銀行に出す経営改善計画書には、国の制度が示す中身の型があります。早期経営改善計画の手引きに沿うと、会社の稼ぎ方を1枚にした図、課題と方針、誰が・いつまでに・何をするかの行動計画、実際の値打ちに直した貸借対照表、損益の計画、資金繰り表の6つが中心です。売上の目標は「来期○割増」ではなく、商品別・顧客別に単価と件数へ分けて初めて、銀行が判断できる数字になります。
銀行から「経営改善計画書を出してください」と言われ、何をどこまで書けばよいのか迷っている社長に向けた記事です。
この記事では、計画書に入れる中身の一覧、売上計画の作り方、国が無料で公開しているひな形とツール、制度ごとの数値基準の違いを、中小企業庁の資料に沿って整理します。
この記事の要点
- 早期経営改善計画の中身は6つ:俯瞰図、課題と方針、アクションプラン、実態貸借対照表、損益計画、資金繰り表です。405事業の計画には会社概要表なども加わります。
- 計画期間は3〜5年程度が一般的です。中小企業庁は3年計画用のひな形を無料で公開しています。
- 売上計画は「来期○割増」ではなく、商品別・顧客別に単価×件数で作り、最低限・現実的・順調の3つのケースを置きます。
- 早期経営改善計画には数値基準がありません。返済条件の変更を伴う405事業の計画には、原則として、計画成立後最初の事業年度の開始日から5年以内をめどに実質的な債務超過を解消する、などの基準があります。
経営改善計画書に入れる中身の一覧
中小企業庁の早期経営改善計画の手引きは、計画書に入れる物を次のように挙げています(2026年3月31日改訂で、実態貸借対照表が加わりました)。405事業でも、計画の土台になる考え方は共通です。405事業の手引きは、これに加えて会社概要表(株主・役員構成・役員との貸し借り・沿革など)、金融支援の依頼内容、資産保全表も挙げています。
| 中身 | 何を書くか | 銀行が読むところ |
|---|---|---|
| ビジネスモデル俯瞰図 | 誰に何を売り、どこから仕入れ、どこで利益が出るかの図 | この会社の稼ぎ方を理解できるか |
| 経営課題と基本方針 | 現状の分析から見えた課題と、解決の方向 | 赤字や資金不足の原因を、会社自身が分かっているか |
| アクションプランと伴走の計画 | 誰が・いつまでに・何をするか。その確かめ方 | 改善が言葉だけでなく、行動に落ちているか |
| 実態貸借対照表 | 帳簿の資産・負債を実際の値打ちに直した表 | 本当の財務の状態(実質的な債務超過かどうか) |
| 損益計画などの数値計画 | アクションプランの効果を数字にした数年分の計画 | いつ黒字になり、返済の原資がいくら出るか |
| 資金繰り表(実績と計画) | 過去の資金の動きと、これからの予定 | 計画の途中で資金が足りなくならないか |
手引きは、現状の分析では会社の管理体制(ガバナンス)の面も確かめる必要がある、としています。問題がある場合は、その解決策と行動計画を考え、計画に織り込むことが勧められています。
現状の分析で見ること
手引きが示す計画づくりの着眼点は、現状の分析(会社の基本情報・財務・商流・業務の流れ・外部の環境)、経営課題の明確化、改善策の検討、数値計画、アクションプラン、資金繰りの検討です。
FAQは、ローカルベンチマーク(経済産業省が公開している分析のシート)の「4つの視点」を紹介しています。経営者(理念・ビジョン・後継者の育成)、事業(強み・弱み・事業の仕組み)、会社を取り巻く環境・関係者(市場・競合・取引先や金融機関)、内部管理体制(組織・商品開発の体制・人材育成)の4つです。中小企業庁のページは、ローカルベンチマークで作った「商流・業務フロー」をビジネスモデル俯瞰図として出してもよいとしています。
実態貸借対照表の直し方
実態貸借対照表は、回収できない売掛金、値打ちの下がった在庫、使っていない資産などを、実際の値打ちに直した貸借対照表です。FAQは、直し方に制度の決まりは無く、直す項目について計算の根拠を示しながら主要な金融機関と目線を合わせることを勧めています。
売上計画の作り方|単価×件数に分ける
「来期は売上を3割増やします」と書くだけでは、銀行はその数字が実現できるかを判断できません。売上は、どの商品を、誰に、いくらで、何件売るかに分けて作ります。
| 分け方 | 書くこと |
|---|---|
| 商品別 | 今ある商品と新しい商品を分け、それぞれいくら売るか |
| 顧客別 | 今の顧客からの売上と、新しい顧客からの売上を分ける |
