銀行に返済条件の変更(リスケ)を頼むための経営改善計画は、405事業(経営改善計画策定支援)を使って作れます。DD(財務・事業の調査)と計画づくりの費用の2/3(上限200万円)と、その後の伴走の費用の2/3(上限100万円)を、中小企業活性化協議会が負担します。計画は金融機関の同意書がそろって成立し、金融支援が得られなければ、原則として補助は受けられません。ここでいう金融支援は返済条件の変更などを指し、新規融資や借換えだけでは金融支援に当たりません。
毎月の返済が会社の利益で返せる額を上回り、借換えや新しい融資では追いつかないかもしれない。そう考え始めた社長に向けた記事です。
この記事では、早期経営改善計画との違い、補助の上限と費用の目安、2026年5月の改定と金融支援の範囲、申し込みの流れ、協議会そのものの支援を整理します。
この記事の要点
- リスケ(返済条件の変更・元金の据置き・金利の減免など)が必要な会社は、早期経営改善計画ではなく405事業の対象です。
- 補助は2/3で、上限はDD(財務・事業の調査)と計画策定200万円、伴走100万円。経営者保証の解除に向けた交渉には上限10万円の上乗せがあります。
- 金融支援は返済条件の変更などで、新規融資や借換えは含みません。2026年5月の改定で、計画には、債務超過を5年以内に解消するなどの数値基準が入ります。
- 計画は金融機関の同意書がそろって成立し、その後原則3年間、伴走(最低7回・年2回以上)を行います。金融支援を得られなかった場合、原則として補助は受けられません。
リスケとは|頼む前に確かめること
リスケ(リスケジュール)は、借入の返済条件を変えてもらうことです。中小企業庁のFAQは、条件変更などの金融支援の例として、返済条件の変更、金利の減免、利息の支払猶予、元金の支払猶予を挙げています。
頼む前に、まず借換えや新規の融資で資金繰りを整えられないかを確かめます。借換えや新規融資で済むなら、返済条件を変えずに済み、使える国の支援も変わるからです。
| 今の状況 | 考える道 | 使える国の計画策定支援 |
|---|---|---|
| 返済はできているが、資金繰りや採算の管理を見直したい | 計画を作って銀行に説明し、必要なら借換え・新規融資 | 早期経営改善計画(Vアップ事業) |
| 借換えや新規融資では足りず、返済額を減らす・元金を止める必要がある | 計画を作って、金融機関に返済条件の変更を頼む | 405事業(経営改善計画策定支援) |
| 事業の継続が極めて難しい | 廃業や保証債務の整理を含めて考える | 協議会の支援(廃業などの相談も受ける)や、405事業の中小版GL枠 |
どの道に当たるかの見極めには、資金繰り表で「いつ・いくら足りなくなるか」を出すことが先です。資金繰りが厳しい時の整理の仕方は資金繰りが厳しい時は誰に相談する?銀行へ行く前にそろえる資料と順番で説明しています。
405事業と早期経営改善計画の違い
どちらも、認定支援機関が計画づくりと伴走を支援し、その費用の2/3を上限の範囲で協議会が負担する制度です。違いは、金融支援(条件変更など)を伴うかどうかです。
| 項目 | 早期経営改善計画 | 405事業(通常枠) |
|---|---|---|
| 対象 | 条件変更などの金融支援を必要としない会社 | 借入の返済負担などで財務上の問題を抱え、条件変更などの金融支援が見込める会社 |
| 補助の上限 | 計画づくり50万円・伴走30万円 | DD・計画策定200万円・伴走100万円 |
| 金融機関の関わり | 計画を提出する。同意は不要 | 計画は金融機関の同意書がそろって成立する |
| 計画の数値基準 | 定めなし | 債務超過の解消・黒字化・有利子負債の水準の基準あり |
| 伴走 | 最初の決算から3年間 | 計画の成立後、最初の決算から原則3年間(計画期間が3年を超える特例では、計画期間と同じ) |
早期経営改善計画の費用と使える会社は早期経営改善計画の費用はいくら国が持つ?2/3補助の上限と使える会社にまとめています。
405事業の補助の上限と費用の目安
中小企業庁の表では、通常枠の補助は次のとおりです。上限は補助の額の上限です。
| 費用の種類 | 補助率 | 上限 |
|---|---|---|
| DD・計画策定支援 | 2/3 | 200万円 |
| 伴走支援(モニタリング) | 2/3 | 100万円 |
| 金融機関交渉(経営者保証の解除を目指す場合・任意) | 2/3 | 10万円 |
DDは、会社の財務と事業の状況を調べて分析することです。10万円の金融機関交渉費用は、経営者保証の解除を目指した計画を作り、金融機関と交渉する場合の任意の枠で、リスケの交渉そのものに付くものではありません。
