税理士に申告の依頼を断られ、次の相談先へどう伝えればよいか困っていませんか。まず断られた理由を確かめ、期限と帳簿の状態、手元にある資料・足りない資料を整理しましょう。依頼先の対応範囲や残りの日数にもよりますが、準備を整えることで受けてもらえる場合があります。
この記事では、期限直前・資料不足・無申告の場合に、次の税理士へ伝える情報と準備するものをまとめます。契約を断る側の文面をお探しなら、税理士への断り方・解約メールの文面例をご覧ください。
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税理士に依頼を断られやすい5つの場面
税理士が依頼を受けるかどうかは、事務所ごとに業務量や体制を見て判断します。断られる場面を並べると、会社側で変えられるものと変えられないものに分かれます。
| 場面 | 事務所側で起きていること | 会社側で変えられること |
|---|---|---|
| 申告期限までの日数が少ない | 決算・申告の作業時間を確保できない | 期限を正確に伝え、資料を一度にそろえて渡す |
| 資料がそろわない・帳簿が無い | 作業量が読めず、見積もりも出せない | 「何が有って何が無いか」の一覧を先に渡す |
| 無申告の年がある | 何年分・どの税目かが分からない | 年数・税目・税務署からの連絡の有無を整理する |
| 事実と違う申告を求める | 税理士法で禁じられた行為にあたる | 依頼の中身そのものを見直す |
| 業種・規模・地域が対応範囲の外 | 事務所ごとに扱う業種や体制が違う | 依頼前に対応範囲を確認する |
上の4つは、会社側の準備で状況を変えられる余地があります。最後の1つは事務所の方針なので、別の事務所を当たるほうが早い場面です。断られたときは理由を一言聞いておくと、次の依頼で何を準備すればよいかの手がかりになります。
期限直前の依頼:法人と個人事業主で期限が違う
「間に合うかどうか」は、残りの日数と資料の状態で決まります。まず自分の申告期限を正確に把握しておくことが出発点です。法人と個人事業主では期限の決まり方が違います。
法人:決算日の翌日から2か月以内
法人税の確定申告書は、各事業年度終了の日(決算日)の翌日から2か月以内に、確定した決算に基づいて提出します(法人税法74条)。申告書には貸借対照表・損益計算書などを添付する決まりなので、決算書ができていないと申告書も作れません。※説明のための架空の例です。3月31日決算の会社なら、申告期限は5月31日です。
株主総会の時期などの事情で2か月以内に決算が確定しない会社には、申告期限の延長の特例があります。ただし、この特例の申請は「最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで」に出す手続です(国税庁「定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」)。決算日を過ぎてから申請しても、この特例でその期の期限は延びません。
これとは別に、災害その他やむを得ない理由で決算が確定せず、期限までに申告書を出せないと認められる場合は、税務署長が期日を指定して提出期限を延長できる仕組みがあります(法人税法75条)。この申請は、事業年度終了の日の翌日から45日以内に、決算が確定しない理由などを書いた申請書で行います。どのような事情がこの理由に当たるかは個別に判断されるため、使えるかどうかは税理士に確認してください。
消費税も、法人税の延長の特例を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を出すと、申告期限が1か月延びます。延びた期間の分は利子税を併せて納める必要があります。延長の特例は、期限直前になってから使える救済策ではない点に注意が要ります。
個人事業主:翌年3月15日まで
個人の所得税は、1月1日から12月31日までの所得について、翌年2月16日から3月15日までに確定申告と納付を行います。令和8年分であれば、期限は2027年3月15日です。
青色申告をしている個人事業主は、期限を過ぎると55万円・65万円の青色申告特別控除の要件を満たさなくなります。どちらの控除も、確定申告期限までに申告書を提出することが要件に入っているためです。要件に該当しない青色申告者が受けられるのは10万円の控除です。
なお、この55万円・65万円・10万円という金額と要件は、令和8年分までのものです。令和8年度の税制改正(所得税法等の一部を改正する法律は2026年3月31日成立)で、令和9年分以後は、期限内にe-Taxで提出することなどを要件に65万円、さらに仕訳帳と総勘定元帳を一定の要件で電子保存していれば75万円に見直されます。簡易な簿記で記録している人のうち、前々年分の事業所得の収入金額が1,000万円を超える人などは、10万円の控除の対象から外れます。期限内に提出することが要件である点は変わりません。
期限直前に依頼するときに最初に伝えること
- 法人か個人事業主か、決算日(個人は何年分か)と申告期限
- 前期(前年)の申告書・決算書の控えがあるか
- 会計ソフトを使っているか、帳簿はどこまで入力済みか
- 消費税の申告が必要か(前期に消費税の申告をしたか)
- 通帳・カード明細・請求書・領収書がどこにあるか
