相続財産を調べていると、お墓や仏壇、生命保険金まで税金の計算に入れるべきか迷うことがあります。日常の礼拝に使う仏壇などは非課税ですが、骨とう品や投資の対象として持っているものは非課税になりません。保険金や死亡退職金にも非課税枠があり、使える人や金額の条件により、全額を除けるとは限りません。
この記事では、相続税がかからない財産の一覧と非課税の条件、保険金・退職金の計算例、弔慰金や寄附の扱いを説明します。
この記事の要点
- 非課税財産は、墓所・仏壇などの日常礼拝の物、保険金・退職金の一定額まで、期限までの国等への寄附などです(相続税法12条)。
- 仏壇や仏具でも、骨とう品や投資の対象として持っているものは非課税になりません(相続税法基本通達12-2)。
- 保険金と退職金は別枠で、それぞれ「500万円×法定相続人の数」まで非課税です。使えるのは相続人が受け取った分だけで、放棄した人は使えません。
- 遺産・保険金・退職金が各2,000万円で、配偶者と子2人が相続する場合、非課税は合計3,000万円、課税価格は3,000万円です。
- 弔慰金は、普通給与の半年分(業務上の死亡は3年分)までが対象外で、超えた分は退職手当金等として扱われます。
相続税がかからない財産の一覧|相続税法12条
相続税法12条1項は、次の財産の価額を「相続税の課税価格に算入しない」と定めています。国税庁のタックスアンサー(No.4108)の記載とあわせて、一覧にします。
| 非課税の財産 | 根拠 | 境目になる点 |
|---|---|---|
| 墓所・霊びょう・祭具など | 相法12①二 | 日常礼拝に使っているもの。骨とう品・商品・投資の対象は含まない |
| 公益事業を行う一定の者が取得した財産 | 相法12①三 | 公益事業に使うこと。取得から2年以内に使わないと課税される(同12②) |
| 公益信託の受託者が遺贈により取得した財産 | 相法12①四 | 信託財産として取得したもの |
| 心身障害者共済制度の給付金を受ける権利 | 相法12①五 | 地方公共団体の条例による共済制度(政令で定めるもの) |
| 生命保険金等 | 相法12①六 | 相続人が受け取った分。500万円×法定相続人の数まで |
| 死亡退職金等 | 相法12①七 | 相続人が受け取った分。500万円×法定相続人の数まで |
| 個人で経営していた幼稚園の事業に使われていた財産 | 国税庁 No.4108 | 一定の要件を満たし、相続人のいずれかが引き続き幼稚園を経営すること |
| 国・地方公共団体・特定の公益法人などへ寄附した財産 | 措法70 | 相続税の申告期限までに寄附すること |
このほか、相続税法12条1項1号は、皇位とともに皇嗣が受けた物(皇室経済法7条)を挙げています。一般の相続では使う場面がほとんどないため、この記事では詳しくは扱いません。
墓地・墓石・仏壇・仏具は非課税|投資の対象は課税
相続税法12条1項2号は、「墓所、霊びよう及び祭具並びにこれらに準ずるもの」を非課税としています。通達(相続税法基本通達12-1)は、墓地、墓石、おたまやのほか、これらの尊厳の維持に要する土地その他の物件も含めて取り扱うとしています。
「これらに準ずるもの」は、通達12-2が、庭内神し、神だな、神体、神具、仏壇、位はい、仏像、仏具、古墳などで、日常礼拝の用に供しているものと示しています。そして、商品、骨とう品または投資の対象として所有するものは含まれない、としています。
庭内神しの敷地は「社会通念上一体」かで決まる
自宅の庭にある祠(庭内神し)の敷地や鳥居などは、すぐに非課税になるとは限りません。国税庁の質疑応答事例は、敷地や附属設備が、その設備と密接不可分の関係にある相当範囲のものであれば、設備と一体として非課税財産になるとしています。目安は、社会通念上、その設備と一体の物として日常礼拝の対象とされているといってよいかどうかです。敷地全体が自動的に非課税になるのではなく、礼拝の実態や位置関係から判断されます。
お墓の未払代金や借入金は、債務として引けない
お墓が非課税であることの裏返しとして、生前に買ったお墓の未払代金や、お墓の購入のための借入金は、相続税の計算で債務として差し引けません。国税庁の「相続税の申告の際に誤りやすい事例集」(事例⑪)には、お墓を350万円で購入し、借入金の残高が220万円あった例があり、債務控除の対象外とされています。債務控除の詳しい扱いは、債務控除|借入金や未払いの税金は引ける?団信の住宅ローン・保証債務の扱いで説明しています。
生命保険金・死亡退職金の非課税|500万円×法定相続人の数
被相続人が保険料を負担していた生命保険金は、相続税法3条により「みなし相続財産」として課税の対象になります。そのうち、相続人が受け取った分には、500万円に法定相続人の数を掛けた額までの非課税枠があります(同12条1項6号)。死亡退職金も同じ式の枠があります(同7号)。
