資金繰りが厳しい時の最初の相談先は、多くの場合メインの取引銀行で、銀行へ行く前の準備を一緒にするのが顧問税理士や認定経営革新等支援機関です。持っていく資料は、決算書と申告書のほかに、直近の試算表・借入の一覧・資金繰り表(実績と先の予定)・原因と打ち手のメモの4点です。順番は、資金繰り表で「いつ、いくら足りなくなるか」を出し、原因を分け、資料をそろえてから銀行に相談します。
月末の支払いが近づくたびに通帳の残高を確かめ、次の入金まで持つか不安になっている社長に向けた記事です。
この記事では、資金繰りが厳しい原因の見分け方、相談先ごとに頼めること、銀行へ行く前にそろえる資料と順番、返済が重い時に選べる道を整理します。
この記事の要点
- まず「何か月先に、いくら足りなくなるか」を資金繰り表で出します。中小企業庁の無料の作成ツールも使えます。
- 原因は、赤字・入金と支払いの時期のずれ・在庫や売掛金の増加・返済の重さの4つに分けると、打ち手が見えます。
- 銀行へは、決算書と申告書のほかに、直近の試算表、借入の一覧、資金繰り表(実績と先の予定)、原因と打ち手のメモの4点を持っていきます。
- 返済条件の変更(リスケ)まで要るかどうかで、使える国の支援が変わります(早期経営改善計画か405事業か)。
資金繰りが厳しいと感じたら最初に確かめる3つ
相談先を探す前に、手元で3つだけ確かめます。これが分かっていれば、誰に相談しても話が早くなります。
- いつ、いくら足りなくなるか:今の入金と支払いの予定のまま進んだ場合に、預金残高が最も少なくなる月と金額。
- なぜ足りなくなるか:赤字なのか、入金と支払いの時期がずれているだけなのか、返済が重いのか。
- 手元の資金で何か月持つか:毎月の出ていく額(支払いと返済)に対して、今の預金が何か月分あるか。
原因を4つに分けると打ち手が見える
| 原因 | 見分け方 | 打ち手の方向 |
|---|---|---|
| 赤字(もうけが出ていない) | 試算表の営業利益がマイナスで、毎月続いている | 粗利の改善、固定費の見直し、不採算の事業の縮小 |
| 入金と支払いの時期のずれ | 利益は出ているが、売上の入金より仕入や外注の支払いが先に来る | 回収・支払いの条件の見直し、運転資金の借入 |
| 在庫や売掛金の増加 | 売上の伸び以上に、在庫や未回収の売掛金が増えている | 在庫の持ち方の見直し、回収の管理 |
| 返済の重さ | 利益は出ているが、毎月の返済額が利益と減価償却の合計を上回る | 借換えを相談し、それでも足りなければ返済条件の変更を検討 |
実際には2つ以上が重なっていることが多いです。どれが一番大きいかを数字で示せると、銀行にも説明しやすくなります。
赤字の額と、現金の減り方は一致しない
損益計算書の赤字と、実際に減った預金の額は同じになりません。銀行に「赤字だから貸せない」と言われる前に、自分の会社のお金がどう動いたかを分けて見ておきます。
| 項目 | 損益(利益)への影響 | 現金への影響 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 費用になる(利益が減る) | その年にはお金が出ていかない |
| 借入の元本の返済 | 費用にならない | お金が出ていく |
| 在庫の仕入(売れ残り分) | 売れるまで費用にならない | 支払った時にお金が出ていく |
| 売掛金の増加 | 売上として利益に入る | 回収するまでお金は入らない |
| 前受金(先にもらった代金) | 納品するまで売上にならない | 先にお金が入るが、これから費用が出ていく |
例:決算の赤字が500万円、そのうち減価償却費が300万円、借入の元本返済が年600万円の会社を考えます。単純に足し引きすると、1年で預金は約800万円減る計算です(500万円−300万円+600万円。在庫や売掛金の増減は除く)。赤字の額だけを見ていると、資金の減り方を小さく見誤ります。
資金繰りが厳しい時の相談先と頼めること
相談先によって、頼めることが違います。1か所で全部が済むわけではないので、役割で使い分けます。
