家族の財産を相続することになり、うちも相続税の申告が必要なのか気になっていませんか。まずは、非課税分や借金などを差し引き、加算される贈与を含めた金額を、基礎控除と比べます。特例を使って税額が0円になる場合でも、申告が必要なことがあります。
この記事では、税金がかかる財産とかからない財産を整理し、申告が必要かを順に確認します。基礎控除に近い2つの家族の例で、申告も不要な場合と、税額は0円でも申告が必要な場合の違いが分かります。
この記事の要点
- 相続税は、亡くなった人(被相続人)の財産を相続・遺贈で取得した人が、その価額に応じて納める税金です。
- 相続税がかかるのは、財産の合計(正味の遺産額)が基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるときです。法定相続人が3人なら基礎控除は4,800万円です。
- 国税庁の統計(令和6年分)の課税割合は10.4%です。亡くなった人1,605,378人のうち、相続税額のある申告書に係る被相続人は166,730人でした。
- 財産が基礎控除を超えても、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減で税額が0円になることがあります。その場合も、申告は必要です。
- 申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
相続税とは|亡くなった人の財産を取得したときにかかる税金
国税庁のタックスアンサー(No.4102)は、相続税を次のように説明しています。被相続人(亡くなった人)から相続や遺贈によって取得した財産と、相続時精算課税の適用を受けた贈与で取得した財産の価額の合計額が、基礎控除額を超える場合に、その超える部分に課税される、という仕組みです。この合計額は、債務などを引き、加算対象期間内の暦年課税の贈与を加えたものです。
税金を納めるのは、財産を取得した人(相続人や遺贈を受けた人)です。亡くなった人本人が納めるものではありません。相続税の納税義務者は、相続税法1条の3に定められています。財産を取得した時に日本国内に住所がある人は、原則として、取得したすべての財産が課税の対象です。海外に住んでいる人や、海外に財産がある場合は、国籍・住所・相続開始前10年以内の住所などで課税の範囲が変わります(国税庁 No.4102の表)。
遺贈とは、遺言で財産を与えることです。相続人以外の人(孫や内縁の配偶者など)が受け取る場合も、相続税の対象になります。相続人以外が受け取る場合の扱いは、遺贈の相続税で説明しています。
相続税がかかる財産|遺産のほか、みなし相続財産と加算される贈与
相続税の対象は、亡くなった時に持っていた財産だけではありません。国税庁(No.4105)によると、次のとおりです。
- 本来の相続財産:現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋のほか、貸付金、特許権、著作権など、金銭に見積もれる経済的価値のあるものすべて。
- みなし相続財産:死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金など。
- 加算される贈与:相続や遺贈で財産を取得した人が、加算対象期間内に被相続人から受けた暦年課税の贈与。相続開始が2026年12月31日までなら3年以内で、2027年1月1日以後は段階的に延び、2031年1月1日以後は7年です(No.4161)。
- 相続時精算課税の贈与:被相続人から、生前に適用を受けて取得した贈与財産。暦年課税と違って期間の制限はなく、2024年1月1日以後の贈与は、年ごとの合計から基礎控除110万円を引いた残りを加えます(No.4103・No.4205の注1)。
子や孫の名義の預金でも、被相続人の財産として相続財産に含めるかが問題になることがあります(名義預金)。判断の基準は名義預金で扱っています。財産の範囲を一覧で確認したいときは、相続税がかかる財産の一覧を見てください。
相続税がかからない財産と、引ける債務・葬式費用
次の財産は、相続税がかかりません(国税庁 No.4108、相続税法12条)。
- 墓地・墓石・仏壇・仏具など、日常礼拝の対象になっている物(骨とう的価値があるものや、商品として持っているものは課税)。
- 生命保険金・死亡退職金のうち、それぞれ「500万円×法定相続人の数」までの部分(相続人が受け取った分に限る)。
- 国や地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人などへ、相続税の申告期限までに寄附した財産。
被相続人の債務(借入金・未払金など)と葬式費用は、財産から引けます(相続税法13条)。香典返し・墓石の購入代金・初七日などの法事の費用は、葬式費用に入りません(No.4129)。
範囲の詳しい説明は、次の記事にあります。
- 相続税がかからない財産
- 債務控除
- 葬式費用は相続税から引ける?