- 非課税は相続人だけ。国税庁(No.4114・No.4117)は、相続人以外の人が取得した保険金・退職手当金等には、非課税の適用はないとしています。
- 放棄した人は使えない。相続を放棄した人や相続権を失った人は、ここでいう相続人に含まれません。ただし、法定相続人の「数」には、放棄がなかったものとして数えます。
- 保険金と退職金は別枠。それぞれ500万円×法定相続人の数まで使えます。
- 人数は養子の上限を受ける。実子がいれば養子は1人、実子がいなければ2人までです。
それぞれの詳しい説明は、次の記事にあります。
- 保険金の仕組み:生命保険金の相続税|非課税枠「500万円×法定相続人の数」と計算例
- 死亡退職金の3年の期限や弔慰金との区分:死亡退職金の相続税|非課税枠と弔慰金、亡くなってから3年を過ぎて支給された時
非課税の対象になる保険金の範囲
みなし相続財産になるのは、受け取った保険金のうち、被相続人が負担した保険料の割合に相当する部分です(相続税法3条1項1号)。たとえば、保険料の半分を被相続人が、半分を受取人自身が払っていたなら、保険金の半分が対象です。また、保険金とあわせて受け取る剰余金、割戻金、前納保険料の払戻金も、保険金に含めて計算します。国税庁の「誤りやすい事例集」(事例⑤)には、保険金1,400万円と前納保険料150万円を受け取ったとき、申告書第9表には合計の1,550万円を書く例があります。
複数の人が受け取ったときの按分
相続人全員が受け取った保険金の合計が非課税限度額を超えるときは、限度額を、各相続人が受け取った額の割合で分けます(相続税法12条1項6号ロ)。たとえば、配偶者と子2人(法定相続人3人、非課税限度額1,500万円)のうち、配偶者が2,000万円、子Aが1,000万円を受け取ったとします。合計3,000万円が限度額を超えるため、配偶者の非課税は1,500万円×(2,000万円÷3,000万円)で1,000万円、子Aは同じく500万円です。課税されるのは、配偶者1,000万円、子A500万円です。
計算例1|同じ金額でも、保険金なら非課税枠の分だけ課税価格が減る
配偶者と子2人(または子2人だけ)が相続する場合で、他の財産が5,000万円あり、別に生命保険金3,000万円を相続人が受け取ったとします。比較のため、同じ8,000万円をすべて預貯金などで相続した場合も示します。
配偶者と子2人(法定相続人3人)の場合です。
| 財産の内訳 | 相続税の総額 | 課税価格の合計 | 保険金の非課税 | 基礎控除 |
|---|---|---|---|---|
| 他の財産5,000万円+保険金3,000万円 | 170万円 | 6,500万円 | 1,500万円 | 4,800万円 |
| 預貯金など8,000万円(保険金なし) | 350万円 | 8,000万円 | 0円 | 4,800万円 |
子2人だけ(法定相続人2人)の場合です。
| 財産の内訳 | 相続税の総額 | 課税価格の合計 | 保険金の非課税 | 基礎控除 |
|---|---|---|---|---|
| 他の財産5,000万円+保険金3,000万円 | 320万円 | 7,000万円 | 1,000万円 | 4,200万円 |
| 預貯金など8,000万円(保険金なし) | 470万円 | 8,000万円 | 0円 | 4,200万円 |
これは、すでに受け取る保険金がある場合の取扱いの違いを示したものです。保険に入ることや、預貯金を保険に替えることを勧める趣旨ではありません。家族の状況によって結果は変わります。
計算例2|保険金と退職金は別枠で使える
他の財産が2,000万円、生命保険金が2,000万円、死亡退職金が2,000万円の場合です。
| 項目 | 配偶者と子2人(法定相続人3人) | 子1人(法定相続人1人) |
|---|---|---|
| 相続税の総額 | 0円 | 160万円 |
| 課税価格の合計 | 3,000万円 | 5,000万円 |
| 保険金の非課税 | 1,500万円 | 500万円 |
| 退職金の非課税 | 1,500万円 | 500万円 |
| 基礎控除 | 4,800万円 | 3,600万円 |
同じ財産でも、法定相続人の数で、非課税の額が変わります。1人のときは、保険金・退職金とも非課税が500万円ずつです。
弔慰金・花輪代・葬祭料の扱い
国税庁(No.4120)は、被相続人の死亡によって受ける弔慰金、花輪代、葬祭料などは、通常、相続税の対象になることはないとしています。ただし、雇用主から「弔慰金」の名目で受け取っても、実質的に退職手当金等に当たる部分は、相続税の対象です。
相続税法基本通達3-20は、次の金額までを弔慰金等に相当する金額とし、それを超える部分は退職手当金等に該当するものとして取り扱う、と定めています。
| 被相続人の死亡 | 弔慰金等として扱える上限 |
|---|---|