| 単価と件数 | 平均の単価と、売る件数。毎月続く売上(継続の契約など)は別に数える |
| 時期 | いつから売上になるか。準備の期間を見込む |
例:売上を1,200万円増やす計画でも、単価60万円の商品を20件売るのか、単価6万円の商品を200件売るのかで、必要な営業の体制はまったく違います。件数まで分けると、その件数を取れる根拠(今の問い合わせの数・成約の割合など)を書けるようになります。
粗利と費用も一緒に書く
売上が増えても、値引き・広告費・外注費・紹介料が増えれば、利益は残りません。売上の計画と一緒に、粗利の率と、売上を作るためにかかる費用を書きます。
新しいことより、今あるものを書く
赤字の会社の計画に、新しい商品・新しい市場・大きな採用ばかりを並べると、銀行には不安に見えがちです。新しいことには追加のお金がかかり、成果が出るかも分からないからです。今の顧客への追加の提案、今の商品の売り方の見直し、固定費の削減など、すでに持っている物を生かす打ち手を中心にすると、計画の確からしさが増します。
3つのケースと、縮小・撤退の目安を置く
計画は1本の強気な数字にせず、最低限・現実的・順調の3つのケースで作ると、資金繰りの判断がしやすくなります。不採算の事業や店舗があるなら、「どの数字を下回ったら縮小するか、いつまでに判断するか」を先に決めて書いておきます。銀行は、計画がうまくいった場合だけでなく、外れた場合に会社をどう守るかも見ています。
国が無料で公開しているひな形とツール
白紙から作る必要はありません。中小企業庁の早期経営改善計画のページには、次の物が公開されています。
| 資料 | 使いどころ |
|---|---|
| 早期経営改善計画 ひな形(3年計画用) | 計画書の参考様式。同等以上の中身があれば別の様式でもよい |
| 経営改善のためのアクションプランの検討手順 | 課題から行動計画へ落とす手順の作成例 |
| 収益力改善支援に関する実務指針と、経営者のための経営状況自己チェックリスト | 計画づくりの着眼点と、社長自身の点検 |
| ガバナンス体制の整備に関するチェックシート | 管理体制の現状の確認 |
| 資金予定表かんたん作成ツール(通常用・製造業用) | 数値を入れるだけで資金予定表を作り、複数のケースの預金の動きを比べる |
405事業のページには、経営改善計画の事例サンプル(原則版・簡易版)も載っています。資金繰り表の作り方は資金繰り表はどう作る?基本の構造と実例で見る作り方・月次の使い方で詳しく書いています。
制度によって変わる計画の水準
計画を国の計画策定支援を使って作る場合、どちらの制度かで、計画に求められる水準が違います。
| 項目 | 早期経営改善計画 | 405事業(通常枠) |
|---|---|---|
| 数値基準 | 定めなし | 原則として、計画成立後最初の事業年度の開始日から、実質債務超過は5年以内をめどに解消、経常赤字はおおむね3年以内をめどに黒字化。計画の終了年度に、有利子負債はキャッシュフローのおおむね10倍以下 |
| 計画期間 | 3〜5年程度が一般的。少なくとも伴走の3年後の決算期まで | 数値基準に沿った期間(終了年度は原則、実質的な債務超過を解消する年度) |
| 金融機関の関わり | 計画を提出する。同意は不要 | 計画は金融機関の同意書がそろって成立 |
| 補助の上限 | 計画づくり50万円・伴走30万円(いずれも2/3) | DD・計画策定200万円・伴走100万円(いずれも2/3) |
早期経営改善計画のFAQは、数値基準は無いものの、事業の背景を含めた現状の分析、課題の明確化、具体的なアクションプランなど、実現の見込みを高める中身にすることが望ましいとしています。制度の費用と使える会社は早期経営改善計画の費用はいくら国が持つ?2/3補助の上限と使える会社、405事業は銀行にリスケを頼む前に。405事業で国が持つ費用はいくら?条件と流れで説明しています。
よくある誤り
- 売上の目標額だけを書く:単価・件数・時期の根拠が無いと、銀行は判断できません。
- 新しい事業の話ばかりにする:追加のお金と不確かさが増えます。今ある顧客・商品・取引先の生かし方を中心にします。
- 帳簿の貸借対照表のまま出す:回収できない売掛金や値打ちの下がった在庫を直した実態の数字で、銀行と目線を合わせます。
- 計画を出したら見なくなる:計画と実績の差を、決算や中間決算のたびに確かめ、原因と対応を銀行に報告して初めて、計画が信頼の材料になります。
よくある質問
経営改善計画書は自分で作ってもよいですか?