相続税はいくらからかかるのか|基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税がかかるかどうかの境目が、基礎控除額です。「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で、家族全体で1回だけ引きます(相続税法15条1項)。正味の遺産額(財産から非課税分と債務・葬式費用を引き、加算される贈与を足したもの)が、基礎控除額を超えたときに、超えた部分に相続税がかかります。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | 家族の例 |
|---|---|---|
| 1人 | 3,600万円 | 子1人/配偶者だけ |
| 2人 | 4,200万円 | 子2人/配偶者と子1人 |
| 3人 | 4,800万円 | 子3人/配偶者と子2人 |
| 4人 | 5,400万円 | 子4人/配偶者と子3人 |
| 5人 | 6,000万円 | 子5人/配偶者と子4人 |
| 6人 | 6,600万円 | 子6人/配偶者と子5人 |
法定相続人の数には、相続放棄をした人も、放棄がなかったものとして数えます。養子は、実子がいれば1人、いなければ2人までです(相続税法15条2項)。数え方の詳細は相続税の基礎控除と相続税の法定相続人で扱っています。
基礎控除を超えたあとの税額の出し方は相続税の計算方法|5つの手順と計算例で通しています。
相続税がかかる人はどのくらいいるか|国税庁の統計(令和6年分)
国税庁が令和7年12月に公表した「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年分の被相続人数(死亡者数)は1,605,378人です。そのうち、相続税額のある申告書に係る被相続人数は166,730人で、課税割合(相続税額のある申告書に係る被相続人数÷死亡者数)は10.4%でした。前年(令和5年分)は9.9%です。
| 項目(令和6年分) | 数値 |
|---|---|
| 被相続人数(死亡者数) | 1,605,378人 |
| 相続税額のある申告書に係る被相続人数 | 166,730人 |
| 課税割合 | 10.4%(前年 9.9%) |
| 相続税額のない申告書に係る被相続人数(別集計) | 39,755人 |
| 課税価格の総額(相続税額のある申告書) | 23兆3,846億円 |
| 相続税額の総額 | 3兆2,446億円 |
| 被相続人1人あたり(相続税額のある申告書)の課税価格・税額 | 課税価格 1億4,025万円・税額 1,946万円 |
統計は、令和7年10月31日までに提出された申告書(修正申告書を除く)のデータに基づいています。上の表のとおり、相続税額のある申告書の被相続人は、亡くなった人の約1割です。このほかに、相続税額のない申告書(税額が0円だった申告書)が、別に39,755人分あります。課税割合の10.4%には、この税額のない申告書は含まれていません。
相続財産の金額(相続税額のある申告書)では、令和6年分は、現金・預貯金等が8兆5,602億円、土地が7兆4,074億円、有価証券が4兆3,676億円、家屋が1兆1,901億円でした。この統計は全国の合計です。ご自身の家で課税されるかは、基礎控除と財産の内訳で個別に判定する必要があります。
相続税の申告が要るかの判定|5つの確認と、財産の棚卸し表
申告が必要かどうかは、次の順で確かめます。「遺産の総額」ではなく、非課税分や債務を引き、贈与の加算を足した「正味の遺産額」で、基礎控除と比べる点が大切です。
- 財産を洗い出す。預貯金・有価証券・不動産・保険・退職金・貸付金・名義預金などを、棚卸し表(下)に書き出します。
- みなし相続財産と、加算される贈与を足す。保険金・死亡退職金は、非課税枠を超える部分だけを足します。贈与は、暦年課税なら加算対象期間内のもの、相続時精算課税なら期間に関係なく(2024年以後は年110万円を引いた残り)足します。
- 債務・葬式費用を引く。借入金・未払金・葬式費用を引きます。
- 基礎控除と比べる。特例(小規模宅地等など)を使わない金額で比べます(国税庁 No.4205)。
- 超えたら申告。基礎控除を超えるときは、特例を使って税額が0円になる場合も、申告が必要です。
次の棚卸し表を、そのまま印刷して使ってください。右の列に、金額を書き込みます。
| 財産・項目 | 相続税の対象か | 評価・金額の目安 | 集める書類の例 | 金額(記入欄) |
|---|---|---|---|---|
| 預貯金・現金 | 対象 | 死亡日の残高(既経過利息を含む) | 残高証明書 | |