| 業務上の死亡 | 死亡当時の普通給与(賞与以外)の3年分 |
| 業務上でない死亡 | 死亡当時の普通給与(賞与以外)の半年分 |
たとえば、普通給与が月50万円の人が、業務上でない死亡で、雇用主から弔慰金1,000万円を受け取ったとします。半年分は300万円(50万円×6か月)なので、300万円が弔慰金等、残りの700万円が退職手当金等として扱われます。この700万円は、500万円×法定相続人の数の枠の中で非課税になるかが判断されます。業務上の死亡なら、3年分は1,800万円(50万円×36か月)なので、1,000万円は全額が弔慰金等です。
労働者災害補償保険の遺族補償給付や、健康保険の埋葬料など、通達3-23に列挙された法律に基づく給付は、退職手当金等に該当しないものとされています。また、すでに退職金を受け取って退職した人が亡くなり、元の勤務先から特別弔慰金が支払われた例があります。国税庁の質疑応答事例は、生前の役務の対価とはいえないため退職手当金等に当たらず、遺族の一時所得になる、としています。
国・公益法人などへ寄附した財産
相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに、国、地方公共団体、特定の公益法人、認定NPO法人などへ寄附した場合は、その財産は相続税の対象にならない特例があります(租税特別措置法70条)。国税庁(No.4141)は、次の点を挙げています。
- 寄附した財産が、相続や遺贈で取得した財産(みなし相続財産の保険金・退職手当金を含む)であること。
- 相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
- 寄附先が、国・地方公共団体、または法律で決まった特定の公益法人などであること。
- 寄附を受けた法人が、寄附を受けた日から2年を経過する日までに、その財産を公益事業の用に使わない場合などは、特例が受けられなくなること。
- 寄附した人やその親族の相続税・贈与税の負担を不当に減少させる結果になる場合は、特例の対象外になること。
- 相続税の申告書に特例の適用を受ける旨を書き、寄附した財産の明細書などを添付すること。
寄附は、財産を手放す判断です。税金が軽くなるかだけでなく、ご家族の意向や遺言の内容を確認したうえで考える必要があります。
非課税財産のよくある誤りとチェックリスト
- 投資目的の仏像や骨とう品も非課税だと思っている。商品・骨とう品・投資の対象は含まれません(通達12-2)。
- お墓の購入のための借入金を、債務として差し引いている。非課税財産の取得に係る未払金は、引けません。
- 保険金の非課税を、相続を放棄した人や、相続人でない子の配偶者・孫が使えると思っている。相続人だけです。
- 保険金だけを見て、保険契約者や保険料の負担者を確認していない。保険事故が起きる前の保険契約でも、契約者が被相続人以外で、被相続人が保険料を負担していた場合は、契約に関する権利が課税対象になることがあります。
- 弔慰金なら全額非課税だと思っている。上限(半年分・3年分)を超える部分は退職手当金等になります。
- 遺族年金も課税されると思っている。国税庁は、遺族年金は原則として所得税も相続税も課税されないとしています。亡くなったときに支給されていなかった年金(未支給年金)も、相続税は課税されず、受け取った遺族の一時所得になります。
財産を仕分けるときは、次の表で確かめます。
| 財産 | 課税か非課税か | 確かめること |
|---|---|---|
| 墓地・墓石 | 非課税 | 購入のための未払金・借入金は債務控除できない |
| 仏壇・位はい・仏具 | 日常礼拝のものは非課税 | 骨とう品や投資の対象でないか |
| 庭内神しの敷地 | 礼拝の実態により判断 | 設備と一体といえる範囲か |
| 生命保険金(相続人が受取) | 500万円×法定相続人の数まで非課税 | 受取人が相続人か、放棄していないか、保険料の負担者は誰か |
| 死亡退職金(相続人が受取) | 同上(保険金とは別枠) | 死亡後3年以内に支給が確定したか |
| 弔慰金・花輪代・葬祭料 | 上限までは対象外 | 普通給与の半年分(業務上は3年分)を超えていないか |
| 国等への寄附 | 申告期限までの寄附は非課税 | 寄附先が特例の対象か、申告書に明細を添付したか |
| 遺族年金・未支給年金 | 相続税の対象外 | 未支給年金は受け取った遺族の一時所得 |
非課税財産と、申告が要るかどうか
非課税財産の価額は、課税価格に含めません(国税庁の手引でも、各人の課税価格の計算で、非課税財産の価額が除かれると説明されています)。このため、計算例2のように、非課税の分を除いた課税価格の合計が基礎控除以下であれば、相続税は0円で、申告も不要です。
一方、特例を使う前の課税価格の合計が基礎控除を超えていて、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使って0円になる場合は、申告が必要です。