この5点が最初の連絡でそろっていると、事務所側は「間に合うか」「何日かかりそうか」をその場で判断できます。逆に、ここが分からないまま期限まで数日しかないと、確認のやり取りだけで日数が尽きてしまいます。
資料がそろわないときに断られやすい理由と、先に渡すもの
税理士は、帳簿と証憑(請求書・領収書など)にもとづいて決算書と申告書を作ります。資料が無いと作業量が読めないため、見積もりも引き受けの判断もできません。「全部そろってから相談する」より、「何が有って何が無いか」を一覧にして先に渡すほうが、話が早く進みます。
| 資料 | 法人 | 個人事業主 | 手元に無いときの伝え方 |
|---|---|---|---|
| 前期(前年)の申告書・決算書の控え | 要る | 要る(青色申告決算書・収支内訳書) | 前の税理士に依頼していたか、自分で出したかを伝える |
| 事業用口座の通帳・入出金明細 | 要る | 要る | 口座の数と、明細を取り寄せられるかを伝える |
| クレジットカードの利用明細 | 事業で使ったもの | 事業で使ったもの | カードの枚数と、Webで明細が見られるかを伝える |
| 売上の請求書控え・入金の記録 | 要る | 要る | 売上の把握方法(請求書・レジ・決済サービス等)を伝える |
| 経費の領収書・請求書 | 要る | 要る | 保管の状態(紙・データ・混在)を伝える |
| 給与・外注費の支払い記録 | 人を雇っている場合 | 人を雇っている場合 | 源泉徴収をしているかどうかを伝える |
| 借入金の返済予定表・固定資産の明細 | 該当する場合 | 該当する場合 | 借入先の数と、購入した主な設備を伝える |
| 税務署・自治体から届いた書類 | 届いている場合 | 届いている場合 | 届いた日付と書類の題名を伝える |
資料の状態は、見積もりと引き受けの判断を最も大きく左右する点の1つです。仕訳の数・資料の状態・業種・決算月・残りの日数によって作業量が変わるため、同じ「決算をお願いしたい」という依頼でも、事務所の受け止め方は大きく違います。確定申告で税理士に渡す書類の一覧は、確定申告で税理士に渡すものも参考にしてください。
無申告の年があるとき:何年分か・税務署から連絡が来ているか
申告期限を過ぎても、気づいた時点でできるだけ早く申告することが基本です。期限後に出した申告は「期限後申告」として扱われ、納める税金のほかに無申告加算税がかかることがあります。無申告加算税は国税通則法66条で、期限後申告書の提出や税務署の決定があった場合に課されると定められており、所得税だけでなく法人税や消費税も対象です。
無申告加算税の割合は「いつ申告したか」で変わる
個人の所得税の場合、国税庁は次のように説明しています(国税庁タックスアンサーNo.2024「確定申告を忘れたとき」)。令和6年1月1日以後に法定申告期限が来るもの(令和5年分以降)の割合です。
| 申告した時期 | 無申告加算税の割合 |
|---|---|
| 税務署から調査の事前通知が来る前に、自主的に期限後申告 | 納付すべき税金の5% |
| 調査の事前通知の後、調査による決定を予知する前に期限後申告 | 50万円までの部分10%・50万円超300万円までの部分15%・300万円超の部分25% |
| 調査を受けた後に期限後申告、または税務署の決定 | 50万円までの部分15%・50万円超300万円までの部分20%・300万円超の部分30% |
このほか、過去に無申告加算税を課されたことがある場合や、調査で帳簿を提示しなかった場合などに割合が加算される仕組みもあります。反対に、法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、税金を全額期限内に納めているなど、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合は、無申告加算税がかかりません。また、期限後申告で納める税金は申告書を提出した日が納期限になり、納付の日までの延滞税も併せて納めます。加算税・延滞税の詳しい計算は確定申告の期限を過ぎた場合の記事で扱っています。
法人は青色申告の承認にも関わる
法人税法127条は、青色申告の承認を取り消すことができる事由の1つに「確定申告書をその提出期限までに提出しなかったこと」を挙げています。取り消されるかどうかは税務署長が判断することで、期限後申告をすれば直ちに取り消されるという意味ではありませんが、法人の無申告は加算税だけの問題ではない点を押さえておく必要があります。
無申告の依頼で税理士に最初に伝えること
- 無申告の年(法人は事業年度)がいつからいつまでか
- 申告していない税目(法人税・消費税・源泉所得税・住民税や事業税など)
- 税務署から調査の事前通知や書類が届いているか、届いていればその日付
- その期間の帳簿や通帳・請求書がどこまで残っているか
- 売上をどうやって把握できるか(入金口座・請求書・決済サービスの記録など)
上の表のとおり、税務署から調査の事前通知が来る前か後かで加算税の割合が変わります。無申告の依頼では、ここが最初に確認される点です。事情を伏せたまま依頼すると、途中で前提が変わって作業がやり直しになり、結果として断られる原因になります。
税理士が引き受けられない依頼
