「節税になる」と法人保険を勧められても、自社に必要な保障なのか、保険料の負担に見合うのかは気になるところです。
法人保険の保険料を損金にできる範囲は、保険の種類や解約返戻率、受取人の設定によって変わります。解約時の課税や資金繰りも含めて、保障や退職金準備といった目的に合うかを確認することが大切です。
この記事では、2019年改正後の税務上の扱いと目的別の活用例、保険提案を受けたときの確認事項を紹介します。
顧問税理士をお探しの方へ
会社の規模や記帳の状況をお聞きして、顧問料をお見積りします。
顧問契約のお見積り(無料)はこちら →数字で先に確かめたい方は、無料の決算診断はこちら。全国オンライン対応です。
2019年税制改正で何が変わったか——「節税保険」がなぜ封じられたか
何が変わったのか
2019年6月(国税庁の通達改正)以前は、解約返戻率の高い法人保険でも保険料の多くを損金算入できる商品が多く存在しました。いわゆる「全額損金算入できる保険」「節税保険」として、生命保険各社から多数の商品が販売されていました。
改正後は、保険料の損金算入割合を解約返戻率(返戻率)に連動させる新ルールが導入されました。
改正後の損金算入割合(定期保険・第三分野保険の場合)
| 最高解約返戻率 | 損金算入割合 |
|---|---|
| 50%以下 | 保険料全額損金 |
| 50%超〜70%以下 | 保険料の60%が損金(40%は資産計上) |
| 70%超〜85%以下 | 保険料の40%が損金(60%は資産計上) |
| 85%超 | 保険料の最大で10%が損金(その他は資産計上) |
返戻率が高いほど損金割合が下がり、資産計上(後日戻ってくる部分)として処理される割合が増えます。
改正前との違い
改正前:返戻率80%超でも「保険料の半額を損金」として処理できる商品が多数存在していた。
改正後:返戻率85%超の商品は「保険料の10%以下しか損金にならない」ため、節税目的での活用は難しくなった。
改正後に有効な法人保険の使い方——目的別に3つの活用ポイントを整理する
活用ポイント①:保障機能を主目的とした保険選び
税制改正の趣旨は「節税のみを目的とした保険商品への規制」です。言い換えれば、保障機能が主目的の保険であれば、一定の損金算入メリットと保障を両立できます。
特に以下の場合は法人保険の加入を検討する価値があります。
- 代表取締役・重要な役員が死亡・高度障害になった際の事業継続リスクへの備え
- 借入金の返済原資として死亡保険金を活用する「銀行借入への担保的機能」
- 役員退職金の原資として解約返戻金を活用する中長期的な計画
活用ポイント②:損金算入割合50%以下の商品を選ぶ
最高解約返戻率が50%以下の定期保険であれば、保険料の全額を損金算入できます。これは改正後も変わりません。
ただし、解約返戻率50%以下ということは「解約してもほぼ戻ってこない」ことを意味します。純粋に保障目的でのコスト(掛け捨てに近い保険)と理解したうえで活用する必要があります。
活用ポイント③:解約返戻金の出口設計
解約返戻率70〜85%の法人保険(損金算入40〜60%)を選ぶ場合、解約時の返戻金(益金)と退職金・大型投資の損金を相殺するタイミングを事前に設計することが重要です。
| 保険の選択肢 | 損金算入 | 返戻率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 掛け捨て型(最高返戻率50%以下) | 全額 | 低 | 節税メリット高、保障コスト高 |
| 中返戻型(70%超〜85%以下) | 40% | 中 | バランス型 |
| 高返戻型(85%超) | 10%以下 | 高 | 節税効果は限定的 |
2019年の税制改正以降、法人保険の節税効果は「最高解約返戻率」によって損金算入率が階段状に決まる仕組みになりました。返戻率50%以下なら全額損金、50〜70%なら6割損金、70〜85%なら4割損金——というように、商品設計と税務処理が連動しています。提案された保険の最高解約返戻率がいくつなのかを確認するだけで、節税効果と現金流出のバランスは即座に判定できます。リーパル会計事務所では、保険提案を受けた段階で1枚の比較表を作成し、目的との整合をその場で評価しています。
定期・養老・第三分野——種類別に税務処理の違いを知らずに加入してはいけない
定期保険(掛け捨て型)
保険期間中に被保険者が死亡・高度障害になった場合に死亡保険金が支払われる保険です。満期保険金はなく、解約返戻金も限定的です。
改正後のルールでは、最高解約返戻率が50%以下の掛け捨て型定期保険は保険料の全額が損金算入できます。代表者の死亡に備えた保障として合理性があります。
養老保険
死亡保障と満期保険金を兼ねる保険です。役員・従業員を被保険者・受取人とする「福利厚生プラン」として活用する場合、保険料の2分の1が損金算入できるケースがあります(ハーフタックスプラン)。
ただし、受取人の設定によって税務処理が異なるため、要件を正確に確認することが重要です。
第三分野保険(医療・がん保険)
役員・従業員の医療リスクに備える保険です。2019年の通達改正で長期逓増型の第三分野保険への規制が強化されましたが、保険期間が比較的短い商品は従来同様の処理が適用される場合もあります。
年商・規模別の活用イメージ——どの保険がどの会社規模に合うか
年商1〜3億円規模の製造業・建設業
