見る3つの要件と今からやることで詳しく書いています。
総額別の補助と自己負担の計算例
補助は「費用(税込)の2/3」と「上限」の小さい方です。次の表は計算の例で、専門家の料金の目安ではありません(料金は専門家ごとに、単価表と作業時間をもとに見積もります)。
| 例:費用の総額(税込) | 2/3の額 | 補助(上限で頭打ち) | 会社の負担 |
|---|---|---|---|
| 計画づくり 60万円 | 40万円 | 40万円 | 20万円 |
| 計画づくり 75万円 | 50万円 | 50万円 | 25万円 |
| 計画づくり 90万円 | 60万円 | 50万円 | 40万円 |
| 伴走 30万円 | 20万円 | 20万円 | 10万円 |
| 伴走 45万円 | 30万円 | 30万円 | 15万円 |
| 伴走 60万円 | 40万円 | 30万円 | 30万円 |
計画づくりは75万円、伴走は45万円で、ちょうど2/3が上限に届きます。それを超えた分は全額が会社の負担です。
お金の決まりで気をつけること
- 補助の対象は、利用申請の時に出した見積りの総額までです。後から増えた分は対象になりません。
- 会社の負担分(1/3)は銀行振込で払います。口座振替は認められていません。
- 顧問税理士に頼む場合も、顧問契約とは別の契約にします。顧問料や決算料と合わせて精算することは認められていません。
- 専門家が従来から対価を取らずに行っている業務は、補助の対象になりません。
会社の負担分(1/3)に、ほかの補助制度を重ねて使うことは認められています。FAQは、自治体の専門家派遣事業や、信用保証協会の事業との併用を例に挙げています。都道府県によっては、信用保証協会が計画づくりの自己負担分の一部を補助する制度があります。対象・金額・申請の時期は県ごとに違うので、申し込みの前に地元の保証協会の最新の案内で確かめてください。例えば長崎県信用保証協会の申込書は、計画づくりの費用だけを補助の対象とし、伴走の費用と金融機関交渉の費用は対象外と明記しています。
早期経営改善計画を使える会社・使えない会社の判定表
対象は、中小企業者に当たる会社と個人事業主です。「赤字だから」「債務超過だから」という理由だけで対象外にはなりません。次の表で当てはまるところを確かめてください。
| 確かめること | 使えない場合 |
|---|---|
| 返済条件の変更(リスケ)が必要か | 返済条件の変更、金利の減免、元金や利息の支払猶予が必要なら対象外。借換えや新規融資は計画に入れてよい |
| 過去にこの制度や似た支援を使ったか | この制度・405事業・協議会の再生支援などを使ったことがあれば対象外(実施中も含む)。1社1回だけ |
| 12か月の決算を終えているか | 原則、12か月以上の営業実績と12か月の決算1期分。法人を作る前の同じ事業の個人事業が12か月以上、または承継前と通算して12か月以上の個人事業主も、確定申告書など(承継は届出書も)で証明できれば対象 |
| 会社の種類と規模 | 社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人・学校法人などは対象外。株式会社も業種ごとの資本金・従業員数の基準に収まるかを見る |
| グループ会社があるか | 原則、グループ全体で1件・上限も1つ |
| 借入があるか | 無借金でも、決済口座のある金融機関から事前相談書がもらえれば使える |
リスケが必要な会社には、別の制度(経営改善計画策定支援、通称「405事業」)があります。違いと流れは銀行にリスケを頼む前に。405事業で国が持つ費用はいくら?条件と流れにまとめています。
申し込みから伴走までの流れ
手続きは、会社と専門家の連名で、本店のある都道府県の中小企業活性化協議会に出します。順番を入れ替えると補助の対象から外れる工程があるので、流れで押さえます。
- 対象かどうかを確かめ、見積りを取る:計画づくりと伴走を分けて見積もります。この額が補助の上限になります。
- メインバンク(または準メイン)に相談し、事前相談書をもらう:銀行が「制度を使って計画を作る相談を受けた」と書く書面です。銀行が計画に関わることや、将来の融資を約束するものではありません。
- 協議会へ利用申請:申請書に、履歴事項全部証明書・直近3年分の申告書の写し・見積書などを付けます。
- 協議会からの依頼を専門家が承諾:補助の対象は、この承諾の日以降の作業と支払いです。
- 計画を作る:計画案ができたら、銀行に出す前に協議会へ出し、助言があれば直します。
- 計画を銀行に出し、受取書をもらう:銀行の同意は要りません。受取書は銀行のふだんの書式で足ります。
- 会社が負担分を振り込み、協議会へ支払申請:利用申請が受理された日から1年以内に支払申請まで終えないと、申請は失効します。
- 3年間の伴走:決算と中間決算のたびに進み具合を確かめ、銀行と共有し、協議会に報告します。