期限や資料の問題とは別に、依頼の中身そのものが理由で断られることがあります。税理士法36条は、税理士が不正に税金を免れることなどについて「指示をし、相談に応じ、その他これらに類似する行為をしてはならない」と定めています(税理士法36条(e-Gov法令検索))。
さらに税理士法41条の3は、税理士が業務の中で、依頼者が課税標準等の計算の基礎となる事実を隠したり偽ったりしている事実を知ったときは、直ちに是正するよう助言しなければならないと定めています。次のような依頼は、引き受けられないか、是正の助言から話が始まります。
- 売上の一部を帳簿に載せずに申告してほしい
- 実際には払っていない経費を計上してほしい
- 無申告の年があることを伏せたまま、直近の年だけ申告してほしい
- 日付をさかのぼって書類を作り直してほしい
一方で、「この支出は経費になるか」「どの処理を選べるか」のように、税法の解釈や処理の選び方を相談することは、税理士の本来の業務(税務相談)です。判断が分かれる処理ほど、事実を正確に伝えたうえで相談することで、選べる処理の範囲がはっきりします。
税理士への依頼を考えるときの関連記事
断られた後、次の税理士に依頼するときの準備
一度断られても、準備をそろえ直せば受けてもらえることはあります。次の順で整理してから連絡すると、事務所側が引き受けの判断をしやすくなります。
- 申告期限を確定させる(法人は決算日の翌日から2か月以内、個人は翌年3月15日まで)
- 延長の特例を受けているか(法人の場合)を、過去の届出や申告書の控えで確かめる
- 資料の「有る・無い」の一覧を作る(上の表の8項目)
- 無申告の年・税目と、税務署からの連絡の有無を書き出す
- 前に断られた理由(日数・資料・内容)を一言で伝えられるようにしておく
- 会計ソフトのデータや資料をどの方法で渡せるか(紙・データ・共有)を決めておく
見積もりの金額や引き受けの可否は、仕訳の数・資料の状態・業種・決算月・期限までの日数・無申告の年数によって変わります。条件がそろっていないと見積もり自体が出せないので、最初の連絡でここまで渡せると、断られる主な理由を先回りして解消できます。
まとめ:断られる主な理由は日数・資料・事情の不明
- 断られやすいのは、期限直前・資料不足・無申告・事実と違う申告の依頼・対応範囲外の5つの場面です。
- 法人は決算日の翌日から2か月以内、個人は翌年3月15日までが申告期限です。法人の延長の特例は、事業年度終了の日までの申請が必要です。
- 資料は「全部そろえてから」より、「有る・無い」の一覧を先に渡すほうが判断が早くなります。
- 無申告は、税務署から調査の事前通知が来る前か後かで無申告加算税の割合が変わります。法人は青色申告の承認にも関わります。
- 税金を不正に免れる相談には税理士は応じられません(税理士法36条)。
どの準備が必要かは会社ごとの状況で変わるため、期限と資料の状態を整理したうえで、早めに相談先へ伝えることが次の一歩になります。
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よくある質問
Q. 決算日を過ぎてから、法人税の申告期限を延ばしてもらうことはできますか?
定款の定め等による申告期限の延長の特例は、最初に適用を受けようとする事業年度終了の日までに申請する手続で、決算日を過ぎてからの申請ではその期の期限は延びません。災害その他やむを得ない理由で決算が確定しない場合は、事業年度終了の日の翌日から45日以内の申請で期限の延長を受けられることがあります(法人税法75条)。どちらにも当たらず期限に間に合わない見込みのときは、期限後申告になる前提で、できるだけ早く申告する段取りを考えます。
Q. 申告期限を過ぎてしまいました。税理士を探している間にできることはありますか?
通帳・カード明細・請求書・領収書など、その期間の資料を集めておくことができます。期限後申告で納める税金は申告書を出した日が納期限になり、延滞税は日数に応じてかかります。税務署から書類が届いている場合は、その書類も手元にまとめておきます。
Q. 無申告の年が何年もある場合、すべての年を申告するのですか?
何年分を申告するかは、無申告の年数・税目・事情・税務署からの連絡の有無によって変わります。なお、税務署が決定などを行える期間は、国税通則法70条で原則として法定申告期限から5年と定められています(例外があります)。年数と資料の状態を整理したうえで、税理士と確認してください。
Q. 個人事業主が期限後に申告すると、青色申告特別控除はどうなりますか?
55万円・65万円の青色申告特別控除は、確定申告期限までに申告書を提出することが要件の1つです。期限後の申告ではこの要件を満たさないため、青色申告者が受けられるのは10万円の控除になります。この金額は令和8年分までのもので、令和9年分以後は65万円・75万円に見直されますが、期限内の提出が要件である点は変わりません。
Q. 断られた理由を税理士に聞いてもよいですか?
聞いてかまいません。日数が足りないのか、資料が足りないのか、業種や規模が対応範囲の外なのかによって、次に取るべき行動が変わります。理由が分かれば、次の依頼先に最初から伝えておくことができます。
この記事は公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
最終更新日: 2026年10月24日
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