親が亡くなり、実家を相続することになりました。この家に相続税はかかるのか、いくらになるのか。気になる方は多いと思います。
実家の相続税は、土地と建物の評価額を出し、小規模宅地等の特例が使えるかを確認し、預貯金など他の財産と合わせて計算します。同じ実家でも、誰が取得するかで税額が変わります。この記事では、評価額の出し方、特例が使える人の判定表、取得者別の5つのケースの税額、実家を売る場合の注意を説明します。
この記事の要点
- 実家の評価額は、土地と建物の合計です。土地は路線価方式か倍率方式、建物は固定資産税評価額×1.0で評価します。
- 例:遺産1億円(土地4,000万円)を子2人が相続する場合、同居の子が特例を使えると相続税の総額は290万円、使えないと770万円です。
- 自宅の土地は、一定の要件を満たせば、330㎡までの部分が80%減額されます(小規模宅地等の特例)。配偶者は取得者の要件がなく、同居の親族は申告期限まで居住と保有が必要です。
- 実家を申告期限(10か月)の前に売ると、配偶者以外は特例を使えません。空き家の売却には、所得税の「3,000万円特別控除」が別にあります。
- 特例を使って相続税が0円になる場合も、申告は必要です。
実家の相続税評価額の出し方|土地と建物
実家の評価額は、土地と建物を別々に評価して足します。相続税は財産を「時価」で評価しますが、実際は国税庁の財産評価基本通達の方法で計算します。
土地の評価額
土地の評価の方式は、地域で決まっています。市街地の宅地は路線価方式、それ以外は倍率方式です(評価通達11)。
- 路線価地域:路線価を、奥行などの補正率で補正し、面積を掛けます。例:路線価が1㎡あたり20万円、補正率が1.00、面積が200㎡なら、20万円×1.00×200㎡=4,000万円です。
- 倍率地域:固定資産税評価額に、評価倍率表の倍率を掛けます。
面積は、登記簿の面積ではなく、亡くなった日の実際の面積で評価します。地目も、登記簿ではなく現況で判断します(国税庁No.4602のQ&A、評価通達7・8)。路線価の調べ方は路線価の調べ方、土地評価の全体は土地の相続税評価額の計算で説明しています。
建物の評価額
建物は、固定資産税評価額に1.0を掛けた額で、固定資産税評価額と同額です(評価通達89)。固定資産税評価額が600万円なら、評価額も600万円です。貸している部分があるときや、建築中・増改築の場合は扱いが変わります。詳しくは建物(家屋)の相続税評価額で説明しています。
| 例:実家の評価額の組み立て | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 土地(路線価地域・補正率1.00) | 20万円×1.00×200㎡ | 4,000万円 |
| 建物 | 固定資産税評価額600万円×1.0 | 600万円 |
| 実家の評価額 | 4,600万円 |
固定資産税評価額は、納税通知書の課税明細書の「評価額(価格)」で確認できます。「課税標準額」は使いません。見方は固定資産税評価額から相続税評価額を出す方法で説明しています。
実家だけの相続でも相続税はかかるか
実家の評価額が基礎控除を超えるかどうかが、まず分かれ目です。基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数です。子2人なら4,200万円、配偶者と子2人なら4,800万円です。
たとえば、上の4,600万円の実家だけが遺産で、子2人が相続する場合を見ます。
| 子2人・遺産は実家だけ(評価額4,600万円) | 小規模宅地等の減額 | 課税価格の合計 | 相続税の総額 | 納付税額の合計 |
|---|---|---|---|---|
| 特例を使えない | 0円 | 4,600万円 | 40万円 | 40万円 |
| 同居の子が、自分の取り分(2,300万円)の範囲で実家の土地を取得し、特例を使える | 1,840万円 | 2,760万円 | 0円 | 0円 |
この表の「特例を使える」の行は、子2人で分け、同居の子が自分の取り分(4,600万円の半分の2,300万円)の範囲で土地を取得するものとして計算しています。同居の子が実家の全部(土地4,000万円・建物600万円)を取得する場合は、減額が3,200万円(4,000万円×80%)、課税価格の合計が1,400万円になり、この場合も納付税額は0円です。
特例を使えれば、課税価格が基礎控除4,200万円以下になり、納める税額は0円です。ただし、特例を使うには申告書の提出が条件です。申告が必要かどうかは、特例を使わない場合の課税価格の合計額(この例では4,600万円)が基礎控除を超えるかで判定します。この例は超えているので、特例で税額が0円になっても申告が必要です。この点は、相続税の基礎控除で詳しく説明しています。
誰が実家を取得するかで、税額はこう変わる
実家のほかに預貯金などがある場合は、誰が実家を取得するかで、税額の合計も一人ひとりの税額も変わります。次の表は、土地4,000万円(200㎡)、建物と預貯金等が合わせて6,000万円(建物600万円、預貯金等5,400万円)、合計1億円の遺産で、5つの分け方を比べたものです。