計画を作ると何が変わる?言えること・言えないこと
この制度で作る計画は、銀行から融資を引き出すための書類ではありません。誤解のないように、言えることと言えないことを分けておきます。
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| 赤字の理由と、これからの改善の道筋を、数字で銀行に説明できるようになる | 計画を出せば融資が受けられる・金利が下がる |
| 毎期、計画と実績の差を銀行に報告する習慣ができる | 銀行が計画に同意した、というお墨付きになる |
| 月次の数字を把握して銀行へ報告する体制は、経営者保証の見直しを申し入れる準備にもなる | 経営者保証が外れる |
赤字の決算の後に銀行へどう説明するかは、赤字決算で融資を相談するとき|赤字の理由の説明資料と改善計画の作り方も参考になります。
よくある誤り
- 承諾の前に作業や支払いを始める:協議会からの依頼を専門家(当事務所が支援する場合は当事務所)が承諾する前の作業と支払いは、補助の対象外です。
- 計画案を協議会に見せずに銀行へ出す:銀行に出す前に、協議会へ計画案を出すことが決まりです。
- 計画を出したら終わりにする:伴走と協議会への報告は、費用を請求しない回も必須で、行われないと計画づくりの費用の返還を求められることがあります。例外は、専門家の責任でない事情で申請して認められた場合だけです。
- 顧問料と合わせて振り込む:会社の負担分は、この制度の費用だと分かる形で、銀行振込で払います。
よくある質問
赤字や債務超過でも使えますか?
使えます。対象外になるのは、返済条件の変更などの金融支援が必要な場合や、過去に同じ制度を使った場合などです。赤字や債務超過そのものは、対象外の理由になりません。
借入が無い会社でも使えますか?
FAQは、決済口座のある金融機関から事前相談書が出れば使えるとしています。
今の顧問税理士とは別の専門家に頼めますか?
頼めます。認定経営革新等支援機関であれば、顧問の税理士でも、別の専門家でもかまいません。顧問税理士に頼む場合も、顧問契約とは別の契約にします。
申し込みの締め切りはありますか?
利用申請の期限は無く、随時受け付けています。ただし、受理から1年以内に支払申請まで終える必要があります。
計画を作ったら、もう一度この制度を使えますか?
使えません。1社1回だけです。業績が悪くなって返済条件の変更が必要になった場合は、協議会と相談して405事業などへ移ります。
まとめ
- 早期経営改善計画は、費用の2/3を協議会が負担します。上限は計画づくり50万円・伴走30万円で、条件に当たれば各10万円の上乗せがあります。
- 補助は「費用の2/3」と「上限」の小さい方です。計画づくり75万円・伴走45万円で上限に届きます。
- 赤字でも使えます。リスケが必要な会社は405事業を検討します。
- 計画は銀行に説明できる会社になるための道具です。融資や金利を約束するものではありません。
- 補助の対象は、専門家が協議会の依頼を承諾した日以降の作業だけです。協議会への計画案の提出・3年の報告という順番と期限も守ります。
リーパル会計事務所にご依頼の場合
当事務所は認定経営革新等支援機関として、早期経営改善計画の計画づくりと3年の伴走をお受けしています。全国オンラインで対応します。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした資料
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」(支援の概要・補助率と上限・計画の中身)
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します」(2026年3月26日)
- 早期経営改善計画策定支援に関する手引き(2026年3月31日改訂):1 目的、2 対象事業者、3 支払費用、4 手続き
- 【金融機関を除く支援機関用】早期経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年3月31日改訂)
- 同マニュアル・FAQで参照した問:Q1-2・Q1-3・Q1-5・Q1-7・Q2-8・Q2-10・Q2-13・Q2-14・Q3-2・Q3-4・Q3-8・Q5-2・Q6-2・Q6-9・Q7-2・Q9-1
- 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」(協議会の役割・補助の上限)
- 長崎県信用保証協会「早期経営改善計画策定支援事業に係る費用補助」申込書(県の保証協会による上乗せ補助の例)
この記事は2026年10月時点の制度・公表資料に基づいて書いています。
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