| 相談先 | 頼めること | 相談する前に |
|---|---|---|
| メインの取引銀行 | 新規の融資・借換え、返済条件の相談 | 足りない時期と金額、返し方を数字で用意する |
| 顧問税理士 | 試算表を早く正確に作る、原因を数字で分ける、資金繰り表づくり | 月次の数字が何か月遅れているかを確かめる |
| 認定経営革新等支援機関 | 経営改善計画の作成と、その後の伴走(国の補助制度あり) | 中小企業庁の検索システムで、近くの機関や制度の活用実績を探せる |
| 中小企業活性化協議会 | 借入の返済などの課題を抱えた会社の経営再建の相談、国の計画策定支援の受付 | 本店のある都道府県の協議会に問い合わせる |
中小企業活性化協議会は、中小企業の財務の安定のための収益力改善や、借入金の返済などの課題を抱えた会社の経営再建を支援する、国が設置する公正中立な機関です(中小企業基盤整備機構の説明)。全国47都道府県にあります。
顧問税理士がいても「試算表を出してもらえていない」「毎月の数字の説明を受けたことがない」という声は少なくありません。資金繰りの相談は、月次の数字がそろっていないと始まりません。数字が遅れているなら、まずそこを直すのが先です。
銀行へ行く前にそろえる資料と順番
銀行は、過去の結果である決算書に加えて、これからの見通しと、その根拠を知りたがります。次の順番でそろえると、抜けが出にくくなります。
- 直近の試算表:決算から時間がたっているなら、最新の月までの数字。期の途中で業績が変わっている会社ほど要ります。
- 借入の一覧:金融機関ごとに、残高・毎月の返済額・金利・最終の返済日・保証協会の保証付きかどうか。決算書の残高だけでは、毎月の返済の重さは分かりません。
- 資金繰り表(実績と先の予定):過去数か月の実績と、少なくとも数か月から1年先までの予定。いつ、いくら足りなくなるかが一目で分かる形にします。
- 原因と打ち手のメモ:なぜ足りなくなるのか、何をすればいつ改善するのか。うまくいかなかった場合にどうするかも書いておきます。
- 直近の決算書と申告書:数期分を手元にそろえておきます。試算表と並べると、業績の流れを説明しやすくなります。
資金繰り表は国の無料ツールでも作れる
中小企業庁は、質問に数値を入れるだけで資金予定表を作れる「資金予定表かんたん作成ツール」(エクセル・通常用と製造業用)を公開しています。いくつかのケースで預金の動きを並べて見るのに向いています。
資金繰り表の作り方そのものは、資金繰り表はどう作る?基本の構造と実例で見る作り方・月次の使い方と、資金繰り表の更新が続かない?エクセルテンプレートとフォーマットの作り方で詳しく書いています。
銀行に伝える5つのこと
- いつ、いくら必要か
- 何に使うお金か(運転資金か、設備か、返済の借換えか)
- なぜ足りなくなったのか(原因の数字)
- どう返すのか(改善の打ち手と、その効果が出る時期)
- 計画どおりにいかなかった場合にどうするか(縮小や撤退の目安を含む)
計画には、これまでにない新しい事業より、今ある商品・顧客・取引先をどう生かすかを書く方が、説得力が出やすくなります。新しいことにはさらにお金がかかり、成果が出るかも分からないからです。売上の目標も「来期は売上を○割増やす」だけでなく、商品別・顧客別に、単価と件数に分けて示します。
返済が重い時に選べる道
返済の重さが原因の場合、取れる道は大きく2つに分かれます。どちらに当たるかで、使える国の支援も変わります。
| 道 | 中身 | 使える国の支援 |
|---|---|---|
| 借換え・新規融資で資金繰りを整える | 借換えや、運転資金の新たな借入を銀行に相談する | 早期経営改善計画(費用の2/3を補助・上限は計画づくり50万円、伴走30万円。借換えや新規融資は計画に入れてよい) |
| 返済条件の変更(リスケ) | 返済額を減らす、元金の返済を一時止めるなどを金融機関に頼む | 経営改善計画策定支援(405事業) |