会社の規模ごとの費用の目安
北海道中小企業活性化協議会は、補助の対象になる費用の総額(伴走を含む・税込)の目安を、会社の規模ごとに次のように示しています。
| 区分 | 事業規模 | 費用の総額の目安 |
|---|---|---|
| 小規模 | 売上1億円未満かつ有利子負債1億円未満 | 150万円以下 |
| 中規模 | 売上10億円未満かつ有利子負債10億円未満(小規模を除く) | 300万円以下 |
| 中堅規模 | 売上10億円以上または有利子負債10億円以上 | 450万円以下 |
いずれの区分でも、伴走の費用は総額の1/2以下(中堅規模は上限150万円)とされています。例:小規模の会社で総額150万円なら、2/3の100万円が補助、会社の負担は50万円です。
2026年5月の改定と、金融支援の範囲
中小企業庁は2026年3月26日、405事業(通常枠)の手引きとFAQの改定を公表し、2026年5月1日から適用しました。主な内容は「策定する計画に数値基準を導入」と「対象となる金融支援の見直し」です。ここでは、改定後のFAQに書かれている今の扱いを整理します。
金融支援に新規融資・借換えは含まれない
国のFAQ(2026年5月1日改訂・Q1-3-7)は、405事業の金融支援を「条件変更等」とし、経営改善や事業再生に必要な融資(借換融資・新規融資)は含まれないとしています。
一部の借入だけ返済条件を変えてもらい、別に新規融資や借換えを入れる計画も作れます。その場合は、計画を実行した時点で、条件を変えた借入が借入全体(新しく借りる分を含む)の50%以上であることが条件です。新規融資や借換えだけで足りる会社は、405事業ではなく早期経営改善計画を検討します。
計画に入る3つの数値基準
北海道中小企業活性化協議会の案内は、計画の水準として次の3つを挙げています。
| 会社の状態 | 計画に入れる内容 |
|---|---|
| 実質的に債務超過 | 計画成立後、最初に来る事業年度の開始日から5年以内をめどに、実質的な債務超過を解消する |
| 経常利益が赤字 | 同じ日から、おおむね3年以内をめどに黒字にする |
| 計画終了年度の有利子負債の水準 | 計画の終了年度に、有利子負債のキャッシュフローに対する比率をおおむね10倍以下にする |
今の数字からこの基準に届く道筋を描けるかどうかが、計画づくりの中心になります。基準の例外の扱いなど細かい点は、中小企業庁の〈通常枠〉マニュアル・FAQで確かめ、協議会に相談してください。
405事業の申し込みから伴走までの流れ
- 協議会に事前に相談する:大阪府の協議会は、利用申し込みの前に必ず連絡するよう案内しています。本店のある都道府県の協議会に相談します。
- 認定支援機関と主要金融機関の協力を得て利用申請:利用申請には、認定支援機関と主要金融機関の実施協力が得られていることが必要です(大阪府の協議会の案内)。
- DDと計画づくり:財務と事業の状況を調べ、課題とアクションプラン、数値計画を作ります。
- 計画案を協議会に出す:金融機関に出す前に、必ず協議会に計画案を出します。
- 金融機関と調整し、同意書をそろえる:計画は、同意書がそろった時点で成立します。
- 支払申請:最終的に金融支援を得られなかった場合は、原則として補助は受けられません。国のFAQでは、計画の成立前に破産や民事再生などの法的整理へ移り、必要な成果物と書類がそろう場合だけが例外です。
- 原則3年間の伴走:計画の成立後、最初の決算を0期とし、その後3年間の決算まで伴走します(数値基準の例外などで計画期間が3年を超える場合は、伴走も計画期間と同じ長さになります)。大阪府の協議会の案内では、最低7回・年2回は必須です。
協議会そのものの支援と、中小版GL枠
中小企業活性化協議会は、405事業や早期経営改善計画の受付だけでなく、収益力改善、経営改善、事業再生、廃業など、財務上の課題を持つ中小企業を自ら支援する機関です(中小企業基盤整備機構の説明)。中小企業庁のページでは、協議会の支援として「収益力改善・再生支援・再チャレンジ支援」が並んでいます。
また、405事業には、金融支援を伴う本格的な事業再生や廃業のために「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」に基づく計画を作る場合の「中小版GL枠」があります。補助は2/3で、上限はDD費用等300万円・計画策定支援300万円・伴走支援100万円です。
どの支援が合うかは会社の状況で変わります。早期経営改善計画の手引きも、協議会が必要に応じて他の支援策への移行を助言すると書いています。迷う段階でも、協議会や認定支援機関に相談できます。