作れます。国のひな形やツールも公開されています。ただし、早期経営改善計画や405事業の補助を受けるには、認定経営革新等支援機関の支援を受けて作る必要があります。
計画は何年分作ればよいですか?
早期経営改善計画のFAQは、3〜5年程度が一般的としつつ、計画を出した後の最初の決算から3年間の伴走があるため、少なくとも3年後の決算期までは必要としています。
赤字の理由はどこまで書けばよいですか?
赤字の額だけでなく、どの費用が増えたのか、一時的な費用か続く費用かを分けて書きます。赤字決算の後の説明の仕方は赤字決算で融資を相談するとき|赤字の理由の説明資料と改善計画の作り方も参考にしてください。
計画を出した後、銀行には何を報告しますか?
早期経営改善計画のFAQは、決算期は決算書、中間決算期は試算表をもとに、計画と実績の差とアクションプランの進み具合を確かめ、会社が銀行に報告する準備をすることを伴走の中身としています。予算と実績の比べ方は予実管理はエクセルでできる?予実管理表とテンプレートの作り方で説明しています。
まとめ
- 早期経営改善計画の計画書の中身は、俯瞰図・課題と方針・アクションプラン・実態貸借対照表・損益計画・資金繰り表の6つです。405事業の計画には、会社概要表・金融支援の依頼内容・資産保全表なども加わります。
- 売上計画は商品別・顧客別に単価×件数で作り、粗利と費用、3つのケース、縮小・撤退の目安を一緒に書きます。
- 中小企業庁のひな形・アクションプランの検討手順・資金予定表ツールが無料で使えます。
- 早期経営改善計画には数値基準が無く、405事業の計画には債務超過の解消や黒字化の基準があります。
リーパル会計事務所にご依頼の場合
当事務所は認定経営革新等支援機関として、早期経営改善計画の計画書づくりと、出した後3年の伴走をお受けしています。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした資料
- 中小企業庁「早期経営改善計画策定支援」(計画の中身・ひな形・アクションプランの検討手順・実務指針とチェックリスト・資金予定表かんたん作成ツール・ローカルベンチマークの扱い)
- 早期経営改善計画策定支援に関する手引き(2026年3月31日改訂):4(6)計画策定着眼点
- 【金融機関を除く支援機関用】早期経営改善計画策定支援 マニュアル・FAQ(2026年3月31日改訂)
- 同マニュアル・FAQで参照した問:Q3-2(計画の水準・期間)・Q3-3(着眼点・ローカルベンチマーク)・Q3-4(融資行為)・Q3-8(実態貸借対照表)・Q6-2(伴走の中身)
- 中小企業庁「経営改善計画策定支援」(405事業の補助・事例サンプル)
- 北海道中小企業活性化協議会「経営改善計画策定支援事業」(405事業の数値基準・計画の成立)
- 経済産業省「ローカルベンチマークシート」
この記事は2026年10月時点の制度・公表資料に基づいて書いています。
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