当事務所の無料の相続税シミュレーターと同じ計算で出した金額です。土地を取る人は、自分の取り分の範囲で土地を取得し、その部分に特例が効くものとして計算しています。
| ケース | 家族 | 実家を取る人 | 小規模宅地等の減額 |
|---|---|---|---|
| ア | 子2人 | 同居の子(特例を使える) | 3,200万円 |
| イ | 子2人 | 別居の子(特例を使えない) | 0円 |
| ウ | 配偶者と子2人 | 配偶者(特例を使える) | 3,200万円 |
| エ | 配偶者と子2人 | 同居の子(特例を使える) | 2,000万円 |
| オ | 配偶者と子2人 | 特例を使えない人 | 0円 |
同じケースの課税価格と税額は、次のとおりです。
| ケース | 課税価格の合計 | 相続税の総額 | 納付税額の合計 |
|---|---|---|---|
| ア | 6,800万円 | 290万円 | 289万9,900円 |
| イ | 1億円 | 770万円 | 770万円 |
| ウ | 6,800万円 | 200万円 | 147万400円 |
| エ | 8,000万円 | 350万円 | 131万2,400円 |
| オ | 1億円 | 630万円 | 315万円 |
子2人のケース(ア・イ)は、各自の取得額を同額(5,000万円ずつ)としています。配偶者と子2人のケース(ウ・エ・オ)は、取得額を法定相続分どおり、配偶者が1/2、子が各1/4としています。配偶者の税額軽減(1億6千万円と法定相続分相当額の多い方まで)も反映しています。
表の読み方
- ア・イ:特例の有無で、相続税の総額が290万円から770万円へ変わります。差は480万円です。
- ア:納付税額の合計は約290万円ですが、実家を取った子の税額は76万7,600円、現金を取った子は213万2,300円と、一人ずつの税額に差が出ます。特例は実家を取った人の課税価格だけを下げるためです。
- アの論点:この差は、遺産分割協議で代償金などによって調整するかどうかを話し合う論点になります。
- ウ:配偶者が実家を取る場合は、配偶者の税額軽減で配偶者の納付額が0円になり、子の納付額は一人あたり73万5,200円です。
- エ:同居の子が実家を取る場合、この表の計算は、子が自分の取り分(法定相続分1/4にあたる2,500万円)の範囲で土地を取得する前提です。
- エの結果:この前提のため、減額は2,000万円で、実家を取った子の納付額は21万8,700円、もう一方の子は109万3,700円です。取得する範囲を変えれば、減額も一人ずつの税額も変わります。
この表は、分け方の違いで税額がどう動くかを見るための例です。どの分け方がよいかを示すものではありません。二次相続(配偶者が亡くなったときの相続税)、配偶者の生活資金、遺留分、相続人どうしの公平感でも、判断は変わります。分け方ごとに、二次相続まで含めた合計を比べるときは、二次相続とはが参考になります。遺産が1億円の場合の全体像は遺産1億円の相続税にあります。
小規模宅地等の特例が使える人|判定表
自宅の土地は、「特定居住用宅地等」に当たれば、330㎡までの部分について評価額が80%減額されます(租税特別措置法69条の4)。使えるかどうかは、取得する人ごとに決まります。国税庁のタックスアンサー(No.4124)の要件を整理した表です。
| 取得する人 | 要件 |
|---|---|
| 被相続人の配偶者 | 取得者ごとの要件はない |
| 被相続人と同居していた親族(被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物に居住していた親族。区分所有の登記がある建物では、被相続人が居住していた部分に居住していた親族) | 相続開始の直前から申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から申告期限まで有していること |
| 上の2つ以外の親族(いわゆる「家なき子」) | 下に挙げる要件をすべて満たすこと |
| 被相続人と生計を一にしていた親族の居住用の宅地 | 配偶者は要件なし。生計を一にしていた親族は、相続開始前から申告期限まで引き続きその家屋に居住し、宅地等を申告期限まで有していること |
家なき子の要件は、次の(1)〜(6)です。すべて満たす必要があります。
- (1)日本国籍がない居住制限・非居住制限納税義務者でない
- (2)被相続人に配偶者がいない
- (3)被相続人の居住家屋に同居していた相続人がいない
- (4)相続開始前3年以内に、日本国内にある自分・配偶者・3親等内の親族・特別の関係がある法人の持ち家(相続開始の直前に被相続人が住んでいた家屋を除く)に住んだことがない
- (5)相続開始時に住んでいる家を、過去に所有したことがない
- (6)その宅地等を申告期限まで有していること