| 上場株式・投資信託 | 対象 | 評価のルールに従った価額 | 取引残高報告書 | |
| 自宅・土地・建物 | 対象 | 土地は路線価方式か倍率方式、建物は固定資産税評価額 | 固定資産税の通知書・路線価図 | |
| 死亡保険金 | 対象(枠を超える分) | 受け取った金額-非課税枠(500万円×法定相続人の数) | 保険会社の支払通知 | |
| 死亡退職金 | 対象(枠を超える分) | 受け取った金額-非課税枠(500万円×法定相続人の数) | 勤務先の支払証明 | |
| 子・孫名義の預金 | 対象になるか要確認(名義預金) | 通帳・資金の出どころを確認 | 通帳・贈与の記録 | |
| 生前の贈与(暦年課税) | 加算対象期間内なら対象 | 贈与時の価額 | 贈与税の申告書・通帳 | |
| 生前の贈与(相続時精算課税) | 期間に関係なく対象 | 贈与時の価額(2024年以後の贈与は、年ごとに110万円を引いた残り) | 相続時精算課税選択届出書・贈与税の申告書 | |
| 貸付金・未収入金 | 対象 | 元本と、あれば利息 | 借用書・通帳 | |
| 借入金・未払金・葬式費用 | 引ける(債務控除) | 死亡時に残っていた金額 | 残高証明書・領収書 | |
| 墓地・仏壇・仏具 | 対象外(日常礼拝の物) | - | - |
この棚卸し表を使った計算は、相続税の早見表で目安を引けます。国税庁の「相続税の申告要否判定コーナー」でも、財産の金額を入れて、おおよその要否を判定できます。税務署から「相続についてのお尋ね」が届いた方が、回答を作る場合にも使える、と国税庁は案内しています。
設例で判定する|基礎控除の近くにある2つの家族
2つの家族で、申告の要否を判定します。どちらもすべて架空の設例で、財産は評価額です。
設例A|配偶者と子2人:申告は必要、税額は0円
法定相続人は3人で、基礎控除は4,800万円です。財産は、預貯金・有価証券・建物の合計が3,900万円、自宅の土地が3,000万円(150㎡)、債務と葬式費用が400万円です。
- 特例を使わない正味の遺産額は、6,500万円です。基礎控除4,800万円を超えるので、申告が必要です(国税庁の判定どおり、特例を使わない金額で比べます)。
- 自宅の土地を配偶者が取得して小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等・80%減)を使うと、土地の評価額が2,400万円減り、課税価格は4,100万円になります。基礎控除以下になるので、相続税は0円です。
- 特例を使わなければ、同じ家族でも納付は85万円になります(法定相続分どおり)。
つまりAは、税額は0円でも、特例を使うために申告書の提出が必要です。特例は、申告書に適用を受ける旨を書き、書類を添付して使います(国税庁 No.4124)。
設例B|子2人:申告は不要
法定相続人は子2人で、基礎控除は4,200万円です。財産は、預貯金・自宅の土地・建物の合計が3,900万円、死亡保険金が1,000万円(受取人は子、保険料は被相続人が負担)です。
- 保険金は、非課税枠(500万円×2人=1,000万円)の範囲内なので、全額が非課税です。正味の遺産額は3,900万円になります。
- 基礎控除4,200万円以下なので、申告も納税も不要です。
Bのように、保険金を含めた財産の合計(4,900万円)が基礎控除(4,200万円)を超えて見える家庭でも、非課税枠を引いて判定すると、基礎控除以下になることがあります。遺産の判定は、財産の合計ではなく、正味の遺産額で行います。
申告と納付の期限・提出先
相続税の申告と納税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項、国税庁 No.4205)。国税庁の例では、1月6日に亡くなった場合は、その年の11月6日が期限です。期限が土曜・日曜・祝日などにあたるときは、その翌日が期限とみなされます。
提出先は、被相続人の死亡の時の住所が日本国内にあれば、その住所地を所轄する税務署です(相続人の住所地の税務署ではありません)。納付は、申告期限までに行います(相続税法33条)。税金は金銭で一度に納めるのが原則ですが、相続税には、延納(分割で金銭納付)と物納(財産そのもので納める)の制度があり、申請は申告期限までに必要です。申告期限の数え方や必要書類は相続税の申告|期限・流れ・必要書類の全体像で、納付は相続税の納付|期限・延納・物納で説明しています。
よくある誤解|相続税とは別の手続きと、混同しやすい点
- 「相続人は1人あたり3,000万円まで非課税」という誤解。基礎控除は、家族全体で1回です。相続人ごとに3,000万円ではありません。
