アプリに残したままの投げ銭は、換金するまで今年の収入に入れなくてよいと思っていませんか。原則は、換金した日ではなく、報酬を受け取る権利が確定した年の収入です。その時点はアプリの規約や換金の条件で判断し、現金主義の特例を使う場合は別に確認します。
この記事では、ライバー報酬をいつの収入にするかと、源泉徴収の時期との違い、年をまたぐ報酬の記録方法を整理します。報酬の発生・換金申請・入金の日付を分けて残す際のポイントが分かります。
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原則は「受け取る権利が確定した時」
所得税では、収入をいつの年のものにするかを、お金を実際に受け取った日ではなく、受け取る権利が確定した日で決めます(所得税法第36条)。国税庁の通達では、サービスを提供して報酬を得る場合、原則としてサービスの提供が終わった日、報酬の決め方に特約があればその事由が生じた日の収入とされています。
この原則に当てはめると、「換金していないから収入ではない」とはいえません。アプリの規約で報酬の額が決まり、いつでも換金を申請できる状態になっていれば、換金していなくても、その時点で受け取る権利は確定していると考えるのが原則に沿った見方です。
ただし、ダイヤやポイントが付与された時点なのか、換金を申請した時点なのかを、アプリごとに一律に定めた国税庁の説明はありません。各アプリの公式ヘルプも、税務の判断は税務署などに確認するよう案内しています。どの時点で数えるかは、規約の中身(報酬の額が決まる条件や換金の条件)を見て判断します。
なお、配信が業務に係る雑所得で、前々年の業務の収入が300万円以下の人は、確定申告書にその旨を書くなどの要件を満たせば、実際にお金を受け取った時に収入とする方法(現金主義)を選べる特例があります。ただし、アプリ内のポイントの付与がこの特例でいう「収入」に当たるかは別に確かめる必要があり、必ず換金の年になるとは言えません。また、この特例では、収入だけでなく必要経費も原則として実際に払った年で計算します。この記事の以下の説明は、この特例を使わない場合のものです。
源泉徴収が換金のときでも、収入も換金のときとは限りません
PocochaやIRIAMでは、換金を申請したときに所得税が源泉徴収されます。そのため「換金した年が収入の年」と思われがちですが、源泉徴収のタイミングと収入にする時期は別の話です。
- 源泉徴収は、支払うときに支払う側が税金を前払いで差し引く仕組みです。
- 収入の時期は、上の「受け取る権利が確定した時」で決まります。
年末に付与された報酬を翌年1月に換金した場合、源泉徴収は翌年の換金時に行われますが、収入をどちらの年にするかは別に判断します。なお、確定申告で差し引く源泉徴収税額は、その収入にかかる分です。所得税法第120条は「計算の基礎となつた各種所得につき源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」を差し引くと定めているので、収入を前の年にしたなら、翌年1月に引かれた源泉徴収税額も前の年の申告で差し引きます。
3つの日付を分けて記録しておく
年をまたぐ報酬を正しく扱うには、明細を次の3つの日付で分けて残しておくのが確実です。
- 報酬が発生した日(ダイヤ・ポイントが付与された日)
収入の時期の判断に使います。 - 換金を申請した日
源泉徴収の判断に使います。インボイス未登録の減額の基準日はアプリごとに違い、Pococha・IRIAMは換金の申請、ふわっちはポイントの付与のときです。 - 口座に入金された日
通帳との照合に使います。
各アプリの履歴の見方は次のとおりです。
- Pococha:支払調書などは原則発行されず、換金・交換の履歴で確認します。退会すると履歴を見られなくなるので、退会前に保存してください。
- IRIAM:支払調書などは発行されず、入金の履歴で確認します。
- 17LIVE:毎月の支払通知書があり、2026年10月の報酬分からは報酬の発生レポートも案内されています。
- ふわっち:ポイントの履歴を確定申告の明細として使います(過去36か月分を表示)。
履歴の表示期間や、退会後に見られるかどうかはアプリごとに違います。月に1回、履歴の画面を保存しておくと、年明けに慌てずに済みます。
ドル建ての報酬は円に直す日をそろえる
Twitchなどでドル建ての報酬を受け取る場合は、収入にする日の為替レートで円に直します。原則は、その日の電信売買相場の仲値(TTM)です。継続して使うことを条件に、収入には電信買相場(TTB)を使うこともできます。取引ごとに都合のよいレートを選ぶことはできません。出金した日にドル残高の一部を円に換えた場合は、為替の差損益が生じることもあります。
「換金せずにアプリ内で使う」「投げ返す」場合
受け取った報酬をコインに交換してアプリ内で使ったり、他の配信者に投げ返したりしても、受け取った報酬が収入であることは変わりません。投げ返した分を必要経費にできるかは、配信の仕事に直接必要な支出かどうかで個別に判断します。「投げ返した分は全額経費」「受け取った分から差し引いて申告すればよい」と一律には言えないので、何のために使ったかの記録を残してください。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 換金せずに何年も残しておけば、税金はかかりませんか?
A. かからなくなるわけではありません。現金主義の特例を使わない場合は、受け取る権利が確定した年の収入に含めて、申告が必要かを判定します。後から何年分もまとめて申告し直すと、加算税や延滞税がかかることがあります。
Q2. 12月に付与された報酬を1月に換金しました。どちらの年ですか?
A. 現金主義の特例を使わない場合、規約上、12月の時点で額が決まり換金を申請できる状態だったなら、12月の年の収入と考えるのが原則に沿った見方です。その報酬について1月に引かれた源泉徴収税額も、12月の年の申告で差し引きます。判断に迷う場合は、規約を添えて税務署や税理士に確認してください。
Q3. 去年、換金していない分を申告していませんでした。
A. 申告していなかった額によって、修正申告や期限後申告が必要になります。早く自分から直すほど、加算税の負担は小さくなります。
投げ銭の売上の計上や経費の考え方は、ライバー・配信者(投げ銭)の確定申告とインボイスで解説しています。
参考資料
- 国税庁:No.2200 収入金額とその計算
- 国税庁:所得税基本通達36-8(事業所得の総収入金額の収入すべき時期)
- 国税庁:所得税基本通達57の3-2(外貨建取引の円換算)
- 国税庁:No.2210 必要経費の知識
- Pococha:源泉徴収票・支払調書・収入証明は発行してもらえますか
- IRIAM:支払調書・源泉徴収票などの収入証明書の発行について
- ふわっち:ふわっちポイントで得た所得の確定申告について
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監修者: 鳥羽 卓朗(公認会計士・税理士)
リーパル会計事務所 代表。PwCあらた有限責任監査法人出身。1,100社以上の関与実績を持ち、個人の確定申告・税務調査対応を専門とする。
最終更新日: 2026年10月23日
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