要件の細かい判定や場面ごとの扱いは、次の記事で説明しています。
- 小規模宅地等の特例の要件(要件の細かい判定)
- 家なき子特例(家なき子)
- 老人ホームに入っていた親の自宅と小規模宅地等の特例(老人ホームに入っていた場合)
- 二世帯住宅の小規模宅地等の特例(二世帯住宅)
- 小規模宅地等の特例(特例の全体像)
家族の状況に当てはめると
判定表を、よくある状況に当てはめると次のようになります。個別の判定は要件を一つずつ確認してください。
- 母が実家を相続する(父が亡くなった):配偶者なので、取得者ごとの要件はありません。
- 同居していた長男が相続する:相続開始の直前から申告期限まで住み続け、申告期限まで持っていれば、同居の親族の要件を満たします。
- 別居の次男が相続する。次男は自分の持ち家に住んでいる:家なき子の要件(5)(相続開始時に住んでいる家を、過去に所有したことがない)に当たらず、使えません。
- 別居の次男が相続する。次男は賃貸住まいで、親は一人暮らしだった:(1)〜(6)をすべて満たせば使えます。(4)の3年以内の持ち家の居住歴や、(6)の申告期限までの保有も確認が必要です。
330㎡を超える土地の場合
特例の対象は、330㎡までの部分です。超えた部分は減額されません。例:土地が400㎡で評価額が8,000万円(路線価20万円×400㎡)なら、330㎡分の価額は8,000万円×330÷400=6,600万円で、その80%の5,280万円が減額されます。残りは、減額されない部分と、減額後の20%分です。
特例を使うための手続き
- 相続税の申告書に、特例の適用を受ける旨を記載し、小規模宅地等に係る計算明細書や、遺産分割協議書の写しなどを添付します。
- 特例の対象になり得る宅地等を取得した相続人が2人以上いるときは、特例を適用する宅地等の選択に全員が同意している必要があります。原則として、申告期限までに分割されていることも必要です。
- 申告期限までに遺産分割がまとまらない場合の扱いは、遺産分割がまとまらない時の相続税申告で説明しています。
実家を売る場合・空き家にする場合
相続税の特例と売却
配偶者以外が特例を使うには、同居の親族も家なき子も、その宅地等を相続税の申告期限まで持っていることが要件です。申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条1項)。この期限より前に実家を売ると、配偶者以外は特例を使えません。売却を考えているときは、先に特例の有無を試算してください。
売却したときの所得税の特例(空き家の3,000万円特別控除)
相続した実家を売って譲渡所得が出るときは、所得税の特例があります。国税庁のタックスアンサー(No.3306)は、被相続人居住用家屋と敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までに売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を控除できるとしています。主な要件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 家屋の条件 | 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。区分所有建物の登記がされていないこと。相続開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいないこと |
| 売り方 | 家屋を(敷地とともに)売る場合は、売る時点で一定の耐震基準を満たすこと。令和6年1月1日以後の譲渡では、売った年の翌年2月15日までに耐震基準を満たすか、家屋の全部を取り壊す場合も対象。家屋を取り壊してから敷地を売る方法もある |
| 売るまでの使い方 | 相続の時から売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないこと |
| 売る期限 | 相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却代金 | 1億円以下 |
| 控除額 | 最高3,000万円。令和6年1月1日以後の譲渡で、取得した相続人が3人以上のときは2,000万円 |
| 手続き | 確定申告が必要。市区町村の「被相続人居住用家屋等確認書」などを添える |
相続税の特例と、この所得税の特例は、別の税の特例です。売却の税金の全体は相続した土地を売却した時の税金、空き家の特例は相続した空き家の3,000万円特別控除で説明しています。
実家の相続税の申告までの進め方
- 評価額を出す:路線価図(または評価倍率表)と課税明細書で、土地と建物の評価額を出します。
- 預貯金など他の財産を集める:実家の評価額と合わせて、基礎控除を超えるかを見ます。
- 誰が実家を取るか話し合う:特例の要件と、税額の違いを確認します。遺産分割協議書の書き方に、特例に必要な記載を説明しています。
- 申告書を作る:特例を使うなら、計算明細書と協議書の写しを添えます。