- 「配偶者は相続税がかからないので、申告しなくてよい」という誤解。配偶者の税額軽減は、申告書に適用を受ける旨を書くことが要件です(相続税法19条の2第3項)。仕組みは配偶者の税額軽減を参照してください。
- 「基礎控除以下なら、何もしなくてよい」という誤解。相続税の申告は不要でも、相続登記・預貯金の名義変更など、相続税以外の手続きは必要です。相続税がかからない場合の手続きで整理しています。
- 相続税と贈与税、所得税の違い。相続税は亡くなった人の財産を取得したとき、贈与税は生前に財産をもらったときにかかります。
- 亡くなった年の所得の申告。確定申告が必要な場合は、相続人が準確定申告をします(所得税法125条1項)。相続で受け取ったお金に所得税の確定申告が要るかは別の問題です。
それぞれの詳しい説明は、次の記事にあります。
- 贈与税とは
- 準確定申告
- 相続したお金に確定申告は必要?
よくある質問
相続税は、相続人全員が払うのですか。
相続や遺贈で財産を取得した人が、取得した財産の割合に応じた税額を納めます。相続税の総額を、財産を取得した人の課税価格の割合で割り振る仕組みです(相続税法17条)。取得した財産がない人には、納付はありません。
基礎控除を少し超えただけでも、申告は必要ですか。
必要です。正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は、税額の大小にかかわらず、申告と納税が必要です(国税庁 No.4205)。特例を使って税額が0円になるときも、申告書の提出が必要です。
生命保険金は、基礎控除に含めますか。
基礎控除に含めるのではなく、正味の遺産額を計算するときに、非課税枠(500万円×法定相続人の数)を引いた残りを財産に足します。この枠は、相続人が受け取った分に使えます。相続人以外の人が受け取った保険金には、非課税の適用はありません(国税庁 No.4114)。
相続税は、いつの法令で判断しますか。
被相続人が亡くなった日(相続開始日)の法令で判断します。この記事は2026年10月時点の法令・通達(令和8年4月1日現在の国税庁タックスアンサー)に基づいています。贈与財産の加算の期間など、相続開始日で扱いが変わる項目もあります。
まとめ
- 相続税は、亡くなった人の財産を相続・遺贈で取得した人にかかる税金で、正味の遺産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えたときだけ、申告と納税が必要です。
- 財産には、預貯金や不動産のほか、みなし相続財産(保険金・退職金)と、加算される贈与が含まれます。墓地・仏壇などと、保険金・退職金の非課税枠は、課税されません。
- 令和6年分の国税庁統計では、亡くなった人1,605,378人のうち相続税額のある申告書に係る被相続人は166,730人で、課税割合は10.4%でした。
- 申告の要否は、特例を使わない正味の遺産額を基礎控除と比べて判定します。超えるときは、税額が0円でも申告が必要です。
- 期限は10か月以内です。ご自身の家の税額の目安は、無料の相続税シミュレーターで、分け方ごとの税額と二次相続を比べられます。
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監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 相続税法(課税対象・基礎控除):1条の3(納税義務者)、3条1項(みなし相続財産)、12条(非課税財産)、13条(債務控除)、15条(基礎控除)
- 相続税法(税額・申告・納付):17条(各人の相続税額)、19条の2(配偶者の税額軽減)、27条1項(申告)、33条(納付)
- 所得税法:125条1項(年の中途で死亡した場合の確定申告)
- 国税庁 No.4102 相続税がかかる場合
- 国税庁 No.4105 相続税がかかる財産
- 国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務
- 国税庁 No.4129 相続財産から控除できる葬式費用
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
- 国税庁 令和6年分 相続税の申告事績の概要(令和7年12月)
- 国税庁 相続税の申告要否判定コーナー
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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