基礎控除の数え方や申告要否の判定は、相続税の基礎控除|3,000万円+600万円×法定相続人の数え方と人数別の早見で説明しています。
自分の家族の場合を試算するには
保険金や退職金がある場合は、法定相続人の数と受取人によって、非課税の額が変わります。当事務所の無料の相続税シミュレーターでは、家族構成と財産を入れて、分け方ごとの税額と二次相続を含めた合計を比べられます。財産の全体の計算の流れは、相続税の計算方法|5つの手順と計算例(遺産1億円・配偶者と子2人)で確認できます。
申告書の作成や、非課税の判定に迷う財産がある場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。
よくある質問
仏壇や仏具を高価なものに買い替えても、非課税ですか。
日常礼拝に使っている仏壇・仏具は非課税ですが、骨とう品や投資の対象として持っているものは含まれません。どちらにあたるかは、持っている目的や使い方の実態で判断されます。
相続人でない子の配偶者が保険金を受け取った場合、非課税は使えますか。
使えません。国税庁(No.4114)は、相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用はないとしています。この場合、受け取った保険金は、遺贈で取得したものとして課税の対象になります。
保険金と一緒に、前納保険料の払戻しを受けました。どう扱いますか。
国税庁は、保険金とともに払戻しを受ける前納保険料は、保険金に含めて扱うとしています。非課税枠の計算も、合計した金額で行います。
墓地を相続するときに、費用を債務として引けますか。
お墓は非課税財産で、その取得のための未払金や借入金は、債務として引けません。お墓の購入費用そのものは、葬式費用にも含まれません(相続税法基本通達13-5)。
非課税の保険金を受け取っても、申告は必要ですか。
非課税分を除いた課税価格の合計が基礎控除以下であれば、申告は不要です。ただし、特例を使う前の合計が基礎控除を超えていて、特例を使って税額が0円になる場合は、申告が必要です。
まとめ
- 相続税がかからない財産は、墓所・祭具、公益事業用の財産、心身障害者共済の給付金を受ける権利、保険金・退職手当金等の一定額、国等への寄附などです(相続税法12条、措置法70条)。
- 仏壇・仏具は、日常礼拝に使っているものが非課税で、骨とう品や投資の対象は課税です。お墓の未払金は債務として引けません。
- 保険金・退職金の非課税は、それぞれ500万円×法定相続人の数までで、相続人が受け取った分だけです。放棄した人や相続人以外の人は使えません。
- 弔慰金は、普通給与の半年分(業務上の死亡は3年分)まで。超える部分は退職手当金等として扱われます。
- 非課税の分を除いて基礎控除以下なら、申告は不要です。特例を使う前の合計が基礎控除を超え、特例を使って0円になる場合は、申告が必要です。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 相続税法:12条(相続税の非課税財産)、3条(みなし相続財産)、15条(法定相続人の数)
- 相続税法基本通達12-1(墓所・霊びょうの意義)・12-2(祭具等の範囲)
- 相続税法基本通達3-20(弔慰金等の取扱い)・3-23(退職手当金等に該当しないもの)
- 国税庁 No.4108 相続税がかからない財産
- 国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金
- 国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金
- 国税庁 No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い
- 国税庁 No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき
- 国税庁 質疑応答事例 庭内神しの敷地等
- 国税庁 質疑応答事例 生前に退職している被相続人の死亡により元の勤務先から支払いを受ける特別弔慰金等
- 国税庁 相続税の申告の際に誤りやすい事例集 事例⑪(お墓の購入費用に係る借入金)
- 国税庁 相続税の申告のしかた(令和8年分用)3 相続税の計算(各人の課税価格の計算)
- 国税庁 相続税の申告の際に誤りやすい事例集 事例⑤(保険金とともに払戻しを受ける前納保険料)
- 国税庁 相続税の申告の際に誤りやすい事例集 事例⑧(支給されていなかった年金)
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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