- 10か月以内に申告・納付する:被相続人の住所地の税務署が提出先です。
必要な書類は次のとおりです。
- 土地・建物の登記事項証明書
- 固定資産税の課税明細書(または評価証明書)
- 路線価図(または評価倍率表)
- 小規模宅地等の特例を使う場合の計算明細書と遺産分割協議書の写し
全体の流れと期限は、相続税の申告|期限(10か月)・流れ・必要書類の全体像にまとめています。
実家の相続税でよくある誤り
- 実家は、売れる価格で評価すると思っている。評価は、路線価(または固定資産税評価額×倍率)と、建物の固定資産税評価額によります。
- 固定資産税の課税標準額を評価額にする。住宅用地の特例で、課税標準額は価格より小さくなっています。評価額(価格)を使います。
- 登記簿の面積で計算する。評価は、亡くなった日の実際の面積です。
- 特例で税額が0円なら申告しなくてよいと思っている。特例は、申告書を提出して初めて使えます。
- 同居していれば、誰でも特例を使えると思っている。同居の親族は、申告期限まで住み続け、持ち続ける必要があります。
- 申告期限の前に実家を売ってしまう。配偶者以外は、申告期限まで持っていることが要件です。
- 空き家の3,000万円控除を、相続税の特例と同じものと思っている。売却益にかかる所得税の特例で、売る期限や建築年などの要件が別にあります。
自分の家族の場合の税額を試算するには
実家の評価額と預貯金などを入れて、家族構成別に税額を比べたいときは、当事務所の無料の相続税シミュレーターが使えます。誰が実家を取るかを変えて、分け方ごとの税額と二次相続を含めた合計を比べられます。
土地の評価や特例の判定、申告書の作成をまかせたい場合は、相続税申告のページに、全国オンライン対応のご案内と料金を載せています。
よくある質問
実家に誰も住んでいない場合も、特例は使えますか。
特例は、相続開始の直前に、被相続人(または被相続人と生計を一にしていた親族)が住んでいた宅地が対象です。亡くなる前から実家が空き家で、誰も住んでいなかった場合は、居住用としての特例は使えません。老人ホームなどに入所して住めなくなっていた場合は、一定の要件のもとで、入所前の居住が認められます。詳しくは老人ホームの記事をご覧ください。
実家を兄弟で共有で相続すると、特例はどうなりますか。
特例は、要件を満たす人が取得した持分の割合に応じた部分に限って使えます。同居の子と別居の子が共有する場合、別居の子の持分には、家なき子などの要件がなければ特例は使えません。
建物が古くて価値がないのですが、評価額はゼロになりますか。
建物の評価額は、固定資産税評価額×1.0です。固定資産税評価額が付いていれば、その額で評価します。実際の価値や売却価格とは別に決まります。
相続税を払うお金が、実家以外にありません。
相続税は、原則として現金で一括して納めます。難しい場合は、延納や物納の制度があります。相続税の納付|期限・延納・物納と、払えない時の方法で説明しています。
まとめ
- 実家の評価額は、土地(路線価方式または倍率方式)と建物(固定資産税評価額×1.0)の合計です。
- 自宅の土地は、要件を満たせば330㎡まで80%減額されます。配偶者は要件がなく、同居の親族は申告期限まで居住と保有が要ります。
- 同じ遺産でも、実家を誰が取り、特例を使えるかで、相続税の総額が変わります(例:子2人で770万円と290万円)。一人ずつの税額にも差が出ます。
- 特例を使って税額が0円でも、申告は必要です。申告期限は10か月以内です。
- 申告期限の前に売ると、配偶者以外は特例を使えません。売却益の所得税には、空き家の3,000万円特別控除が別にあります。
監修
本記事は、公認会計士・税理士の鳥羽卓朗が監修しています。
参考にした法令・資料
- 相続税法:15条(基礎控除)、16条(税率)、19条の2(配偶者の税額軽減)、22条(評価の原則)、27条1項(申告書の提出期限)
- 租税特別措置法:69条の4(小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例)
- 財産評価基本通達11(評価の方式)・13(路線価方式)/21・21-2(倍率方式)/7(地目は現況)・8(地積は実際の面積)/89(家屋の評価)
- 国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
- 国税庁 No.4602 土地家屋の評価/同Q&A(地目・地積)
- 国税庁 No.4152 相続税の計算(基礎控除額)/No.4158 配偶者の税額の軽減
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税(申告要否の判定)
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
この記事は2026年10月時点の法令・通達に基づいて書いています。
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