代表取締役が現場の中心人物であり、代表の急死・高度障害が事業継続の最大リスクとなるケースです。借入金の残高と見合った死亡保険金を設定した掛け捨て型定期保険が最もコスト効率の高い選択肢となります。
月々の保険料(掛け捨て型・代表者65歳まで・死亡保障1億円)は保険会社・健康状態によりますが概ね月5〜15万円程度。保険料の全額が損金になる商品であれば、保障を確保しながら毎年60〜180万円の損金算入が可能です。
年商3〜10億円規模・役員退職金を計画中の法人
退職時期が明確(5〜10年後)で、役員退職金の準備を兼ねたい場合は、解約返戻率70〜80%台の中返戻型定期保険の検討余地があります。ただし解約出口設計(解約時の益金をどう相殺するか)を事前に設計することが不可欠です。
保険会社の担当者任せにせず、顧問税理士も含めた3者で「解約タイミング・返戻金の使い道・退職金との相殺シミュレーション」を確認してから加入を決めることを推奨します。
共同経営者・キーマンへの備え
代表取締役のほかに経営の中核を担う共同経営者・技術責任者等がいる場合、その人物の万一に備えた「キーマン保険」も検討に値します。役員や重要従業員を被保険者とし、法人を受取人とする死亡保険です。
キーマン保険の保険料は、解約返戻率が50%以下であれば全額損金算入できます。採用・引継ぎコストへの備えとして保障機能を重視した選択が合理的です。
保険を「節税グッズ」と誤解すると起きること——経営者が陥りやすい3つのリスク
本末転倒な保険加入のリスク
税制改正後も「節税効果がある」と称して高額保険を勧める営業事例が散見されます。以下の点に注意してください。
- 保険料の一部が損金になっても、残りは資産計上であり「将来の税負担」が生まれる
- 解約タイミングを誤ると、解約益(益金)で高い税率の年度に課税されるリスクがある
- 保険料負担が重くなりすぎると、本業の資金繰りに影響する
リーパル会計事務所では、法人保険の提案を受けた際に「この保険の損金算入割合はいくつか」「解約返戻金の出口設計はどうなっているか」を必ず確認することを推奨しています。
保険を活用する際に最も重要なのは「出口」です。解約返戻金が戻ってきたタイミングで何にぶつけるか——役員退職金支給と相殺するのか、大型設備投資の損金と相殺するのか——を加入時点で描けていないと、解約時に課税が集中して節税効果が消えてしまいます。リーパル会計事務所では、保険加入と退職金原資・設備投資計画をセットで設計するスタイルでサポートしています。
保険提案を受ける前に、独立した立場で「入るべきか・他の手段と比較してどうか」を一度整理しておくことをお勧めします。リーパル会計事務所では保険会社から独立した視点で提案内容を評価しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2019年改正前に加入した法人保険はどうなりますか?
A. 2019年7月8日以前に契約した保険については、原則として旧ルール(改正前の通達)が適用されます。既存の保険契約については担当税理士に確認してください。
Q2. 法人保険と経営セーフティ共済はどちらが節税効果が高いですか?
A. 純粋な節税効果では経営セーフティ共済(掛金全額損金・40ヶ月以上で返戻率100%)が優位です。法人保険は保障機能を兼ねる点で異なる位置づけです。詳しくは経営セーフティ共済で節税する方法をご覧ください。
Q3. 役員を被保険者にする法人保険は全て損金算入できますか?
A. 損金算入できるかどうかは保険の種類・返戻率・受取人の設定によって異なります。一律に「役員を被保険者にすれば損金」という理解は誤りです。
Q4. 法人保険の解約返戻金は必ず課税されますか?
A. 解約返戻金のうち資産計上していた部分を超える益金部分は課税対象になります。資産計上してきた部分が戻ってくる場合は益金算入されます。解約のタイミングで退職金等の損金と相殺することで税負担を軽減できます。
Q5. 生命保険会社の提案を受けたとき、税理士に確認すべきポイントは何ですか?
A. 「最高解約返戻率」「損金算入割合」「解約した場合の出口設計(どの年度に解約するか・益金をどう相殺するか)」の3点を必ず確認してください。
参考資料
法人保険は、税制改正以降「節税のためだけに入る商品」ではなくなりましたが、退職金原資の積立・福利厚生・経営者保障の3用途と組み合わせれば、依然として経営の打ち手として有効です。保険提案を受けたタイミングで「これは本当に自社に必要か」「ほかの選択肢(共済・iDeCo・退職金信託)と比べて優位か」を客観的に評価できる体制を持っておくと、年間100万円単位の保険料の意思決定で迷わなくて済みます。リーパル会計事務所では、保険会社から独立した立場で提案内容を精査し、加入是非をフラットに判断するアドバイザリーを提供しています。
保険の出口(解約・退職金相殺)まで見通した設計ができていれば、保障と節税を両立させない理由はほとんどありません。判断に迷う場合はリーパル会計事務所までご相談ください。
関連記事
監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、中小企業の法人節税・税務調査対応を専門とする。
最終更新日: 2026年10月24日
リーパル会計事務所|関与実績1,100社以上・全国オンライン対応
法人の決算・申告を任せる顧問税理士をお探しの方へ
MF公認・freee認定元国税調査官の知見