早期経営改善計画の費用と使える会社は早期経営改善計画の費用はいくら国が持つ?2/3補助の上限と使える会社、リスケが必要な場合は銀行にリスケを頼む前に。405事業で国が持つ費用はいくら?条件と流れで説明しています。
すぐの資金不足への対処の全体は、黒字でも資金ショートする?原因と早期発見のサイン・緊急時の対策にまとめています。
よくある誤り
- 預金が底をつく直前に相談する:融資の審査や計画づくりには時間がかかります。数か月先の不足が見えた時点で動く方が、選べる道が多く残ります。
- 赤字の額だけを見て諦める:銀行が見るのは赤字の額だけでなく、その中身と、これからどう解消するかです。一時的な費用と、続く費用を分けて説明します。
- 決算書だけを持っていく:決算から時間がたっていると、銀行は今の状況が分かりません。直近の試算表と資金繰り表を添えます。
- 返済のために、条件の悪い別の借入を重ねる:毎月の出ていくお金がさらに重くなります。重ねる前に、借換えや返済条件の相談を検討します。
よくある質問
銀行に資金繰りの相談をすると、評価が下がりませんか?
資金が足りなくなる見込みを、数字と打ち手を添えて早めに伝えれば、状況を隠したまま決算で初めて分かるよりも、銀行と相談する時間と説明の機会を持てます。早期経営改善計画の手引きも、試算表や資金繰り計画を適時に正確な内容で金融機関に開示・説明できるようになることを、制度の目的に挙げています。
試算表が数か月遅れています。それでも相談できますか?
相談はできますが、まず試算表を最新の月まで作ることを勧めます。今の数字が無いと、いつ・いくら足りないかも、原因も出せないからです。
どの専門家が認定経営革新等支援機関か、どう調べますか?
中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」で探せます。405事業のページは、このシステムに事業の活用実績も載っているとしています。
どの国の支援を使えばよいか、自分で決めないといけませんか?
いいえ。中小企業活性化協議会は、利用の相談に応じ、状況に応じて他の支援策への移行の助言も行います。迷う場合は、本店のある都道府県の協議会や、認定経営革新等支援機関に相談してください。
まとめ
- 資金繰りが厳しい時は、まず「いつ・いくら足りなくなるか」と「なぜか」を数字で出します。
- 相談先は役割で使い分けます。融資の相談は取引銀行、数字の整理は顧問税理士、計画づくりは認定経営革新等支援機関、返済の課題の相談は中小企業活性化協議会です。
- 銀行へは、試算表・借入の一覧・資金繰り表・原因と打ち手のメモをそろえて行きます。
- 返済が重い場合、借換えで済むなら早期経営改善計画、リスケまで要るなら405事業が使えます。
リーパル会計事務所にご依頼の場合
返済条件の変更が要らない段階なら、早期経営改善計画で銀行に出す計画を作れます。毎月の資金繰りと予算・実績の確認を続けたい場合は、財務顧問でお受けしています。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした資料
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」(資金予定表かんたん作成ツール・経営状況自己チェックリスト・補助の上限)
- 中小企業庁「経営改善計画策定支援」(405事業の対象・認定経営革新等支援機関検索システム)
- 中小企業基盤整備機構「経営改善計画策定支援事業」(中小企業活性化協議会の役割・設置場所)
- 早期経営改善計画策定支援に関する手引き(2026年3月31日改訂):1 目的、4(3)協議会の助言
- 【金融機関を除く支援機関用】早期経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年3月31日改訂):Q3-4(金融支援の範囲)
- 認定経営革新等支援機関検索システム
この記事は2026年10月時点の制度・公表資料に基づいて書いています。
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