早めに動くほど選べる道が多い
まだ返済ができているうちなら、借換えや新規融資と早期経営改善計画で立て直す道があります。返済が滞りそうになってからでは、返済条件の変更を前提にした405事業や、さらに重い手続きしか残らないことがあります。
毎月の返済と利益を並べ、「このままだと何か月後に返済が苦しくなるか」を早めに出しておくことが、選べる道を残すいちばんの準備です。借入の返済の組み立て方は借入金の返済計画はどう作る?中小企業の無理のない返済額と作成手順も参考にしてください。
よくある誤り
- 新規融資を受けたいので405事業を使う:新規融資や借換えだけでは、405事業の金融支援に当たりません。返済条件の変更が要らないなら、早期経営改善計画を検討します。
- 主要な銀行だけ説得すればよいと考える:計画は、金融機関の同意書がそろって成立します。主要な銀行だけでなく、関係する金融機関との調整を前提に進めます。信用保証協会の保証付きの借入がある場合は、保証協会の同意も要ります。
- 計画ができれば補助が出ると考える:最終的に金融支援を得られなかった場合、原則として補助は受けられません。
- 10万円の上乗せをリスケの交渉費用と考える:上乗せは、経営者保証の解除を目指す交渉のための任意の枠です。
よくある質問
405事業は何回でも使えますか?
北海道中小企業活性化協議会の案内では、原則として複数回の利用はできません。
どの専門家に頼めばよいですか?
認定経営革新等支援機関です。中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」で探せ、405事業のページによると、事業の活用実績も載っています。
リスケをすると、新しい融資は受けられなくなりますか?
返済条件を変えた後の融資の可否は、金融機関の判断で、制度の資料に一律の決まりは書かれていません。計画どおりに改善が進んでいるかを、伴走の中で金融機関に報告し続けることが、次の取引の土台になります。
経営者保証はどうなりますか?
405事業そのものは保証を外す制度ではありません。保証の解除を目指す計画を作り金融機関と交渉する場合に、上限10万円の上乗せがあります。保証の見直しの考え方は経営者保証を外したい社長へ。銀行が見る3つの要件と今からやることで説明しています。
まとめ
- リスケが必要な会社は、早期経営改善計画ではなく405事業の対象です。
- 補助は2/3で、上限はDD・計画策定200万円、伴走100万円です。
- 金融支援は返済条件の変更などを指します。2026年5月からは、計画に債務超過の解消(5年以内)・黒字化(おおむね3年以内)・有利子負債の水準(おおむね10倍以下)の基準が入ります。
- 計画は金融機関の同意書がそろって成立し、金融支援を得られなければ補助は出ません。
- 返済ができているうちに動けば、早期経営改善計画と借換えで立て直す道も残ります。
リーパル会計事務所にご依頼の場合
返済条件の変更がまだ要らない段階なら、早期経営改善計画で銀行に出す計画を作れます。計画の後も毎月の数字を銀行に説明したい場合は、財務顧問でお受けしています。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした資料
- 中小企業庁「経営改善計画策定支援」(405事業の対象・通常枠と中小版GL枠の補助率と上限)
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援(Vアップ事業)及び経営改善計画策定支援(405事業)の手引き・FAQ等を改定等します」(2026年3月26日)
- 〈通常枠〉経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年5月1日改訂)
- 北海道中小企業活性化協議会「経営改善計画策定支援事業」(数値基準・金融支援の内容・伴走の起算・規模別の費用の目安・複数回利用)
- 大阪府中小企業活性化協議会「経営改善計画策定支援事業」(利用対象者・主要金融機関の協力・金融支援を得られなかった場合・伴走の回数)
- 【金融機関を除く支援機関用】早期経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年3月31日改訂):Q3-4(金融支援の例)
- 中小企業基盤整備機構「中小企業活性化協議会」
この記事は2026年10月時点の制度・公表資料に基づいて書いています。
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